◆ミリシャ◆

 ソラくんのレボルシオン領も順調に安定を見せる。

 でも一つ気になるのは、王国にとって、このレボルシオン領は非常に価値がある地域のはずである事。

 元々私達が過ごしていたセグリス町は、王都からあまりにも遠く、ボア肉を運ぶのも大変だ。

 セグリス町のボア肉が王都まで運ばれない最も大きな理由は、ここ、レボルシオン領にある。

 レボルシオン平原から取れるボア肉はとても多い。

 そんな平原を持つレボルシオン領をあんなに簡単に手放す王国に、今までギルドで働いてきた私の勘が危ないとさえ感じてしまう。

 そんな王国の件もあるので、私は出来る限り『銀朱の蒼穹』を強くする事に励んだ。

 『弐式』の中に、今年入った孤児達も入れる事で、『弐式』のメンバーを増やす。

 そうすれば、自然と時間が経つにつれ、戦力が増えていくはずだから。

 それにしても、『転職士』を持つソラくんに限界はないのだろうか?

 これだけの人数を支配下に置いても、全く問題なく進めている。

 『参式』の人数が増えた時にはどうなるか少しだけ心配したけど、参式のメンバー全員を傘下にしても、ソラくんは全く問題なかった。

 …………これは私個人の感想だけれど、ソラくんは本当に普通(・・)の『転職士』なのだろうか?

 もし、転職士が元々こんな強い存在なら、どうして今まで冷遇されていたのだろう?

 ソラくん曰く、フィリアちゃんがいてくれたからレベルも上げられたと言うけども、私が思うにソラくんならいずれここまでたどり着いたのではないかと思う。

 今までもいた『転職士』が羽ばたけなかった理由。

 もしかして、その秘密にソラくんの強さを紐解く事があるのかも知れないね。

 最近ではレベル10を目指して頑張っていて、サブ職能のレベルを10まで上げてみようと頑張ってくれている。

 その試験対象となっているのが、弐式のメイリちゃん。

 既にレベルが8までなら上げられるレボルシオン領で、経験値移動を使い、サブ職能のレベルを主に上げ始めた。

 レベル10になるのがとても楽しみでもある。


 カールくんに告白を受けて、『銀朱の蒼穹』に入り、今までの私では考えられないくらい世界を見れるこの生活。

 本当に嬉しく思う。

 ……カールくんに捨てられないように、私も頑張らなくちゃね。



 ◇



 ◆カシア◆

 最近ソラくんの屋敷の食堂では、我々の同胞の笑い声が絶えない。

 それもそうで、私達はソラくんのおかげで幸せな生活を送れているのだ。

 本当に感謝してもしきれない。

 あの帝国で奴隷生活を送っていた頃は、食事さえも満足に食べさせて貰えず、目が覚めたらずっと働かされていた。

 荷物運び、掃除、狩り、休む間もなくずっと働き続けていた私達が、今ではこうしてゆっくり休憩をしたり、狩りで得たお金で好きなモノを買う事だって出来る。

 しまいには、ギルドも通えるようになり、ギルドを通せば、今まで手に入らなかったモノを購入する事だって出来る。

 ソラくんの力は本当に凄い。

 私だけでなく、エルロや仲間達もこれまでとは比べないほど強くしてくれた。

 私には理解出来なかったが、ソラくんに『けいけんち』というモノを渡すと弱くなるけど、代わりに今までとは比べものにならないくらい早さ(・・)で強くなれる。

 その理由は『れべる』というモノにあるそうだ。

 『れべる』が上がらないと強くならない。それはつまり、『れべる』を上げられないと一生強くなる事もないって事で、奴隷時代の生活を送っていても、私の持った最上級職能『獣王』だったとしても、あまり意味を持たないのだ。

 でも今は全く違う。

 あの頃、何年も掛かって上がった『れべる』は、今じゃ数時間――――いや、数分ですら取り戻せるようになった。

 強くなれる場所。休める場所。そして、仲間と強きライバル(フィリア)がいるここは、我々にとってまさに天国に等しい。

 我々がソラくんの傘下『参式』になった時、参謀であるミリシャ殿から、「これからの『銀朱の蒼穹』は大きな敵が増えるかも知れないの。だから、ソラくんの為にもみんな強くなる事を意識しておいてほしい」と言われている。

 大きな敵が何を指すのかは分からない。

 でも、それが仮にあの帝国だったとしても、私は、私達は全力でソラくんの為に尽くそうと誓った。



 ◇



 ◆ガイア◆

 成長する武器。

 それは一言で言えば、魅力的な言葉だろう。

 だが、現実はそうではない。

 武器は、単純に言えば『消耗品』だ。

 成長する武器が出来た場合、成長する前に、先に折れて(・・・)しまうのがオチだ。

 なのにだ。

 俺が二度目に作った成長する武器は、一度目よりも遥かに異次元なモノだった。

 双剣を使う剣聖。

 長年、色んな上級職能の武器を作って来たが、『双剣』というのを作ったのは人生初だし、何ならこの先にあの武器を越える武器が作れるとは到底思えない。

 あれは――――まさしく、神が与えたような武器だ。

 それを俺がこの手で産んだ。

 鍛冶屋としてこれほど魅力的な出来事はない。

 しかし、俺はまだここで満足する訳にはいかない。

 あの成長する双剣がどこまでいくのか、この目で確かめなくてはならない。


 ――――『銀朱の蒼穹』。

 本当に面白れぇクランに入れたものだ。