「ソラ!!!」
次の日。
俺の家に慌てて入ってくる人がいた。
「くっ!? ソラ!!!」
蹲っている俺の視界に、カールの姿が見えた。
「カールか……」
「おい! フィリアに何をした!!」
「…………お前は知らなくていい」
「くっ! この……馬鹿野郎!!」
カールが蹲っている俺の胸ぐらを掴んで、立たせる。そして、思いっきり俺を殴り飛ばした。
ああ……いいなぁ……これが職能の力なんだな……。
昔ならこんな力なんてないはずなのに……もうこんなに差がうまれているんだね……。
「ソラ!! どうしたんだ! お前は……フィリアが……フィリアがどれだけ泣いているのか分かっているのか!!」
「っ! お前に何が分かる!!」
「何!?」
「俺にはまともな職能なんてない! 彼女の隣に立つ資格もない! 俺が枷になって、いつまでも彼女のレベルは上がらず、いつまでもあのままで幸せに何てなれないんだ!!」
俺の下手くそなパンチがカールの胸に当たった。
ぴくりともしない。
「ほら見ろ! 俺の……俺の力なんてこんなもんだ!! こんな力でどうやってフィリアを守ってやればいいんだよ!! なあ! カール! 教えてくれよ!!!」
悔しくて、情けなくて、また涙が溢れた。
「俺は…………フィリアを……守って…………やれないから…………」
その場に崩れ落ちた。
情けない自分が悔し過ぎる……。
どうすればいいか……誰か教えて欲しい……。
「ソラ、お前……フィリアの事、好きじゃないのか?」
「えっ?」
俺と同じ目の高さになったカールが、俺の目を真っすぐ見つめてきた。
「お前の気持ちはどうなんだ? フィリアが好きなのではないのか?」
「……でも」
「でもじゃねぇ、お前の気持ちを聞いているんだ。守れないとか、どうしていいかとか聞いてるんじゃねぇ」
「…………」
「フィリアがどうしてお前の隣にいたのか考えた事はないか?」
フィリアがどうして俺の隣に……?
毎日俺に経験値を捧げてくれた彼女が、どうして俺の隣に……?
「よくよく考えてみろ。フィリアは『剣聖』になったその日からずっとお前の隣に立っていたはずだ」
確かにそうだった。
アムダさんとイロラさんを連れて来てくれた。
「それが……フィリアの気持ちだよ」
「っ!?」
「お前は……フィリアの気持ちを踏みにじったんだ。幸せにしてやれないとか、守ってやれないとか……そんな事よりも、お前はフィリアにとって最も大事なモノを傷つけてしまったんだよ」
「そ、そんな……お、俺は……フィリアの為を思って…………」
「フィリアが一番幸せなのは…………あいつが一番良い笑顔になるのは、お前の隣にいる時だけだぞ?」
フィリアが?
いつもあんなに明るい笑顔のフィリアが?
「フィリアが笑っているのは、お前の隣にいる時だけだぞ? 孤児院の中では、フィリアの笑顔なんて見た事ある人の方が少ないくらいだ……それくらいフィリアの中では、お前が一番大事なんだよ」
俺は……俺はなんて事を……。
「ソラ、もう一度聞く。お前の気持ちはどうなんだ?」
「お、俺は……俺はフィリアを幸せにしたい! 俺も……フィリアの事が好きだから!」
安堵の溜息を吐いたカールが、右手を前に出した。
「まだ落ちぶれてはいないようだな? 親友」
「あ、ああ! 落ちぶれてられるか!」
「くっくっ、この世の終わりみたいな顔だったやつがよく言うよ」
「わ、わりぃって! これからは……ちゃんとする」
「おう」
カールの手に導かれて起き上がった俺は、扉の外に多くの人がいる事に気が付いた。
「ソラくん!」
外から俺を見守っていたアムダさんが手を振っていた。
隣にはイロラさんもいて、他の孤児院の先輩達も沢山待っていてくれた。
「ソラ、よく聞いて欲しい。フィリアは剣聖アビリオというゲス野郎の所に行ったよ」
「くっ……」
アビリオ……その名前は絶対に忘れない。
「今から追いかけても連れ戻すのは難しい。アビリオは俺らを人質にしてフィリアを連れて行ったんだからな」
「え!? 人質!?」
「ああ、権力ってやつだ。だから……俺らもフィリアを取り戻したい。でもこのままじゃ絶対に無理だ。でもお前なら出来る」
「えっ? 俺なら……できる?」
「ああ、アムダさんから話は聞いている。お前の力があれば……俺達はもっと強くなれる。それなら……もしかしたらフィリアを助けられるかも知れない」
「……やらせてくれ! 俺にも手伝わせてくれ!」
「……ああ! そう答えてくれると信じていたぜ、親友」
「俺に出来る事なら何でもする」
俺とカールが外に出た。
アムダさん、イロラさんに、孤児院の先輩が六人。
全員と握手を交わした。
それから、作戦会議の為、孤児院に移動した。
広い部屋に座った俺達は、作戦会議を始めた。
「ソラ、お前の力がどんなモノか詳しくは知らないので、教えて貰っていいか?」
「ああ、俺の『転職士』は他の人から経験値を吸収する事でレベルを上げる事が出来るんだ」
「経験値を……吸収!?」
「ああ、アムダさんとイロラさんからは、経験値を沢山貰えたよ」
アムダさんとイロラさんは苦笑いをした。
「それでソラのレベルが上がった……でも強くはなれてないんだろう?」
「ああ、強くはなれなかった。代わりにスキルを手にしたよ」
「スキル……」
「ああ、俺が転職させた人は…………経験値の獲得率が上がるんだよ」
「!? それは凄いな……」
「ああ、だからこれからここにいる皆さんを一度転職させて欲しい。レベルが1に戻ってしまうけど、元になるまで早くなるはずだから、楽になるはずだよ」
俺の言葉を聞いたアムダさんが手を上げた。
「あのね。今のソラくんの経験値獲得上昇はね……とんでもなく速く上がるよ? 私なんてその気になれば一時間くらいでレベル2に出来るんだから。一人で」
「「「ええええ!?」」」
アムダさんの言葉に、全員が驚いた。
一時間でレベル1から2に上がるのは凄い事なのだろうか?
「おいおい、ソラ……お前……とんでもないスキル持ってるんだな」
カールの驚いている顔を見て、自分が持っているスキルがとんでもないスキルだという事が少し理解できた気がした。
次の日。
俺の家に慌てて入ってくる人がいた。
「くっ!? ソラ!!!」
蹲っている俺の視界に、カールの姿が見えた。
「カールか……」
「おい! フィリアに何をした!!」
「…………お前は知らなくていい」
「くっ! この……馬鹿野郎!!」
カールが蹲っている俺の胸ぐらを掴んで、立たせる。そして、思いっきり俺を殴り飛ばした。
ああ……いいなぁ……これが職能の力なんだな……。
昔ならこんな力なんてないはずなのに……もうこんなに差がうまれているんだね……。
「ソラ!! どうしたんだ! お前は……フィリアが……フィリアがどれだけ泣いているのか分かっているのか!!」
「っ! お前に何が分かる!!」
「何!?」
「俺にはまともな職能なんてない! 彼女の隣に立つ資格もない! 俺が枷になって、いつまでも彼女のレベルは上がらず、いつまでもあのままで幸せに何てなれないんだ!!」
俺の下手くそなパンチがカールの胸に当たった。
ぴくりともしない。
「ほら見ろ! 俺の……俺の力なんてこんなもんだ!! こんな力でどうやってフィリアを守ってやればいいんだよ!! なあ! カール! 教えてくれよ!!!」
悔しくて、情けなくて、また涙が溢れた。
「俺は…………フィリアを……守って…………やれないから…………」
その場に崩れ落ちた。
情けない自分が悔し過ぎる……。
どうすればいいか……誰か教えて欲しい……。
「ソラ、お前……フィリアの事、好きじゃないのか?」
「えっ?」
俺と同じ目の高さになったカールが、俺の目を真っすぐ見つめてきた。
「お前の気持ちはどうなんだ? フィリアが好きなのではないのか?」
「……でも」
「でもじゃねぇ、お前の気持ちを聞いているんだ。守れないとか、どうしていいかとか聞いてるんじゃねぇ」
「…………」
「フィリアがどうしてお前の隣にいたのか考えた事はないか?」
フィリアがどうして俺の隣に……?
毎日俺に経験値を捧げてくれた彼女が、どうして俺の隣に……?
「よくよく考えてみろ。フィリアは『剣聖』になったその日からずっとお前の隣に立っていたはずだ」
確かにそうだった。
アムダさんとイロラさんを連れて来てくれた。
「それが……フィリアの気持ちだよ」
「っ!?」
「お前は……フィリアの気持ちを踏みにじったんだ。幸せにしてやれないとか、守ってやれないとか……そんな事よりも、お前はフィリアにとって最も大事なモノを傷つけてしまったんだよ」
「そ、そんな……お、俺は……フィリアの為を思って…………」
「フィリアが一番幸せなのは…………あいつが一番良い笑顔になるのは、お前の隣にいる時だけだぞ?」
フィリアが?
いつもあんなに明るい笑顔のフィリアが?
「フィリアが笑っているのは、お前の隣にいる時だけだぞ? 孤児院の中では、フィリアの笑顔なんて見た事ある人の方が少ないくらいだ……それくらいフィリアの中では、お前が一番大事なんだよ」
俺は……俺はなんて事を……。
「ソラ、もう一度聞く。お前の気持ちはどうなんだ?」
「お、俺は……俺はフィリアを幸せにしたい! 俺も……フィリアの事が好きだから!」
安堵の溜息を吐いたカールが、右手を前に出した。
「まだ落ちぶれてはいないようだな? 親友」
「あ、ああ! 落ちぶれてられるか!」
「くっくっ、この世の終わりみたいな顔だったやつがよく言うよ」
「わ、わりぃって! これからは……ちゃんとする」
「おう」
カールの手に導かれて起き上がった俺は、扉の外に多くの人がいる事に気が付いた。
「ソラくん!」
外から俺を見守っていたアムダさんが手を振っていた。
隣にはイロラさんもいて、他の孤児院の先輩達も沢山待っていてくれた。
「ソラ、よく聞いて欲しい。フィリアは剣聖アビリオというゲス野郎の所に行ったよ」
「くっ……」
アビリオ……その名前は絶対に忘れない。
「今から追いかけても連れ戻すのは難しい。アビリオは俺らを人質にしてフィリアを連れて行ったんだからな」
「え!? 人質!?」
「ああ、権力ってやつだ。だから……俺らもフィリアを取り戻したい。でもこのままじゃ絶対に無理だ。でもお前なら出来る」
「えっ? 俺なら……できる?」
「ああ、アムダさんから話は聞いている。お前の力があれば……俺達はもっと強くなれる。それなら……もしかしたらフィリアを助けられるかも知れない」
「……やらせてくれ! 俺にも手伝わせてくれ!」
「……ああ! そう答えてくれると信じていたぜ、親友」
「俺に出来る事なら何でもする」
俺とカールが外に出た。
アムダさん、イロラさんに、孤児院の先輩が六人。
全員と握手を交わした。
それから、作戦会議の為、孤児院に移動した。
広い部屋に座った俺達は、作戦会議を始めた。
「ソラ、お前の力がどんなモノか詳しくは知らないので、教えて貰っていいか?」
「ああ、俺の『転職士』は他の人から経験値を吸収する事でレベルを上げる事が出来るんだ」
「経験値を……吸収!?」
「ああ、アムダさんとイロラさんからは、経験値を沢山貰えたよ」
アムダさんとイロラさんは苦笑いをした。
「それでソラのレベルが上がった……でも強くはなれてないんだろう?」
「ああ、強くはなれなかった。代わりにスキルを手にしたよ」
「スキル……」
「ああ、俺が転職させた人は…………経験値の獲得率が上がるんだよ」
「!? それは凄いな……」
「ああ、だからこれからここにいる皆さんを一度転職させて欲しい。レベルが1に戻ってしまうけど、元になるまで早くなるはずだから、楽になるはずだよ」
俺の言葉を聞いたアムダさんが手を上げた。
「あのね。今のソラくんの経験値獲得上昇はね……とんでもなく速く上がるよ? 私なんてその気になれば一時間くらいでレベル2に出来るんだから。一人で」
「「「ええええ!?」」」
アムダさんの言葉に、全員が驚いた。
一時間でレベル1から2に上がるのは凄い事なのだろうか?
「おいおい、ソラ……お前……とんでもないスキル持ってるんだな」
カールの驚いている顔を見て、自分が持っているスキルがとんでもないスキルだという事が少し理解できた気がした。