『銀朱の蒼穹』を訪れた一団が冒険者ギルドにいるとの連絡を貰ったので、フィリア達と一緒にギルドに向かった。
ギルドに入ると、受付嬢のミミーさんが出迎えてくれて、早速案内してくれた。
何故か向かうのだが、冒険者ギルドから離れるのに少し不安を感じる。
街に出て、そのまま向かったのは――――
とある鍛冶屋だった。
◇
「お、やっと来たか! ……ん? ガキばっかじゃねぇか」
金属を叩く音が外まで響いている鍛冶屋に入ると、中で厳ついおっちゃんが待っていた。
その奥では多くの若者が懸命に金属を叩いていて、その音の迫力と雰囲気に圧倒される。
「お待たせしました。こちらが『銀朱の蒼穹』の皆様です」
「ちっ…………当てが外れたな。まさかこんなガキどもだとは」
紹介されてすぐに舌打ちをする男性。
最初の印象は、まあ……最悪だよね。
「俺は『銀朱の蒼穹』のリーダーのソラです。俺達を探したと聞いてますが?」
「…………ああ、俺は鍛冶屋。『爆炎の鍛冶屋』と呼ばれているガイアという」
ガイアさんと名乗った男性。
彼は二つ名を名乗った。
この二つ名は、その業界でも多くの実績を残した人だけが名乗る事を許され、とても名誉ある事だ。
それだけで彼が凄腕の鍛冶屋なのが分かる。
更に外見とオーラから見ても凄腕の鍛冶屋なのが分かるくらいだ。
「それで、二つ名を持つ鍛冶屋がどうして俺達を?」
「…………」
「こほん、ソラくん」
ミリシャさんが一歩前に出た。
「『爆炎の鍛冶屋』という二つ名は、冒険者ギルドでもある意味有名なの」
「へぇー、有名なんですね」
ミリシャさんの言葉を聞いたガイアさんはまた「ちっ」と舌打ちをする。
「ええ。禁忌魔剣を作った男としてね」
ミリシャさんから出た言葉が意外で驚いたが、一瞬ガイアさんの顔に悲しみが覗けた。
「ちっ、あれは…………はぁ、いいや。おーい! お前ら! 出て行くぞ!」
懸命に金属を叩いている人達に大声をあげるガイアさん。
そんなガイアさんの前に立った。
「あん?」
「貴方は俺達に用があったんですよね? まだ聞いてませんけど?」
「は? お前、あの姉ちゃんから聞いてなかったのか!? 俺は魔剣を作った男だぞ!?」
「それがどうかしたんですか?」
「は?? 魔剣は禁忌の一つで、それを作った人間が……」
「もし貴方が禁忌を冒しているなら、ここには来れないと思います。それに――」
「それに……?」
「だって、貴方はあそこで頑張っている皆さんから、とても親しまれているみたいですから。人から親しまれる人に悪い人がいるとは思いません。貴方が悪人にも見えません」
俺は思う事をガイアさんに伝えた。
ガイアさんの目が大きくなってから目を瞑り暫く考え込んだ。
金属を叩いていた人達の手が止まっている事もあり、鍛冶場内が静寂に包まれる。
彼らも俺達もガイアさんに注目した。
そして、ガイアさんが目を開ける。
「俺達が仕えるクランを探していた。ここにはまだ新しいにも関わらず、大きな偉業を成し遂げたクランがあると聞いて来てみた。しかし、まさか……そのクランマスターが子供だったとは……」
この世界の鍛冶屋は、一般人では決してなれない。
鍛冶屋になれるのは、ドワーフ族と職能『鍛冶屋』を持った人だけだ。
ドワーフ族は種族スキル『鍛冶』があるので、鍛冶を行える。
しかし、人族は鍛冶を行おうとしても完成せず、いくら金属を叩いても自分が思い描く形にならないのだ。
唯一、職能『鍛冶屋』を授かった人だけが、辛うじて鍛冶を行えるのだ。
そういう事もあって、人族は他種族よりも装備が弱いと言われている。
それでも人族が他の種族よりも繁栄している理由は少数の強者と少数の神々の装備のおかげだ。
そんな人族に数少ない『特殊職能』の一つ、『鍛冶屋』。
俺の職能『転職士』も特殊職能の一つである。
職能は大きく『基本職能』と『特殊職能』に分かれる。
基本職能は単純に言えば、一般的に職能の中で数が多い職能を指すんだけど、俺の『転職』で転職出来るのが、この基本職能という事になる。
余談にはなるが、中級職能の中の召喚士は今まで特殊職能と呼ばれていたが、転職できた。
つまり、召喚士は特殊職能ではなかったという事になる。
そして、特殊職能は単純に、俺が転職させられない職能を指す。
現在、俺は下級と中級しか転職させられないので、もしこの先『上級職能』が転職可能になれば、上級職能の基本職能と特殊職能も知る事となるだろう。
少なくとも『鍛冶屋』は特殊職能な為、転職させられないのだ。
「いいですよ? 俺達も凄腕の鍛冶屋なら大歓迎ですから」
「…………いや、悪いがそれは俺が認めねぇ」
「ふむ……それでは何か条件を出されるんですか?」
「ああ。お前が子供だから、じゃねぇ。俺が仕えるに相応しいか相応しくないか試させて貰う。それでいいか?」
「いいですよ」
俺の即答にガイアさんが少し驚く。
「……俺はお前の事を子供だと揶揄した。それでもいいというのか?」
「そんなの気にも止めてません。だって、俺がまだ成人していない事は事実ですし、ガイアさんが思っているようなクランマスター像ではない事くらい知っています。ですが、俺には俺の強さがあります。それを証明出来れば、ガイアさんはきっと俺達の力になってくれると思いますから」
ガイアさんが不敵な笑みを浮かべた。
ギルドに入ると、受付嬢のミミーさんが出迎えてくれて、早速案内してくれた。
何故か向かうのだが、冒険者ギルドから離れるのに少し不安を感じる。
街に出て、そのまま向かったのは――――
とある鍛冶屋だった。
◇
「お、やっと来たか! ……ん? ガキばっかじゃねぇか」
金属を叩く音が外まで響いている鍛冶屋に入ると、中で厳ついおっちゃんが待っていた。
その奥では多くの若者が懸命に金属を叩いていて、その音の迫力と雰囲気に圧倒される。
「お待たせしました。こちらが『銀朱の蒼穹』の皆様です」
「ちっ…………当てが外れたな。まさかこんなガキどもだとは」
紹介されてすぐに舌打ちをする男性。
最初の印象は、まあ……最悪だよね。
「俺は『銀朱の蒼穹』のリーダーのソラです。俺達を探したと聞いてますが?」
「…………ああ、俺は鍛冶屋。『爆炎の鍛冶屋』と呼ばれているガイアという」
ガイアさんと名乗った男性。
彼は二つ名を名乗った。
この二つ名は、その業界でも多くの実績を残した人だけが名乗る事を許され、とても名誉ある事だ。
それだけで彼が凄腕の鍛冶屋なのが分かる。
更に外見とオーラから見ても凄腕の鍛冶屋なのが分かるくらいだ。
「それで、二つ名を持つ鍛冶屋がどうして俺達を?」
「…………」
「こほん、ソラくん」
ミリシャさんが一歩前に出た。
「『爆炎の鍛冶屋』という二つ名は、冒険者ギルドでもある意味有名なの」
「へぇー、有名なんですね」
ミリシャさんの言葉を聞いたガイアさんはまた「ちっ」と舌打ちをする。
「ええ。禁忌魔剣を作った男としてね」
ミリシャさんから出た言葉が意外で驚いたが、一瞬ガイアさんの顔に悲しみが覗けた。
「ちっ、あれは…………はぁ、いいや。おーい! お前ら! 出て行くぞ!」
懸命に金属を叩いている人達に大声をあげるガイアさん。
そんなガイアさんの前に立った。
「あん?」
「貴方は俺達に用があったんですよね? まだ聞いてませんけど?」
「は? お前、あの姉ちゃんから聞いてなかったのか!? 俺は魔剣を作った男だぞ!?」
「それがどうかしたんですか?」
「は?? 魔剣は禁忌の一つで、それを作った人間が……」
「もし貴方が禁忌を冒しているなら、ここには来れないと思います。それに――」
「それに……?」
「だって、貴方はあそこで頑張っている皆さんから、とても親しまれているみたいですから。人から親しまれる人に悪い人がいるとは思いません。貴方が悪人にも見えません」
俺は思う事をガイアさんに伝えた。
ガイアさんの目が大きくなってから目を瞑り暫く考え込んだ。
金属を叩いていた人達の手が止まっている事もあり、鍛冶場内が静寂に包まれる。
彼らも俺達もガイアさんに注目した。
そして、ガイアさんが目を開ける。
「俺達が仕えるクランを探していた。ここにはまだ新しいにも関わらず、大きな偉業を成し遂げたクランがあると聞いて来てみた。しかし、まさか……そのクランマスターが子供だったとは……」
この世界の鍛冶屋は、一般人では決してなれない。
鍛冶屋になれるのは、ドワーフ族と職能『鍛冶屋』を持った人だけだ。
ドワーフ族は種族スキル『鍛冶』があるので、鍛冶を行える。
しかし、人族は鍛冶を行おうとしても完成せず、いくら金属を叩いても自分が思い描く形にならないのだ。
唯一、職能『鍛冶屋』を授かった人だけが、辛うじて鍛冶を行えるのだ。
そういう事もあって、人族は他種族よりも装備が弱いと言われている。
それでも人族が他の種族よりも繁栄している理由は少数の強者と少数の神々の装備のおかげだ。
そんな人族に数少ない『特殊職能』の一つ、『鍛冶屋』。
俺の職能『転職士』も特殊職能の一つである。
職能は大きく『基本職能』と『特殊職能』に分かれる。
基本職能は単純に言えば、一般的に職能の中で数が多い職能を指すんだけど、俺の『転職』で転職出来るのが、この基本職能という事になる。
余談にはなるが、中級職能の中の召喚士は今まで特殊職能と呼ばれていたが、転職できた。
つまり、召喚士は特殊職能ではなかったという事になる。
そして、特殊職能は単純に、俺が転職させられない職能を指す。
現在、俺は下級と中級しか転職させられないので、もしこの先『上級職能』が転職可能になれば、上級職能の基本職能と特殊職能も知る事となるだろう。
少なくとも『鍛冶屋』は特殊職能な為、転職させられないのだ。
「いいですよ? 俺達も凄腕の鍛冶屋なら大歓迎ですから」
「…………いや、悪いがそれは俺が認めねぇ」
「ふむ……それでは何か条件を出されるんですか?」
「ああ。お前が子供だから、じゃねぇ。俺が仕えるに相応しいか相応しくないか試させて貰う。それでいいか?」
「いいですよ」
俺の即答にガイアさんが少し驚く。
「……俺はお前の事を子供だと揶揄した。それでもいいというのか?」
「そんなの気にも止めてません。だって、俺がまだ成人していない事は事実ですし、ガイアさんが思っているようなクランマスター像ではない事くらい知っています。ですが、俺には俺の強さがあります。それを証明出来れば、ガイアさんはきっと俺達の力になってくれると思いますから」
ガイアさんが不敵な笑みを浮かべた。