ゼラリオン王国の王都宿屋。
ルリくん達から、現状の報告連絡が来た。
ミリシャさんの予想通りになって、ルナちゃんとシヤさんはそのままグレイストール領都に、ルリくんは急いでこちらに向かって来ているとの事だ。
ルナちゃんから報酬で、白い宝石を貰ったそうで、ミリシャさんが怪しい笑みを浮かべていた。
報告を受けて、特に変わる事はなく、このまま俺達のコボルトの森に引き込む事は変わらない。
ただ、一つ変わった事と言えば――――
「ソラ様!」
コボルトの森に入ると、俺達を待っていてくれたのは、六十人の子供達だ。
「カーターくん。今日もありがとう」
「い、いいえ! とても光栄です!」
カーターくんは彼らを代表して答える。みんなも笑顔で応えてくれる。
彼らは、王都の盗賊ギルドを掌握してから、仲間になって貰った孤児達の狩りメンバーである。
実は、盗賊ギルドに関わっている孤児達は全員で五百人を超える。
その中でも、十歳を越えていて、尚且つ戦闘に興味がある子達でパーティーを組ませて、冒険者として活動して貰う事にしたのだ。
ただ、冒険者と言っても、ずっと僕に経験値を送っているので、サブ職能だけレベルが上がり、メイン職能はほぼ常に1に近い。
なので周りの目を気にせず、六人ずつパーティーを組み、同じフロアで狩りを行ってくれている。
彼らもここ数日で随分と慣れたようで、コボルトの森で戦えるくらい強くなっていた。
ここ最近、毎日俺達と一緒にコボルトの森に籠って、俺のレベル上げを加速させてくれているのだ。
その中のカーターくんは、レボルシオン領で頑張っている弐式のリーダーであるメイリちゃんと同等の指揮力があり、王都孤児達を纏めた『銀朱の蒼穹・肆式』のリーダーになってくれている。
「では、みんな、本日も油断せずに、何かあったらすぐにフォローし合うように!」
「「「「はい!」」」」
「よろしく!」
「「「「はい!」」」」
肆式がすぐにコボルトの森に広がる。
中々壮観な景色だ。
俺達もいつものペアに分かれて、レベル上げを勤しんだ。
◇
次の日。
ガチャッ
部屋に響く窓が開く音が響き、部屋の主は自らの愛剣に手をかざす。
「初めまして、ビズリオ様。わたくしは『シュルト』の一員、『ブルーダー』と申します」
ビズリオの前に影から現れた人物は、今まで何度か出会った『シュベスタ』にどこか似た雰囲気をかもしだしていた。
この時のビズリオは、心底驚いていた。
そもそも『シュベスタ』は、希代の暗殺者であると、初めて見た時からずっと思っていた。
なのに。
いま目の前にいる男と思われる者もまた希代の暗殺者に見える。
そんな事があり得るのだろうかと、彼に答える事も忘れず、心を落ち着かせようとする。
「『ブルーダー』か。『シュベスタ』の仲間だな?」
「はっ、先日の依頼の件で、わたくしが代理に」
「そうか。進展があったからという事か」
「はっ、物証は持って来られませんでしたが、一つは街の商会が全て隣国からの輸入をしている商会ばかりでした。さらにわたくしが領都の城を探っていた時、一人の騎士を見つけました」
「一人の騎士?」
「はっ、彼は自分を、イグニ・セイオロンと名乗り出ていました」
「やはりイグニ殿は捕まっていたのか……」
「特に外傷はありませんでした。ただ捕まっているという雰囲気でした」
「そうか。それだけで十分な物証だ。感謝する」
「はっ、盗賊ギルドでお待ちしておりますので、必要あらば、いつでも声を掛けてくださいませ」
「ああ」
『ブルーダー』は『シュベスタ』同様、部屋から消え去る。
「…………希代の暗殺者が二人だと!?」
ビズリオは目の前の机を激しく叩いた。
その衝撃に、机は半分に割れてしまう。
「ありえるのか!? あんな暗殺者を二人も抱えて…………二人いるという事は…………三人目がいても不思議ではない。『シュルト』め…………これ程の戦力だったとは…………」
一人なら、ビズリオ一人で何とか対応出来るだろう。
だが、あれが同じ強さを持ったもう一人がいるとなると、自分ですら暗殺されかねない。
それは考え方によっては、最強の味方ではなく、最悪の敵になりえる。
本来なら相手より高い力量で話し合うからまともな商談になるのだが、これではそれが難しくなってしまう。
ビズリオは現状の事を王に報告する事を決めた。
◇
「ルリくん、おかえり。そして、お疲れ様」
「ソラ兄さん、みんな、ただいま」
「「「おかえり~!」」」
宿屋の食堂に集まった俺達の所に帰って来たルリくん。
今朝帰って来て、そのままビズリオ様の下に行って来たルリくんは、来る間十分休んだと、そのままコボルトの森に付いて来たいという。
出来れば休んで欲しいんだけどな…………みんなも頑張っているから、俺も頑張りたいとルリくんは言うけど、十分頑張ってくれている。
ただ、一人で宿屋で休んでいても寂しいかも知れないからね。
俺達は食事を終え、コボルトの森に到着した。
ルリくんと会ったカーターくんは目を輝かせて喜んだ。
肆式はみんなルリくんが大好きだからね。
いつもよりやる気に満ちた肆式が、とても頼もしかった。
俺達も狩りを始め、ルリくんの相棒をどうしようかなと思ったら、一人の方が動きやすいとの事で、仕方なく了承すると、ルリくんが闇に消え去った。
慣れたようで、あんなに綺麗に消えるんだなと感心する。
インペリアルナイトに会いに行けるくらいの実力があるのは、やっぱり凄い事なのかも知れないね。
そして、何故かルリくんが帰って来ただけで、コボルトの森から得られる経験値が倍増したのは、とても不思議に思えた。
ルリくん達から、現状の報告連絡が来た。
ミリシャさんの予想通りになって、ルナちゃんとシヤさんはそのままグレイストール領都に、ルリくんは急いでこちらに向かって来ているとの事だ。
ルナちゃんから報酬で、白い宝石を貰ったそうで、ミリシャさんが怪しい笑みを浮かべていた。
報告を受けて、特に変わる事はなく、このまま俺達のコボルトの森に引き込む事は変わらない。
ただ、一つ変わった事と言えば――――
「ソラ様!」
コボルトの森に入ると、俺達を待っていてくれたのは、六十人の子供達だ。
「カーターくん。今日もありがとう」
「い、いいえ! とても光栄です!」
カーターくんは彼らを代表して答える。みんなも笑顔で応えてくれる。
彼らは、王都の盗賊ギルドを掌握してから、仲間になって貰った孤児達の狩りメンバーである。
実は、盗賊ギルドに関わっている孤児達は全員で五百人を超える。
その中でも、十歳を越えていて、尚且つ戦闘に興味がある子達でパーティーを組ませて、冒険者として活動して貰う事にしたのだ。
ただ、冒険者と言っても、ずっと僕に経験値を送っているので、サブ職能だけレベルが上がり、メイン職能はほぼ常に1に近い。
なので周りの目を気にせず、六人ずつパーティーを組み、同じフロアで狩りを行ってくれている。
彼らもここ数日で随分と慣れたようで、コボルトの森で戦えるくらい強くなっていた。
ここ最近、毎日俺達と一緒にコボルトの森に籠って、俺のレベル上げを加速させてくれているのだ。
その中のカーターくんは、レボルシオン領で頑張っている弐式のリーダーであるメイリちゃんと同等の指揮力があり、王都孤児達を纏めた『銀朱の蒼穹・肆式』のリーダーになってくれている。
「では、みんな、本日も油断せずに、何かあったらすぐにフォローし合うように!」
「「「「はい!」」」」
「よろしく!」
「「「「はい!」」」」
肆式がすぐにコボルトの森に広がる。
中々壮観な景色だ。
俺達もいつものペアに分かれて、レベル上げを勤しんだ。
◇
次の日。
ガチャッ
部屋に響く窓が開く音が響き、部屋の主は自らの愛剣に手をかざす。
「初めまして、ビズリオ様。わたくしは『シュルト』の一員、『ブルーダー』と申します」
ビズリオの前に影から現れた人物は、今まで何度か出会った『シュベスタ』にどこか似た雰囲気をかもしだしていた。
この時のビズリオは、心底驚いていた。
そもそも『シュベスタ』は、希代の暗殺者であると、初めて見た時からずっと思っていた。
なのに。
いま目の前にいる男と思われる者もまた希代の暗殺者に見える。
そんな事があり得るのだろうかと、彼に答える事も忘れず、心を落ち着かせようとする。
「『ブルーダー』か。『シュベスタ』の仲間だな?」
「はっ、先日の依頼の件で、わたくしが代理に」
「そうか。進展があったからという事か」
「はっ、物証は持って来られませんでしたが、一つは街の商会が全て隣国からの輸入をしている商会ばかりでした。さらにわたくしが領都の城を探っていた時、一人の騎士を見つけました」
「一人の騎士?」
「はっ、彼は自分を、イグニ・セイオロンと名乗り出ていました」
「やはりイグニ殿は捕まっていたのか……」
「特に外傷はありませんでした。ただ捕まっているという雰囲気でした」
「そうか。それだけで十分な物証だ。感謝する」
「はっ、盗賊ギルドでお待ちしておりますので、必要あらば、いつでも声を掛けてくださいませ」
「ああ」
『ブルーダー』は『シュベスタ』同様、部屋から消え去る。
「…………希代の暗殺者が二人だと!?」
ビズリオは目の前の机を激しく叩いた。
その衝撃に、机は半分に割れてしまう。
「ありえるのか!? あんな暗殺者を二人も抱えて…………二人いるという事は…………三人目がいても不思議ではない。『シュルト』め…………これ程の戦力だったとは…………」
一人なら、ビズリオ一人で何とか対応出来るだろう。
だが、あれが同じ強さを持ったもう一人がいるとなると、自分ですら暗殺されかねない。
それは考え方によっては、最強の味方ではなく、最悪の敵になりえる。
本来なら相手より高い力量で話し合うからまともな商談になるのだが、これではそれが難しくなってしまう。
ビズリオは現状の事を王に報告する事を決めた。
◇
「ルリくん、おかえり。そして、お疲れ様」
「ソラ兄さん、みんな、ただいま」
「「「おかえり~!」」」
宿屋の食堂に集まった俺達の所に帰って来たルリくん。
今朝帰って来て、そのままビズリオ様の下に行って来たルリくんは、来る間十分休んだと、そのままコボルトの森に付いて来たいという。
出来れば休んで欲しいんだけどな…………みんなも頑張っているから、俺も頑張りたいとルリくんは言うけど、十分頑張ってくれている。
ただ、一人で宿屋で休んでいても寂しいかも知れないからね。
俺達は食事を終え、コボルトの森に到着した。
ルリくんと会ったカーターくんは目を輝かせて喜んだ。
肆式はみんなルリくんが大好きだからね。
いつもよりやる気に満ちた肆式が、とても頼もしかった。
俺達も狩りを始め、ルリくんの相棒をどうしようかなと思ったら、一人の方が動きやすいとの事で、仕方なく了承すると、ルリくんが闇に消え去った。
慣れたようで、あんなに綺麗に消えるんだなと感心する。
インペリアルナイトに会いに行けるくらいの実力があるのは、やっぱり凄い事なのかも知れないね。
そして、何故かルリくんが帰って来ただけで、コボルトの森から得られる経験値が倍増したのは、とても不思議に思えた。