一度目の私が賢明にエドウィン殿下の手を引いたのはエメルードの小娘との行く末が予想できていたからでもある。

 遅かれ早かれ破綻するその関係のために、あちこち引っ掻き回すくらいなら私がどうにか殿下の手を引いていれば最小限のダメージで事なきを得られるだろうと踏んでいたし、実際そうなった。

 手も目も心も離した二度目の夢で、エメルードが生きているこの世界でエドウィンと、その周囲が破滅するのは存外早かった。

 どうやら妊娠が発覚したというのが約七か月前。生まれてきた子は双子で、一人は宰相の息子に、一人は騎士団長の息子に似ていた。

 そして驚くことに婚約を済ませられたはよかったものの。エドウィン殿下とエメルードの小娘は清い関係であったことが発覚し、友人二人は廃嫡、エメルードは処刑、それを受けたエドウィン殿下はお心を壊されたとかで廃人同然。

 平民になるのがせいぜいかと思っていたがそれよりももっと悲惨であったので同情したが、これもひとつの運命なのだろう。

 結局、あの人の思う良き人生というのは私の犠牲の上にあったのだと言われたようで余計に腹が立った。

 一度目の夢と二度目の夢のエドウィンは別人かもしれない。それでも結局行き着く先は同じだったのだ。私が、彼の選択肢の一つとならなかっただけ。

「ねえセシル様、あなたいつからここが二度目だと知っていたのです」

「さあ、でもずっと。オフィーリアを手に入れた後のことは正直考えていませんでした。きっと平民に落とされたとしても、今度はあなたを、私の選択肢に入れる必要がありました」

 彼の腕に抱かれた男の子は私にそっくりな顔をして、その目と髪はセシル様と同じだった。
 エドウィン様と同じその色なのに、どうしてこうも違って見えるのだろう。

「この夢が、夢だと気が付かないまま終わってくれればいいのにと思います」

「それは違いますね」

 ゆりかごに赤ん坊を寝かせ、彼は私の手を取った。

「ここから先は、二度目の夢ではなく、あなたと私の未来です。そうでしょう?」

 王位継承権までは剥奪されなかったが、エドウィン殿下の療養はこれから先も続くのだろう。そう判断した国王陛下によって、戴冠式を来月に控えている。
 ああ、そうか。未来か。
 腑に落ちた、という表現は果たして正しいのか。それでも私は今日という日を、ずっとずっと待ち焦がれていたのだと思う。

「私たちは、二度、人生という結末の夢を見るのですね」

「ええ。でも、そのどちらの夢でも、私はあなただけを想っています」

 ああ、神様。どうかこの夢から覚まさないで、私たちの夢がここで終わりますように。