あれ? わたし、作詞の才能あったりする?
なんて勘違いしてしまいそうになるくらい替え歌(?)にして歌っていた。
さすがに元の世界の歌をそのまま歌うわけにはいかない。単語を変えたりリズムを変えたりしないと聴いている人たちに受け入れられないからね。
一曲終わると、お客さんたちが拍手してくれた。
「ありがとうございます。次は春の歌です」
この世界、桜はないので春に咲く野花の名前に替えて歌った。
わたしの歌にマリカルが合わせてくれ、ちょっとつたないながらもなんとか歌いきった。
次はラッカル一座の楽士と演奏する。ちなみにわたしは木琴担当。ギターは作れたけど、引けるようにはなれなかったわ。人間って不思議なものよね。
夕食観覧芸《ディナーショー》は三十分くらいで終了。レパートリーが少ないので三十分が限界なんです。
まあ、ここの人たちは食事に長時間かけることはないし、夕食観覧芸《ディナーショー》って文化もない。まだ確立もされてないのだから三十分くらいがちょうどいいでしょうよ。
お客さんたちが下がり、わたしたちも席で夕食兼反省会とする。
「素晴らしいものですた」
レンラさんは絶賛だ。そうか?
「まだまだですね。子供のお遊戯みたいなものですよ」
まあ、まだ十一歳のわたしがやるならお遊戯だけどさ。
「いえ、あんな催しをするなんて想像もできませんでした。お客様方も楽しんでいました」
「そうですね。キャロルさんの歌声もよかったです。あんな歌い方があるものなのですね」
ルーグさんも絶賛な感じだ。
「歌だけではあのくらいが限界ですね。歌と歌の間におしゃべりを挟むといいかもしれませんね」
Vチューバーの動画はあんまり視なかったけど、歌枠でトークが挟んであった。あれは歌だけでは間がもたなかったりダレないようにやっているものだったのね。
ディナーショーがどんなものかわからないけど、歌ばかり歌ってはいないでしょう。トークも挟んでお客さんを楽しませているんだわ。
「娯楽宿屋ではお芝居を主にしたほうがいいかもしれませんね。お芝居をみせる一座ってどのくらいいるものなんです?」
お芝居はあると言ってたけど、どのくらいの認知度なのかしら?
「そう多くはないな。芝居は場所や道具が必要だからな。酔狂な貴族の支援がなければやっていけんよ」
パトロンってヤツか。そういう文化は辛うじてあるみたいね。
「バイバナル商会で支援って出来ます?」
「断言は出来ませんが、どうするか話していただけますか?」
「うーん。これは思い付きなんで、わたしの戯れ言として聞いてくださいね」
やるやらないはバイバナル商会が決めること。わたしは思い付いたことを語るまで。強制はしないわ。
「まず、バイバナル商会に娯楽部門を作って、娯楽宿屋と民宿で芸を披露する。今ではどちらもそれなりの人たちには知られるようになりました。そこに娯楽を足すだけです。認知度が上がれば娯楽部門は離して王都に集約。貴族を招いて芸を披露する。文化として確立していく、って感じですね」
まだこの時代にエンターテイメント業は確立されていない。なら、先駆者として名を残すとしましょう。バイバナル商会が、だけど。
「……儲かるのですか……?」
「娯楽宿屋や民宿が儲けているのなら儲けられると思いますよ。誰もやってない商売なんですからね」
わたしは、娯楽宿屋や民宿がどれだけの売上を出しているかは知らない。けど、こうして続けているってことは採算が取れると踏んでやっているんでしょうよ。
「……話し合ってみます……」
「それがいいと思います。所詮、子供の戯れ言。どうするかは商売の玄人が判断すればいいと思います。やるんなら協力させていただきます」
バイバナル商会が大きくなるんならわたしたちの後ろ盾としての力も増す。ハラハラドキドキな冒険はしたいけど、胃がキューとなる危険は冒したくない。波乱万丈はゴメンだわ。
「そのときはお願いします」
今日はそれで解散とし、片付けは任せて家に戻った。
「キャロルって歌が上手だったのね」
「そう? 歌なんて好きに歌えばいいだけよ」
別に歌手を目指しているわけじゃない。思うがままに気持ちよく歌えばいいのよ。聴かせるためではなく自分の心を出しているだけなんだからね。
「わたしよりティナのほうが上手そうだけどね」
「ボク?」
「うん。綺麗な声だし、肺活量も凄そうだしね」
たまに鼻歌を歌っているから歌が嫌いってわけじゃなさそうだわ。
「人前で歌うなんてやだよ」
「別に人前で歌うことなんてないわよ。一人で歌えばいいのよ」
わたしたちはそれを聴くだけ。
「わたしも歌いたくなっちゃったな」
本当に占い師からミュージシャンにジョブチェンジしそうな勢いね。
「キャロル。また新しい歌を作ってよ」
「別にマリカルが作ってもいいのよ。空が青いとか風が気持ちいいとか、感じたことを詞にして音に合わせたらいいんだからね」
娯楽が少ない時代。楽しみは自分で作り出さないとね。
「自分でか~」
「まあ、わたしも作るから自分でもやっみなよ。芸は身を助けるよ」
何かそんな言葉があったはず。よくわかんないけど。
なんて勘違いしてしまいそうになるくらい替え歌(?)にして歌っていた。
さすがに元の世界の歌をそのまま歌うわけにはいかない。単語を変えたりリズムを変えたりしないと聴いている人たちに受け入れられないからね。
一曲終わると、お客さんたちが拍手してくれた。
「ありがとうございます。次は春の歌です」
この世界、桜はないので春に咲く野花の名前に替えて歌った。
わたしの歌にマリカルが合わせてくれ、ちょっとつたないながらもなんとか歌いきった。
次はラッカル一座の楽士と演奏する。ちなみにわたしは木琴担当。ギターは作れたけど、引けるようにはなれなかったわ。人間って不思議なものよね。
夕食観覧芸《ディナーショー》は三十分くらいで終了。レパートリーが少ないので三十分が限界なんです。
まあ、ここの人たちは食事に長時間かけることはないし、夕食観覧芸《ディナーショー》って文化もない。まだ確立もされてないのだから三十分くらいがちょうどいいでしょうよ。
お客さんたちが下がり、わたしたちも席で夕食兼反省会とする。
「素晴らしいものですた」
レンラさんは絶賛だ。そうか?
「まだまだですね。子供のお遊戯みたいなものですよ」
まあ、まだ十一歳のわたしがやるならお遊戯だけどさ。
「いえ、あんな催しをするなんて想像もできませんでした。お客様方も楽しんでいました」
「そうですね。キャロルさんの歌声もよかったです。あんな歌い方があるものなのですね」
ルーグさんも絶賛な感じだ。
「歌だけではあのくらいが限界ですね。歌と歌の間におしゃべりを挟むといいかもしれませんね」
Vチューバーの動画はあんまり視なかったけど、歌枠でトークが挟んであった。あれは歌だけでは間がもたなかったりダレないようにやっているものだったのね。
ディナーショーがどんなものかわからないけど、歌ばかり歌ってはいないでしょう。トークも挟んでお客さんを楽しませているんだわ。
「娯楽宿屋ではお芝居を主にしたほうがいいかもしれませんね。お芝居をみせる一座ってどのくらいいるものなんです?」
お芝居はあると言ってたけど、どのくらいの認知度なのかしら?
「そう多くはないな。芝居は場所や道具が必要だからな。酔狂な貴族の支援がなければやっていけんよ」
パトロンってヤツか。そういう文化は辛うじてあるみたいね。
「バイバナル商会で支援って出来ます?」
「断言は出来ませんが、どうするか話していただけますか?」
「うーん。これは思い付きなんで、わたしの戯れ言として聞いてくださいね」
やるやらないはバイバナル商会が決めること。わたしは思い付いたことを語るまで。強制はしないわ。
「まず、バイバナル商会に娯楽部門を作って、娯楽宿屋と民宿で芸を披露する。今ではどちらもそれなりの人たちには知られるようになりました。そこに娯楽を足すだけです。認知度が上がれば娯楽部門は離して王都に集約。貴族を招いて芸を披露する。文化として確立していく、って感じですね」
まだこの時代にエンターテイメント業は確立されていない。なら、先駆者として名を残すとしましょう。バイバナル商会が、だけど。
「……儲かるのですか……?」
「娯楽宿屋や民宿が儲けているのなら儲けられると思いますよ。誰もやってない商売なんですからね」
わたしは、娯楽宿屋や民宿がどれだけの売上を出しているかは知らない。けど、こうして続けているってことは採算が取れると踏んでやっているんでしょうよ。
「……話し合ってみます……」
「それがいいと思います。所詮、子供の戯れ言。どうするかは商売の玄人が判断すればいいと思います。やるんなら協力させていただきます」
バイバナル商会が大きくなるんならわたしたちの後ろ盾としての力も増す。ハラハラドキドキな冒険はしたいけど、胃がキューとなる危険は冒したくない。波乱万丈はゴメンだわ。
「そのときはお願いします」
今日はそれで解散とし、片付けは任せて家に戻った。
「キャロルって歌が上手だったのね」
「そう? 歌なんて好きに歌えばいいだけよ」
別に歌手を目指しているわけじゃない。思うがままに気持ちよく歌えばいいのよ。聴かせるためではなく自分の心を出しているだけなんだからね。
「わたしよりティナのほうが上手そうだけどね」
「ボク?」
「うん。綺麗な声だし、肺活量も凄そうだしね」
たまに鼻歌を歌っているから歌が嫌いってわけじゃなさそうだわ。
「人前で歌うなんてやだよ」
「別に人前で歌うことなんてないわよ。一人で歌えばいいのよ」
わたしたちはそれを聴くだけ。
「わたしも歌いたくなっちゃったな」
本当に占い師からミュージシャンにジョブチェンジしそうな勢いね。
「キャロル。また新しい歌を作ってよ」
「別にマリカルが作ってもいいのよ。空が青いとか風が気持ちいいとか、感じたことを詞にして音に合わせたらいいんだからね」
娯楽が少ない時代。楽しみは自分で作り出さないとね。
「自分でか~」
「まあ、わたしも作るから自分でもやっみなよ。芸は身を助けるよ」
何かそんな言葉があったはず。よくわかんないけど。