聖女召喚に巻き込まれて異世界に召喚されたけど、ギルドの受付嬢の仕事をみつけたので頑張りたいと思います!!

 ここはバールドア城の広場。状況は最悪――そんな中でも泪たち、いやグレイフェズとベルべスクは迫りくるデビルミストの群れに向かっていく。

 しかし泪は、この状況で何もできないのかと思い悩み頭を抱え蹲ってしまった。


 ▼△★▽▲☆▼△


 私は、なんて無力なんだろうって思った。そう、能力があっても……役に立たない。厄災をどうにかすることもできないなんて……。
 それに、私がこの世界に居る意味って何? だけど、なんとかしたい。やれるだけのことを……。でも……どうやって? それが分からないから……。


 考えれば考えるほど、余計に何も浮かばず……ただ涙が溢れ出るだけだ。


 グレイ大丈夫かな?


 そう思い私はグレイの方をみる。


 つらそう……。グレイもだけど、ベルべスクさんも……。ここで考えてても、何も解決しない。今、私にできることって何かな?


 そう考えながらグレイを目で追う。そして、ひたすら何ができるのか考えていた。



 ――場所は、ベルべスクの居る方へ移る――


 ベルべスクは異界の怪物と魔獣を警戒しながら、デビルミストとの間合いを取った。

 (ここは杖を使った方が、いいか)

 そう思い魔族語で唱えると異空間が開く。そこから、いかにもアンティークな杖を取り出した。

 「さて、オレが持ってる最高のこの杖で……どこまで戦えるか分からねぇ。だが、やらなきゃな」

 そう言い杖を持ち直し身構えると、デビルミストの群れを見据える。その後、魔族語で唱え始めた。

 《聖なる精霊(レヒワツレヒネヒ) 光の(シマ二ん)雷獣(タヒビュフ) 異空間を(ヒムフマノン)繋ぐ扉(ルワヅロジタ) 我、(ナネ)命ず(テヒブ) いでよ(ヒゲソ) 聖なる(レヒワツ)雷獣(タヒビュフ)セイントライル!!(レヒノロタフツ)

 そう言い放ちベルべスクは、杖を頭上に掲げる。すると、杖の先端の魔石が光った。それと同時に、魔石から光の柱が空高く放たれる。

 光が放たれた周囲の空が眩く光った。その後、魔法陣が展開される。そしてその魔法陣から、光のエレメント系のライオンのような聖獣が現れた。

 これが聖なる雷獣セイントライルだ。名前の割には、猛獣のような姿をしている。

 セイントライルは、スッとベルべスクの前へと降り立った。


 そして……。――ガオォォオオオーン!!――


 そう雄叫びを上げる。


 ――いや、これライオンそのものでしょ。ただエレメント状態なだけで……。まぁ、それはさておき……――


 それを確認するとベルべスクは、杖をセイントライルに向けた。

 「目の前の(ネンカへン)デビルミストの(ゲジツチユロン)群れを滅せよ!!(クネヌテッレソ)

 そう魔族語で命令すると、セイントライルは……。


 ――ガオォォオオオーン!!――


 と、雄叫びを上げデビルミストの群れに突っ込んでいく。

 セイントライルは雷をまといながら一体一体、仕留めていった。

 「意外と……いけるのか?」

 そう思ったのは、束の間。

 セイントライルは数百ものデビルミストを駆除したあと、そのまま消滅してしまった。……っと言っても、消えて元の精霊界に戻って行っただけである。

 「クソッオォォォ、やっぱり……オレの力じゃ、こんなもんか」

 悔しがりながらベルべスクは、まだ居るデビルミストの群れに視線を向け睨んでいた。
 ここはバールドア城の広場。ベルべスクは、向かいくるデビルミストの群れを睨み見据える。

 (さっきのような魔法は、何度も使えねぇ。大量に魔力を消費するからな。そうなると……どうする?
 デビルミストだけじゃねぇ……異界の怪物や魔獣も居る。それを、どう倒せばいい……)

 そうこう考えていたが、埒が明かないと思い直した。

 「とりあえず、魔力を最低限に抑えて数を多く放つ。……それしかねぇ」

 ベルべスクはそう言い杖を持ち身構える。そして魔族語で詠唱しようとした。とその時、異界の怪物の鉄の棍棒がベルべスクの背中に直撃する。

 「グハッ……」

 そのままベルべスクは前に倒れ込む。

 「……やべぇ、油断した。……立たねぇと、やられる!」

 背中を押さえながら立ち上がろうとする。

 異界の怪物は近くまで来ていた。

 「クソッ、間に合わねぇ!?」

 そう思ったその時……目の前にグレイフェズが、息を切らし異界の怪物の前に立ちはだかる。そして大剣を構え直すと、異界の怪物を斬った。すると異界の怪物は、バタンと倒れ消滅する。

 ベルべスクはそれをみて、ホッと胸を撫で下ろした。

 「おい!? 何、ボーっと考え込んでる。死にたいなら、別だけどな」

 「……そうだな。悪い、そういえば……以前に似たようなことをムドルにも言われた。ホントに、お前たち似てるな」

 「そうか……まぁいい。それよりも、動けるか?」

 そう問われベルべスクは頷く。

 「ああ、なんとかな。オレは、昔から撃たれ強いから大丈夫だ。散々、ムドルに鍛えられた」

 そう言いよろけながら立ち上がる。

 「それならいいが、無理するなよ」

 「グレイフェズ、お前もな。かなり無理してるんじゃねぇのか?」

 「そうかもな。だが、限界なんて言ってられねえだろう。この状況を、どうにかしなきゃならない」

 グレイフェズはそう言うと、遥か向こうに居るデビルミストの群れを見据えた。

 「そうだな。これ以上、お前に負担かけられねぇみたいだ」

 「そうしてくれると助かる。俺も、なんとかしないとな」

 そう言いお互い見合い頷く。その後グレイフェズは、自分の持ち場に戻っていった。

 「ああは、言ったが。流石に、さっきの一撃は効いてる。だが、なんとかしなきゃな」

 苦痛の表情を浮かべ、デビルミストの方に視線を向ける。

 その後ベルべスクは何度も召喚魔法を使い、デビルミストの群れと異界の怪物や魔獣を倒していった。

 片やグレイフェズも、デビルミストの群れを技を使い大剣で斬っていく。

 だが……それでも減ることはない。そして段々、二人の体力と魔力が尽きて来ていた。
 ここはバールドア城の広場。あれからグレイフェズとベルべスクは、ひたすらデビルミストと異界の怪物や魔獣と戦っていた。

 だけど二人だけの力では、無理がある。それだけではない……ベルべスクは、さっき異界の怪物から攻撃を受けた背中の痛みを堪えながらなので余計だ。

 片やグレイフェズも、体力の限界に近い状態である。

 「クソッ、まだくるのかよ!?」

 そう思いながら目の前のデビルミストの群れを見据えた。それと同時に大剣を構え直しグレイフェズは、技名を叫びデビルミストの群れに向かおうとする。

 だが、疲れすぎていたせいか足がもつれ転ぶ。

 「って、まずい!!」

 グレイフェズは急ぎ起き上がる。しかしデビルミストの群れは、グレイフェズの目の前を通過し紫色の怪物の方へと向かっていく。

 「クッ、行かせるかよぉぉおおお――」

 それをみたグレイフェズはそう叫び、大剣を持ち直すとデビルミストの群れに向かい駆け出した。


 一方ベルべスクは、魔法を使いデビルミストの群れと異界の怪物や魔獣を倒している。

 「魔力だけじゃねぇ……痛みを庇いながらのせいか、余計な体力を使ってる。だが、なんとかしねぇとな」

 そう言いながら異界の魔獣に目掛け魔法で攻撃し倒した。とその直後、別の方向からデビルミストの群れが現れる。

 「グレイフェズの方とは別に、二方向からだと……対処しきれねぇ」

 そう言うもベルべスクは、前方にみえるデビルミストの群れに目掛け召喚魔法を使い攻撃し消滅させた。

 だがしかし、別方向からくるデビルミストの群れにまで手が回らない。

 「コリャまずいな。だが、なんとかしねぇと……」

 そう言い魔法を唱えようとする。


 ――だが二人共に、間に合わなかった。


 デビルミストの群れは、異界の怪物に憑依していく……。

 それをみたグレイフェズは、大剣を地面に突き刺す。そして大剣を握ったまま、ガクッと肩を落とし地面に膝をついた。

 「ま、間に合わなかった……最悪だ……」

 そう言いながら大剣の柄部分を、ジーっとみつめる。

 デビルミストの群れが紫の怪物に憑依してく姿をみて、ベルべスクは頭を抱えながら身を震わせていた。

 「やっぱり、無理なのか……。クッ……」

 悔しさと怯えとが混ざりベルべスクは、どうしていいか分からなくなる。



 ――そんな最中。城内からみていた者たちは、何も分からないながらも状況が最悪だと思った。そのため外に待機している者を、全て城の中へと避難させる――



 ――場所は移り、東側にある小屋の屋根――


 あれからメーメルの魔法でムドルは、小屋の屋根の上へと転移して来ていた。

 そして広場の状況をみていたが……。

 「やはり……無理だったのか。私の体力が、もっと保てば……」

 そう言い悔しい表情をする。

 「ムドルがあの場所に居たとて、同じ結果だったはずじゃ」

 「そうだとしても……悔しい。また、悲劇は繰り返されるのか。それに、この姿になっても防げなかった」

 それを聞きメーメルは、つらくなり涙ぐむ。

 「そうじゃな。ムドルに何も言ってあげられぬ。妾も同じなのじゃ……何もできない自分が、はがゆい」

 そう言いメーメルは、ムドルをみつめた。

 そして二人は、再び広場へと視線を向ける。

 「メーメル様、みているだけはつら過ぎます。やれるだけのことをしたいのですが」

 「うむ、そうじゃな。妾も、同じじゃ」

 そう言いお互い見合い頷いた。

 「うむ、でも……今のままでは無理なのじゃ。もう少し回復するかのう」

 メーメルはそう言うと、魔族語で魔法を唱えムドルを回復させる。

 「メーメル様、ありがとうございます。これならば、少しは戦えるかと」

 「そうじゃな。妾は、グレイとベルべスクの回復をしてくるのじゃ」

 「分かりました。では……」

 そう言いムドルは屋根から飛び降り広場の中央へと向かった。

 それを確認するとメーメルは、気になり泪の方をみる。

 「相当、落ち込んでいるようじゃな。まずは、ルイの方に向かうかのう」

 そう言うとメーメルは、魔法を使い泪の方へ転移していった。



 ――場所は変わり、泪が居る方の広場――


 どうしよう……結局、駄目だった。このままじゃみんな……グスン、私は何をすればいいの?


 そう思うと、余計に涙が溢れ出た。

 そうこうしている間にも、デビルミストの群れが紫の怪物に憑依していき姿を変えていく。

 それを私は、ただみていることしかできなかった。
 現在の状況は最悪だ。デビルミストの群れが、紫の怪物に憑依していく。そのため紫の怪物の体は、どんどん変化する。


 ――グオォォオオオーー……――


 そう雄叫びが辺りに轟く……。紫の怪物の体が、徐々に大きくなる。

 それをみていられずにグレイフェズは、よろけながらも大剣を杖の代わりに使い立ち上がった。

 (このままじゃ……。なんとか……ハァハァハァ……しねぇと……)

 そして、地面から大剣を引き抜くと紫の怪物を見据える。と同時に、大剣を構え紫の怪物へと突進した。

 「ウオォォオオオーー……」

 そう叫び紫の怪物の体に目掛け大剣を右斜めに振り上げ斬る。……だがビクともせず、弾き飛ばされた。

 グレイフェズは、そのまま地面に叩きつけられる。

 「ハアァァアアアーー……」

 するとグレイフェズの後ろから、そう叫ぶ声がしてきた。それと同時に、黒い影が跳び上がる。

 そしてその黒い影は現在、約六百センチメートルもある紫の怪物の頭の位置にまで到達する。

 すると間髪入れずに、蹴り、回し蹴り、膝蹴り、パンチ、あらゆる攻撃を連続で繰り出した。

 そう……その黒い影はムドルだ。

 「ムドル……動けるようになったのか……ハァハァハァ……」

 そう言いグレイフェズはムドルの方へと視線を向けた。

 やはり紫の怪物には、ムドルの攻撃が効かない。

 ムドルは一旦、攻撃をやめ地面に着地する。

 そしてグレイフェズのそばまできた。

 「グレイ、大丈夫ですか?」

 「ハァハァ……なんとかな。それより、もう大丈夫なのか?」

 そう聞かれムドルは頷く。

 「完全には、回復していませんが……なんとか大丈夫かと」

 「そうか……無理するなよ」

 「その言葉……そっくりそのまま、お返しします。無理をしているのは、グレイの方だと思いますが」

 そう言いムドルは、グレイフェズをジト目でみる。

 「そうだな。だが、お互い様だろう」

 グレイフェズはそう言いながら立とうとした。

 「そうですね。ですが、今はじっとしていてください。メーメル様が、回復してくれるはずなので」

 それを聞きグレイフェズは、地面に座り込んだ。

 「回復……それは、助かる。だが、待ってる間にも怪物は……」

 「どうでしょう。今、攻撃してみましたが無理でした。そうなると、万全の状態でも勝ち目があるかどうか。それなのに、回復していない状態では余計に無理だと思われます」

 そう言いムドルは難しい表情になる。

 「確かにな。それで、何か方法はみつかったのか?」

 「いいえ、何もありません。ただ、みているだけでは……つらかったので」

 「そういう事か。それで、メーメルは今どこに居る?」

 そう問われムドルは、キョロキョロしたあと泪の方を向き指差した。

 「ルイさんの方にいるみたいですね。メーメル様が、何か怒っているみたいです」

 そう言われグレイフェズは、泪の方を向き目を凝らしみる。

 「よくみえないが、ルイはどんな状態なんだ?」

 「泣いているみたいですね。様子からして、メーメル様に怒られて泣いている訳じゃなさそうです」

 「……なるほど。もしそうだとしたら、ルイはこの状況下でどうしていいか分からなくて泣いてるのかもな。それに……アイツも一応、女だ」

 そう言いグレイフェズは、悲しい表情で俯いた。

 「女性……そうですね。これ以上ルイさんに、つらい思いはさせたくありません」

 「ああ、勿論だ。それには、なんとかあの怪物を倒さないとな」

 グレイフェズはそう言いながら、紫の怪物の方を向く。

 するとムドルも紫の怪物の方に視線を向ける。

 「ええ、ありったけの力を使って……」

 そうムドルが言うとグレイフェズは頷いた。

 その後ムドルは、ベルべスクの方へ向かう。

 それをみたベルべスクは、驚き逃げようとする。だが即、捕まる。

 それからベルべスクは、ムドルに訳を聞き納得した。

 その後ベルべスクは、ムドルとグレイフェズのそばまでくる。

 そして三人は、メーメルがくるのを話しながら待つ。


 ――その間にも、紫の怪物は姿を変えながら巨大化していくのだった。
 私は現在、メーメルに怒られている。当然だ……ただここで何もせず、私は泣きながらみている。怒られても仕方がない。

 「泣きたい気持ちは分かるのじゃ。しかし何もできないでは済まされぬ」

 「そうだけど……どうすればいいの? 私の力じゃ、倒せない。できるのであれば私だって……」

 「うむ……そうじゃなぁ。ルイ、気持ちの整理がついたらで良い。あとからくるのじゃ……良いな!?」

 それを聞き私は頷いた。

 それをみたメーメルは、私に背を向けグレイ達の方に向かい駆け出す。

 そんなメーメルをみて私は、凄いと思った。魔族とはいえ、同じ女なのに全然違う。それに私なんかよりも遥かに強い。私もみんなと戦えるぐらいの力があれば、と思った。

 分かってる。ただ、私にはそこまでの勇気がないだけだ。

 それが……私にはできない。グレイ達は、それができている。

 頭で考えているだけでは何も解決できない。そう思っても行動に移すことが……一歩、踏み出すことができないのだ。

 私はグレイ達の方をみながら、ひたすら自問自答していた。



 ――場所は、グレイフェズ達が居る方へと移る――


 相変わらず紫の怪物は、デビルミストを体内に吸収し姿を変え続けていた。

 そんな中グレイフェズとムドルとベルべスクは、その光景を悔しい気持ちでみている。

 そこに猛ダッシュでメーメルが、グレイフェズ達の方に向かってきた。

 「何、ボケっとみておるのじゃあぁぁあああ――」

 それを聞き三人は一瞬、ビクッとして後ろに仰け反る。

 「メーメル……べ、別にボケっとしていた訳じゃない!!」

 「グレイ、本当かのう? ……まぁ良い。それよりも、回復が先じゃな」

 そう言いメーメルは魔族語で魔法を唱え、グレイフェズとベルべスクの回復を順にした。その後メーメルは、バッグの中から魔力回復ドリンクを取り出しベルべスクに渡す。

 「メーメル様、申し訳ありません。有難く頂きます」

 ベルべスクはそう言うと、メーメルに頭を下げる。そして、魔力回復ドリンクを飲んだ。

 「すまない、メーメル……助かった。それはそうとルイの状態は、どうなんだ?」

 「うむ……相当、落ち込んでおったのじゃ。自分にできることが何か、みえておらぬ。それを、自分で気づき……みつけるしかないのじゃ」

 「そうか……俺が傍に居てやれれば……。いや、そうだな。メーメルの言うように、自分で気づかないと意味がない」

 そう言うとメーメルは頷いた。

 「そうですね。私も同感です。それに……これ以上、ルイさんを危険な目に遭わせたくありません」

 ムドルはそう言い、キッと紫の怪物を睨む。

 「ああ、そうだな。俺も同じ気持ちだ」

 そう言うとグレイフェズも、紫の怪物を睨みつけた。

 「悪いがオレは、雑魚の方を片づける」

 「ベルべスク、それでいい。ただ、そっちが済んだら……こっちも頼む」

 グレイフェズにそう言われベルべスクは、口角を上げ頷く。

 「妾もベルべスクと一緒に、雑魚の怪物と魔獣を倒すのじゃ」

 「メーメル様、無理だけはなされませぬように……」

 「大丈夫じゃ。それよりも、ムドルもグレイも無理はするでない……良いな!!」

 それを聞きグレイフェズとムドルは頷き立ち上がった。その後、二人は紫の怪物の方を向く。

 そしてグレイフェズ達は、各自の持ち場に向かったのだった。
 グレイ達は戦っている。その光景を私は、ただみているだけしか……つらい。


 そう思い泣きながら私は、グレイ達が戦っている姿をみていた。

 「……どうしたらいいの?」

 私は悩む、更に涙が出てくる。


 別に悲劇のヒロインを演じたい訳じゃない。できることなら私も戦いたいと思っている。だけどそれができない……体も動かない。


 考えれば考えるほど私は、更に分からなくなってしまった。



 ――場所はグレイフェズ達、四人が居る方に移る――


 あれからグレイフェズとムドルは、紫の怪物に挑む。しかし、何度も攻撃していくが無理だった。

 そうこうしているうちに紫の怪物は、全てのデビルミストを吸収し姿が完全体になってしまう。

 「クソッ、結局……無理だったのか」

 そう言いグレイフェズは、完全体となり約三十メートルもある紫の怪物を見上げる。

 「……悔しい。ですが、まだ諦める選択肢はありません」

 そう言い放ちムドルは、紫の怪物を睨みつけた。

 「ああ、当然だ。さて、やるか。恐らく無攻撃ってことは、もうないだろうからな」

 「そうですね。今度こそ……覚悟を決めませんと」

 ムドルはそう言い泪の方をみる。そして、悲しい表情になった。

 「つらい……なんて言ってられねえしな」

 そう言いグレイフェズは、チラッと泪の方をみる。だが、すぐにムドルの方を向いた。その表情は、かなりつらそうだ。

 そこにメーメルとベルべスクが、グレイフェズとムドルの方に向かってきた。

 「やっぱり、駄目か……」

 「ベルべスク、ええ……。ですが、まだ諦めませんよ」

 「そうじゃな。このままにはしておけぬのじゃ」

 そうメーメルが言うと三人は頷く。

 「それはそうと、そっちは大丈夫なのか?」

 「うむ、なぜか突然消えたのじゃ」

 「消えた? どういう事だ」

 グレイフェズは不思議に思い首を傾げる。

 「丁度あの怪物が今の姿になったあたりから、他の厄災は全て消えた」

 そう言いながらベルべスクは、紫の怪物をみた。

 「なるほどですね。そうなると、他の異界の怪物や魔獣は……」

 「ムドル、恐らくそうだろうな。完全体になるのを、邪魔されないための存在」

 「じゃあデビルミストは、元々紫の怪物の姿を強化するための……ってことか?」

 そう問うとグレイフェズとムドルは頷く。

 「そういう事だ。まぁ、それだけじゃないだろうがな」

 「ええ、そうですね」

 グレイフェズとムドルは険しい表情でお互い見合う。その後、すぐ視線を逸らした。

 「多分、これが最後になる。とにかくやれるだけのことをしねえとな」

 そうグレイフェズが言うと三人は頷く。

 そしてその後四人は、紫の怪物に挑む。それを泪は、泣きながら眺めていたのだった。
 ここはバールドア城の広場。約三メートルだった紫の怪物は、巨大化し約三十メートルにもなった。

 そんな紫の怪物を見上げながら、グレイフェズは大剣を構える。

 (でかい……。だが……なんとかしないとな)

 そう思い額からポタリと汗が流れ落ちた。

 (この怪物を……どう倒すか、ですね。方法さえ分かればいいのですが……)

 ムドルは紫の怪物を見据え思考を巡らせる。

 (無理かもしれぬ。しかし、やるしかないのじゃ)

 そう考えながらメーメルは紫の怪物をみた。

 (こんなことなら、逃げりゃ良かったのか……。いや、その選択肢はねぇよな。仕方ねぇ、腹を括るかぁ)

 そう覚悟を決めるとベルべスクは、杖を構え直し紫の怪物を睨んだ。

 すると紫の怪物が動き出した。


 ――グオオォォォオオオオーー……!!――


 そう雄叫びを周囲に轟かせる。

 「クッ、動き出したな」

 「グレイ、そうですね」

 「うむ、そうじゃな」

 そう言いメーメルは、紫の怪物から離れ距離をおいた。

 「オレも距離をとるか」

 ベルべスクも、紫の怪物から離れる。

 それを確認したかのようにグレイフェズは、大剣を構え直した。と同時に、紫の怪物へと猛突進する。

 そのあとを追うようにムドルは、紫の怪物の方へ向かい駆け出した。



 ――場所は変わり、広場が見渡せる城の二階――


 この状況をカイルディとクレファスとレグノスは、難しい表情で見守っている。

 「これは、大変なことになりました。見る限り……状況は、最悪のようです」

 「カイルディ様、このままでは……何れ城の方にも」

 そうクレファスが言うとカイルディは、コクリと頷いた。

 「そうなるでしょう。ですが……ルイ様以外、グレイ達は諦めていないようです」

 「ええ、そのようです。それよりも、ルイ様の様子が気になるのですが」

 「レグノス、俺も気になった。泣いているようにみえる。あのままでは……」

 そう思いながらクレファスは、目を凝らし泪をみる。

 「そうですね。ですが、ルイ様に手を貸す訳には……。いえ、もしかしたら……。この状況をどうにかできるのは、ルイ様なのかもしれません」

 「カイルディ様、それはどういう事なのですか?」

 レグノスは不思議に思いそう問いかけた。

 「根拠はありません。ですが、ルイ様は異世界の者。なぜか巻き込まれて、キヨミ様とこの世界に召喚された」

 そう言いながらカイルディは、泪の方に視線を向ける。

 「それとこれと、どう関係があるのですか?」

 「クレファス、関係があるかは分かりません。召喚をしたのは私ですが。もし神がルイ様を、この世界に招いたとしたら?」

 そうカイルディに問われ二人は思考を巡らせた。

 「……そうだとしたらルイ様には、この場を解決するための能力があるかもしれない」

 そうレグノスが言うとカイルディは軽く頷く。

 「ですが……今のルイ様の状態では、それに気づけるか」

 クレファスはそう言いカイルディに視線を向ける。

 「そうですね。ですが……この状況を、神が黙ってみているとも思えません」

 「……という事は、あとは神頼みという訳ですか」

 そう言いレグノスは、目を凝らし空を見上げた。

 その後もカイルディとクレファスとレグノスは、話しながら広場の監視をする。



 そして広場の状況は、更に酷い状態になっていくのだった。
 紫の怪物は動き出した。城をも遥かに越える巨体が、ゆっくりと周囲を踏み均し歩く。そして時折、大きな雄叫びを辺りに響かせる。

 そんな中グレイフェズ達は、各々やれることをしていた。

 グレイフェズは、紫の怪物に向かいながら大剣を構え直す。

 《ホーリーヘルファイヤー・ディストラクション!!》

 そう叫ぶと構えていた大剣の柄に魔法陣が浮かんでくる。すると光が放たれ大剣を包み込んだ。

 それと同時に、思いっきり大剣を右横に振り構え直し反動をつける。そのまま飛び跳ねると、紫の怪物の左脚に目掛け勢いよく大剣を左へ振り斬った。

 すると紫の怪物の斬りつけられた左脚が発光し爆発する。だが……傷一つ、ついていない。

 (クソッ……駄目か……)

 そう悔しがりながら一旦、紫の怪物との距離をおいた。


 片やムドルは紫の怪物の体を使いジャンプしていき右肩の上までくる。

 それに気づいた紫の怪物は、ムドルを横目でみた。

 「ナゼ……コウゲキ……スル……」

 ムドルが聞こえる程度の声を発して、紫の怪物はそう問いかける。

 「会話が可能なようですね。ですが……どういう意味でしょうか? 言っていることが、分からない。私たちはただこの国……いえ、この場所を守ろうとしているだけ」

 「ナラバ……ナゼ……ワレヲ……ツクッタ? ソシテ……ソトニ……トキハナッタ……ノダ……」

 「お前を創ったのは、私じゃない!!」

 そうムドルは言い放ち紫の怪物を睨む。

 「イナ……ソレハ……ドウイウ……コトダ」

 そう言い紫の怪物は不思議に思った。そして自分を攻撃しているグレイフェズの方に視線を向ける。

 「モウヒトリ……ユウシャ……ノ……ニオイ……スル。ドウナッテ……イル?」

 「それは私と下に居るグレイフェズが、勇者と聖女の血筋だからでしょう」

 「ソウイウ……コトカ。ダガ……ナゼ……ジャマヲ……スル?」

 そう問われムドルは、紫の怪物を凝視した。

 「決まっています。この国……いえ、この世界を守りたい。それだけですよ」

 「イミガ……リカイ……デキナイ。ワレハ……ユウシャ二……ツクラレタ……コノ……セカイヲ……メッスル……ソンザイ」

 「……そのようですね。ですが、既にその勇者はこの世に居ない。それも事実です」

 それを聞き紫の怪物は困惑する。

 「ユウシャガ……イナイ。ダガ……オマエタチハ……ソンザイ……シテイル。ソシテ……ワレハ……トキ……ハナタレ……タ……」

 「お前を解き放ったのは、私たちじゃありません」

 「……リカイ……デキナイ。モシ……ソウダト……シテモ……ワレハ……シメイヲ……ハタス」

 そう言い紫の怪物は、ムドルを自分の肩から落とそうと左手で払い除けようとした。

 それに気づきムドルは、咄嗟に避け紫の怪物の肩から飛び降りる。

 地面に着地するとムドルは、紫の怪物を見上げ考え込んだ。

 (これは……厄介ですね。それにこのことを、グレイに教えた方がいいかもしれません)

 そう思いムドルは、グレイフェズの方へと駆け出した。
 グレイフェズは紫の怪物との間合いをとった。

 (やっぱり無理か……だが、そんなこと言ってられねえ。とにかくこれ以上、先に行かせないようにしないとな。それにしても、他に方法がないのか)

 そうこう考えているとムドルがグレイフェズのそばまでくる。

 「ムドル、どうした。何かあったのか?」

 「あったというか……今、あの怪物と話をしてきました」

 「話をって!? 会話ができるのか……それで、なんて言ってたんだ?」

 そう聞かれムドルは紫の怪物が言っていたことを話した。

 「……そうか。俺たちは、勇者を恨むしかなさそうだ。だが、そこまで勇者は追い込まれていたってことだよな」

 「そうなりますね。そういう文献は、村に残っていなかったのですか?」

 「いや、残ってなかった。憶測だが、恐らく知られたくなかったんじゃないのか」

 そう言いながらグレイフェズは、紫の怪物を見据える。

 「確かに、私でも……そうするかもしれません」

 「そういう事だ。ってことは、俺たちの手で……どうにかしないとな」

 「できるかは、分かりませんが……やりますか」

 そう言うとムドルとグレイフェズは、お互い見合い頷いた。

 その後グレイフェズとムドルは、紫の怪物へと攻撃を仕掛けていく。


 一方メーメルは、どう攻撃するか悩んでいる。

 (妾の力で、どこまで戦えるのじゃ。うむ、そうじゃない……どう戦うかじゃな)

 そう思い紫の怪物をみつめると、弓を持つように構えた。

 《闇の弓(サチンスチ) 魔でできし物(カゲゲミリコン) 我の手へ(ナネンエセ)現れ出でよ!!(ハタナネヒゲソ)

 そう魔族語で唱えると手元に魔法陣が展開される。それと同時に、多彩な宝石が至る所に散りばめられた漆黒の弓が手元に現れた。それを構え直し、更に魔族語で詠唱する。

 《闇なる(サチワツ)漆黒の矢(リッモンサ) 魔でできし物(カゲゲミリコン) 我が手へ(ナネンエセ)現れ出でよ!!(ハタナネヒゲソ)

 そう言い放つと手元に魔法陣が展開され漆黒の矢が現れた。

 それを確認すると……。

 《闇なる魔法(サチワツカオフ) 漆黒の風(リッモンマべ) 我、(ナネ)命ず(テヒブ) 弓に纏い(スチキカロヒ) 敵を射抜け!!(エミヌヒヲメ)

 再び、そう魔族語で唱える。すると、漆黒の風が現れ矢を覆った。

 それと同時に……。

 《ダークハリケーン(ガームアニメーノ)アタック!!(ハラッム)

 そう魔族語で魔法を唱えると、漆黒の風をまとった矢を放つ。その漆黒の矢は、無数に増えながら紫の怪物の胸へと向かう。

 紫の怪物の胸のあたりに、漆黒の矢が当たっていく。と同時に漆黒の風が無数に現れる。

 それらは紫の怪物を覆い、一つに纏まっていき大きな渦を巻いた。

 だが紫の怪物は大きく体を振るい、その風の大渦を軽々と払い除ける。

 「……やはり無理なのじゃ。さて、次は何で攻撃するかのう」

 そう言うと紫の怪物を見上げ考え込んだ。