「ソラ……」
「ん?」
「流石に鋼鉄の矢とか、使い捨て魔石まで…………準備し過ぎじゃ?」
「準備にし過ぎも何もないよ! みんなの命がかかっているんだからな!」
「そりゃそうだが…………正直、いざとなりゃ、フィリア一人で……」
「そりゃ……最終的にはそういうのも考えてるけどさ……」
カールの言いたい事も分かる。
フィリアの『剣聖』に俺の『剣士』が一緒になり、双剣を使ったフィリアの圧倒的な強さは凄まじいものだった。
やはり、フィリアの居場所はここより……なんて思っていると、何故かフィリアにすぐにバレて、めちゃめちゃ怒られる。何故バレるのだ…………まさか、『剣聖』って読心術でもあるのか!?
「まぁ、最終兵器フィリアもいる事だし、俺達は精一杯頑張るわ~ソラも指揮よろしくな」
「おう! 俺も頑張るわ!」
次の日。
俺達はセグリス平原にやってきた。
いつもならこのままスモールボアを担いで帰れるように十頭くらい狩るのだけど、本日はスモールボアではなく、その上位個体のビッグボアが狙いだ。
平原を見渡す。
ちょいちょいゴブリンやスモールボアが見える。
そんな中、奥の方に物凄く大きいスモールボア――――いや、ビッグボアが見えた。
既に違う場所では、違うパーティーがビッグボアと戦っていた。
早速ビッグボアを見つけたフィリアが「あそこにいるわ!」と指差した。
俺達は速やかにビッグボアに向かった。
◇
一言で表すなら、とにかくデカい!
スモールボアが赤ちゃんのように思えるくらいにデカい!
「思った以上に大きいね……」
「ああ……」
始めて目の前にするビッグボアの圧倒的な威圧感に俺達全員足が竦んだ。
「みんな! 私達は強い! そして、最高の指揮官のソラがいる!」
フィリアの声に我に返る。
「ベリンさん! 前衛で大盾を構えてください! 受け止めなくていいです。というか、多分受け止められません。突撃してくるビッグボアの大盾で横なぎで進路をずらしてください!」
「分かった!」
「狩人チームは弓矢を準備! 一番チームは前方の足狙い! 二番チームは両目を狙ってください! 即撃ちで両目をそれぞれ狙ってください!」
「「「りょうかい!!」」」
「引っ張るのはいつものフィリア、お願い!」
「うん!」
「先制攻撃はカールの氷魔法から! 直後狩人チーム! 連続してカールは魔法を放ってくれ!」
「「「「りょうかい!!」」」」
「…………では、初めての大型魔物の狩りだけど、いつも通り戦えば何とかなるはず! もしもの時は、自分の命を優先に! では……フィリア! お願い!」
「任せて!」
フィリアがビッグボアに短剣を投げつけた。
攻撃されたビッグボアがフィリアを認知し、追いかけ始める。
フィリアも全速力でこちらに逃げて来た。
凄まじい速度の巨体が土煙を上げながら向かってくる。
怒り狂うビッグボアが近くまでやってきた。
「カール!」
「――――氷魔法、フローズンランス!!」
カールの氷の大槍がビッグボアに飛んで行き、そのまま身体に刺さる。
「撃て!!」
そして、狩人の弓矢が両足と両目に目掛けて飛んで行く。
『ダブルクラッシュ』が掛った弓矢が右目、左目、前両足に刺さった。
更に、カールの氷の大槍がもう一本、ビッグボアに刺さる。
……。
……。
……。
「あれ? 終わり?」
この後、突撃したビッグボアを大盾で進路を逸らして、もう一度陣形を組みなおして、もう一度やるつもりだった……のに。
「ソラ!」
フィリアが走ってきて、両手をあげた。
いつものハイタッチをする。
少し震える自分の両手を見つつ、カールや先輩達を見回した。
「「「「やったぞ!!!」」」」
抱き合う先輩達と、自分の肩に腕をかけてくるカール、嬉しそうに笑っているフィリアを見て、漸く勝てた事を理解した。
「「っしゃー!!」」
カールとのハイタッチが響き渡った。
◇
その日、セグリス町に衝撃的な光景が広がった。
彼らの事を知る者は多い。何故なら……彼らが孤児院の子供達だからである。
年長組の青年も数人いるが、中には幼さが残る少年少女も見えていた。
彼らは時たまスモールボアを担いでは、そのまま冒険者ギルドに向かうのだが、その光景はわりと日常的な光景であった。
しかし、本日の彼らは想像を超え、スモールボアではなくビッグボアを大きな荷台に乗せて、運んできた。
スモールボアは多くの冒険者が倒すので、担いでいても何ら不思議ではない。
しかし、ビッグボアともなると話が違う。
大型魔物であるビッグボアは、洗練されたパーティーでなければ狩るのは非常に難しい。
しかも、特出すべきは、誰一人怪我をしていない事である。
その日を境に、毎日ビッグボアを運ぶ彼らは、セグリス町でも一躍有名となった。
しかし、その噂はやがて違う方向へと進む。
『剣聖』フィリアが率いるパーティー。
ビッグボアは『剣聖』一人が倒しているという噂だ。
しかし、彼らが運んでいる光景を見た者なら誰もが知っている。
倒されたビッグボアに、斬り傷が一つもない事を。
「ん?」
「流石に鋼鉄の矢とか、使い捨て魔石まで…………準備し過ぎじゃ?」
「準備にし過ぎも何もないよ! みんなの命がかかっているんだからな!」
「そりゃそうだが…………正直、いざとなりゃ、フィリア一人で……」
「そりゃ……最終的にはそういうのも考えてるけどさ……」
カールの言いたい事も分かる。
フィリアの『剣聖』に俺の『剣士』が一緒になり、双剣を使ったフィリアの圧倒的な強さは凄まじいものだった。
やはり、フィリアの居場所はここより……なんて思っていると、何故かフィリアにすぐにバレて、めちゃめちゃ怒られる。何故バレるのだ…………まさか、『剣聖』って読心術でもあるのか!?
「まぁ、最終兵器フィリアもいる事だし、俺達は精一杯頑張るわ~ソラも指揮よろしくな」
「おう! 俺も頑張るわ!」
次の日。
俺達はセグリス平原にやってきた。
いつもならこのままスモールボアを担いで帰れるように十頭くらい狩るのだけど、本日はスモールボアではなく、その上位個体のビッグボアが狙いだ。
平原を見渡す。
ちょいちょいゴブリンやスモールボアが見える。
そんな中、奥の方に物凄く大きいスモールボア――――いや、ビッグボアが見えた。
既に違う場所では、違うパーティーがビッグボアと戦っていた。
早速ビッグボアを見つけたフィリアが「あそこにいるわ!」と指差した。
俺達は速やかにビッグボアに向かった。
◇
一言で表すなら、とにかくデカい!
スモールボアが赤ちゃんのように思えるくらいにデカい!
「思った以上に大きいね……」
「ああ……」
始めて目の前にするビッグボアの圧倒的な威圧感に俺達全員足が竦んだ。
「みんな! 私達は強い! そして、最高の指揮官のソラがいる!」
フィリアの声に我に返る。
「ベリンさん! 前衛で大盾を構えてください! 受け止めなくていいです。というか、多分受け止められません。突撃してくるビッグボアの大盾で横なぎで進路をずらしてください!」
「分かった!」
「狩人チームは弓矢を準備! 一番チームは前方の足狙い! 二番チームは両目を狙ってください! 即撃ちで両目をそれぞれ狙ってください!」
「「「りょうかい!!」」」
「引っ張るのはいつものフィリア、お願い!」
「うん!」
「先制攻撃はカールの氷魔法から! 直後狩人チーム! 連続してカールは魔法を放ってくれ!」
「「「「りょうかい!!」」」」
「…………では、初めての大型魔物の狩りだけど、いつも通り戦えば何とかなるはず! もしもの時は、自分の命を優先に! では……フィリア! お願い!」
「任せて!」
フィリアがビッグボアに短剣を投げつけた。
攻撃されたビッグボアがフィリアを認知し、追いかけ始める。
フィリアも全速力でこちらに逃げて来た。
凄まじい速度の巨体が土煙を上げながら向かってくる。
怒り狂うビッグボアが近くまでやってきた。
「カール!」
「――――氷魔法、フローズンランス!!」
カールの氷の大槍がビッグボアに飛んで行き、そのまま身体に刺さる。
「撃て!!」
そして、狩人の弓矢が両足と両目に目掛けて飛んで行く。
『ダブルクラッシュ』が掛った弓矢が右目、左目、前両足に刺さった。
更に、カールの氷の大槍がもう一本、ビッグボアに刺さる。
……。
……。
……。
「あれ? 終わり?」
この後、突撃したビッグボアを大盾で進路を逸らして、もう一度陣形を組みなおして、もう一度やるつもりだった……のに。
「ソラ!」
フィリアが走ってきて、両手をあげた。
いつものハイタッチをする。
少し震える自分の両手を見つつ、カールや先輩達を見回した。
「「「「やったぞ!!!」」」」
抱き合う先輩達と、自分の肩に腕をかけてくるカール、嬉しそうに笑っているフィリアを見て、漸く勝てた事を理解した。
「「っしゃー!!」」
カールとのハイタッチが響き渡った。
◇
その日、セグリス町に衝撃的な光景が広がった。
彼らの事を知る者は多い。何故なら……彼らが孤児院の子供達だからである。
年長組の青年も数人いるが、中には幼さが残る少年少女も見えていた。
彼らは時たまスモールボアを担いでは、そのまま冒険者ギルドに向かうのだが、その光景はわりと日常的な光景であった。
しかし、本日の彼らは想像を超え、スモールボアではなくビッグボアを大きな荷台に乗せて、運んできた。
スモールボアは多くの冒険者が倒すので、担いでいても何ら不思議ではない。
しかし、ビッグボアともなると話が違う。
大型魔物であるビッグボアは、洗練されたパーティーでなければ狩るのは非常に難しい。
しかも、特出すべきは、誰一人怪我をしていない事である。
その日を境に、毎日ビッグボアを運ぶ彼らは、セグリス町でも一躍有名となった。
しかし、その噂はやがて違う方向へと進む。
『剣聖』フィリアが率いるパーティー。
ビッグボアは『剣聖』一人が倒しているという噂だ。
しかし、彼らが運んでいる光景を見た者なら誰もが知っている。
倒されたビッグボアに、斬り傷が一つもない事を。