「みなさん……ありがとうございます! 絶対に約束します!」

 ベリンさんと握手を交わす。

 必ず先輩達との約束を守ろう!

「ふふっ、良かったね! ソラ」

「ああ、それではみなさん。改めてよろしくお願いします。ではこれからクラン設立の条件について話します」

 皆さんが俺に注目する。

「条件というのは、ここから西に向かった所にある『亡者の墓』というダンジョンから、Bランク魔物『フォースレイス』から『フォースクロース』を手に入れる事です。三層にいるという事しか、今は情報がありませんので、これから集めますが、レッサーナイトメアよりも遥かに強いかも知れません。なのでこれからそれについての相談です」

 一度飲み物を口にして、呼吸を整えた。

「今日からのやり方としては、まず俺のレベルを一つもしくは二つ上げようと思います。そうする事によって自分も皆さんも強く出来るかも知れません。しかし、それと調べものを両立するのは難しいので、これからチームを分けようと思います。
 俺とフィリアはこれから『亡者の墓』を見て回ろうと思います。フィリアが協力しないという条件はあくまで『フォースレイス』戦ですから、それまでは一緒に墓を攻略して貰います。
 その他の皆さんには、セグリス平原を中心にボアを狩って貰いたいのですが――――これからは、数を決めて狩るのではなく、時間を決め、その時間内で出来るだけ多く狩って貰いたいんです。ここからは経験値が勝負にもなるので、皆さんの頑張りもとても大切です。報酬については必要経費もこれから増えると思いますので、出来るだけ貯める方向で行きましょう」

「「「「おー!」」」」

「ではこれからも三日サイクルで二日全力狩り、一日休みとしますね!」

「「「「おー!」」」」

 その日から、早速パーティーを分けての狩りとなった。

 それとアムダ姉さんとイロラ姉さんは職能『戦士』になって貰った。

 既に狩人が多いし、戦い方も十分過ぎるほど経験を積んだので、力ステータスが一番高い戦士にしてボアを運び易くした。

 折角狩ったボアを放置しても勿体ないからね。

 その日からセグリス平原から大量のボアを運ぶアムダ姉さんとイロラ姉さんの姿に、周りから驚かれていた。



 ◇



「ソラ、どうしたの?」

 俺とフィリアはセグリス町の西側に向かう馬車に乗った。

 馬車はそのまま隣町まで向かうのだが、途中にある『亡者の墓』の前でも止まるらしい。

 たまに冒険者が使うから、需要があるそうだ。

 おかげで、俺もフィリアも楽に向かっている。

「ん……まさかレベルが上がらないと思わなかったからさ……」

「ああ、みんなの経験値貰ったもんね」

 ダンジョンの攻略の為、今回はフィリアだけはレベルを蓄積させる事にし、メンバーからは経験値を貰う事にした。

 レッサーナイトメアを倒すために貯めた経験値でも、俺のレベルは5に上がる事はなかった。

 正直期待していただけに、悲しかった……。

「でもそろそろ上がりそうなんでしょう?」

「ん~何となく? あとはカールと先輩達次第だけど、皆さん無理だけはして欲しくないな……」

「ふふっ、大丈夫だよ。今までソラの指示をしっかり聞いてるから、絶対無理はしないと思う」

「そうだといいんだけどね。フィリアにもこれから頑張って貰わないといけないけど、頑張り過ぎないでね?」

「うん! 頑張るけど、頑張り過ぎないように頑張ります!」

 それって結局頑張り過ぎてる気がするけど、まあいいか。これからは隣だし、何かあったらその時は俺がちゃんと止めに入ろう。

 俺達は馬車に暫く揺られ、初めてのダンジョン『亡者の墓』に辿り着いた。



 ◇



「おお~ここが『ダンジョン』という場所か!」

「私も初めて来るよ! 何だかワクワクするね!」

「ああ、どんな魔物が出るのか楽しみだ。亡者というだけあるから、そういう系統の魔物が出るのかな? とにかく入ってみようか」

「うん!」

 俺とフィリアは、初めてのダンジョン『亡者の墓』を前にした。

 外から見た感じは、遺跡の入口のようで、外からの見た目以上に中はとんでもなく広いらしい。

 それも世界の神秘の一つらしいけど、一説によると、世界に漂っていると言われている自然の魔力で形成されているらしい。

 全てフィリアが他のパーティーで聞いた話だ。



 『亡者の墓』の入口の前には看板があって、「このダンジョンは一層D、二層C、三層BBとなっております」と書いてある。魔物の強さだろう。

 三層に書いてあるBBは、Bランクでも上位が出るという表記だ。もしここにレッサーナイトメアが出る階層があるなら、CCと書かれているだろう。

 つまり…………俺が狙う『フォースレイス』は、Bランクでも強い部類に入る魔物という事になるのだ。

 そうでなければ、『クラン』の許可なんて出るはずがない。

 クランを立てる事は、それほどに難しい事という事だろう。