冒険者ギルドは大陸中に繋がっており、その国だけのモノではない。

 そんな冒険者ギルドに衝撃的な事実が告げられる。

 クランAランクで有名な『エデン』が、解散宣言をし、クランCランクの『銀朱の蒼穹』に全員移籍したと告げられる。

 そのニュースは大陸中に瞬く間に伝わった。

 俺達のクランはまだCランクなのに、最上位クランとして有名な『エデン』が合流するというニュースは、とんでもない事件に違いない。



「元々運営しているようなクランではないが、長年俺達の為に頑張ってくれたクランだからこそ、解散というのは悲しさが込み上がるものだな……」

「アインハルトさん……」

 解散届けを冒険者ギルドに出した後、悲しげに呟く。

 俺も何かしらの理由があって、『銀朱の蒼穹』を解散すると思うと、とても普通にはしていられる自信がない。

「だが、俺達も既に覚悟を決めている。マスター、これからよろしく頼む」

「こちらこそ、よろしくお願いします。アインハルトさんには教えて欲しい事も沢山ありますから、色々アドバイスしてください」

「うむ。マスターを助けるのもメンバーの役目。これまで培った知識と経験でマスターを助けられる部分は出来る限り協力しよう」

 まさかあの日出会ったパーティーの人と、こうして肩を並べて戦える日が来るなんて、想像だにしなかったな……。



 冒険者ギルドを後にして、俺達は王城の広場に集まった。

 早速集まった元エデンであり、元五騎士達の六名に、『銀朱の蒼穹』を説明する。

 そして、ミリシャさんの提案でスキル『ユニオン』の枠を見直す事になった。


 サブマスターと指揮官は変更なし。

 隊長の十枠を変更する。

 ①カシアさん、②アインハルトさん、③ルリくん、④ルナちゃん、⑤シヤさん、⑥カール、⑦メイリちゃん、⑧エルロさん、⑨カーターくん、⑩アンナ。

 まず、アムダ姉さんとイロラ姉さんは隊長ではなく、隊員になって貰った。

 二人とも元々人を従えるのは苦手だと言っていたので、そのままアインハルトさんのところに入って貰った。

 そして十番目のアンナは、本人希望だ。

 十番目が良いとの事らしいけど、隊長になった瞬間にアンナから放たれた圧倒的なオーラに、その場にいた全員が冷や汗をかいたのだろう。

 隊員枠はそれぞれ厳選して入って貰っている。既に人数が多くなり、枠が足りない状況だ。

 組員枠は無限で、その枠だけでも全ステータスが一割上がるだけで十分大きな効果だとの事だ。



「えっと……アインハルトさん達はともかく、アンナも本当に大丈夫?」

「うん~、私もソラくんの力が欲しいから~」

 既にアインハルトさん達は全員が『同職転職』でレベルが1に戻っている。

 それを見たアンナが、まさか自分にも掛けて欲しいと言われて驚いてしまった。

 魔女とは言え、『銀朱の蒼穹』の一員だから誰も何もしないはずだ。

 それをアンナから信用している事に、驚いてしまったのだ。

 アンナに『同職転職』を使うと、「本当にレベルが1に戻った~凄い~」と不思議がりながら、自分自身に『鑑定術』を掛けて感動していた。

 それと今回初めてレベル10だったメンバーをレベル1に戻した。

 その理由としては、極スキルが変化するかどうかを見る為だったけど、一人目をレベル1に戻した時点で、解決してしまった。

 結論から言えば、極スキルは一度獲得すると、消す事が出来ない。

 レベル1に戻っても極スキルは消えず、そのまま残っていた。

 その事から、変化させる事が出来ないのは確定した感じだ。

 まさか、二つ目を獲得するなんてことはできないだろう。

 アンナから極スキルも固有スキルも生まれつき決まったモノを持つと言われていたけど、それが確定した形だね。


 レベル1に戻った時点で、『王家のダンジョン』について解説があった。

「アクアソル王国が『王家のダンジョン』をずっと隠していた理由。それは、とても簡単(・・)だからだ。別な名称として、『育成のダンジョン』と言われている。階層は全部で二層あり、一層には弱いが経験値が高い魔物が沢山存在している。
 二層は、フロアボス魔物が一体だけ存在していて、向こうのAランクダンジョンのダークドラゴン同様にレベル10になれる『守護騎士』が存在する。強さはダークドラゴンよりも遥かに弱い」

 アインハルトさんの言葉で、『王家のダンジョン』をずっと隠していた理由が分かった。

 育成のダンジョン…………それを知るだけで、帝国は間違いなく侵略してくるだろう。

 そんなダンジョンがあれば、経済など関係なく占拠できたに違いない。

 育成が簡単に出来るダンジョンを持つだけで、とてつもない強みを持つからね。


 ミリシャさんの見立てだと、アクアソル王国を見張っていた密偵が帰らない日が二十日続いた場合、攻めてくるのではと予想されている。

 そういう事もあり、急いでレベル上げをして、休暇を取ろうと思う。

 せっかく休暇に来たのに、まさか戦争をする羽目になるとは……予想はしていたけどね。


 お城の中から地下に続いている道を降りる。

 その先にある大きな扉があり、そこを開くと広い高原が見えた。