翌日。私は何も考えずに、学校に向かった。

 教室に入り、自分の席に座ってカバンから教科書を出して、机に置いた。

「……また、いない。なにしてんだろう」

 私は隣の工藤の席を見て、声を発する。

 ザワザワとした教室では、今野琳らは他のクラスメイトと楽しそうに話をしていて、私とは目を合わせなく、挨拶さえしなくなった。

「…工藤いないね」

 私が工藤の席を見つめていたら、誰かの声がすると思い、声をした方に視線を向けると六弥くんがいた。

「六弥くん… なんかあったの? 二日連続こないなんて」

 私は六弥くんを見つめ、聞いた。

「……なんかあったんだろう」

 工藤の席を悲しげな目で見つめて、六弥くんは私に声を発した。

「……そうなのかな」

 私は間を置いて、返事をした。
 
 本当になにもないのだろうか。

 何もなかったら、いいんだけど…。
 
 けど、昨日の工藤の様子が気になる。

 腕の傷だって手当しないで、あのままだし。

 着ていた服を見たら、少し破れた長袖シャツに汚れているパンツであった。

 そして、私が現れると、驚いた様子で私を見ていた。

 あまり気にしないようにしたいけど、頭の中で工藤の表情が引っかかる。

 もう諦めかけたような、でも、助けてほしいとの想いが重なっているような目であった。

 そんなことを考えながら、朝礼を済ませて授業が始まった。

次の授業は移動教室だったので思い切って今野琳達に話しかけようと思って、声を発した。

「…あ、あの、一緒にいてもいい?」

 私は教科書を両手で握りしめて、今野琳達を下に俯きながら声を掛けた。

 すると、意外な言葉が出てきた。

「いいよ、行こう」

 今野琳は平然とした様子で私の方に振り返り、顔色ひとつ変えることなく返事をしていた。

 私は一安心して、ふーと息をして今野琳達の隣にくっついて移動教室へ向かった。

 教室へ向かうと、黒板に書かれていた出席番号順通り、指定された席に座った。

 出席番号順に座ると、ひとつのテーブルごとに六人いた。

 化学の授業ということで、テーブルごとにグラスなどが置かれていた。

 私の席の目の前には、六弥くんが座っていた。

 工藤が休みなので、いない分詰められて、六弥くんと一緒のグループになった。

 六弥くんは目で私に声をかけてきた。
 
 私も黒目を開けて、六弥くんに微笑んだ。

 その後、先生が来て、授業が始まった。
 
 六弥くんは目でなにを言いたかったのかな。

 授業は至って変わりなく、化学はどういうことをするのかなどの先生の話だけであった。

 入学して間もないので、まだ授業というものを本格的に始まってはいない。

 来週あたりから、どの授業も勉強を始めるらしい。

 二週間ほど経てば、まともに今野琳達と仲良くなれるとその時まで私は信じていた。

 だが、時間が経てばという暗示は聞かなかった。

 人間関係は変わることはなかった。
 
 人は思うようにはいかない。

 胸が踊るような楽しい毎日にはならない。
 
 理想通りの学校生活とはいかないものだ。

 二ヶ月後、やっと学校生活に慣れてきた頃、私は特に変化もなかった。

 勉強は授業ごとに予習して、授業が終わったら復習をしての繰り返しだった。

 大体勉強は図書室でしてから、自宅に帰った。