セグリス平原。
その場所はセグリス町の東に広がっているゴブリンの森を抜けた先にある平原である。
広い平原には数多くの魔物が生息しているが、それだけでなく薬草や魔力を帯びて大きくなった野菜などがあり、魔物狩りだけでなく、多くの人で賑わっている平原である。
そして、もう一つ、人気な理由がある。
それは平原を見渡せる事である。
狩りだけでなく、採取も周りの魔物による危険が常に付きまとっている。
平原ならではの平坦な景色に、魔物の居場所を簡単に捕捉出来るから強力な魔物が現れた時に逃げやすいのだ。
そんなセグリス平原の最も多い魔物は、スモールボアである。
サイズも大き過ぎず、その肉はとても人気があり、売れない事がないほどに人気がある。
たまにゴブリンの森でも出現するが、基本的にはセグリス平原に多く生息している。
その上位個体となるビッグボアも時折出現するが、その大きさから狙っている高ランクのクランの餌食になるのだ。
ビッグボアは味もさることながら、一体でも大量の肉が取れるので、ビックボアを専門で狩るパーティーやクランまで存在している。
余談にはなるが、この世界での狩りの基本は、初撃を与えた人が狩りの権利を獲得する。
これは狩場でのトラブルを防ぐために冒険者ギルドで作ったルールであり、それに違反した冒険者や狩人は、冒険者ギルドを通じてあらゆる場所から疎遠になる。そうなれば冒険だけでなく、買い物や売り物にも困るので、決してこのルールに違反する人はいない。
たまに、放った矢が数秒差で当たって、折半するパーティーもいれば、初撃を優先するパーティーと様々ではあるが、基本的にはやはり初撃を優先するのだ。
そのセグリス平原に異質なパーティーが現れた。
十人が弓を担いでおり、一人は魔法使いのようで杖を持っている。
そして、前方には大きな盾だけを持っている人が一人、その更に前には二振りの剣を持った美しい女性が一人だった。
その異様なパーティー編成に周りのパーティーが息を呑んだ。
通常なら、狩りのパーティー編成は前衛8対、後衛2の割合が常識である。
しかし、かのパーティーはまさにその逆である。
あまりの常識とはかけ離れた彼らに視線が集まる。
そして、その後、更なる衝撃が平原の全ての視線を集める事となった。
なんと、二振りの剣を持った美しい女性が、とんでもない速度で平原を駆け回り、スモールボアに石を投げてぶつけた。
スモールボア達は、もちろん彼女を追いかける。
彼女はそのまま戦う事なく、大盾を持った男性に向かって走った。
十頭を超えるスモールボアがそのパーティーに向かって突撃する。
しかし、スモールボアが大盾の男に到達するまであと数秒の時。
パーティーの奥にいた凛々しい少年が合図を送った。彼の合図で真っ赤に燃えるような髪が揺らぎ、その髪よりも赤い紅の瞳がスモールボアを睨んだ。
そして、魔法使いによる爆発魔法が飛ぶ。
爆発が起きた直後、今度は弓矢がそれぞれのスモールボアに降り注いだ。
十頭いたスモールボアがたった一瞬で全滅するのであった。
しかし、その時だった。前方ではなく、横からスモールボアが一頭現れる。
突如現れたスモールボアに、誰もが息を呑んだ。
カーン!
突撃したスモールボアを大盾が防ぐ。
直後、目にもとまらぬ剣戟がスモールボアを切り刻んだ。
あまりの凄まじい剣戟に、血しぶき一つする事なく倒れるスモールボアの横に立つ美しい女性にその場にいた全ての者が息を呑む。
そのパーティーは速やかにスモールボア十一頭を担ぎ、町に戻って行った。
あまりの一瞬の出来事に、その平原にいた全ての者が呆気にとられたのだった。
◇
「がははは! めちゃくちゃ綺麗な女の子がスモールボアを集めて、一瞬で魔法と弓で倒した連中がいた!?」
「そ、そうだよ!」
「「「「がははは!」」」」
セグリス町の酒場に大笑いが響いた。
「ほ、本当だからね! 一瞬でスモールボア十頭を一箇所に呼び寄せて、一瞬で殲滅していたんだよ!」
「がはははは! お前、何か夢でも見たんじゃないか? 仮にそうだとして、弓使いが十人以上いる事がそもそも可笑しいし、魔法使いもいた? 魔法使いが何でそんなパーティーに入るんだよ! がはははっ、魔法使いならもっと凄いパーティーに入るだろうよ」
「そ、そうだけど! でも確かに全員が弓を使ってて、全部当ててたよ!? 外れた弓矢が一本もなかったんだから!」
「がははは! 仮に『狩人』だとして、十人もの狩人がいるパーティーやクランなんて、この町で聞いた事もないぞ?」
「そうだけど…………」
その日を境に、セグリス町には奇妙な噂が流れるようになった。
なんでも、狩人十人以上がいて、スモールボア十頭を一瞬で狩っては消えるパーティーがセグリス平原に出現したという噂だ。
しかし、そのパーティーを見たという人はあまりにも少なく、単なる噂に留まった。
彼らがビッグボアを仕留めるその日まで。
その場所はセグリス町の東に広がっているゴブリンの森を抜けた先にある平原である。
広い平原には数多くの魔物が生息しているが、それだけでなく薬草や魔力を帯びて大きくなった野菜などがあり、魔物狩りだけでなく、多くの人で賑わっている平原である。
そして、もう一つ、人気な理由がある。
それは平原を見渡せる事である。
狩りだけでなく、採取も周りの魔物による危険が常に付きまとっている。
平原ならではの平坦な景色に、魔物の居場所を簡単に捕捉出来るから強力な魔物が現れた時に逃げやすいのだ。
そんなセグリス平原の最も多い魔物は、スモールボアである。
サイズも大き過ぎず、その肉はとても人気があり、売れない事がないほどに人気がある。
たまにゴブリンの森でも出現するが、基本的にはセグリス平原に多く生息している。
その上位個体となるビッグボアも時折出現するが、その大きさから狙っている高ランクのクランの餌食になるのだ。
ビッグボアは味もさることながら、一体でも大量の肉が取れるので、ビックボアを専門で狩るパーティーやクランまで存在している。
余談にはなるが、この世界での狩りの基本は、初撃を与えた人が狩りの権利を獲得する。
これは狩場でのトラブルを防ぐために冒険者ギルドで作ったルールであり、それに違反した冒険者や狩人は、冒険者ギルドを通じてあらゆる場所から疎遠になる。そうなれば冒険だけでなく、買い物や売り物にも困るので、決してこのルールに違反する人はいない。
たまに、放った矢が数秒差で当たって、折半するパーティーもいれば、初撃を優先するパーティーと様々ではあるが、基本的にはやはり初撃を優先するのだ。
そのセグリス平原に異質なパーティーが現れた。
十人が弓を担いでおり、一人は魔法使いのようで杖を持っている。
そして、前方には大きな盾だけを持っている人が一人、その更に前には二振りの剣を持った美しい女性が一人だった。
その異様なパーティー編成に周りのパーティーが息を呑んだ。
通常なら、狩りのパーティー編成は前衛8対、後衛2の割合が常識である。
しかし、かのパーティーはまさにその逆である。
あまりの常識とはかけ離れた彼らに視線が集まる。
そして、その後、更なる衝撃が平原の全ての視線を集める事となった。
なんと、二振りの剣を持った美しい女性が、とんでもない速度で平原を駆け回り、スモールボアに石を投げてぶつけた。
スモールボア達は、もちろん彼女を追いかける。
彼女はそのまま戦う事なく、大盾を持った男性に向かって走った。
十頭を超えるスモールボアがそのパーティーに向かって突撃する。
しかし、スモールボアが大盾の男に到達するまであと数秒の時。
パーティーの奥にいた凛々しい少年が合図を送った。彼の合図で真っ赤に燃えるような髪が揺らぎ、その髪よりも赤い紅の瞳がスモールボアを睨んだ。
そして、魔法使いによる爆発魔法が飛ぶ。
爆発が起きた直後、今度は弓矢がそれぞれのスモールボアに降り注いだ。
十頭いたスモールボアがたった一瞬で全滅するのであった。
しかし、その時だった。前方ではなく、横からスモールボアが一頭現れる。
突如現れたスモールボアに、誰もが息を呑んだ。
カーン!
突撃したスモールボアを大盾が防ぐ。
直後、目にもとまらぬ剣戟がスモールボアを切り刻んだ。
あまりの凄まじい剣戟に、血しぶき一つする事なく倒れるスモールボアの横に立つ美しい女性にその場にいた全ての者が息を呑む。
そのパーティーは速やかにスモールボア十一頭を担ぎ、町に戻って行った。
あまりの一瞬の出来事に、その平原にいた全ての者が呆気にとられたのだった。
◇
「がははは! めちゃくちゃ綺麗な女の子がスモールボアを集めて、一瞬で魔法と弓で倒した連中がいた!?」
「そ、そうだよ!」
「「「「がははは!」」」」
セグリス町の酒場に大笑いが響いた。
「ほ、本当だからね! 一瞬でスモールボア十頭を一箇所に呼び寄せて、一瞬で殲滅していたんだよ!」
「がはははは! お前、何か夢でも見たんじゃないか? 仮にそうだとして、弓使いが十人以上いる事がそもそも可笑しいし、魔法使いもいた? 魔法使いが何でそんなパーティーに入るんだよ! がはははっ、魔法使いならもっと凄いパーティーに入るだろうよ」
「そ、そうだけど! でも確かに全員が弓を使ってて、全部当ててたよ!? 外れた弓矢が一本もなかったんだから!」
「がははは! 仮に『狩人』だとして、十人もの狩人がいるパーティーやクランなんて、この町で聞いた事もないぞ?」
「そうだけど…………」
その日を境に、セグリス町には奇妙な噂が流れるようになった。
なんでも、狩人十人以上がいて、スモールボア十頭を一瞬で狩っては消えるパーティーがセグリス平原に出現したという噂だ。
しかし、そのパーティーを見たという人はあまりにも少なく、単なる噂に留まった。
彼らがビッグボアを仕留めるその日まで。