時は少し遡り――私はこの転移を最後と思い、メーメルとタータム草原の別の場所に降り立った。


 今度こそは……。


 そう思いながらブローチの反応を確認する。

 するとブローチが微かに光った。

「メーメル、ブローチが……」

「そうなると、この辺に居るのじゃ」

 私は、コクリと頷く。

「どこに居るのかな?」

 ブローチを持ちながらゆっくりと右に向きを変えていった。すると大体、百八十度ぐらいの辺りで少し反応が強くなる。

「こっちみたい」

 そう言いながら私は歩き出す。メーメルは無言のまま私のあとをついてきた。

 少し先に進んだ辺りで四人の姿がみえた。

 二人は地面に伏せている。あとの二人は、その中央に立っていた。

「立っている一人は、ムドルじゃ」

「じゃあ、もう一人は?」

「うむ、誰かの匂いに似ておる。しかし、これは……。かなり強者の威圧感。ここまで伝わってくる。いったい何者じゃ」

 そうこう言いながら私とメーメルは、恐る恐る近づいていく。

「でも、ブローチの反応……強くなってるよ」

「髪色は違うが、装備など……グレイの物と似ておる」

「……まさか、でも……」

 私はグレイに似た男の人に視線を向ける。


 ブローチの反応また強くなった。でも、目の前にいるのは……。


 そう思いながら四人の姿が大体、確認できるぐらいの位置まで来て立ちどまった。

 するとグレイに似た男の人が何か詠唱している。それを私は、ジーっとみていた。

 メーメルが私の右隣りにくる。そして、難しい顔をしながらグレイに似ている人の方をみていた。

 どうしたんだろうと思った。だけどグレイに似た男の人の方が気になり、そっちに視線を戻す。

 グレイに似た男の人が詠唱し終えると魔法陣が現れる。その後、姿を変えた。

「えっ!?」

 それをみた私は、視線の先で何が起きたのかと自分の目を疑う。

 そう視線の先には、グレイが立っているのだ。

「なるほどのう」

 そう言いながらメーメルは納得している。

 私は何が起きているか理解できずにグレイの方へ駆け出した。そのあとをメーメルが追ってくる。



 そして現在――私は、グレイとムドルさんのそばまで来て問いかけた。

 グレイのこと、今の状況などを聞く。

「ルイ……どこからどこまで、みていた?」

「詠唱している辺りからだけど……どういう事なの?」

 そう問うとグレイは険しい表情になる。

「そうか……隠せないな。このことは後で話す。これを、どうにかしないとならないからな」

 グレイは(うずくま)って苦しんでる二人を順にみた。

「デビルミスト、じゃな」

「メーメル様。ええ、そうです」

「ムドルさん、デビルミストって何?」

 そう私が聞くとグレイとムドルさんとメーメルは、そのことを簡単に説明し始めた。