ここはタルキニアの町にある市場街。そこの空き家の中で私は、グレイとムドルさんとメーメルとコルザと話をしていた。

「うむ、それは面白いかもしれぬのじゃ」

「ああ、ただこのベルべスクがすんなり言う事を聞いてくれるかだ」

「それなら、大丈夫です」

 そう言いムドルさんは、ベルべスクをみる。 

「ムドル、何か考えがあるのか?」

「ええ、考えもありますが。恐らく、私の魔族の姿をみれば言う事を聞いてくれるでしょう」

「どういう事だ? 何か曰くがありそうだな」

 そう言われムドルさんは頷いた。

 なぜかメーメルは首を傾げている。

「それは、そうですね……昔、色々あったとだけ言っておきましょう」

 ムドルさんはそう言い苦笑した。

「その様子じゃ。あまり言いたくないみたいだな」

「そうですね。できることなら……」

「まぁいい。それよりも急ごう」

 なぜかグレイは、ムドルさんのことについて無理に聞こうとしない。

「ベルベスクを起こす前に、元の姿になっておきますか」

 そうムドルさんが言うとなぜかコルザは、ワクワクしている。

 ムドルさんは、両手を目の前に翳す。そして魔族語で詠唱した。

 すると魔法陣が展開していき、そこから黒い光が放たれる。その黒い光は、ムドルさんを覆い包んだ。黒い光が消えると魔族の姿へと変わる。

「ほう、それがムドルの本来の姿という事か」

 そう言いコルザは、目を輝かせてムドルさんをみた。

 それを聞いたムドルさんは頷く。

「ええ……。では、ベルベスクを起こします」

 ムドルさんがそう言うと、私とグレイとメーメルとコルザは頷いた。

 それを視認するとムドルさんは、床に横たわっているベルベスクのそばに近づく。そして無造作にベルべスクの体を掴むと壁の方に連れて行った。

 ベルべスクを床に座らせると壁に寄りかからせる。するとムドルさんは、ベルべスクの頭に右手を乗せ魔族語で詠唱し始めた。

 詠唱し終えるとベルべスクの頭の上に魔法陣が展開される。その魔法陣は展開されながらベルべスクの真下へと移動した。

「これでいいでしょう。簡単な治療をしましたので目覚めるはず」

 そう言いながらムドルさんは、中腰になりベルべスクを覗きみる。

「んー……う、ううんー……」

 ベルべスクは唸りながら徐に瞼を開いていく。と同時に、目の前のムドルさんをみて驚き顔が青ざめた。

「な、なんでムドル……お前がここに居る!?」

「さぁ、なんででしょうか。それよりも、お前には色々と聞きたいことが沢山あります。それとやって頂くことも、ね」

 そうムドルさんが言うとベルべスクは、明らかにビクビク震え怯えている。

 それをみた私は、なんでベルべスクがこんなに怯えているんだろうと思った。