「それではみなさんそれぞれに休み場をご案内しますねー」

バサバサバサっ
スッ…

「これからその雀さん達がみなさんを誘導しますので、ついて行ってくださいねー」
「あと、案内が終わったまたこの広場に戻ってきてくださーい!」

ハヴァ先生がそう言うと16匹の雀が空から飛んできてそれぞれの前に降りた。

「チュンチュン」

「…喋れないのかな?」

同じ鳥なのに目の前にいる私より遥かに小さな雀は喋れないようだ。

「雀さん、よろしくね〜」

「チュン!」
バサバサっストン!

「あら!」
「あなた私の言葉は分かるのね!」
 
話しかけた目の前にいた小さな雀はスッと飛びたちコトリの頭の上に乗った。

「うふふ」
「じゃあ案内よろしくね!」

「チュンチュ!」
バサっバサバサ

すぅー!

場所を案内するように先をゆっくり飛び始めた。



雀さんに導かれ大樹から伸びた枝の上、
時には枝に絡まった蔦が幾重にも絡み合い伸びる道を歩いた。

景色が360°見渡せる展望台のような場所など
いろんな所を案内された。

「こ…ここは??」

「初めましての子だねぇ」

そう返答したのは食事処の受付に立つ鳩のカラン。

「この世界のご飯は全部このようなものなんだよぉ」
「はい、これどうぞぉ」

そう渡されたのは小さなココナッツの入れ物いっぱいに満たされたスムージーのような飲み物。

「怖がらずに飲んでみてぇ」

「えっ…ご飯?…はい」

すっ…
ちゅーちゅー

「あっ…おいしい!!」
「甘くてでもサッパリしてて!」

「そうでしょー!」
「それは木の実とか果物をすりつぶしたものなんだよぉー」
「他にもねぇ、もっとアッサリしたものとか、濃厚なものとか全部で4種類あるからまた来てねぇ」

「あっわかりましたー!」
「これからよろしくお願いします!」

「また待ってるねぇ」

「はーい!」

この世界にも、私が生活していた世界にあったようなお店のようなものがあるみたい。
お腹も膨れたこともあり不思議とまた少し不安感がなくなったのを感じた。


スタスタ…

「君にも食べさせてあげたかったよ!」

「チュンチュン!」

「うふふ」
「次はどこを案内してくれるのー?」

「チュン!」

スゥーートン

雀さんがスッと速度を上げ少し遠くにある木の枝に止まった。

「あっ待ってー!」
駆け足で進んだ。

「チュンチュンチュン!」

「雀さーん、次の場所はそこー?」

「チュン!」

「わぁすごい!」

そこには、この大樹から生えているとんでもなく大きな葉っぱを地面に敷き詰め、小さな枝や蔦など壁として作られたお家。

「ここって?」

「チュン!」

バサバサバサッ…

「あっ…」

強く鳴いた雀さんが空に羽ばたき消えてしまった。

「ここが最後の場所だったのかな?」
「雀さんありがとうね」

スタ、スタ、スタ…

「…すいませーん。。」
「…」

反応はない。
慎重になりながらゆっくりとお家の中に入った。

入り口を抜けると、正面に5羽くらいがくつろげそうなスペースがあって、そのさらに奥に4つの部屋に繋がる入り口がある。

「ここが私が休める場所なのかな…?」

誰もいない中で何の説明もないこの状況にドキドキした。

スタ、スタ、スタ…

大きなスペースを抜け部屋に近づく。

「あっ」

4つの部屋の1番左の入り口に木彫りで「コトリ」と掘られた板が掛けられてる。

「ここが私の部屋ってこと…?」

よく見ると他の入り口にも同様に木の板があって名前が彫られてある。

「私以外にもいるってこと…かな?」
「…お部屋に入ろう」

不安になりながらも部屋に入った。



中に入ると左の側面に小窓があり、正面に小さなテーブルとその右手に恐らくベットと思われる藁などが敷き詰められたスペースがある。

「ここが私の部屋か・・・」
「ぐすん、、、」

ふと頭を過ぎったいつもの部屋のいつものテーブルで絵本を書いていた私。
それが今となっては、なんなのかもよく分からない鳥の世界で同じような光景を目の当たりにして思い出してしまった。

「私のいつものお部屋・・・宮龍くん。。。」
「・・・あっ」

トボトボ部屋にはいると机の上に手紙があった。

「ハヴァ先生からだ」

『コトリちゃんへ
案内されてみてどうでしたか?
いきなりのことばかりで、不安だろうけど私は味方だからね。
先ほども伝えましたが、この世界はあなたにとって大切なことに繋がるからね。
そして、いつかこの世界の答えがわかる時がくるかもしれないし、目の前にある卵への気持ちがその答えが分かった時にあなたにとって大切なものになります。
だから、どうか渡した卵とふろしきを大切にしてほしいです。

ハヴァより。

PS、この手紙を読んだらまたさっきの広場に来てください。』

「・・・ハヴァ先生」

チラッ.....

手紙を片手に、首に掛けたふろしきの中の卵を見た。

「ハヴァ先生・・・よく分からないことばかりだけど、この卵は守りたいなって思ったの」
「だから、大切にする!」

そう強く言葉に出し、ハヴァ先生が言ったように広場に向かった。


・・・


広場に着くともうすでに他の鳥たちが集まっていた。

キョロキョロ・・・
「私達の家に入る子ってどの子なんだろう・・・?」

興味もあって名前も分からないけど、ゾロゾロ集まってくる鳥を見ていると。

「はーいみなさん〜」
「案内は終わりましたね〜お疲れさまでしたー」

「あっハヴァ先生だ」

「それでは今日最後のお話を始めますー」
「と、その前に皆さんに紹介したい先生がいますー」

ゾロゾロ....
ハヴァ先生の横に4匹の鳥が並んだ。

「私の横から白鳥のシグナス先生、・・・・・」
「これからこの先生達があなた達の卵やふろしきなどについて詳しく説明します」
「また、これから皆さんを4つのグループに分けて、それぞれ専任の先生となります」

「…専属の先生ってことかな?」
小さく呟いた。

「もうお気づきの子もいるかもしれませんが、皆さんのお家にもあったようにこれから一緒に生活をしていく同志になります」
「名前を呼ばれた子はその場に立つように!」
「それではまずは・・・あなたから」

あっわたしだ。
ハヴァ先生と目があった。

「コトリちゃん」
「ミネリアちゃん」
「キッカちゃん」
「ターニャちゃん」

ダッ!

「今呼ばれた子は、前に出てシグナス先生の前に集まってください」
「これから少し移動してさらにお話がありますのでー」

「はい!」
あ、あれ...私だけ答えちゃった。

そう言いながらも、横に立ち上がった鳥をチラ見しながら歩きはじめた。
スタスタスタ

「はい、皆さん」
「私がシグナスと言いまして、みんなの専属先生になります」
「よろしくね!それじゃあ少し移動しますよ」

「はい!よろしくお願いします」
それぞれが答えるとさらに移動した。

「ではここで」
「みんなはゆっくり座って聞いてください」

みんな緊張をしているようキョロキョロと様子を見ながら何も答えずにその場に座った。

「あとで、みんなの自己紹介もあるから緊張しないでね」

「・・・」
「はい!」
と、また私だけ返事をした。

「コトリちゃんは元気ね」
「それでは早速話を進めますね」

「ハヴァ先生からも説明がありましたが、皆さんにお渡しした卵とふろしきについてです」
「この卵をどうするかはあなた次第です」
「ですが、私からも大切にしてほしいと思っています」
「またいつもそれぞれで作られた特別な"ふろしき"に卵を包み、どんな時も自分の体に接している状況を基本として考えてください」
「そして、その卵を触れて感じてみてください」

「・・・」

「そうすることで、この卵をどうしていきたいかあなた自身の答えが段々と見えてきますし、段々と変化が出てくるはずです」
「ですが、何度も言いますがその卵をどうするかはあなた達次第です」
「これがあなた達に伝えたったことです」
「なにか聞きたいことはありますか?」

「・・・」
ハヴァ先生の時もそうだけど、卵を大切にしてほしいとだけ言われるが、肝心なところは隠されている気がする・・・
そんな思いは皆んな感じているようで、キョロキョロ顔を見合わせた。

「・・・あの」

「はい、コトリちゃん」

勇気を出して口火を切った。

「この卵って・・・なんなんですか?」

「それは、ごめんね教えられません」
「でも、その答えは卵と接したことで見えてくると思います」
「だからその時まで・・・ね」

「・・・分かりました」
またはぐらかされた・・・モヤモヤする。

「あっあと、・・・卵はどんな時も接していないとダメですか?」

「なるべく一緒にいてあげてください」

「…わかりました」

「他にはありますか?」

たぶんもっとたくさん聞きたい事はある。
けど、今日起きたたくさんの出来事に頭が追いつかず皆んな固まってしまった。

「ま、またいつでも質問とか私に聞けますので何かあれば言ってくださいね」
「じゃあ、最後に皆さんの自己紹介です」

「じゃあ、元気なコトリちゃんから!」

「はい」

少し前に出て振り返った。

「コトリと言います!」
「取り柄は元気なところかなと思っています!」
「ほんと分からないことばかりで戸惑っていますが、理由は分からないけど、この私の卵は大切にしたいなって思っています!よろしくお願いします!」

ペコ

パチパチパチ

コトリの勢いで空気を緩やかにしたのか、自然と拍手が出た。

「コトリちゃんありがとうー!」

「それでは次の子〜」

・・・


不安なことばかりだけど、私を同じ状況の仲間が出来て少し安心した。
知らない場所で渡されたこの卵、そして初めての子と共同生活が始まる。


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