「あれは……神社?」
思わずそう口にしてしまう程、目の前に現れた建物には見覚えがあった。
鳥居と同じような朱色の柱に支えられ、上部には湾曲した特徴的な屋根が付いている。
派手さと厳かさ、その両方を併せ持ったかのような“神社”だ。
さらに言えば、神社の中でもかなり見覚えがある。
「……っ」
神社の手前には、二体の狐の像が置かれている。
細かな配置や造りは若干違っているものの、明らかに既視感がある。
思い出してみれば、ここまでの道のりも“千本”。
それを聞くと、前世のあの有名なスポットだったのではと思えてならない。
それらを踏まえて、今目の前にあるもの。
これは──京都の『伏見稲荷大社』だ。
「エアルは“ジンジャ”を知っているのですか?」
「え? ま、まあ……」
そうして自分の世界に入ってしまっていると、隣のコノハに尋ねられる。
ぽろっと出た言葉を聞かれていたみたいだ。
けど今はそれより、彼女ら化け狐族が神社を知っていることの方が気になる。
「あれは、本当に神社なのか?」
「はい。あれは、森にいくつか存在すると言われるダンジョンの中でも『ジンジャ』という名で伝わってます」
「そうか……」
俺が驚きを隠せない中、他の者はさっぱりといった様子。
「エアル、何よジンジャって」
『我も聞いたことが無いぞ』
そりゃそうだ、“神社”は前世の言葉。
この世界の者には知る由もないのだから。
「ちょ、ちょっとグロウリア王国の文献で見たことあったんだよ……」
だから今は一度誤魔化しておく。
色々とある疑問、それらを全て解いた後で説明してあげればいい。
「どうして、こんなものがここに?」
『それには私がお答えしましょう』
すると、ここでようやくモグりんが名乗りを上げた。
思えば、今日の彼の言動・行動はずっと謎だった。
そんな小動物が、ここでようやく真実を明かす。
『エアルさん、あなたは“けんじゃ”様を知っていますね?』
「──! ああ、俺はそのけんじゃの本を読んでこの森に来たんだ」
いきなりの単語に少しビビるも、話を進めるために俺は答える。
だが、モグりんの言葉は予想の上をいった。
『それならば話が早いです。結論から言うと、この『ジンジャ』はけんじゃ様の宝物庫です』
「なっ!?」
その愛くるしい表情を一切変えず、モグりんは淡々と言い放つ。
そんな、軽々しく話して良い内容ではない。
しかし、話はそれだけではない。
『さらに言えば、ダンジョンと呼ばれるものは全て、けんじゃ様がこの森に残したものになります』
「……!」
驚きの連続で、もはや言葉が出てこない。
また同時に、一つ考察が浮かび上がる。
この里の家々や「和」の様式、極め付きはこの神社だ。
けんじゃってまさか、日本人なのか……?
『何か気になることでもありましたか?』
「……いや、話を続けてくれ」
それは今すぐに確かめたい事柄だ。
けれど、俺は日本という国出身の元異世界人であることは打ち明けていない。
何よりモグりんがそれを知るかは分からないし、説明をするのにも心の準備が要る。
今は我慢して話の続きを聞くことにした。
『はい。ですが……すみません。私は少し嘘をつきました。私もこの中に何が眠っているかは分からないんです』
「というと?」
『確実に姫様を助ける手段があるかが不明なんです。それでも、けんじゃ様なら何か役に立てるものを残しているのではないかとも思うのです』
「そういうことだったのか」
モグりんが、俺たちをここへ連れて来た理由は分かった。
衝撃の事実の連続だが、話自体に嘘をついているようには見えない。
けど、だからこそ確認したいことがある。
ここまで詳しい、けんじゃの話。
俺はどうしても尋ねなければならない。
「モグりん。君は一体何者なんだ?」
『……そうですね』
モグりんは、一つ息をついて答える。
浮かべた表情は、まるで覚悟を決めたかのようなものだった。
『私は──けんじゃ様の使いです』
思わずそう口にしてしまう程、目の前に現れた建物には見覚えがあった。
鳥居と同じような朱色の柱に支えられ、上部には湾曲した特徴的な屋根が付いている。
派手さと厳かさ、その両方を併せ持ったかのような“神社”だ。
さらに言えば、神社の中でもかなり見覚えがある。
「……っ」
神社の手前には、二体の狐の像が置かれている。
細かな配置や造りは若干違っているものの、明らかに既視感がある。
思い出してみれば、ここまでの道のりも“千本”。
それを聞くと、前世のあの有名なスポットだったのではと思えてならない。
それらを踏まえて、今目の前にあるもの。
これは──京都の『伏見稲荷大社』だ。
「エアルは“ジンジャ”を知っているのですか?」
「え? ま、まあ……」
そうして自分の世界に入ってしまっていると、隣のコノハに尋ねられる。
ぽろっと出た言葉を聞かれていたみたいだ。
けど今はそれより、彼女ら化け狐族が神社を知っていることの方が気になる。
「あれは、本当に神社なのか?」
「はい。あれは、森にいくつか存在すると言われるダンジョンの中でも『ジンジャ』という名で伝わってます」
「そうか……」
俺が驚きを隠せない中、他の者はさっぱりといった様子。
「エアル、何よジンジャって」
『我も聞いたことが無いぞ』
そりゃそうだ、“神社”は前世の言葉。
この世界の者には知る由もないのだから。
「ちょ、ちょっとグロウリア王国の文献で見たことあったんだよ……」
だから今は一度誤魔化しておく。
色々とある疑問、それらを全て解いた後で説明してあげればいい。
「どうして、こんなものがここに?」
『それには私がお答えしましょう』
すると、ここでようやくモグりんが名乗りを上げた。
思えば、今日の彼の言動・行動はずっと謎だった。
そんな小動物が、ここでようやく真実を明かす。
『エアルさん、あなたは“けんじゃ”様を知っていますね?』
「──! ああ、俺はそのけんじゃの本を読んでこの森に来たんだ」
いきなりの単語に少しビビるも、話を進めるために俺は答える。
だが、モグりんの言葉は予想の上をいった。
『それならば話が早いです。結論から言うと、この『ジンジャ』はけんじゃ様の宝物庫です』
「なっ!?」
その愛くるしい表情を一切変えず、モグりんは淡々と言い放つ。
そんな、軽々しく話して良い内容ではない。
しかし、話はそれだけではない。
『さらに言えば、ダンジョンと呼ばれるものは全て、けんじゃ様がこの森に残したものになります』
「……!」
驚きの連続で、もはや言葉が出てこない。
また同時に、一つ考察が浮かび上がる。
この里の家々や「和」の様式、極め付きはこの神社だ。
けんじゃってまさか、日本人なのか……?
『何か気になることでもありましたか?』
「……いや、話を続けてくれ」
それは今すぐに確かめたい事柄だ。
けれど、俺は日本という国出身の元異世界人であることは打ち明けていない。
何よりモグりんがそれを知るかは分からないし、説明をするのにも心の準備が要る。
今は我慢して話の続きを聞くことにした。
『はい。ですが……すみません。私は少し嘘をつきました。私もこの中に何が眠っているかは分からないんです』
「というと?」
『確実に姫様を助ける手段があるかが不明なんです。それでも、けんじゃ様なら何か役に立てるものを残しているのではないかとも思うのです』
「そういうことだったのか」
モグりんが、俺たちをここへ連れて来た理由は分かった。
衝撃の事実の連続だが、話自体に嘘をついているようには見えない。
けど、だからこそ確認したいことがある。
ここまで詳しい、けんじゃの話。
俺はどうしても尋ねなければならない。
「モグりん。君は一体何者なんだ?」
『……そうですね』
モグりんは、一つ息をついて答える。
浮かべた表情は、まるで覚悟を決めたかのようなものだった。
『私は──けんじゃ様の使いです』