ビッグボアを毎日狩る日々を送って、二か月が経った。
この二か月の間、フィリアとカールに数多くの勧誘が届いた。
勿論、全て断ってたけどね。
そんな中の休日の日。
フィリアが話があると事前に言っていたので、フィリアが迎えにくるのを待った。
トントン――――。
扉を開けると、フィリアとカールが来てくれた。
会議は孤児院の会議室を使わせて貰ってるけど、フィリアとカールとの話し合いとかは、うちを使っていた。
「お待たせ~」
飲み物を買って来たフィリアがテーブルにコップを用意して飲み物を慣れた手付きで注ぐ。
「さぁ、ソラ。少し話しておきたい事があってよ」
「おう、どうしたんだ?」
「ああ、最近、俺とフィリアに勧誘が凄まじい事は知っているな?」
「お、おう……」
フィリアは何でもないかのように飲み物それぞれの前に置いて、今度はクッキーを広げていた。
「まぁ、一言で言うなら、正直――――うざい!」
「いつもイライラしてるもんね」
「そうなんだよ! あいつら……ビッグボアを狩ってるのが俺とフィリアの力だと思ってやがるんだ」
「そこ!? まぁ、でもカールとフィリアの力もあるのは違いないからね」
「そこなんだよ! 大事なのは、もなんだよ! あれは俺達二人だけの力じゃないのに、それを知らないやつらが好き勝手に言ってるから……ぐぬぬ」
「まあまあ、そんなに怒っても仕方ないよ。ソラの力を私達だけで独占したいんだし、広まるのは私は嫌かな~」
「はぁ……このバカップルめ」
「誰がバカップルじゃ! まだ付き合ってもないわ!」
「えっ?」
「おいおい、ソラ……」
「あっ、えっ? フィリア? ちょっと、まっ、こわっ、やめっ!」
フィリアが目を潤わせて顔を目の前まで持ってくる。
「だ、だってよ……別にその…………」
「はぁ、ソラのバカ野郎。目の前でいちゃつくんじゃねぇ!」
「それは俺じゃないだろう! フィリアに言ってよ! ていうか、フィリア、顔が近いってば!」
「むぅ……ソラの意地悪……」
い、いや……意地悪も何も、事実を述べただけなんだが……。
そりゃ……フィリアの事は今でも好きだけどさ。だからってまだ付き合うとかそういう事、話した事もないしよ……。
「フィリア、話が進まん。それは後でやってくれ」
「カールの意地悪」
「俺は意地悪じゃない。全てソラの所為だ」
「俺!?」
カールが大笑いした。
「あははは! まぁとにかくよ。勧誘があまりにも多いし、このままでは上位のクランからの誘いもあるかも知れん。そうなると断るのも一苦労だ。そこでだ。ソラ、お前……クランに興味はないか?」
「クラン?」
「おう、いつものパーティーじゃなくて、クランを結成すると冒険者ギルドからクラン用クエストが依頼される事もあるし、在住地を決めれば、そこでクラン用建物を建てる事も可能になる。どうだ?」
「う~ん、そりゃ知ってるけどさ……でも……」
「「でも?」」
意外な答えなのか、二人共首を傾げる。
「…………だってさ? 俺はこのまま孤児院に恩返しがしたいんだ。でもクラン何て入ったら恩返しが出来なくなるじゃないか」
「ん? 恩返し? 何の恩だ?」
「え? 何のって……俺自身やフィリアを助けてくれた恩義?」
フィリアの顔が少し赤くなり、嬉しそうに「えへへ」と笑う。
「はぁ……そんな事かよ。それならもう大丈夫だぞ」
「もう大丈夫? どういう事?」
「ソラ。お前は自分自身の力を過小評価し過ぎなんだよ。お前の力のおかげで、今の孤児院は今までと比べものにならないくらい潤ってる。それも全てソラのおかげだよ。寧ろうちらの方こそ、お前に恩返しをしたいくらいだよ」
「え!? そんな事――――」
「あるわ!」
カールが俺のおでこにいつものデコピンをした。
「痛っ!」
「とにかく! これからは俺達の事より、お前自身の為に立ち上がって欲しいわけよ! 分かった?」
「分からん」
もう一回飛んできたデコピン。
「痛っ!」
「これは孤児院のみんなの意見なんだぞ? フィリアに言った言葉をそのまま俺が返してやるよ。ソラ。お前はこんな所にいるべき人間じゃない。これは親友であり、仲間でもある俺も、フィリアも、孤児院のみんなもそう思っているんだ」
「ソラ? 私もそう思うよ。私の『剣聖』ですら霞むくらいソラは凄いもの。この町でこのまま住み続けるのもいいけどさ。孤児院の皆は成人したら出ていくし、それぞれの道を進むと思うから。私達がいては逆に邪魔になるかも知れないと思うよ」
「…………ちょっと考えさせて」
「おう!」「うん!」
そして、持って来てくれたクッキーや飲み物を飲みながら他愛ない事を話した。
二人は決してクランの事は口に出さずに、メンバーの事、勧誘の事、職能の事などを話した。
その日の夜。
俺は一人、暗い天井を見ながらクランの事を考えた。
カールが帰り際、「ソラ。もしクランを建てるなら俺も誘ってくれると嬉しい」と言われ、フィリアは「私は入るの確定ね~」と言いながら帰っていった。
実はクランの事を少し考えていた時期もあった。
丁度、ビッグボアを初めて倒した頃だ。
その後、フィリアとカールには勧誘が殺到した。
それを見て、羨ましい気持ちは一切なかったが、不安を覚えた。
もしかして、自分がいつか捨てられるんじゃないだろうかって。
だから、クランを作って、二人を縛ろうと考えた。
でも……それって二人の未来を壊す事に繋がると思えた。
だから一度は諦めたのに……まさか、本人達から言われるなんてね。
夜が深くなっていく中、俺は決心を迫られていた。
この二か月の間、フィリアとカールに数多くの勧誘が届いた。
勿論、全て断ってたけどね。
そんな中の休日の日。
フィリアが話があると事前に言っていたので、フィリアが迎えにくるのを待った。
トントン――――。
扉を開けると、フィリアとカールが来てくれた。
会議は孤児院の会議室を使わせて貰ってるけど、フィリアとカールとの話し合いとかは、うちを使っていた。
「お待たせ~」
飲み物を買って来たフィリアがテーブルにコップを用意して飲み物を慣れた手付きで注ぐ。
「さぁ、ソラ。少し話しておきたい事があってよ」
「おう、どうしたんだ?」
「ああ、最近、俺とフィリアに勧誘が凄まじい事は知っているな?」
「お、おう……」
フィリアは何でもないかのように飲み物それぞれの前に置いて、今度はクッキーを広げていた。
「まぁ、一言で言うなら、正直――――うざい!」
「いつもイライラしてるもんね」
「そうなんだよ! あいつら……ビッグボアを狩ってるのが俺とフィリアの力だと思ってやがるんだ」
「そこ!? まぁ、でもカールとフィリアの力もあるのは違いないからね」
「そこなんだよ! 大事なのは、もなんだよ! あれは俺達二人だけの力じゃないのに、それを知らないやつらが好き勝手に言ってるから……ぐぬぬ」
「まあまあ、そんなに怒っても仕方ないよ。ソラの力を私達だけで独占したいんだし、広まるのは私は嫌かな~」
「はぁ……このバカップルめ」
「誰がバカップルじゃ! まだ付き合ってもないわ!」
「えっ?」
「おいおい、ソラ……」
「あっ、えっ? フィリア? ちょっと、まっ、こわっ、やめっ!」
フィリアが目を潤わせて顔を目の前まで持ってくる。
「だ、だってよ……別にその…………」
「はぁ、ソラのバカ野郎。目の前でいちゃつくんじゃねぇ!」
「それは俺じゃないだろう! フィリアに言ってよ! ていうか、フィリア、顔が近いってば!」
「むぅ……ソラの意地悪……」
い、いや……意地悪も何も、事実を述べただけなんだが……。
そりゃ……フィリアの事は今でも好きだけどさ。だからってまだ付き合うとかそういう事、話した事もないしよ……。
「フィリア、話が進まん。それは後でやってくれ」
「カールの意地悪」
「俺は意地悪じゃない。全てソラの所為だ」
「俺!?」
カールが大笑いした。
「あははは! まぁとにかくよ。勧誘があまりにも多いし、このままでは上位のクランからの誘いもあるかも知れん。そうなると断るのも一苦労だ。そこでだ。ソラ、お前……クランに興味はないか?」
「クラン?」
「おう、いつものパーティーじゃなくて、クランを結成すると冒険者ギルドからクラン用クエストが依頼される事もあるし、在住地を決めれば、そこでクラン用建物を建てる事も可能になる。どうだ?」
「う~ん、そりゃ知ってるけどさ……でも……」
「「でも?」」
意外な答えなのか、二人共首を傾げる。
「…………だってさ? 俺はこのまま孤児院に恩返しがしたいんだ。でもクラン何て入ったら恩返しが出来なくなるじゃないか」
「ん? 恩返し? 何の恩だ?」
「え? 何のって……俺自身やフィリアを助けてくれた恩義?」
フィリアの顔が少し赤くなり、嬉しそうに「えへへ」と笑う。
「はぁ……そんな事かよ。それならもう大丈夫だぞ」
「もう大丈夫? どういう事?」
「ソラ。お前は自分自身の力を過小評価し過ぎなんだよ。お前の力のおかげで、今の孤児院は今までと比べものにならないくらい潤ってる。それも全てソラのおかげだよ。寧ろうちらの方こそ、お前に恩返しをしたいくらいだよ」
「え!? そんな事――――」
「あるわ!」
カールが俺のおでこにいつものデコピンをした。
「痛っ!」
「とにかく! これからは俺達の事より、お前自身の為に立ち上がって欲しいわけよ! 分かった?」
「分からん」
もう一回飛んできたデコピン。
「痛っ!」
「これは孤児院のみんなの意見なんだぞ? フィリアに言った言葉をそのまま俺が返してやるよ。ソラ。お前はこんな所にいるべき人間じゃない。これは親友であり、仲間でもある俺も、フィリアも、孤児院のみんなもそう思っているんだ」
「ソラ? 私もそう思うよ。私の『剣聖』ですら霞むくらいソラは凄いもの。この町でこのまま住み続けるのもいいけどさ。孤児院の皆は成人したら出ていくし、それぞれの道を進むと思うから。私達がいては逆に邪魔になるかも知れないと思うよ」
「…………ちょっと考えさせて」
「おう!」「うん!」
そして、持って来てくれたクッキーや飲み物を飲みながら他愛ない事を話した。
二人は決してクランの事は口に出さずに、メンバーの事、勧誘の事、職能の事などを話した。
その日の夜。
俺は一人、暗い天井を見ながらクランの事を考えた。
カールが帰り際、「ソラ。もしクランを建てるなら俺も誘ってくれると嬉しい」と言われ、フィリアは「私は入るの確定ね~」と言いながら帰っていった。
実はクランの事を少し考えていた時期もあった。
丁度、ビッグボアを初めて倒した頃だ。
その後、フィリアとカールには勧誘が殺到した。
それを見て、羨ましい気持ちは一切なかったが、不安を覚えた。
もしかして、自分がいつか捨てられるんじゃないだろうかって。
だから、クランを作って、二人を縛ろうと考えた。
でも……それって二人の未来を壊す事に繋がると思えた。
だから一度は諦めたのに……まさか、本人達から言われるなんてね。
夜が深くなっていく中、俺は決心を迫られていた。