「アース様、王国の町が見えました。急いで制圧します」
「やっとか! 殺すのは俺に経験値を吸わせてからにしろよ!」
「…………はっ」
騎士の顔が曇る。
目の前の『転職士』は、下民だが、現在は上司である。
断る事は出来ない。
このままでは、目の前の町の民を皆殺しにする事になるだろう。
他国民とはいえ、戦いに関係のない民を殺す事を良く思わない騎士は悔しさを感じる。
しかし、騎士の想いとは裏腹に、町の様子が少し変な事に気付いた。
「待って。あの町。少し変だ」
「あ? 変? どうした!」
アースが声を荒げる。
「アース様、お静かに。伏兵がいます」
「っ!?」
騎士全員が剣を抜く。
そして、周りと町の気配を辿った。
「さすがは帝国の騎士様ですね」
彼らの前に一人の美しい金髪の女性が前に現れた。
この女性はいつからそこに!?
騎士達は目の前の強敵に見える彼女を前に警戒心を最大限高める。
彼女の言葉から、自分達の正体は既にバレていると思っていいからである。
「そこから後ろを向いて戻るのなら――――そこの騎士様方々の命は見逃しましょう」
見た目なら美しい女性だが、その中身はとんでもない者だと騎士達は勘づいていた。
だからこそ、彼女の申し出は喉から手が出るほど欲しいモノでもあった。
しかし、彼らは騎士である。
その条件を飲めば、騎士として帝国で生きる事は不可能だろう。
「残念ながら、その条件は飲めませんね……」
「……そうですか。後ろの男は貴方達も好きではないように見えますが?」
「……そういう事は問題ではないのです。我々の団長の命令ですから」
「そうですか。折角の騎士が勿体ないですね」
既に勝った気でいる彼女。
しかし、この底知れぬ実力差は何度も感じた事がある
――――自分達の団長アイザック・エンゲイトとの稽古を思い出す。
帝国でも最強を誇る騎士の一人である。
そんな彼との稽古は辛かったが、楽しいモノだった。
だから彼ら一人一人、アイザックの強さを理解している。
なのに、そのアイザックと似た強さを醸し出している目の前の美少女に違和感を感じる。
「――――まさか、銀朱の姫か」
思わず、そう口にしてしまう。
他の騎士達の顔からますます余裕がなくなる。
「銀朱の姫? ごめんなさい。そういう二つ名は初めて聞くものですから」
「……『銀朱の蒼穹』でマスターを献身的に支えている剣聖が一人いると聞く。彼女はその美しさから我々帝国では『銀朱の姫』と呼ばれているのだ」
「そうでしたか。教えてくださりありがとうございます。そうですね。あなた方が仰っていたその姫というのは――――間違いなく私だと思います」
その答えに騎士は冷や汗が溢れ止まらない。
『剣聖』と言えば、世界最強の剣士である。
かのアイザックも同様に『剣聖』である。
騎士達にはその強さが身に沁みて知っているのだ。
「…………五番まで残る。他は退却」
一番前の騎士がそう告げると、他の騎士は間髪入れず行動に出る。
正面の騎士に他の四人の騎士が居残り、他の五人が逃げ出す。
その中の一人がアースを担いで逃げ去る。
「なっ!? お、おい! あんな女一人に恐れをなして逃げるのか!!」
何も知らぬアースの声だけが空しく響いた。
「……そうですか。分かりました。あなた方の勇気に免じて、私は追わないであげます」
「…………全員、命を捧げよう!」
「「「「はっ!」」」」
五人の騎士がフィリアに仕掛ける。
何も言わずとも、五人は息のあった動きが洗練された訓練を受けている事を示す。
フィリアは腰に掛かっていた二振りの剣を取り出す。
その圧倒的な威圧感が騎士達を襲うが、それに決して怖気づく事なく、騎士達はフィリアに剣を振り下ろす。
二人の剣はフィリアのそれぞれの剣によって防がれる。
剣を止められている間に、両脇から二人の騎士が飛び出した。
一人は突き攻撃、一人はなぎ払い。
フィリアは内心、この連携の速さに感服するほどだった。が、その攻撃がフィリアに届く事はなく、剣の柄から伸びる包帯が二人をはねのける。
「包帯が金属のように固い!」
一人の騎士がそう声をあげる。
情報共有も簡潔且つ正確に伝える騎士達。
それから数分間に渡る攻防が続く。
騎士達の懸命な攻撃にも関わらず、彼女は一切動揺する事もなく、淡々と跳ね返した。
「あなた方には聞きたい事があるので、このまま捕縛させて貰いますよ?」
「……我々五人相手にそこまで余裕か!」
騎士達はフィリアから距離を取る。
「「「「「上級騎士奥義! 陣撃破閃!」」」」」
五人の騎士の剣が赤黒く光る。
同時に飛び上がった五人の攻撃が大地を震わせる音を響かせながらフィリアに襲い掛かった。
「剣聖奥義、朧月ノ夜風』
風景が歪み、数秒後戻った風景の中には全員傷だらけの騎士五人が倒れていた。
「取り敢えず、これで五人捕縛だね」
フィリアの言葉が終わると、何処からか現れたアムダとイロラがすぐさま騎士達を捕縛した。
「やっとか! 殺すのは俺に経験値を吸わせてからにしろよ!」
「…………はっ」
騎士の顔が曇る。
目の前の『転職士』は、下民だが、現在は上司である。
断る事は出来ない。
このままでは、目の前の町の民を皆殺しにする事になるだろう。
他国民とはいえ、戦いに関係のない民を殺す事を良く思わない騎士は悔しさを感じる。
しかし、騎士の想いとは裏腹に、町の様子が少し変な事に気付いた。
「待って。あの町。少し変だ」
「あ? 変? どうした!」
アースが声を荒げる。
「アース様、お静かに。伏兵がいます」
「っ!?」
騎士全員が剣を抜く。
そして、周りと町の気配を辿った。
「さすがは帝国の騎士様ですね」
彼らの前に一人の美しい金髪の女性が前に現れた。
この女性はいつからそこに!?
騎士達は目の前の強敵に見える彼女を前に警戒心を最大限高める。
彼女の言葉から、自分達の正体は既にバレていると思っていいからである。
「そこから後ろを向いて戻るのなら――――そこの騎士様方々の命は見逃しましょう」
見た目なら美しい女性だが、その中身はとんでもない者だと騎士達は勘づいていた。
だからこそ、彼女の申し出は喉から手が出るほど欲しいモノでもあった。
しかし、彼らは騎士である。
その条件を飲めば、騎士として帝国で生きる事は不可能だろう。
「残念ながら、その条件は飲めませんね……」
「……そうですか。後ろの男は貴方達も好きではないように見えますが?」
「……そういう事は問題ではないのです。我々の団長の命令ですから」
「そうですか。折角の騎士が勿体ないですね」
既に勝った気でいる彼女。
しかし、この底知れぬ実力差は何度も感じた事がある
――――自分達の団長アイザック・エンゲイトとの稽古を思い出す。
帝国でも最強を誇る騎士の一人である。
そんな彼との稽古は辛かったが、楽しいモノだった。
だから彼ら一人一人、アイザックの強さを理解している。
なのに、そのアイザックと似た強さを醸し出している目の前の美少女に違和感を感じる。
「――――まさか、銀朱の姫か」
思わず、そう口にしてしまう。
他の騎士達の顔からますます余裕がなくなる。
「銀朱の姫? ごめんなさい。そういう二つ名は初めて聞くものですから」
「……『銀朱の蒼穹』でマスターを献身的に支えている剣聖が一人いると聞く。彼女はその美しさから我々帝国では『銀朱の姫』と呼ばれているのだ」
「そうでしたか。教えてくださりありがとうございます。そうですね。あなた方が仰っていたその姫というのは――――間違いなく私だと思います」
その答えに騎士は冷や汗が溢れ止まらない。
『剣聖』と言えば、世界最強の剣士である。
かのアイザックも同様に『剣聖』である。
騎士達にはその強さが身に沁みて知っているのだ。
「…………五番まで残る。他は退却」
一番前の騎士がそう告げると、他の騎士は間髪入れず行動に出る。
正面の騎士に他の四人の騎士が居残り、他の五人が逃げ出す。
その中の一人がアースを担いで逃げ去る。
「なっ!? お、おい! あんな女一人に恐れをなして逃げるのか!!」
何も知らぬアースの声だけが空しく響いた。
「……そうですか。分かりました。あなた方の勇気に免じて、私は追わないであげます」
「…………全員、命を捧げよう!」
「「「「はっ!」」」」
五人の騎士がフィリアに仕掛ける。
何も言わずとも、五人は息のあった動きが洗練された訓練を受けている事を示す。
フィリアは腰に掛かっていた二振りの剣を取り出す。
その圧倒的な威圧感が騎士達を襲うが、それに決して怖気づく事なく、騎士達はフィリアに剣を振り下ろす。
二人の剣はフィリアのそれぞれの剣によって防がれる。
剣を止められている間に、両脇から二人の騎士が飛び出した。
一人は突き攻撃、一人はなぎ払い。
フィリアは内心、この連携の速さに感服するほどだった。が、その攻撃がフィリアに届く事はなく、剣の柄から伸びる包帯が二人をはねのける。
「包帯が金属のように固い!」
一人の騎士がそう声をあげる。
情報共有も簡潔且つ正確に伝える騎士達。
それから数分間に渡る攻防が続く。
騎士達の懸命な攻撃にも関わらず、彼女は一切動揺する事もなく、淡々と跳ね返した。
「あなた方には聞きたい事があるので、このまま捕縛させて貰いますよ?」
「……我々五人相手にそこまで余裕か!」
騎士達はフィリアから距離を取る。
「「「「「上級騎士奥義! 陣撃破閃!」」」」」
五人の騎士の剣が赤黒く光る。
同時に飛び上がった五人の攻撃が大地を震わせる音を響かせながらフィリアに襲い掛かった。
「剣聖奥義、朧月ノ夜風』
風景が歪み、数秒後戻った風景の中には全員傷だらけの騎士五人が倒れていた。
「取り敢えず、これで五人捕縛だね」
フィリアの言葉が終わると、何処からか現れたアムダとイロラがすぐさま騎士達を捕縛した。