「「「可愛い~!」」」

 遂に『亡者の墓』三層に挑戦する日。

 馬車の中では、俺の召喚獣のラビちゃんと名付けたスカイラビットが大人気だった。特に女子組に。

「なんかソラに似てる気がするんだよな」

「うっ……フィリアにも言われた……」

「あはは、なんか目元が似てるというか。周りからモテモテなのもソラそっくりだわ」

「ええええ!? 俺、そんなにモテモテじゃないよ!?」

「あははは! まぁそういう事にしておこう」

 カールにいじられながら、俺達は亡者の墓に辿り着いた。

 一層に入って二層に向かう道中、出逢ったパーティーが全員離れていく。

「ふふっ、亡者の墓一層のパーティーはみんな逃げていくな」

「ああ……ちょっとやりすぎな気が……」

「やりすぎも何もあちらが先に俺らを笑ってきたからな~」

「ま、まぁそうだけど……まぁこのまま三層攻略するから、もう会う事はないかも知れないしな」

 逃げていくパーティーを横目に俺達は二層に進んだ。


 二層の広場では、以前広場にいたパーティーが休んでいた。

 パスケルさんやメリッサさんのパーティーではないところなので、まだ話した事はない。

 俺達を見た彼らは、興味深そうに俺らを見つめていた。

 気にせず、彼らを通り、広場を後にしようとする。

「ほぉ…………少年のパーティーか」

 通り過ぎる途中、リーダーと思われるごつい男性が俺に言葉を投げかけた。

「は、はい」

「そうか…………不思議なパーティーだが、ここを出るという事は……ふむ。――――――少年。良いパーティーを持ったな」

「え? は、はい! 自慢のメンバーです!」

「うむ。楽しみにしている。頑張りなさい」

「あ、ありがとうございます!」

 そして、俺達は広場を後にして三層を目指した。





「ねえねえ、あのパーティーのどこが良いパーティーなの? 人数も越えて(・・・)いるじゃん」

「ああ、確かに越えているが、それでも一緒にいるという事は、人数(・・)を越えたという事なのかも知れない」

「え!? う、嘘!?」

「一層で、弓使いが大勢所属しているパーティーが魔物を一掃していると噂があった。恐らく彼らだろう」

「そりゃ、弓使いなら撃つまで速いし」

「それを続けているのにも関わらず、気付いてないのであれば、それが越えた(・・・)という事なのだろう」

「あ!」

「どういう秘密があるかは分からないが、楽しみだ。あの少年は少し前にレッドスケルトンにすら勝てていなかった。だが、何故か今ではレッドスケルトンすら易々と倒せそうな雰囲気を感じる」

「へぇー、確かに今のあいつなら勝てそうだけど、この短期間で?」

「ああ、いずれ分かるだろう」

 ごつい男のパーティーはソラのパーティーが見えなくなると、一層に戻って行った。



 ◇



 俺達は二層の奥から、三層に続く階段を見つけ、降りた。

 降りる途中、三層部分が暗い事に気づいた。

「もしかして、三層は暗いかも知れないね」

「そうだな、光の精を召喚しておこうか」

 俺は既に光の精と契約を交わしているので、そのまま光の精を召喚する。

 現れた光の精にラビが嬉しそうに近づき、二匹は仲良さげに一緒に飛んだ。

 周囲が光の精のおかげで明るくなって、三層が見え始める。

 そして、俺達は三層に降り立った。


 フィリアと共に周りを見回す。

「雰囲気は今までと変わらないけど、周りが暗いな? 今まで飛んでいた緑色の光る玉が少ないんだな」

「それと、二層と違って降りたところが『安全地域』にはなってなさそうね」

「ああ、必ずしもある訳ではないみたいだからな…………それにしても敵の影も全く見えないな?」

「ん……ちょっと不気味だね」

「…………!? 全員戦闘態勢!」

 俺の声に、全員が迷わず武器を正面に構える。

「敵は見えない相手かも知れない! 全員、何があっても慌てないように!」

 メンバー全員の緊張感が伝わって来る。

 直後、正面から黒い触手のようなモノが飛んでくる。

 後方を狙う黒い触手をベリンさんが割って入り、盾で防ぐ。

 カーン

 触手を弾く音が響き、弓士隊から魔法矢が数発暗闇に撃たれる。

 しかし、当たった音もしなければ、当たった感覚もしない。

 ……。

 ……。

「! 地面に影がある!」

 光の精のおかげで周りが明るいのに、何故か何もない場所の地面に影が出来てる場所があった。

 弓士隊の魔法矢が地面の影に刺さる。

 そして、短い甲高い悲鳴の鳴き声と共に、影から黒くて丸い魔物が出て来てその場から消え去った。

「相手は地面に影になって隠れるタイプかも知れない。半数は地面、半数はそのまま警戒を!」

「「「「はい!」」」」

 俺達はそのまま三層を進める。

 光の精のおかげで周りが良く見える為、地面に隠れている魔物を探しやすかった。

 地面に隠れている魔物は、今の弓士隊の魔法矢が8発分当たって、やっと倒せた。

 今までの魔物とは比べものにならない耐久性に、緊張感が更に増す。


 少し進むと、明かりの先に二層でも見かけた『レイス』が見えた。

「二層のレイスより色が濃い! 上位種だと思います! 先に弓士隊から!」

 俺の後ろから魔法矢が8発放物線を描き、レイスに命中した。

 しかし、矢は不思議なバリアに弾かれて、矢が刺さる事はなかった。

 更に、こちらに気づいたレイスから二種の魔法が放たれた。

「散開!」

 魔法を防がず、避ける指示を出す。

 その隙間に、アムダ姉さんとイロラ姉さんがレイスに向かい、両脇から走り込む。

 次の魔法が撃たれる前に、アムダ姉さんの攻撃が始まる。

「臥竜打!!」

 アムダ姉さんの手に竜の形の気功が纏われ、そのままレイスを殴る。

 矢とは違い、レイスを防いでいるバリアは無く、そのまま吹き飛ばされる。

 吹き飛ばされ、止まったレイスの首裏にイロラ姉さんの影が見えた。

 そして、両手に持っていた短剣がレイスの首を跳ねる。

 その後、カールから放たれた氷魔法がレイスを貫通して、レイスが消滅した。

 しかし、それはまだ序の口だった。

 すぐにレイスが複数現れる。

 まだ一体でも慣れていないので、メンバーに緊張が走る。





「剣聖奥義、百花繚乱」

 フィリアの綺麗な声が響き、レイスが一瞬で全滅した。