「は、はい。俺がソラです」
男性は俺とフィリアの向かいに座った。
「私の名は、ガレインという。この冒険者ギルドのギルドマスターをしている」
「「ギルドマスター!?」」
意外な答えに驚いてしまった。
ギルドマスターはもっと年上の存在かと思っていた。それがまさか、こんなカッコいいお兄ちゃんのような方だった事に驚きだ。
「驚くのも無理はない。良く驚かれるからな。それで、まずは『攻略情報』の件だな?」
「は、はい。こちらになります。沼地での『レッサーナイトメア』の情報です」
情報を書いた紙をガレインさんに渡した。
内容をじーっと見るガレインさんは、時々「ほぉ……」と唸り声を上げた。
暫く読んだ後、俺の目を真っすぐ見つめた。
「ここに書いてある内容が真実なら非常に有用な『攻略情報』となるだろう。『攻略情報』の売買に付いては詳しく知っているかい?」
「い、いいえ。そうしてくれた方がいいと、知り合いの方に言われて来たんです」
「そうか。では、『攻略情報』についてだが、まずこの情報が正しいかの確認を行う。それでこの情報の信憑性を確認し、それに見合う報酬を払う流れになっている。なので、結果が出るまでの暫くの期間は待って貰う事になるけどいいかい?」
「はい。大丈夫です。まだ目標があるので、この町を離れたりはしません」
「ふむ。では報酬に関してだが、二種類があり、まず我々が査定をし、それに見合った額を支払って、その情報の権利を買い取る『買い切り』が一つで、こちらは内容が下判定の場合に適用されるんだ。しかも、この場合、売らないという選択も出来ないんだ」
ふむふむ……。
『攻略情報』の内容次第で、冒険者ギルドから判定が下され、下判定になった場合は一回お金を受け取って終わりなんだね。値段も冒険者ギルド次第か。
「もう一つは、内容が上判定の場合、買い取れないほどの権利だと判断し、我々冒険者ギルドが君の代わりにこの情報を販売して、その利益の一部を君に還元する事となるよ」
「俺の代わりに……?」
「そう。権利というのは、非常に厄介でね。中にはお金で買えないほどの権利もあるのさ。そういう情報は『特別情報』と呼ばれ、王国から永遠に守れる事となるのさ。もしも、ここに書かれている『攻略情報』が『特別情報』と判断された場合、我々冒険者ギルドが君からこの権利を借り、代わりに売って、その利益を君に還元する事になるのさ。その際の販売値段も君が好きに決める事も出来るが、安すぎる場合や、高すぎる場合はギルドマスターである僕から少し相談させて貰う事になるかもね」
ガレインさんの丁寧な説明のおかげで、簡単に理解できた。
「ありがとうございます! では査定の程、よろしくお願いします」
「ああ、任せてくれたまえ。それはそうと――」
ガレインさんは受け取った紙を懐にしまう。
そして、
「実は君の事はミリシャくんからよく聞いていてね」
「え? ミリシャさんから?」
「ああ、どうやら…………クランを設立させたいと聞いているが……?」
「あ! はい。そうです」
「ふむ…………大変失礼だとは思うが、君の隣にいる彼女なら、今すぐにでも設立出来ると言ったら――――どうする?」
ガレインさんの言葉が俺の胸に突き刺さる。
フィリアが設立したクランなら…………と一瞬思ってしまうくらい、魅力的な提案に、何故か心が奪われそうになる。
その時、フィリアが立ち上がった。
「わた――――」
フィリアが何かを話そうとした瞬間、
ガレインさんの殺気にも似たその威圧感が俺達に向けられた。
そして、冷たい瞳がフィリアを睨む。
「僕はソラくんに聞いているよ? 君は――――彼の為を思うなら、少し見守る事を覚えるべきだね」
凄まじい迫力に、フィリアですら言葉を続けられず、その場に座った。
「ガレインさん。とても魅力的な提案ですが、ごめんなさい。その提案は受けられません」
「…………その理由を聞いても?」
「はい。俺は決めたんです。自分の力を信じてくれた彼女や友人達の為に、自分の力でクランを作って、恩返しをしたい。こんな弱い俺を信じ、見守ってくれて、助けてくれたみんなの為にも、そして――――」
「……そして?」
「――――自分の為にも」
隣のフィリアが途中、何かを言おうとしたけど、何も話さずに笑顔になった。
一度目を瞑ったガレインさんは、一つ、大きく息を吸った。
そして、目を開けた彼は、最初の優しい瞳に戻っていた。
「これは脅かして済まなかった。実はソラくんを試してみたくてね」
「え? 俺を試す??」
「ああ、ミリシャくんが君の事をあまりにも勧めるものだからね。あの子があそこまで応援する人は初めてで、どんな凄い子なんだろうと思ったのさ。そうか…………君がこの情報を考え付いた原動力はそこにあるのだね」
先程、懐にしまった俺の攻略情報が書かれた紙を取り出し眺めていた。
「うん。君ならきっと大丈夫だろう。だが、力ない者の話など、世間はそう簡単に聞いてはくれないのさ。ではソラくん。君に『クラン設立の条件』を言い渡そう!」
「えっ!? え? へ?」
「君にはセグリス町から西に進んだ場所にある『亡者の墓』というダンジョンに向かって貰うよ。そして、その三層にいるBランク魔物『フォースレイス』を倒して、『フォースクロース』を持って来て貰う。アドバイスは基本的に禁止にされているが、君にはあまり意味がないと思うし、まだ若い君に一つだけ言葉を送ろう。――――事前調べはしっかりね」
ガレインさんの突如とした言葉に、あっけに取られていると、フィリアが「やったね!」と喜んでくれて、それで漸く現状を理解できた。
…………絶対達成してやる!
男性は俺とフィリアの向かいに座った。
「私の名は、ガレインという。この冒険者ギルドのギルドマスターをしている」
「「ギルドマスター!?」」
意外な答えに驚いてしまった。
ギルドマスターはもっと年上の存在かと思っていた。それがまさか、こんなカッコいいお兄ちゃんのような方だった事に驚きだ。
「驚くのも無理はない。良く驚かれるからな。それで、まずは『攻略情報』の件だな?」
「は、はい。こちらになります。沼地での『レッサーナイトメア』の情報です」
情報を書いた紙をガレインさんに渡した。
内容をじーっと見るガレインさんは、時々「ほぉ……」と唸り声を上げた。
暫く読んだ後、俺の目を真っすぐ見つめた。
「ここに書いてある内容が真実なら非常に有用な『攻略情報』となるだろう。『攻略情報』の売買に付いては詳しく知っているかい?」
「い、いいえ。そうしてくれた方がいいと、知り合いの方に言われて来たんです」
「そうか。では、『攻略情報』についてだが、まずこの情報が正しいかの確認を行う。それでこの情報の信憑性を確認し、それに見合う報酬を払う流れになっている。なので、結果が出るまでの暫くの期間は待って貰う事になるけどいいかい?」
「はい。大丈夫です。まだ目標があるので、この町を離れたりはしません」
「ふむ。では報酬に関してだが、二種類があり、まず我々が査定をし、それに見合った額を支払って、その情報の権利を買い取る『買い切り』が一つで、こちらは内容が下判定の場合に適用されるんだ。しかも、この場合、売らないという選択も出来ないんだ」
ふむふむ……。
『攻略情報』の内容次第で、冒険者ギルドから判定が下され、下判定になった場合は一回お金を受け取って終わりなんだね。値段も冒険者ギルド次第か。
「もう一つは、内容が上判定の場合、買い取れないほどの権利だと判断し、我々冒険者ギルドが君の代わりにこの情報を販売して、その利益の一部を君に還元する事となるよ」
「俺の代わりに……?」
「そう。権利というのは、非常に厄介でね。中にはお金で買えないほどの権利もあるのさ。そういう情報は『特別情報』と呼ばれ、王国から永遠に守れる事となるのさ。もしも、ここに書かれている『攻略情報』が『特別情報』と判断された場合、我々冒険者ギルドが君からこの権利を借り、代わりに売って、その利益を君に還元する事になるのさ。その際の販売値段も君が好きに決める事も出来るが、安すぎる場合や、高すぎる場合はギルドマスターである僕から少し相談させて貰う事になるかもね」
ガレインさんの丁寧な説明のおかげで、簡単に理解できた。
「ありがとうございます! では査定の程、よろしくお願いします」
「ああ、任せてくれたまえ。それはそうと――」
ガレインさんは受け取った紙を懐にしまう。
そして、
「実は君の事はミリシャくんからよく聞いていてね」
「え? ミリシャさんから?」
「ああ、どうやら…………クランを設立させたいと聞いているが……?」
「あ! はい。そうです」
「ふむ…………大変失礼だとは思うが、君の隣にいる彼女なら、今すぐにでも設立出来ると言ったら――――どうする?」
ガレインさんの言葉が俺の胸に突き刺さる。
フィリアが設立したクランなら…………と一瞬思ってしまうくらい、魅力的な提案に、何故か心が奪われそうになる。
その時、フィリアが立ち上がった。
「わた――――」
フィリアが何かを話そうとした瞬間、
ガレインさんの殺気にも似たその威圧感が俺達に向けられた。
そして、冷たい瞳がフィリアを睨む。
「僕はソラくんに聞いているよ? 君は――――彼の為を思うなら、少し見守る事を覚えるべきだね」
凄まじい迫力に、フィリアですら言葉を続けられず、その場に座った。
「ガレインさん。とても魅力的な提案ですが、ごめんなさい。その提案は受けられません」
「…………その理由を聞いても?」
「はい。俺は決めたんです。自分の力を信じてくれた彼女や友人達の為に、自分の力でクランを作って、恩返しをしたい。こんな弱い俺を信じ、見守ってくれて、助けてくれたみんなの為にも、そして――――」
「……そして?」
「――――自分の為にも」
隣のフィリアが途中、何かを言おうとしたけど、何も話さずに笑顔になった。
一度目を瞑ったガレインさんは、一つ、大きく息を吸った。
そして、目を開けた彼は、最初の優しい瞳に戻っていた。
「これは脅かして済まなかった。実はソラくんを試してみたくてね」
「え? 俺を試す??」
「ああ、ミリシャくんが君の事をあまりにも勧めるものだからね。あの子があそこまで応援する人は初めてで、どんな凄い子なんだろうと思ったのさ。そうか…………君がこの情報を考え付いた原動力はそこにあるのだね」
先程、懐にしまった俺の攻略情報が書かれた紙を取り出し眺めていた。
「うん。君ならきっと大丈夫だろう。だが、力ない者の話など、世間はそう簡単に聞いてはくれないのさ。ではソラくん。君に『クラン設立の条件』を言い渡そう!」
「えっ!? え? へ?」
「君にはセグリス町から西に進んだ場所にある『亡者の墓』というダンジョンに向かって貰うよ。そして、その三層にいるBランク魔物『フォースレイス』を倒して、『フォースクロース』を持って来て貰う。アドバイスは基本的に禁止にされているが、君にはあまり意味がないと思うし、まだ若い君に一つだけ言葉を送ろう。――――事前調べはしっかりね」
ガレインさんの突如とした言葉に、あっけに取られていると、フィリアが「やったね!」と喜んでくれて、それで漸く現状を理解できた。
…………絶対達成してやる!