うん。ルーグさんが理解出来ないのも頷ける。
概念と言うか、馴染みのない人には理解できないところもあるわな。
駒の配置や動かし方は、まあ、わかるでしょう。特殊ルールを説明されるとちんぷんかんぷんになる。キャスリングとかわかり難いわよ。何でそうなるんだって話よね。
「チェックとチェックメイトってそういう意味だったのね」
漫画にはよく出て来てたけど、意味まで知らなかったわ。ほーん。
「よく出来たゲームよね」
考えた人凄いよ。確かに全世界で流行るわけだ。納得の完成度だわ。
大体の動かし方、ルールは理解したので駒を動かしてみた。
ふんふん。なるほどなるほど。確かに奥が深いわ、このゲーム。
「キャロルさん。わかりましたか?」
四日ほど経った頃、レンラさんがやって来た。
「まあ、大体は。貴族の方がおもしろいと思うのもわかります」
暮らしに余裕がある貴族でないと普及はしないでしょうけどね。てか、これを広めた人、何でトランプを先に広めなかったのかしら? そっちのほうが需要があると思うんだけどな~?
「レンラさんも覚えてみますか? ルーグさんが理解出来なかったのは説明書を書いた人があまりわかってなかったからでしょう」
まずは盤の向き、駒の説明、配置を教えたらレンラさんはすぐに覚えた。
特殊ルールの説明はとりあえず省き、駒の動かし方を一つ一つ教えていった。
やはり頭のいい人は理解力も高い。そして、頭脳戦にのめり込みやすい。真剣になりすぎて動きがわかりやすくなっているわ。
「この遊戯は頭脳戦であり心理戦でもありますね。レンラさんが考えていることが筒抜けです」
「……わたし、わかりやすかったですか……?」
「いえ、悪いと言っているわけじゃないですよ。遊びとやっているなら喜怒哀楽は必要だと思いますから」
「……どういうことでしょうか……?」
「レンラさんは賭けをしたことがありますか?」
「ピンコロなら」
ピンコロ? そんなものがあるんだ。言葉からしてサイコロかな?
「今は遊戯として楽しんでますが、いずれこのジェドも賭けの対象になるでしょうね」
アニメでそんなシーンがあった。この世界でも必ず賭け事となるでしょうよ。
「それは、まあ、仕方がないことでしょうね」
「そうですね。お金が動くことですから」
止めろと言ったところで止めたりはしないでしょう。自然の流れは止められないわ。
「だから先に制していたほうがいいですよ。決まりを作り、場所を作り、流れを作る。今ならバイバナル商会が牛耳られますよ。幸い、場所は確保されてましからね」
貴族が来るような場所がある。次に流れを作ればルールも決められるわ。今度来る人は地位の高い人なんだからね。
「……恐ろしい子です……」
何かそんなセリフを言った漫画があったような? 何だったかしら?
「紳士クラブ」
「はい?」
「ジェドを愛する方々の集まりを称したものです。話が進んだら名称が必要でしょう? そのときに提案してみるといいですよ」
この時代はまだ男性優位の社会だしね。紳士と名称したほうがいいでしょうよ。女性は女性で婦人会とかあるんだからね。
「……紳士クラブですか……」
「先を制するってそういうことだと思いますよ」
「…………」
レンラさんが黙っちゃった。どうしました?
「まあ、やるやらないはバイバナル商会が決めたらいいと思いますよ。わたしではどうにも出来ませんからね」
女で子供のわたしには紳士クラブをどうにか出来るわけでもない。男の人が決めて男の人が築いていかなくちゃならないからね。
「……話し合ってみるとしましょう……」
そう言って帰って行ってしまった。がんばってください。
わたしもジェドに飽きたので訓練場に向かってクラブを作り、打ちっぱなしで体をほぐした。
冬が本格的になった頃、例の貴族が馬車を列ねてやって来た。
馬車を見ただけで上位貴族ってのがわかる。伯爵以上って何だっけ? 公爵? 侯爵? まさか王族ってことはないわよね。いや、さすがにないか。それなら護衛の兵士とかもっと来そうだしね。
民宿の正面はわたしたちの家の向こう側なので、どんな人が来たかはわからない。まあ、わたしたちが関わることもなし。いつものように過ごす……ことは出来ませんでした。
「こちらは護衛騎士隊のロックダル様です」
なぜか偉い人を紹介されてしまった。
「キャロルと申します」
「ティナと申します」
「マ、マリカルです」
わたしとティナはお城で教わった上位者の挨拶をする。連れて来るなら先に言って欲しかったわ。
「なるほど。サーシャ嬢のお友達係をやっていたことはありますね」
「ありがとうございます」
何しに来たか教えてもらいたいのですけど。
「ロックダル様に周辺を案内してください。これから民宿はロックダル様の下に入りますので」
なるほど。そういうことか。
「わかりました。ロックダル様。ご案内させていただきます。マリカルは家をお願い」
教育を受けてないマリカルには酷でしょうからね。わたしとティナでやるとしましょうか。
概念と言うか、馴染みのない人には理解できないところもあるわな。
駒の配置や動かし方は、まあ、わかるでしょう。特殊ルールを説明されるとちんぷんかんぷんになる。キャスリングとかわかり難いわよ。何でそうなるんだって話よね。
「チェックとチェックメイトってそういう意味だったのね」
漫画にはよく出て来てたけど、意味まで知らなかったわ。ほーん。
「よく出来たゲームよね」
考えた人凄いよ。確かに全世界で流行るわけだ。納得の完成度だわ。
大体の動かし方、ルールは理解したので駒を動かしてみた。
ふんふん。なるほどなるほど。確かに奥が深いわ、このゲーム。
「キャロルさん。わかりましたか?」
四日ほど経った頃、レンラさんがやって来た。
「まあ、大体は。貴族の方がおもしろいと思うのもわかります」
暮らしに余裕がある貴族でないと普及はしないでしょうけどね。てか、これを広めた人、何でトランプを先に広めなかったのかしら? そっちのほうが需要があると思うんだけどな~?
「レンラさんも覚えてみますか? ルーグさんが理解出来なかったのは説明書を書いた人があまりわかってなかったからでしょう」
まずは盤の向き、駒の説明、配置を教えたらレンラさんはすぐに覚えた。
特殊ルールの説明はとりあえず省き、駒の動かし方を一つ一つ教えていった。
やはり頭のいい人は理解力も高い。そして、頭脳戦にのめり込みやすい。真剣になりすぎて動きがわかりやすくなっているわ。
「この遊戯は頭脳戦であり心理戦でもありますね。レンラさんが考えていることが筒抜けです」
「……わたし、わかりやすかったですか……?」
「いえ、悪いと言っているわけじゃないですよ。遊びとやっているなら喜怒哀楽は必要だと思いますから」
「……どういうことでしょうか……?」
「レンラさんは賭けをしたことがありますか?」
「ピンコロなら」
ピンコロ? そんなものがあるんだ。言葉からしてサイコロかな?
「今は遊戯として楽しんでますが、いずれこのジェドも賭けの対象になるでしょうね」
アニメでそんなシーンがあった。この世界でも必ず賭け事となるでしょうよ。
「それは、まあ、仕方がないことでしょうね」
「そうですね。お金が動くことですから」
止めろと言ったところで止めたりはしないでしょう。自然の流れは止められないわ。
「だから先に制していたほうがいいですよ。決まりを作り、場所を作り、流れを作る。今ならバイバナル商会が牛耳られますよ。幸い、場所は確保されてましからね」
貴族が来るような場所がある。次に流れを作ればルールも決められるわ。今度来る人は地位の高い人なんだからね。
「……恐ろしい子です……」
何かそんなセリフを言った漫画があったような? 何だったかしら?
「紳士クラブ」
「はい?」
「ジェドを愛する方々の集まりを称したものです。話が進んだら名称が必要でしょう? そのときに提案してみるといいですよ」
この時代はまだ男性優位の社会だしね。紳士と名称したほうがいいでしょうよ。女性は女性で婦人会とかあるんだからね。
「……紳士クラブですか……」
「先を制するってそういうことだと思いますよ」
「…………」
レンラさんが黙っちゃった。どうしました?
「まあ、やるやらないはバイバナル商会が決めたらいいと思いますよ。わたしではどうにも出来ませんからね」
女で子供のわたしには紳士クラブをどうにか出来るわけでもない。男の人が決めて男の人が築いていかなくちゃならないからね。
「……話し合ってみるとしましょう……」
そう言って帰って行ってしまった。がんばってください。
わたしもジェドに飽きたので訓練場に向かってクラブを作り、打ちっぱなしで体をほぐした。
冬が本格的になった頃、例の貴族が馬車を列ねてやって来た。
馬車を見ただけで上位貴族ってのがわかる。伯爵以上って何だっけ? 公爵? 侯爵? まさか王族ってことはないわよね。いや、さすがにないか。それなら護衛の兵士とかもっと来そうだしね。
民宿の正面はわたしたちの家の向こう側なので、どんな人が来たかはわからない。まあ、わたしたちが関わることもなし。いつものように過ごす……ことは出来ませんでした。
「こちらは護衛騎士隊のロックダル様です」
なぜか偉い人を紹介されてしまった。
「キャロルと申します」
「ティナと申します」
「マ、マリカルです」
わたしとティナはお城で教わった上位者の挨拶をする。連れて来るなら先に言って欲しかったわ。
「なるほど。サーシャ嬢のお友達係をやっていたことはありますね」
「ありがとうございます」
何しに来たか教えてもらいたいのですけど。
「ロックダル様に周辺を案内してください。これから民宿はロックダル様の下に入りますので」
なるほど。そういうことか。
「わかりました。ロックダル様。ご案内させていただきます。マリカルは家をお願い」
教育を受けてないマリカルには酷でしょうからね。わたしとティナでやるとしましょうか。