――地上の男に好かれたら……。
――好かれたいと自分から思ったなら、ちくっともやっとをたくさんするだろうからな。
――好かれる努力ってことですか? そんなことしなくてもわたしは女神さまが大好きですが。
――おまえの真心があの娘に通じれば、事は早いかもしれんなあ。
「ティアー!!」
巨大な光の輪の縁で、ちりちり光が瞬いています。間を置かず、そこからものすごい数の稲光が走って地上を打ち据えました。
耳をつんざく響きは、まさに大気を引き裂くようでした。地表は波打っているかと思うほどの鳴動にさらされています。
「雷霆(らいてい)……」
囁く声が聞こえた気がしましたが、この轟音の中では心もとないです。よくよく見下ろしてみれば、稲光の一本一本は、地下からの霧の息が噴き出る穴のひとつひとつを直撃しているようでした。さすが大神さまです。雷の的当て競技が行われたなら優勝間違いなしです。
視界中が上下するかのような衝撃がすぎ去ってしまうと、天空の光の輪は跡形もなく消え去り、地上には呆然と腹ばいになったり尻もちをついたりしている兵士たちが残されました。
霧の息に操られ人形のようになっていた隣国の兵士たちも、夢から覚めたように目をぱちぱちさせて蒼穹を見上げています。彼らを包んでいたあのもやはすっきりと晴れ、地面には穿たれた跡がいくつも残っていました。
「見たか!? 我らの大神がご照覧だ! 裁決は下された、戦は引き分けだ! 両軍兵を引け! 引き分けだ! 負傷者を早く運べ!」
あの振動の最中でも落馬せずにいたリュキーノスが声を限りに怒鳴っています。敵軍の後方に控えていた将校が騎乗してリュキーノスに近づいてくるのが見えます。
リュキーノスが短く言葉を交わした後、その将校は自軍の兵士に指示を与えて引き上げていきました。この後の話し合いは、場を改めてということなのでしょう。
敵兵も、こちらの兵も、負傷した体を引きずるように移動を始めます。重症の兵士を無傷な者たちが担ぎ上げて運びます。
そうやって運ばれる負傷兵の中に、テオの顔がありました。ポロが走り寄って何か話しているのがわかります。どうやら命は無事のようです。
ほっとして、わたしはそこでようやく気がつきました。自分が誰かの手のひらの上に乗っているということに。
――好かれたいと自分から思ったなら、ちくっともやっとをたくさんするだろうからな。
――好かれる努力ってことですか? そんなことしなくてもわたしは女神さまが大好きですが。
――おまえの真心があの娘に通じれば、事は早いかもしれんなあ。
「ティアー!!」
巨大な光の輪の縁で、ちりちり光が瞬いています。間を置かず、そこからものすごい数の稲光が走って地上を打ち据えました。
耳をつんざく響きは、まさに大気を引き裂くようでした。地表は波打っているかと思うほどの鳴動にさらされています。
「雷霆(らいてい)……」
囁く声が聞こえた気がしましたが、この轟音の中では心もとないです。よくよく見下ろしてみれば、稲光の一本一本は、地下からの霧の息が噴き出る穴のひとつひとつを直撃しているようでした。さすが大神さまです。雷の的当て競技が行われたなら優勝間違いなしです。
視界中が上下するかのような衝撃がすぎ去ってしまうと、天空の光の輪は跡形もなく消え去り、地上には呆然と腹ばいになったり尻もちをついたりしている兵士たちが残されました。
霧の息に操られ人形のようになっていた隣国の兵士たちも、夢から覚めたように目をぱちぱちさせて蒼穹を見上げています。彼らを包んでいたあのもやはすっきりと晴れ、地面には穿たれた跡がいくつも残っていました。
「見たか!? 我らの大神がご照覧だ! 裁決は下された、戦は引き分けだ! 両軍兵を引け! 引き分けだ! 負傷者を早く運べ!」
あの振動の最中でも落馬せずにいたリュキーノスが声を限りに怒鳴っています。敵軍の後方に控えていた将校が騎乗してリュキーノスに近づいてくるのが見えます。
リュキーノスが短く言葉を交わした後、その将校は自軍の兵士に指示を与えて引き上げていきました。この後の話し合いは、場を改めてということなのでしょう。
敵兵も、こちらの兵も、負傷した体を引きずるように移動を始めます。重症の兵士を無傷な者たちが担ぎ上げて運びます。
そうやって運ばれる負傷兵の中に、テオの顔がありました。ポロが走り寄って何か話しているのがわかります。どうやら命は無事のようです。
ほっとして、わたしはそこでようやく気がつきました。自分が誰かの手のひらの上に乗っているということに。