二日間、亡者の墓一層で魔物を狩り尽くした。

 幾つかのパーティーが肩を落として帰る姿もちらほら……、以前二層で出会った『蒼い彗星』のリーダーパスケルさんが言っていた冒険者同士は()同士という言葉が、少しは理解できた気がした。

 そして、休日を挟んで、今度は二層にやってきた。

 既に全員のレベルが5となっている。

 あまりの速さにカールですら、半笑いしていた。


「さて、二層からはCランク魔物なので、気を付けてくださいね。レッサーナイトメアがCランク上位とはいえ、同じCランクなので……レッドスケルトンは近接、レイスは遠距離が厄介なので、一層同様見つけたら即攻撃で!」

「「「「おー!」」」」

 今回は広場に他のパーティーが誰もいなかったので、俺達は静かに二層の中に入って行った。

 少し進めた所でレッドスケルトンが現れる。

「四番!」

 弓士隊の先輩の一人が声を上げると、全員が真後ろに向いて、そのまま数人が矢を放ちレッドスケルトンの頭に四本の矢が刺さった。

 この番号はそれぞれの先輩達が全方向を分担して、常に見回っており、俺を中心に前方から見て一番が右前、二番が右、三番が右後ろ、四番は真後ろ、五番が左後ろ、六番が左、七番が左前、八番が正面である。

 八番は基本的にベリンさんが担当している。


 レッドスケルトンの頭に刺さった魔法矢四本。

 まさか一撃で倒せるとは思わなかった。

 つまり…………その日、二層の魔物すら瞬殺していった。

 レイスですら瞬殺し、カールが暇そうにしていたから、僕と一緒に雷魔法で水の精も倒していった。



 ◇



「「「「乾杯ー!!」」」」

 二層の狩りがあまりにも簡単に運んだので帰り、打ち上げとなった。

 酒場『木漏れ日』から歓声があがる。

 ワイルダさん達に二層も簡単だったと話すと、凄く笑われた。

 意外に亡者の墓での収入が多いので、今日もマスターの美味しい料理を堪能した。



 次の日も二層を軽く回って、セグリス町に帰って来た。

 何の難しさもなく、二層も簡単に進んだ。

「ソラ、次の狩りからどうするの?」

「そうだな。このまま三層に――――と思ったんだけど、みなさんには申し訳ないんだけど、このまま四周して貰いたいんだよ」

「四周?」

「ああ、俺のサブ職能の回復士、魔法使い、召喚士、付与術師のレベルを上げたいんだよ。特に召喚士と付与術師は本来ならレベルを上げる方法が独特だから難しいけど、俺は経験値を貰う事で上げられるから、簡単に上げられるから、それが狙いなんだよ。三層はそれからでも遅くないかなと思って」

「そうだね。まだ時間はいっぱいあるからね。それじゃ、一旦ソラのレベルを上げる方向にしようか! 初日は一層、二日目は二層、三日目は休日にして、初日の朝にまた経験値をソラにあげる。感じでいいかな?」

「そうだな。フィリアの言った通りに、暫く続けますので、みなさん、よろしくお願いします!」

「「「「おー!」」」」


 その日からまた三日サイクルが始まった。

 予定通り進み、そのまま三日サイクルを十六週続けた。

 それで俺の四つのサブ職能のレベルが全部5になった。



 ◇



 明日から三層に行く事となるのだが、俺はフィリアとカールと一緒に水の精から拾った『水の魔石』を持って、俺の家に集まった。

「召喚士の召喚魔法なんて、普段見れないから楽しみだな~」

 ワクワクしているフィリアがまた可愛い。

 今回は俺の召喚士がレベル5になって、獲得した魔法『中級召喚』を試そうとしている。

 召喚士はレベル1の基本魔法『光の精召喚』があり、ただ光るだけ(・・・・・・)の精霊を呼び出す魔法があり、召喚士のレベルを上げるにはこの召喚魔法をずっと使い続けなくちゃいけない。

 召喚には媒介(魔石)が必要なので、このレベルを上げるのは中々難しいのだ。

 それでも光の精が明るいランタン代わりにも使えるし、ランタンよりも範囲が広く明るかったり、アンデッド属性の魔物が少し弱体化するという利点があるので、荷物持ち兼光の精係としてパーティーに入れたりするので、頑張ってレベルを上げる召喚士が多い。

 レベル3になった時、『初級召喚』を覚え、5で『中級召喚』、8で『上級召喚』、10で『超級召喚』を覚えて、『超級召喚』を使えるようになれば、中級職能では断トツに最強職能に変わるのだが……それに辿り着ける人はそうそういないのだ。


 初級召喚はあまりにも役に立たないので、中級召喚を覚えたので、早速使って見る事にした。

 両手で水の魔石を持ち上げ、集中する。

「魔法、中級召喚!」

 魔石から魔力の光がゆらゆらと立ち上がる。

 自分の中の魔力がぐーっと減るのを感じる。

 俺の魔法が更に発動して、正面の空中に魔法陣が展開される。

 そして、

 魔法陣から、一体の召喚獣が現れた。



「可愛い~!」

 フィリアが黄色い声を上げ、出て来たばかりの俺の召喚獣に抱き付く。

 抱き付かれた召喚獣は既に状況を把握しているようで、フィリアを一切拒否する事なく受け入れていた。

「……ソラ」

「ん?」

「これはどういう名前の召喚獣なの?」

「ん~種族名が、スカイラビットっていう召喚獣らしい」

 フィリアに抱かれてモフモフしている小さな羽根が生えた可愛らしい兎は、プー! って嬉しそうに鳴き声をあげていた。