「悠真とは、金絡みでトラブって、もう縁を切ったから」
ワタシのスマホに、拓也からそんなメッセージが届いていた。
最初は嘘に決まってると思って、しばらくの間、様子を見ていたけれど、二人がどこかで会ったり連絡を取り合う気配は、本当になかった。
ワタシは、これで拓也が自分の方を向いてくれるに違いないと思った。
拓也はメールを送ったきり、相変わらず自分を無視し続けた。でも最大のライバルがいなくなったのだから、焦らず拓也への思いを伝えていこうと考えた。
毎日こまめにチェックしている拓也のSNSのアカウントに、変化が現れ始めていた。
以前は頻繁に投稿していた趣味の写真は一切無くなり、代わりに投資や経済関係のニュースや書籍の情報などの投稿が続くようになった。
一方、ワタシのSNSのアカウントにも変化が現れていた。ワタシが過去に投稿した写真へのアクセス数や好評価が急に増え始めたのだ。
以前はほとんど見られることなんてなかったのに。
中には「すごく素敵な写真ですね」とか「構図が斬新!」とか、コメントまでくれる人もいた。それが拓也ならどんなにか良かったのにと思ったけれど、拓也じゃなくても褒められるのは嬉しかった。
やがてコメントをくれる人の中に、プロの写真家や大学教授、キュレーターなども度々登場するようになった。
その中の一人で、現代美術を扱う若い画廊のオーナーから「うちで個展を開きませんか」とお誘いがあった。飛び上がるほど嬉しかったワタシはすぐにOKし、銀座にオープンしたばかりだという彼の画廊に出向いた。
裏通りの雑居ビルの二階にその画廊はあった。20㎡ほどの小さなスペースだけれど、細かな内装デザインにセンスが感じられ好感が持てた。何よりモノトーンのコーデでまとめた若きオーナーが、顔立ちの整った、知性と憂いを感じさせる独特の雰囲気の人物で、ワタシはここで個展を開けることの喜びを改めて噛みしめた。
一ヶ月後に個展を開くことに決まったワタシは、このことを拓也にも伝えようかなと思った。
こればっかりは、きっと彼も喜んでくれるはずだ。
でも……、とワタシは考え直した。
今、自分が真っ先にやらなければいけないことは何か。
それは大急ぎで、個展に出すための作品をセレクトすることだ。こんなチャンス、ワタシの人生には二度と訪れないに決まっている。
それに……拓也への気持ちが以前より薄れているのも、否定のしようのない事実だった。既にワタシの気持ちは、ワタシの作品を認めてくれる人々、とりわけあの若き画廊オーナーに、すっかり方向転換していたのだから。
ワタシのスマホに、拓也からそんなメッセージが届いていた。
最初は嘘に決まってると思って、しばらくの間、様子を見ていたけれど、二人がどこかで会ったり連絡を取り合う気配は、本当になかった。
ワタシは、これで拓也が自分の方を向いてくれるに違いないと思った。
拓也はメールを送ったきり、相変わらず自分を無視し続けた。でも最大のライバルがいなくなったのだから、焦らず拓也への思いを伝えていこうと考えた。
毎日こまめにチェックしている拓也のSNSのアカウントに、変化が現れ始めていた。
以前は頻繁に投稿していた趣味の写真は一切無くなり、代わりに投資や経済関係のニュースや書籍の情報などの投稿が続くようになった。
一方、ワタシのSNSのアカウントにも変化が現れていた。ワタシが過去に投稿した写真へのアクセス数や好評価が急に増え始めたのだ。
以前はほとんど見られることなんてなかったのに。
中には「すごく素敵な写真ですね」とか「構図が斬新!」とか、コメントまでくれる人もいた。それが拓也ならどんなにか良かったのにと思ったけれど、拓也じゃなくても褒められるのは嬉しかった。
やがてコメントをくれる人の中に、プロの写真家や大学教授、キュレーターなども度々登場するようになった。
その中の一人で、現代美術を扱う若い画廊のオーナーから「うちで個展を開きませんか」とお誘いがあった。飛び上がるほど嬉しかったワタシはすぐにOKし、銀座にオープンしたばかりだという彼の画廊に出向いた。
裏通りの雑居ビルの二階にその画廊はあった。20㎡ほどの小さなスペースだけれど、細かな内装デザインにセンスが感じられ好感が持てた。何よりモノトーンのコーデでまとめた若きオーナーが、顔立ちの整った、知性と憂いを感じさせる独特の雰囲気の人物で、ワタシはここで個展を開けることの喜びを改めて噛みしめた。
一ヶ月後に個展を開くことに決まったワタシは、このことを拓也にも伝えようかなと思った。
こればっかりは、きっと彼も喜んでくれるはずだ。
でも……、とワタシは考え直した。
今、自分が真っ先にやらなければいけないことは何か。
それは大急ぎで、個展に出すための作品をセレクトすることだ。こんなチャンス、ワタシの人生には二度と訪れないに決まっている。
それに……拓也への気持ちが以前より薄れているのも、否定のしようのない事実だった。既にワタシの気持ちは、ワタシの作品を認めてくれる人々、とりわけあの若き画廊オーナーに、すっかり方向転換していたのだから。