最近桃李くん、ちょっとしか遊びに誘ってくれないな……。
忙しいのかな?
彼、明るいし、友達も多いからなぁ。
部屋の壁のカレンダーを確認すると、5月20日。遊びに誘ってくれなくなったのは、冬の季節辺りからかな? 一緒にいても何かそわそわしている日もあったし、その頃から遊ぶ頻度が減った。
そして私たちは高校2年生になった。来月には、私の誕生日も来る。
桃李くんと出会ったのは、保育園の時だった。
出会ってからもう、10年以上か。
けっこう経ったんだな――。
出会った時のことをふと思い出す。
*
私は家ではいつでも声を出すことが出来るけれど、人の多いところでは話をすることが出来なかった。
すごく消極的で、周りが自由に遊んでいてもどうやって動けばいいか分からなくなって、じっと辺りを見渡していた。
保育園の時から、気がつけばいつも彼は私の近くにいて、手を差し伸べてくれて。
色々助けてくれていた。
桃李くんが助けてくれた中で、1番記憶に残ってるのは、小学生の時に同じクラスの男子に「なんで喋らないの? 変なの」って言われた時。
自分自身もどうしてなのか、よく分からないし。
本当は周りのみんなみたいに、『普通』みたいに、話せたらいいなって思っていた。心の中では沢山話せるんだよって、言いたかった。
でも何も言い返せなくて。
困っていたら、桃李くんが「優衣花、別に変じゃないし。じゃあ、お前はなんでそんなに歌下手なの?」ってその男子に言い返した。
「うーん。なんでだろ……」
「そんな感じ! 優衣花が喋らない分、俺が喋るから大丈夫だ!」
「なにそれ、桃李意味わかんねー」
桃李くんのお陰で、じめっとしていた空気が一気に解けて、柔らかくて明るい雰囲気になる。
困って身動きとれなくなった私を、さりげなくその時も助けてくれていたな。
その時じっと桃李くんを見つめていると、桃李くんは綺麗な歯を見せた全開の笑顔でこっちをみてくれた。
いつもキラキラしている彼だけど、その時は特に自信が満ち溢れているようで、とても輝いていた。
それから、かな?
少しだけど自然と学校で話せるようになってきたのは。多分、桃李くんのお陰。
でも、それでも上手く話せなかったから中学の時もクラスメイトに「クールで冷たそうだね」って言われたりもした。その時も「そんなことないよ、優衣花は俺たちよりも周りをきちんと見れて、きっと俺たちよりも沢山のことを考えていて……優しいよ」って。
また助けてくれた。
何度も何度も助けてくれた。
そんなことを色々思い出していたら、隣にいてくれるのが当たり前だと思っていたから、最近会えなくて、かなり落ち込んできた。
もしかして、彼女とか出来たのかな?
そしたら桃李くんと遊べなくなっちゃう?
勝手に想像して、もっと落ち込んで胸が痛くなる。私は深いため息をついた。
5月の末、桃李くんから連絡が来た。
『誕生日の日、朝から用事入れないで空けといてね』って。
連絡が来るだけですごく嬉しいのに、私なんかの誕生日を気にしてくれているのかな?
そう考えただけですごく気持ちが高まる。
ちなみに誕生日は、6月11日で日曜日。
その日まで何回もカレンダーを見て、早くその日にならないかな?って思った。
そして、当日になった。
朝9時に、桃李くんが迎えに来てくれた。
「優衣花、おはよ」
「うん、おはよ」
「おはよう、優衣花ちゃん」
家の前に停まっていた白い車の中から声がした。
声の主は、桃李くんのお母さん。
「おはようございます」
桃李くんのお母さんも小さい頃からたくさん話しかけてくれるから、緊張しないで話せる。
「目的地まで1時間ぐらいかかるかな?」
桃李くんのお母さんがそう言った。
どこに向かうんだろう?
忙しいのかな?
彼、明るいし、友達も多いからなぁ。
部屋の壁のカレンダーを確認すると、5月20日。遊びに誘ってくれなくなったのは、冬の季節辺りからかな? 一緒にいても何かそわそわしている日もあったし、その頃から遊ぶ頻度が減った。
そして私たちは高校2年生になった。来月には、私の誕生日も来る。
桃李くんと出会ったのは、保育園の時だった。
出会ってからもう、10年以上か。
けっこう経ったんだな――。
出会った時のことをふと思い出す。
*
私は家ではいつでも声を出すことが出来るけれど、人の多いところでは話をすることが出来なかった。
すごく消極的で、周りが自由に遊んでいてもどうやって動けばいいか分からなくなって、じっと辺りを見渡していた。
保育園の時から、気がつけばいつも彼は私の近くにいて、手を差し伸べてくれて。
色々助けてくれていた。
桃李くんが助けてくれた中で、1番記憶に残ってるのは、小学生の時に同じクラスの男子に「なんで喋らないの? 変なの」って言われた時。
自分自身もどうしてなのか、よく分からないし。
本当は周りのみんなみたいに、『普通』みたいに、話せたらいいなって思っていた。心の中では沢山話せるんだよって、言いたかった。
でも何も言い返せなくて。
困っていたら、桃李くんが「優衣花、別に変じゃないし。じゃあ、お前はなんでそんなに歌下手なの?」ってその男子に言い返した。
「うーん。なんでだろ……」
「そんな感じ! 優衣花が喋らない分、俺が喋るから大丈夫だ!」
「なにそれ、桃李意味わかんねー」
桃李くんのお陰で、じめっとしていた空気が一気に解けて、柔らかくて明るい雰囲気になる。
困って身動きとれなくなった私を、さりげなくその時も助けてくれていたな。
その時じっと桃李くんを見つめていると、桃李くんは綺麗な歯を見せた全開の笑顔でこっちをみてくれた。
いつもキラキラしている彼だけど、その時は特に自信が満ち溢れているようで、とても輝いていた。
それから、かな?
少しだけど自然と学校で話せるようになってきたのは。多分、桃李くんのお陰。
でも、それでも上手く話せなかったから中学の時もクラスメイトに「クールで冷たそうだね」って言われたりもした。その時も「そんなことないよ、優衣花は俺たちよりも周りをきちんと見れて、きっと俺たちよりも沢山のことを考えていて……優しいよ」って。
また助けてくれた。
何度も何度も助けてくれた。
そんなことを色々思い出していたら、隣にいてくれるのが当たり前だと思っていたから、最近会えなくて、かなり落ち込んできた。
もしかして、彼女とか出来たのかな?
そしたら桃李くんと遊べなくなっちゃう?
勝手に想像して、もっと落ち込んで胸が痛くなる。私は深いため息をついた。
5月の末、桃李くんから連絡が来た。
『誕生日の日、朝から用事入れないで空けといてね』って。
連絡が来るだけですごく嬉しいのに、私なんかの誕生日を気にしてくれているのかな?
そう考えただけですごく気持ちが高まる。
ちなみに誕生日は、6月11日で日曜日。
その日まで何回もカレンダーを見て、早くその日にならないかな?って思った。
そして、当日になった。
朝9時に、桃李くんが迎えに来てくれた。
「優衣花、おはよ」
「うん、おはよ」
「おはよう、優衣花ちゃん」
家の前に停まっていた白い車の中から声がした。
声の主は、桃李くんのお母さん。
「おはようございます」
桃李くんのお母さんも小さい頃からたくさん話しかけてくれるから、緊張しないで話せる。
「目的地まで1時間ぐらいかかるかな?」
桃李くんのお母さんがそう言った。
どこに向かうんだろう?



