小ぬか雨の降る中、わたしと有沢由梨は機械的にスコップを動かし、土を掘っていた。
 天気予報では、雨は降らないと出ていたが、それは都心部に限られており、山間部では天気の崩れが度々、垣間見られるということだ。
 当てが外れたと思ったが、仕方ない。今夜やらなければ、きっと気持ちが萎えるだろう。
 即席の懐中電灯を木の枝にかけ、微弱な光の環の中で、黙々とわたしたちは掘削作業を続ける。
 時折、雨粒が目に入り、視界を悪くさせる。だからか、掘削はなかなか前進しない。
「ねえ、本当にここでよかったの?」
 わたしは苛立って、訊いた。由梨は唇を真一文字に結んで、ひたすらスコップを動かす。
「間違いない、ここよ。桑の実がある木の傍らにタイムカプセルを埋めたんだから」
 そう言いながらも、由梨は汗か雨かわからない粒を顔に浮かべている。よく見ると、由梨は泣きそうな顔をしている。
 わたしは諦めて、スコップを再び動かす。すると、向こうの方から強い光の環が迫ってくるのが見えた。
 掘削に夢中になっていて、光の環に気づかなかった。