「あ……」

 そういえば、と思い出した。

「その中でも、私は重要な位置にいて【賢者の魔法使い】という呼び名が幼少の頃よりついている。君からは魔力の気配がしないのに、怪力の魔法やら身体の強化魔法やらを使っていると報告を受けて、不思議に思っていたんだ」

 エリザは、どうしていいのか分からず戸惑った。

 全て語ってしまったら、酷い目に遭うのではないかと怖くなる。

 彼が知りたいのは、きっと魔力を持っていないのに、魔物を滅してしまう〝不思議な現象のカラクリ〟だろう。

「治療係としての本題入る前に、君のことを知りたいんだ」

 いつの間にか下を向いてしまっていた。ハッと顔を上げると、困ったように微笑むフィサリウスがいた。

「本題の、治療……?」
「もしかしたらジークの〝病気〟は、体質でもなんでもないかもしれない。その推測を、より明確にするのには、君の正体を知る必要がある」

 フィサリウスが真面目な顔で背もたれに身を預けた。