セグリス平原でスモールボアを狩り始めてから一か月が経過した。
俺が考えた『釣り狩り』も段々と様になって、今では綺麗な連携で、狩りも一瞬で終わる。
そんな俺達にフィリアは一つ意見を出した。
「「「「ビッグボア!?」」」」
孤児院にある会議室から驚きの声があがった。
それもそうだ。
まさかフィリアから「ビッグボアに挑戦してみよう」なんて言葉が出るとは思わなかったから。
「フィリア、流石にビッグボアは早すぎるんじゃないか?」
「早くないと思う! だって……みんな、今日までずっとレベルを上げて来たんだからね!」
そう。
実はこの一か月間、俺の経験値は一切上がってない。
最初は安定してきたら、一人ずつレベル1に戻して――――の予定だったけど、その前にスモールボアではなく、ビッグボアを狩ってみたいという意見もちらほらあった。だから、一か月間ずっとスモールボアやゴブリンを倒してレベルアップを目指してきた。
「私は賛成!」
アムダ姉さんが手を上げた。
それに釣られ、何人かの先輩も挑戦してみたいと手を上げた。
俺達十三人の中で、六人が賛成に手を上げている。
俺とカールを含めた他の七人は慎重な考えだ。
なんせ……狩りは命と隣り合わせだから。
でも、じゃあ、いつまで力を溜めるの? と言われれば、それも曖昧だ。
実は二日前、全員のレベルが5に上がった。
レベル5。
それは人類にとって、一つの大きな壁である。レベル4から5は最初の壁と言われているのだ。
理由としては、駆け出しから中級者になるレベルである事。となると、初心者の頃に倒していた魔物の経験値は既に加減に引っかかってしまって、いくら倒してもレベルが上がらなくなる。
実際は上がらなくなるわけではないが、ゴブリンやスモールボアだけでレベル4から1つ上げようと思うと、とんでもない時間がかかるのだ。それこそ、毎日狩りに勤しんで数年単位で。
そうなると、次のステージの魔物を狩らないと行けなくなる。そうなると自然と危険も増す。そこに挑戦して散る冒険者も多いのだ。
そんな危険を冒す事なく、俺達はレベル5に到達した。勿論俺だけまだ4だけどね。
4から5に上がる事によって変わる大きな理由は、スキルにもある。
5になった瞬間に覚えるスキルは、どの職能でも最も効率の良いスキルを得られる。
例えば、剣士は『剣闘気』というスキルを覚える。このスキルは『剣士』の代表的なスキルで、自身の精神力が続く限り、剣に闘気を纏わせる事が出来て、全ての攻撃が底上げされる。
更に使う時のペナルティは存在せず、本人の精神力に依存するので数時間維持させる事も可能だ。
そんなレベル5になった俺達のパーティーは、既にビッグボアを簡単に倒せるだろう。
しかし、ここで一つだけ懸念点があった。
「確かに俺達は強くなったよ。それはずっと指揮している俺も知っている。でも、俺達の成長はあまりにも早すぎる。本来なら数年かけてゆっくりと強くなり、その強さに見合った経験があるはずなのに、俺達にはそれがない。俺は……それが一番心配だよ」
真っすぐフィリアを見つめた。
「うん。ソラの言い分ももちろん分かるよ。それを分かった上で、ビッグボアに挑戦してみるべきだと思ったの」
「フィリア、その言い分にも理由があるんじゃないの? 聞かせてくれ」
隣で聞いていたアムダ姉さんが聞き返した。
「うん。最も大きな理由は、ソラの指揮にあるよ」
「えっ? 俺の指揮?」
想像していた答えとは全く違う答えに驚いた。
「さっき、本来の経験はゆっくりするモノだと言ってたよね。でもあれって、一人ではなく多人数での経験が入るはずなの。今日までソラの指揮で色んな戦い方を試した私達だからこそ、普通の人では出来ない経験を沢山経験した。それがこの一か月だと思う。本来の戦いは一人の力に頼る世の中なはずなのに、私達はずっと連携を意識している。だからこそ、私達はもっと連携を試していくべきだと思うの」
フィリアは、『連携』という言葉の時に強く主張していた。
その言葉の毎に他の先輩も頷く。
「ソラ。残念ながら『連携』の言葉が出たら……俺も賛成の側だな」
「カールまで!?」
「ああ、実は休日に知り合いのパーティーに何度か誘われた事があったよ」
いつの間にそんな事を……ここ一か月の休日は遊んでくれないなと思ってたらそういう事だったのか。
「俺なりに考えがあっての事だ。そんなに無茶な事はしてないから、休んでないと怒るのはよしてくれよ」
先輩達が笑い出す。
くっ……怒るに怒れない……。
「色んなパーティーの戦い方を学んで来たんだよ。魔法使いと言えば色んなパーティーが歓迎してくれるからね。それで思った事。ソラ、お前が率いるパーティーは異常だ。良い意味でな」
「え!? 異常!?」
「ああ、スモールボア十頭を一分足らずで倒せるパーティーを俺は見た事がない。まぁ、フィリアが本気を出して一人で倒すのも出来るだろうが、それとこれは全く別だ。全員があれだけ関わって、あれだけの事をやって一瞬で終わらせる……それがソラの指揮の力だよ。だから、そういう意味でならビッグボアに挑戦する方に投票だな」
カールの一言でビッグボアに挑戦する事が決まった。
勿論、事前の準備は徹底していく。
狩人チームの新しいスキル『ダブルクラッシュ』という、常時放った矢が二つになるスキル且つ高威力を目指す為、普段使いの鉄の矢の更に上位に当たる鋼鉄の矢を準備。
カールの新しいスキルは『詠唱短縮』により、素早く魔法が撃てるようになったので、攻撃の指示もしやすくなった。
そして、俺達は初めてのビッグボアに挑戦する事となった。
俺が考えた『釣り狩り』も段々と様になって、今では綺麗な連携で、狩りも一瞬で終わる。
そんな俺達にフィリアは一つ意見を出した。
「「「「ビッグボア!?」」」」
孤児院にある会議室から驚きの声があがった。
それもそうだ。
まさかフィリアから「ビッグボアに挑戦してみよう」なんて言葉が出るとは思わなかったから。
「フィリア、流石にビッグボアは早すぎるんじゃないか?」
「早くないと思う! だって……みんな、今日までずっとレベルを上げて来たんだからね!」
そう。
実はこの一か月間、俺の経験値は一切上がってない。
最初は安定してきたら、一人ずつレベル1に戻して――――の予定だったけど、その前にスモールボアではなく、ビッグボアを狩ってみたいという意見もちらほらあった。だから、一か月間ずっとスモールボアやゴブリンを倒してレベルアップを目指してきた。
「私は賛成!」
アムダ姉さんが手を上げた。
それに釣られ、何人かの先輩も挑戦してみたいと手を上げた。
俺達十三人の中で、六人が賛成に手を上げている。
俺とカールを含めた他の七人は慎重な考えだ。
なんせ……狩りは命と隣り合わせだから。
でも、じゃあ、いつまで力を溜めるの? と言われれば、それも曖昧だ。
実は二日前、全員のレベルが5に上がった。
レベル5。
それは人類にとって、一つの大きな壁である。レベル4から5は最初の壁と言われているのだ。
理由としては、駆け出しから中級者になるレベルである事。となると、初心者の頃に倒していた魔物の経験値は既に加減に引っかかってしまって、いくら倒してもレベルが上がらなくなる。
実際は上がらなくなるわけではないが、ゴブリンやスモールボアだけでレベル4から1つ上げようと思うと、とんでもない時間がかかるのだ。それこそ、毎日狩りに勤しんで数年単位で。
そうなると、次のステージの魔物を狩らないと行けなくなる。そうなると自然と危険も増す。そこに挑戦して散る冒険者も多いのだ。
そんな危険を冒す事なく、俺達はレベル5に到達した。勿論俺だけまだ4だけどね。
4から5に上がる事によって変わる大きな理由は、スキルにもある。
5になった瞬間に覚えるスキルは、どの職能でも最も効率の良いスキルを得られる。
例えば、剣士は『剣闘気』というスキルを覚える。このスキルは『剣士』の代表的なスキルで、自身の精神力が続く限り、剣に闘気を纏わせる事が出来て、全ての攻撃が底上げされる。
更に使う時のペナルティは存在せず、本人の精神力に依存するので数時間維持させる事も可能だ。
そんなレベル5になった俺達のパーティーは、既にビッグボアを簡単に倒せるだろう。
しかし、ここで一つだけ懸念点があった。
「確かに俺達は強くなったよ。それはずっと指揮している俺も知っている。でも、俺達の成長はあまりにも早すぎる。本来なら数年かけてゆっくりと強くなり、その強さに見合った経験があるはずなのに、俺達にはそれがない。俺は……それが一番心配だよ」
真っすぐフィリアを見つめた。
「うん。ソラの言い分ももちろん分かるよ。それを分かった上で、ビッグボアに挑戦してみるべきだと思ったの」
「フィリア、その言い分にも理由があるんじゃないの? 聞かせてくれ」
隣で聞いていたアムダ姉さんが聞き返した。
「うん。最も大きな理由は、ソラの指揮にあるよ」
「えっ? 俺の指揮?」
想像していた答えとは全く違う答えに驚いた。
「さっき、本来の経験はゆっくりするモノだと言ってたよね。でもあれって、一人ではなく多人数での経験が入るはずなの。今日までソラの指揮で色んな戦い方を試した私達だからこそ、普通の人では出来ない経験を沢山経験した。それがこの一か月だと思う。本来の戦いは一人の力に頼る世の中なはずなのに、私達はずっと連携を意識している。だからこそ、私達はもっと連携を試していくべきだと思うの」
フィリアは、『連携』という言葉の時に強く主張していた。
その言葉の毎に他の先輩も頷く。
「ソラ。残念ながら『連携』の言葉が出たら……俺も賛成の側だな」
「カールまで!?」
「ああ、実は休日に知り合いのパーティーに何度か誘われた事があったよ」
いつの間にそんな事を……ここ一か月の休日は遊んでくれないなと思ってたらそういう事だったのか。
「俺なりに考えがあっての事だ。そんなに無茶な事はしてないから、休んでないと怒るのはよしてくれよ」
先輩達が笑い出す。
くっ……怒るに怒れない……。
「色んなパーティーの戦い方を学んで来たんだよ。魔法使いと言えば色んなパーティーが歓迎してくれるからね。それで思った事。ソラ、お前が率いるパーティーは異常だ。良い意味でな」
「え!? 異常!?」
「ああ、スモールボア十頭を一分足らずで倒せるパーティーを俺は見た事がない。まぁ、フィリアが本気を出して一人で倒すのも出来るだろうが、それとこれは全く別だ。全員があれだけ関わって、あれだけの事をやって一瞬で終わらせる……それがソラの指揮の力だよ。だから、そういう意味でならビッグボアに挑戦する方に投票だな」
カールの一言でビッグボアに挑戦する事が決まった。
勿論、事前の準備は徹底していく。
狩人チームの新しいスキル『ダブルクラッシュ』という、常時放った矢が二つになるスキル且つ高威力を目指す為、普段使いの鉄の矢の更に上位に当たる鋼鉄の矢を準備。
カールの新しいスキルは『詠唱短縮』により、素早く魔法が撃てるようになったので、攻撃の指示もしやすくなった。
そして、俺達は初めてのビッグボアに挑戦する事となった。