現在の状況は最悪だ。デビルミストの群れが、紫の怪物に憑依していく。そのため紫の怪物の体は、どんどん変化する。


 ――グオォォオオオーー……――


 そう雄叫びが辺りに轟く……。紫の怪物の体が、徐々に大きくなる。

 それをみていられずにグレイフェズは、よろけながらも大剣を杖の代わりに使い立ち上がった。

 (このままじゃ……。なんとか……ハァハァハァ……しねぇと……)

 そして、地面から大剣を引き抜くと紫の怪物を見据える。と同時に、大剣を構え紫の怪物へと突進した。

 「ウオォォオオオーー……」

 そう叫び紫の怪物の体に目掛け大剣を右斜めに振り上げ斬る。……だがビクともせず、弾き飛ばされた。

 グレイフェズは、そのまま地面に叩きつけられる。

 「ハアァァアアアーー……」

 するとグレイフェズの後ろから、そう叫ぶ声がしてきた。それと同時に、黒い影が跳び上がる。

 そしてその黒い影は現在、約六百センチメートルもある紫の怪物の頭の位置にまで到達する。

 すると間髪入れずに、蹴り、回し蹴り、膝蹴り、パンチ、あらゆる攻撃を連続で繰り出した。

 そう……その黒い影はムドルだ。

 「ムドル……動けるようになったのか……ハァハァハァ……」

 そう言いグレイフェズはムドルの方へと視線を向けた。

 やはり紫の怪物には、ムドルの攻撃が効かない。

 ムドルは一旦、攻撃をやめ地面に着地する。

 そしてグレイフェズのそばまできた。

 「グレイ、大丈夫ですか?」

 「ハァハァ……なんとかな。それより、もう大丈夫なのか?」

 そう聞かれムドルは頷く。

 「完全には、回復していませんが……なんとか大丈夫かと」

 「そうか……無理するなよ」

 「その言葉……そっくりそのまま、お返しします。無理をしているのは、グレイの方だと思いますが」

 そう言いムドルは、グレイフェズをジト目でみる。

 「そうだな。だが、お互い様だろう」

 グレイフェズはそう言いながら立とうとした。

 「そうですね。ですが、今はじっとしていてください。メーメル様が、回復してくれるはずなので」

 それを聞きグレイフェズは、地面に座り込んだ。

 「回復……それは、助かる。だが、待ってる間にも怪物は……」

 「どうでしょう。今、攻撃してみましたが無理でした。そうなると、万全の状態でも勝ち目があるかどうか。それなのに、回復していない状態では余計に無理だと思われます」

 そう言いムドルは難しい表情になる。

 「確かにな。それで、何か方法はみつかったのか?」

 「いいえ、何もありません。ただ、みているだけでは……つらかったので」

 「そういう事か。それで、メーメルは今どこに居る?」

 そう問われムドルは、キョロキョロしたあと泪の方を向き指差した。

 「ルイさんの方にいるみたいですね。メーメル様が、何か怒っているみたいです」

 そう言われグレイフェズは、泪の方を向き目を凝らしみる。

 「よくみえないが、ルイはどんな状態なんだ?」

 「泣いているみたいですね。様子からして、メーメル様に怒られて泣いている訳じゃなさそうです」

 「……なるほど。もしそうだとしたら、ルイはこの状況下でどうしていいか分からなくて泣いてるのかもな。それに……アイツも一応、女だ」

 そう言いグレイフェズは、悲しい表情で俯いた。

 「女性……そうですね。これ以上ルイさんに、つらい思いはさせたくありません」

 「ああ、勿論だ。それには、なんとかあの怪物を倒さないとな」

 グレイフェズはそう言いながら、紫の怪物の方を向く。

 するとムドルも紫の怪物の方に視線を向ける。

 「ええ、ありったけの力を使って……」

 そうムドルが言うとグレイフェズは頷いた。

 その後ムドルは、ベルべスクの方へ向かう。

 それをみたベルべスクは、驚き逃げようとする。だが即、捕まる。

 それからベルべスクは、ムドルに訳を聞き納得した。

 その後ベルべスクは、ムドルとグレイフェズのそばまでくる。

 そして三人は、メーメルがくるのを話しながら待つ。


 ――その間にも、紫の怪物は姿を変えながら巨大化していくのだった。