フィリアの双剣が完成まで暫く掛かるとの事で、ガイアさんから珍しい素材を取って来るようにお願いされた。ほぼ命令だったけど。

 レボルシオン領でまだ行った事がない場所に行く事となった。

 西にあるダンジョン『石の遺跡』から更に西に進んだところにホレ村という小さな村があり、そこから真っすぐ北に進んだ場所にある『ハイオークの平原』にやってきた。

 レボルシオン領唯一のBランク上位魔物が住んでいる場所だ。

 この平原にフロアボス『ハイオーク』が出現する。強さは『フォースレイス』と同等の強さを誇る。

 ただ『フォースレイス』の場合、その強さは眷属無限召喚というのもあっての強さだが、通常Bランク上位魔物は単体での強さとなる。

 冒険者ギルドから狩場情報を買い、ある程度の知識は得た。

 出来ればフィリアの双剣が完成してから狩りたかったけど、ハイオークの牙が欲しいから取ってこいって言われてしまったので戦うしかない……。

 今回は念の為に、『弐式』の十二人と、『参式』から上位職能を持つ二人に来て貰い、二十名の大勢で平原にやってきた。



「フロアボス以外はCランクのオークが大量に現れるから、そこは弐式のみんなお願いね」

「「「「はい!」」」」

 前衛が前に出て、後衛がしっかり全方位に対応する。

 『銀朱の蒼穹』らしい布陣だね。


 平原の遥か向こうに一際大きいオークの頭が見える。恐らくはあれがフロアボスの『ハイオーク』なのだろう。

 そこに辿り着くまで、通常オークも多く見えた。

「では作戦開始!」

 俺の号令で『弐式』の十二人が前に飛び出した。

 それに合わせて俺達も付いて行く。

「ロイドくん! 一体目の強さを調べたい! お願い!」

「あいよ! シールドバッシュ!」

 メイリちゃんの指示で最初のオークを盾で殴るロイドくん。

 盾で殴られたオークが飛ばされる。

「本体が空中に飛んだ! 強さは弱と判断!」

「「「「あい!」」」」

 俺には何の事なのか分からない事を話し合う『弐式』。

 『弐式』ならではの作戦も沢山あるみたいだね。

 それから前衛が先に前に出る事はなく、『ハイオーク』に向かって走っている間は、後衛の遠距離攻撃がメインだった。

「ねえねえ、メイリちゃん」

「はい!」

「さっきの強さが強ならどうなるの?」

「その場合は、敵の前で必ず全員止まりますし、後衛が先に攻撃はしません。必ず前衛が動ける状態で戦い始めます」

 わぁ……メイリちゃんって、もしかして俺より指揮官に向いているんじゃ……。

 メイリちゃんは直ぐに次の指示を出して、次々とオークたちを倒していった。

 オークは消滅系の魔物で、その場にオークの牙が残る。

 時折、オークの心臓という石が落ちるんだけど、それは鋼鉄までの武器や防具を修復してくれるアイテムなので、非常に人気が高い。

 鍛冶屋が多くないこの世界で、一番メインの鋼鉄までの金属の武器や防具のメンテナンスは欠かせないのだ。

 今回は狙いが『ハイオーク』なので、オークの牙は取り敢えず無視して進む。たまに出るオークの心臓だけ『参式』から参戦したカシアさんとエルロさんが素早く拾ってくれた。

 二人とも見ないうちにとても強くなっている。

 実は二人は獣人族の種族職能の『獣人』ではないのだ。

 その更に上、エルロさんが『獣強人』で上級職能であり、カシアさんが『獣王』で最上級職能だ。

 ただ種族職能は基本職能よりも少し下みたい。

 それでも獣王となる最上級職能を持つカシアは、レベルが低かったのもあってフィリアにボコボコにされてただけで、フィリアと同じレベルだと、ほぼ同じくらいの力だった。それでもフィリアにはボコボコにされていたけど……。

 そんな二人はまだ力を蓄えている。

 サブ職能は『武道家』にしていて、既に『集中』というスキルが使えて、そのスキルを使っている間はフィリアでも勝てない程には強い。

 『弐式』が全力で道を開いて、俺達は遂に『ハイオーク』のあと一歩のところまで辿り着いた。


「さて、『ハイオーク』はここに来る間に話したように、単騎でとても強い魔物らしい。見るからに強そうだからね」

「受け止めるのは難しいかな」

「基本的にいなすようにかな。最初はフィリアを主軸に仕掛ける! 他はタイミングを見て、仕掛けるよ!」

「「「「はい!」」」」

「ラビは攻撃よりは、前衛にバリアを重点的にね!」

「ぷー!」

「行くぞ!」



 俺の号令に合わせて、フィリアが飛び出した。

 初速は遅めで走る。

 それに続き、見え始めたハイオーク。

 フィリアがハイオークにぶつかる前に、『弐式』の弓士と魔法使いが周囲のオークを殲滅し始めた。

 ハイオークと戦っている間はオークは邪魔だからね。

 周囲のオークもどんどん減り、遂にフィリアがハイオークに双剣を振り下ろした。


 肉が斬られる音がして、ハイオークの叫び声が響く。

 その圧倒的な威圧感が僕達を襲った。