「……そっか。お母さんが過労で倒れちゃったんだ」
「はい……本当はもっとお金を稼げる冒険者をしたいんですけれど、お母さんが許してくれなくて……」
お花1本を銅貨1枚で10本買ったあと、道端にあるベンチに座ってキツネの獣人の女の子と少し話をしている。話を聞いてみると、この女の子の父親は数年前に病で亡くなって、母親が女手ひとつで育ててくれたらしい。しかし、最近になって母親が過労で倒れてしまったようだ。
少しでも母親の力になれればと、冒険者になってお金を稼ごうとしたのだが、冒険者になることは母親が許してくれなかったらしい。この子は見たところまだ10歳前後だ。いくら始まりの街とはいえ、冒険者には危険が伴う。この子のお母さんが許可を出さない理由もわかる。
……というか俺、こういう不幸話や苦労話に弱いんだよなあ。こんな話を聞いて何もしなければ、今後の飯が不味くなってしまう! こういうのは王道のハッピーエンドでいいんだよ、みんな幸せでそれでいいじゃん!
「いつもはお花を1日中売ったらどれくらいになるの?」
「多くても10本くらいですね。だからさっきお兄ちゃんが10本も買ってくれてとっても嬉しかったです!」
キラキラとした眩しい笑顔を見せる獣人の女の子。
「……ねえ、もしよかったらうちのお店で物を売る仕事を手伝ってくれない? 昨日オープンしたばかりのお店なんだけど、人手が足りなくてちょうど今から冒険者ギルドに人を雇いに行くところだったんだ。お昼から夕方までで、給金は銀貨5枚でどうかな?」
「本当ですか!? やらせてください!」
うおっ!? めっちゃ食いついてきた!?
「仕事内容はお店の接客だね。お花を売っていたし、簡単なお金の計算はできるのかな?」
「はい! この街では誰でも受けられるお金のお勉強会があって、それを受けたことがあります。簡単な計算ならできると思います」
なるほど、さすが冒険者に優しい始まりの街だ。お金の計算とか文字とかの無料の講習会があるらしい。
「それなら大丈夫だ。俺はテツヤ、よろしくね!」
「フィアっていいます! テツヤお兄ちゃん、よろしくお願いします!」
「へえ〜フィアちゃんのお父さんは普通の人族だったんだ」
「はい、お母さんはキツネの獣人で、お父さんがお母さんに猛アタックしたって言ってました!」
「そ、そうなんだ」
フィアちゃんに店を手伝ってもらうことになったので、予定していた冒険者ギルドへ行く必要はなくなり、時間もまだ早いので、昼食を取りに市場に来ている。
話の流れでフィアちゃんの家族の話になったのだが、どうやらフィアちゃんは人族と獣人族のハーフらしい。この世界では別の種族とのハーフの場合は、基本的にはそのどちらかの種族の特徴が色濃く出るらしい。フィアちゃんはお母さんの血をより濃く継いだようだ。
「テツヤお兄ちゃんのお店はどういう物を売っているんですか?」
テツヤお兄ちゃん、なんと素敵な響きだろうか。元の世界でお兄ちゃん呼びされたことなんて一度もなかったな。キツネのケモミミ少女にお兄ちゃん呼びされて嬉しくない男が存在しようか、いや断じてない!
「テツヤお兄ちゃん?」
「ああ、ごめん、ちょっとボーッとしちゃった。うちの店ではキャンプギアといって、駆け出し冒険者が使う道具を売っているんだ。お客さんからも質問があったりするかもしれないから、あとでひとつずつ説明するね」
「はい!」
危ない、危ない。あまりにフィアちゃんが可愛かったから、ついその茶色いもふもふした尻尾を撫でてしまうところだった。完全に事案が発生してしまうな。……しかし、いつかはこの立派な尻尾をもふもふしてみたいものである。
そのあと2人で料理を出している屋台のほうへ行き、パンと串焼きを買って腹ごしらえをした。フィアちゃんは少し遠慮していたようだが、そこまで高い料理でもないし、昼食は給金とは別にご馳走してあげたら、満面の笑みで美味しそうにご飯を食べていた。
「おっと早いな。もうお客さんがいるのか!」
昼食を取って、昨日と同じ屋台の場所まで行くともう4〜5人のお客さんが並んでいた。昨日よりも早い時間に来たはずなんだけど、もっと早くから待ってくれていたみたいだ。
屋台の場所は長期間で借りると同じ場所を借り続けることができる。昨日は様子見で1日だけ場所を借りたのだが、特に問題なさそうだったのでさらに3日間延長してきてある。
「お待たせしました、すぐに準備をしますね!」
「おう、兄ちゃん。昨日のファイヤースターターってやつを手に入れたくて早く来ちまっただけだから気にするな」
「ありがとうございます、今日も先着3名様分はありますから!」
先頭に並んでいた若い男性は昨日来てくれたファイヤースターターをギリギリで買えなかったお客さんだ。ありがたいことに今日も来てくれたらしい。
「俺はリリアさんに聞いてやって来たんだが、テツヤさんてのはあんたかい?」
「ああ、俺もだ。なんでも道に迷わなくなる不思議な道具をたった銀貨2枚で売っているって聞いてな」
「はい、リリアさんの紹介ですね、ありがとうございます! はい、方位磁石のことですね。今日も準備しておりますよ!」
ありがたいことに、リリアの紹介でお店にきてくれたお客さんもいるみたいだ。
「さあ、大変お待たせしました。アウトドアショップ、本日オープン2日目になります!」
「はい……本当はもっとお金を稼げる冒険者をしたいんですけれど、お母さんが許してくれなくて……」
お花1本を銅貨1枚で10本買ったあと、道端にあるベンチに座ってキツネの獣人の女の子と少し話をしている。話を聞いてみると、この女の子の父親は数年前に病で亡くなって、母親が女手ひとつで育ててくれたらしい。しかし、最近になって母親が過労で倒れてしまったようだ。
少しでも母親の力になれればと、冒険者になってお金を稼ごうとしたのだが、冒険者になることは母親が許してくれなかったらしい。この子は見たところまだ10歳前後だ。いくら始まりの街とはいえ、冒険者には危険が伴う。この子のお母さんが許可を出さない理由もわかる。
……というか俺、こういう不幸話や苦労話に弱いんだよなあ。こんな話を聞いて何もしなければ、今後の飯が不味くなってしまう! こういうのは王道のハッピーエンドでいいんだよ、みんな幸せでそれでいいじゃん!
「いつもはお花を1日中売ったらどれくらいになるの?」
「多くても10本くらいですね。だからさっきお兄ちゃんが10本も買ってくれてとっても嬉しかったです!」
キラキラとした眩しい笑顔を見せる獣人の女の子。
「……ねえ、もしよかったらうちのお店で物を売る仕事を手伝ってくれない? 昨日オープンしたばかりのお店なんだけど、人手が足りなくてちょうど今から冒険者ギルドに人を雇いに行くところだったんだ。お昼から夕方までで、給金は銀貨5枚でどうかな?」
「本当ですか!? やらせてください!」
うおっ!? めっちゃ食いついてきた!?
「仕事内容はお店の接客だね。お花を売っていたし、簡単なお金の計算はできるのかな?」
「はい! この街では誰でも受けられるお金のお勉強会があって、それを受けたことがあります。簡単な計算ならできると思います」
なるほど、さすが冒険者に優しい始まりの街だ。お金の計算とか文字とかの無料の講習会があるらしい。
「それなら大丈夫だ。俺はテツヤ、よろしくね!」
「フィアっていいます! テツヤお兄ちゃん、よろしくお願いします!」
「へえ〜フィアちゃんのお父さんは普通の人族だったんだ」
「はい、お母さんはキツネの獣人で、お父さんがお母さんに猛アタックしたって言ってました!」
「そ、そうなんだ」
フィアちゃんに店を手伝ってもらうことになったので、予定していた冒険者ギルドへ行く必要はなくなり、時間もまだ早いので、昼食を取りに市場に来ている。
話の流れでフィアちゃんの家族の話になったのだが、どうやらフィアちゃんは人族と獣人族のハーフらしい。この世界では別の種族とのハーフの場合は、基本的にはそのどちらかの種族の特徴が色濃く出るらしい。フィアちゃんはお母さんの血をより濃く継いだようだ。
「テツヤお兄ちゃんのお店はどういう物を売っているんですか?」
テツヤお兄ちゃん、なんと素敵な響きだろうか。元の世界でお兄ちゃん呼びされたことなんて一度もなかったな。キツネのケモミミ少女にお兄ちゃん呼びされて嬉しくない男が存在しようか、いや断じてない!
「テツヤお兄ちゃん?」
「ああ、ごめん、ちょっとボーッとしちゃった。うちの店ではキャンプギアといって、駆け出し冒険者が使う道具を売っているんだ。お客さんからも質問があったりするかもしれないから、あとでひとつずつ説明するね」
「はい!」
危ない、危ない。あまりにフィアちゃんが可愛かったから、ついその茶色いもふもふした尻尾を撫でてしまうところだった。完全に事案が発生してしまうな。……しかし、いつかはこの立派な尻尾をもふもふしてみたいものである。
そのあと2人で料理を出している屋台のほうへ行き、パンと串焼きを買って腹ごしらえをした。フィアちゃんは少し遠慮していたようだが、そこまで高い料理でもないし、昼食は給金とは別にご馳走してあげたら、満面の笑みで美味しそうにご飯を食べていた。
「おっと早いな。もうお客さんがいるのか!」
昼食を取って、昨日と同じ屋台の場所まで行くともう4〜5人のお客さんが並んでいた。昨日よりも早い時間に来たはずなんだけど、もっと早くから待ってくれていたみたいだ。
屋台の場所は長期間で借りると同じ場所を借り続けることができる。昨日は様子見で1日だけ場所を借りたのだが、特に問題なさそうだったのでさらに3日間延長してきてある。
「お待たせしました、すぐに準備をしますね!」
「おう、兄ちゃん。昨日のファイヤースターターってやつを手に入れたくて早く来ちまっただけだから気にするな」
「ありがとうございます、今日も先着3名様分はありますから!」
先頭に並んでいた若い男性は昨日来てくれたファイヤースターターをギリギリで買えなかったお客さんだ。ありがたいことに今日も来てくれたらしい。
「俺はリリアさんに聞いてやって来たんだが、テツヤさんてのはあんたかい?」
「ああ、俺もだ。なんでも道に迷わなくなる不思議な道具をたった銀貨2枚で売っているって聞いてな」
「はい、リリアさんの紹介ですね、ありがとうございます! はい、方位磁石のことですね。今日も準備しておりますよ!」
ありがたいことに、リリアの紹介でお店にきてくれたお客さんもいるみたいだ。
「さあ、大変お待たせしました。アウトドアショップ、本日オープン2日目になります!」