みんなの狩りが終わり、宿屋に急いで戻り、子爵から使者が来た事を伝えると、ミリシャさんを始め、全員の顔が曇った。
孤児パーティーの四人も戦力になるので、話し合いには参加して貰った。
「――――という訳で、ゲシリアン子爵の執事と見られる人から誘いが来たよ。今の僕達の事情も知っているようで、何処の宿屋とも聞かず帰っていったよ」
「……つまり、逃げても無駄だよと言っている訳か」
「うん。恐らくそうだろうね。ただ、冒険者ギルドに確認したところ、貴族とはいえ、クランに命令する権利はないから必ず聞かなくてもいいみたい。もしもの時はゲスロン街の冒険者ギルドが後ろ盾になってくれるそうだよ。依頼が無茶な依頼なら断れるけど、逆に無茶ではない依頼だった場合は断りにくいかな……」
「……ソラくん。恐らく、ゲシリアン子爵は無茶ではない依頼をしてくると思う。だから、ある程度覚悟しておいた方がいいかも」
「……分かりました。一応他のみんなにも来て欲しいとの事だったから、明日朝は俺達で子爵邸に行ってくるから、メイリちゃん達は明日も今日と同じく平原に狩りに行って貰いたい」
「分かりました! 危険が及びそうなら直ぐに逃げます」
「うん。いくらゲシリアン子爵でも、子供達を人質にしたりはしないと思うけど、今後どうなるか分からないから、今のうちに出来るだけレベルを上げておきたい」
全員が同意したように頷く。
こうして、明日の予定も決まり、不安がある中で俺達は眠り、次の日を迎えた。
次の日。
宿屋の一階に降りると、既に執事さんが来ており、無表情のまま一礼する。
俺達も軽く会釈して、執事さんに付いて行った。
豪華そうな馬車に乗せられた俺達は、そのままゲシリアン子爵邸に入って行った。
子爵邸も馬車同様、派手な作りになっていて、その権力を見せびらかしているようだった。
長い廊下を進み、執事さんが部屋にノックをすると中からメイドさんが一人出て来て「どうぞ」と案内される。
部屋の中には一人用のテーブルがあり、その上に沢山のご馳走が並んでいて、一人の男性が食事をしていた。
男性は派手な服を着ていて、ウェーブかかった金髪にキツネ目が印象的だった。
俺達はメイドさんに案内され、彼の前に整列させられた。
「新参者ですがクラン『銀朱の蒼穹』のマスター、ソラと申します。本日は我々に御用があるとの事でしたが……?」
男は俺に目もくれず、食事をしながら女性だけを見回した。
少し嫌らしい目線に、俺もカールと少しイラっとする気持ちが出てくる。その視線を受けてる女性陣の方が嫌だと思う……。
「わしはゲシリアン子爵という。お前達に依頼を出したい。必ず全員で当たって貰いたい」
何故か全員で当たれという言葉に違和感を覚える。
「……かしこまりました。ですが、まずはその依頼を聞かなければ、承諾しかねますので、依頼の内容から先に聞かせてください」
「なに! わしの命令が聞けないというのか!!」
「……クランは貴族の私物でありません。もし強制するのでしたら、ゲスロン街の冒険者ギルドで話し合いますが?」
「くっ! 子供の分際で…………まあよい。お前達に取っても悪い話ではないはずだ」
「それは内容を聞いてから、俺達で判断します」
「くっ、一々癇に障るやつだな……。依頼というのは、この街から北側にある山の中に巣くう山賊共を捕まえて貰いたい」
内容だけならまともには聞こえる。が……どうしても違和感が拭えない。
「失礼ですが、山賊でしたら兵を出すべきなのではないですか?」
「…………ふむ。マスターとあって少しは賢いな。本来なら兵を出すべきところだろう。しかしだな。出した兵が戻らぬのだ」
「戻らない?」
「そうだ。わしは山賊にやられたと考えておる。なので、折角この街に来たという『クラン』ともある強者に依頼を出そうと考えたのだ。報酬は金貨五枚、もし兵が生きていて連れて来てくれたら一人に付き、大銀貨一枚ずつ追加しよう」
たかだか山賊に金貨五枚…………そもそも金貨一枚でも高いというのに五枚という、とんでもなく破格な価額にますます怪しさを覚えた。
しかし、こんなに好条件を出されてしまったからには、冒険者ギルドとクランと言えど、貴族の困っている依頼を無視する訳にもいかない。これが好条件ではなければ問題がなかったのだが……。
「かしこまりました。その依頼は我ら『銀朱の蒼穹』がお受けいたします。山賊について、出来うる情報をくださると助かります」
「分かった。シラン! 山賊の情報を伝えておけ」
「はっ」
俺達を案内してくれた執事さんが返事をする。シランさんというみたいね。
それから小さく笑うゲシリアン子爵を後にして、俺達はシランさんに連れられ、違う部屋に移動した。
そこで、今回の依頼に関する契約書にサインをする事となった。
しっかり、山賊の事を討伐する事。
報酬も金貨五枚と記載されていて、詐欺まがい事は全く見られない。
サインが終わり、契約が成立したのはいいが、契約主がゲシリアン子爵ではなく、執事のシランさんだった。
こういう契約にわざわざ主が書く事は少ないとミリシャさんが教えてくれる。
期限はないが、兵達が生きているかも知れないから、なるべく早くとは言われている。
しかし、準備に時間が掛かるのでと話し、四日後に行く運びとなった。
孤児パーティーの四人も戦力になるので、話し合いには参加して貰った。
「――――という訳で、ゲシリアン子爵の執事と見られる人から誘いが来たよ。今の僕達の事情も知っているようで、何処の宿屋とも聞かず帰っていったよ」
「……つまり、逃げても無駄だよと言っている訳か」
「うん。恐らくそうだろうね。ただ、冒険者ギルドに確認したところ、貴族とはいえ、クランに命令する権利はないから必ず聞かなくてもいいみたい。もしもの時はゲスロン街の冒険者ギルドが後ろ盾になってくれるそうだよ。依頼が無茶な依頼なら断れるけど、逆に無茶ではない依頼だった場合は断りにくいかな……」
「……ソラくん。恐らく、ゲシリアン子爵は無茶ではない依頼をしてくると思う。だから、ある程度覚悟しておいた方がいいかも」
「……分かりました。一応他のみんなにも来て欲しいとの事だったから、明日朝は俺達で子爵邸に行ってくるから、メイリちゃん達は明日も今日と同じく平原に狩りに行って貰いたい」
「分かりました! 危険が及びそうなら直ぐに逃げます」
「うん。いくらゲシリアン子爵でも、子供達を人質にしたりはしないと思うけど、今後どうなるか分からないから、今のうちに出来るだけレベルを上げておきたい」
全員が同意したように頷く。
こうして、明日の予定も決まり、不安がある中で俺達は眠り、次の日を迎えた。
次の日。
宿屋の一階に降りると、既に執事さんが来ており、無表情のまま一礼する。
俺達も軽く会釈して、執事さんに付いて行った。
豪華そうな馬車に乗せられた俺達は、そのままゲシリアン子爵邸に入って行った。
子爵邸も馬車同様、派手な作りになっていて、その権力を見せびらかしているようだった。
長い廊下を進み、執事さんが部屋にノックをすると中からメイドさんが一人出て来て「どうぞ」と案内される。
部屋の中には一人用のテーブルがあり、その上に沢山のご馳走が並んでいて、一人の男性が食事をしていた。
男性は派手な服を着ていて、ウェーブかかった金髪にキツネ目が印象的だった。
俺達はメイドさんに案内され、彼の前に整列させられた。
「新参者ですがクラン『銀朱の蒼穹』のマスター、ソラと申します。本日は我々に御用があるとの事でしたが……?」
男は俺に目もくれず、食事をしながら女性だけを見回した。
少し嫌らしい目線に、俺もカールと少しイラっとする気持ちが出てくる。その視線を受けてる女性陣の方が嫌だと思う……。
「わしはゲシリアン子爵という。お前達に依頼を出したい。必ず全員で当たって貰いたい」
何故か全員で当たれという言葉に違和感を覚える。
「……かしこまりました。ですが、まずはその依頼を聞かなければ、承諾しかねますので、依頼の内容から先に聞かせてください」
「なに! わしの命令が聞けないというのか!!」
「……クランは貴族の私物でありません。もし強制するのでしたら、ゲスロン街の冒険者ギルドで話し合いますが?」
「くっ! 子供の分際で…………まあよい。お前達に取っても悪い話ではないはずだ」
「それは内容を聞いてから、俺達で判断します」
「くっ、一々癇に障るやつだな……。依頼というのは、この街から北側にある山の中に巣くう山賊共を捕まえて貰いたい」
内容だけならまともには聞こえる。が……どうしても違和感が拭えない。
「失礼ですが、山賊でしたら兵を出すべきなのではないですか?」
「…………ふむ。マスターとあって少しは賢いな。本来なら兵を出すべきところだろう。しかしだな。出した兵が戻らぬのだ」
「戻らない?」
「そうだ。わしは山賊にやられたと考えておる。なので、折角この街に来たという『クラン』ともある強者に依頼を出そうと考えたのだ。報酬は金貨五枚、もし兵が生きていて連れて来てくれたら一人に付き、大銀貨一枚ずつ追加しよう」
たかだか山賊に金貨五枚…………そもそも金貨一枚でも高いというのに五枚という、とんでもなく破格な価額にますます怪しさを覚えた。
しかし、こんなに好条件を出されてしまったからには、冒険者ギルドとクランと言えど、貴族の困っている依頼を無視する訳にもいかない。これが好条件ではなければ問題がなかったのだが……。
「かしこまりました。その依頼は我ら『銀朱の蒼穹』がお受けいたします。山賊について、出来うる情報をくださると助かります」
「分かった。シラン! 山賊の情報を伝えておけ」
「はっ」
俺達を案内してくれた執事さんが返事をする。シランさんというみたいね。
それから小さく笑うゲシリアン子爵を後にして、俺達はシランさんに連れられ、違う部屋に移動した。
そこで、今回の依頼に関する契約書にサインをする事となった。
しっかり、山賊の事を討伐する事。
報酬も金貨五枚と記載されていて、詐欺まがい事は全く見られない。
サインが終わり、契約が成立したのはいいが、契約主がゲシリアン子爵ではなく、執事のシランさんだった。
こういう契約にわざわざ主が書く事は少ないとミリシャさんが教えてくれる。
期限はないが、兵達が生きているかも知れないから、なるべく早くとは言われている。
しかし、準備に時間が掛かるのでと話し、四日後に行く運びとなった。