「さて、連絡が来たのは、ここから南にあるエホイ町で、どうやら獣人族に占領されたって連絡が来たんだよ」
『銀朱の蒼穹』と『弐式』を集め、報せについて説明する。
獣人族は殆どが帝国に属していて、人族から蔑まれていると聞く。
そんな彼らの群れがこちらに来たって事は、帝国から逃げたのではないかと予想される。
それはともかく、あの町に住んでいる町民達が心配だ。
獣人族は人族より身体能力が高いと聞く。
それだけでも町民達には脅威なはずだ。
「ソラ。この広い領地を手に入れたのはいいが、もしかしたら警備兵が足りていないんじゃないか? そこらへんも気を付けておかないと、魔物とかに町民達が襲われるかも知れないぞ?」
「そうかも……シランさんに丸投げしている点もあるけど、今は領内の安全よりも発展を優先してしまったから…………これからは警備兵も増やす事にするよ」
カールがクスッと笑うと、テーブルの地図を指さした。
「エホイ町はここら辺だね。ゲスロン街からだと馬車で二日も掛かる距離だな。わりと遠いから、今から行くとすると明後日になっちゃうぞ?」
「レボルシオン領で最南端だよね……。寧ろ帝国領の方が近いまであるんだっけ」
「そうだな。まぁ肝心の帝国領から町までは遥か遠くだけどな」
地図を覗きながらカールが答える。
帝国の領都自体は広いんだけど、町自体は割と少ない。
帝国は基本的に多くの人が集まって生活を送るような風習があるそうだ。
恐らくそういうカースト制度もきちんとなっていると思う。
それはともかく、今は獣人族だね。
「往復を考えれば五日は必要になりそうだね。その間は弐式にこの街の安全を任せようか」
「おいおい、ソラ」
「うん?」
「それだけじゃ駄目だぞ?」
「そ、そうなの?」
「…………こりゃ、ソラには領主様としての勉強もしっかりして貰わないといけなさそうだね。まぁ、ソラのやり方に文句を言うつもりはないが、何でもかんでも一人で解決しようとしなくていいんじゃない?」
「えっ……と?」
「ソラはレボルシオン領から土地税を沢山貰っているだろう? それを使って、冒険者ギルドに依頼を出せばいいんだよ。そうすれば、冒険者ギルドとの間に友情も出来るだろうし、力ある者を報酬を支払って借りる事だって出来るんだから」
「あ!」
カールに言われて初めて気づく。
確かに、何も『銀朱の蒼穹』だけに頼らなくてもいいんだ。
それぞれの冒険者ギルドに防衛の依頼を出すのもいいし、何なら今回の戦いに一緒に行ってくれる味方を雇えば、戦力的にも余裕が出来るはずだ。
それからカール達と戦いの作戦を考え、それが終わり次第、俺は冒険者ギルドに向かった。
「あっ! ソラ様! いらっしゃいませ!」
受付嬢から元気よく挨拶された。
それを見た冒険者ギルド内の冒険者達が俺に注目する。
「ミミーさん。こんにちは、今日は依頼の話があって来たんですけど……」
「そうでしたか! ではマスターにすぐ案内しますので、少々お待ちください!」
ミミーさんは直ぐに裏側に走って行った。
少しして帰ってきたミミーさんに案内され、ギルドマスターエイロンさんの部屋に案内された。
「ソラ様。いらっしゃいませ」
「あはは……様はいらないんですが……」
「いえ、そういう訳には行きません、貴方はレボルシオン領の英雄ですから」
実はエイロンさんは俺の事を英雄と呼んでくれる。
ずっと前からあの子爵を睨んではいたが、尻尾を掴む事が出来ず、ずっと悔しい思いをしていたそうだ。
「それで、本日は依頼を出されるという事で?」
「はい。実はレボルシオン領の最南端にあるエホイ町が、獣人族の群れに占領されたそうでして……」
「なっ!? そ、それはまことですか!」
「はい。それで『銀朱の蒼穹』で対応に行こうと思うんですが、出来ればもう少し戦力が欲しいのと、防衛にも戦力を当てたいので、その両方で依頼に来ました」
「なるほど。かしこまりました。ではその件に関してはこのエイロンに全てお任せください」
「それはとても心強いです!」
エイロンさんの好意に甘えて、あとは任せる事にし、明日朝早くに出発する事に決めた。
馬車乗り場で、俺達を運んでくれる馬車も急遽依頼も出しておいた。
そして、俺達はエホイ町で待ち受けている獣人族との戦いに備えた。
◇
その頃のエホイ町。
「カシア!」
「どうした?」
「この町変だぞ」
「変? 何が?」
「この町、子供がいねぇ」
「あ? いや、いるだろう。あそことか」
「あ~、いやいや、そういう事じゃない。子供がいないんじゃなくて、身寄りのない子供がいないんだよ」
「……確かに言われてみれば、どの町にも必ずいる身寄りのない子供が見当たらないな?」
「この町に来た時も、食べ物を素直に出してくれたし……この町、変だぞ?」
「…………罠か?」
「可能性はあると思う」
エホイ町を占領した獣人族のリーダーと見られる獣人は、エホイ町の現状の異常さを察知した。
彼らは元々戦いに来た訳ではなかった。
反抗しない町民達にも決して手をあげる事はしなかった。
代わりに食べ物を要求したが、意外にもあっさり聞いてくれて、無駄な血は全く流されなかった。
その事も彼らは異常に映っていて、次に何をするか考え始めた。
『銀朱の蒼穹』と『弐式』を集め、報せについて説明する。
獣人族は殆どが帝国に属していて、人族から蔑まれていると聞く。
そんな彼らの群れがこちらに来たって事は、帝国から逃げたのではないかと予想される。
それはともかく、あの町に住んでいる町民達が心配だ。
獣人族は人族より身体能力が高いと聞く。
それだけでも町民達には脅威なはずだ。
「ソラ。この広い領地を手に入れたのはいいが、もしかしたら警備兵が足りていないんじゃないか? そこらへんも気を付けておかないと、魔物とかに町民達が襲われるかも知れないぞ?」
「そうかも……シランさんに丸投げしている点もあるけど、今は領内の安全よりも発展を優先してしまったから…………これからは警備兵も増やす事にするよ」
カールがクスッと笑うと、テーブルの地図を指さした。
「エホイ町はここら辺だね。ゲスロン街からだと馬車で二日も掛かる距離だな。わりと遠いから、今から行くとすると明後日になっちゃうぞ?」
「レボルシオン領で最南端だよね……。寧ろ帝国領の方が近いまであるんだっけ」
「そうだな。まぁ肝心の帝国領から町までは遥か遠くだけどな」
地図を覗きながらカールが答える。
帝国の領都自体は広いんだけど、町自体は割と少ない。
帝国は基本的に多くの人が集まって生活を送るような風習があるそうだ。
恐らくそういうカースト制度もきちんとなっていると思う。
それはともかく、今は獣人族だね。
「往復を考えれば五日は必要になりそうだね。その間は弐式にこの街の安全を任せようか」
「おいおい、ソラ」
「うん?」
「それだけじゃ駄目だぞ?」
「そ、そうなの?」
「…………こりゃ、ソラには領主様としての勉強もしっかりして貰わないといけなさそうだね。まぁ、ソラのやり方に文句を言うつもりはないが、何でもかんでも一人で解決しようとしなくていいんじゃない?」
「えっ……と?」
「ソラはレボルシオン領から土地税を沢山貰っているだろう? それを使って、冒険者ギルドに依頼を出せばいいんだよ。そうすれば、冒険者ギルドとの間に友情も出来るだろうし、力ある者を報酬を支払って借りる事だって出来るんだから」
「あ!」
カールに言われて初めて気づく。
確かに、何も『銀朱の蒼穹』だけに頼らなくてもいいんだ。
それぞれの冒険者ギルドに防衛の依頼を出すのもいいし、何なら今回の戦いに一緒に行ってくれる味方を雇えば、戦力的にも余裕が出来るはずだ。
それからカール達と戦いの作戦を考え、それが終わり次第、俺は冒険者ギルドに向かった。
「あっ! ソラ様! いらっしゃいませ!」
受付嬢から元気よく挨拶された。
それを見た冒険者ギルド内の冒険者達が俺に注目する。
「ミミーさん。こんにちは、今日は依頼の話があって来たんですけど……」
「そうでしたか! ではマスターにすぐ案内しますので、少々お待ちください!」
ミミーさんは直ぐに裏側に走って行った。
少しして帰ってきたミミーさんに案内され、ギルドマスターエイロンさんの部屋に案内された。
「ソラ様。いらっしゃいませ」
「あはは……様はいらないんですが……」
「いえ、そういう訳には行きません、貴方はレボルシオン領の英雄ですから」
実はエイロンさんは俺の事を英雄と呼んでくれる。
ずっと前からあの子爵を睨んではいたが、尻尾を掴む事が出来ず、ずっと悔しい思いをしていたそうだ。
「それで、本日は依頼を出されるという事で?」
「はい。実はレボルシオン領の最南端にあるエホイ町が、獣人族の群れに占領されたそうでして……」
「なっ!? そ、それはまことですか!」
「はい。それで『銀朱の蒼穹』で対応に行こうと思うんですが、出来ればもう少し戦力が欲しいのと、防衛にも戦力を当てたいので、その両方で依頼に来ました」
「なるほど。かしこまりました。ではその件に関してはこのエイロンに全てお任せください」
「それはとても心強いです!」
エイロンさんの好意に甘えて、あとは任せる事にし、明日朝早くに出発する事に決めた。
馬車乗り場で、俺達を運んでくれる馬車も急遽依頼も出しておいた。
そして、俺達はエホイ町で待ち受けている獣人族との戦いに備えた。
◇
その頃のエホイ町。
「カシア!」
「どうした?」
「この町変だぞ」
「変? 何が?」
「この町、子供がいねぇ」
「あ? いや、いるだろう。あそことか」
「あ~、いやいや、そういう事じゃない。子供がいないんじゃなくて、身寄りのない子供がいないんだよ」
「……確かに言われてみれば、どの町にも必ずいる身寄りのない子供が見当たらないな?」
「この町に来た時も、食べ物を素直に出してくれたし……この町、変だぞ?」
「…………罠か?」
「可能性はあると思う」
エホイ町を占領した獣人族のリーダーと見られる獣人は、エホイ町の現状の異常さを察知した。
彼らは元々戦いに来た訳ではなかった。
反抗しない町民達にも決して手をあげる事はしなかった。
代わりに食べ物を要求したが、意外にもあっさり聞いてくれて、無駄な血は全く流されなかった。
その事も彼らは異常に映っていて、次に何をするか考え始めた。