俺達はワンド街にある宿を殆ど貸す。
人数が多すぎるので、一つの宿に二百人くらいしか泊まれないから、街にある宿五つも貸切った。
ただ、思っていたよりは値段も高くなく、今日まで貯まりに貯まったお金を少しでも減らせられて嬉しい。しかも、メンバー達のために使えるならとても嬉しい。
みんなに旅費を渡そうとすると、それは自腹がいいと千人ものメンバーに訴えられて諦める羽目になった。
「ソラ兄さん」
執事服をビシッと決めているルリくんが小さい声で呼ぶ。
「実は外からソラ兄さんを見張っている連中がいるよ。全員捕まえてくる?」
「ん~帝国に関わりのある人なのか、冒険者なのかによるだろうけど…………一旦そのままにするけど、もし宿に入りそうだったら迷わず捕まえていいよ」
「分かった。こちらに侵入しようとする者がいたら全員捕まえるね」
うちのクランメンバーがこんなに多く滞在しているのに、まさか入り込むなんてしないだろう……。
宿屋は急な人数が増えすぎたためアタフタと準備を進めてくれるが、あまりに多い人数が急に増えたのもあり、食材も色々大変そうだったので、シヤさんを通して安値で『アイテムボックス』に貯蔵している食材を売ってあげると喜ばれた。
食事も終え、ゆっくりとワンド街を散策する。
ゼラリオン王国とは違う雰囲気がとても新鮮だ。
「何だか外国の街並みって不思議ね」
どうやらフィリアも同じ事を思ったみたい。
「うん。そもそも街の作りが違うのもあるんだろうけど、一番違うのは景色かな?」
「景色?」
僕は街の後方に続いている高い山脈を指さす。
「あんなに高い山がこんなに近くにあるから、余計に違う景色に感じてしまうかな」
「それもそうね。アクアソル王国に入る事が出来る唯一の道『シュランゲ道』と、両脇に高くそびえ立つ『シュランゲ山脈』…………ゼラリオン王国では見れない光景だものね」
フィリアの言うとおり、この景色はゼラリオン王国では見る事が出来ない。
そもそもこんなに高い山脈は存在しないからね。
ゼラリオン王国からまっすぐ東に進めば、違う意味で凄い景色は見れるけど、普段から近づきたくはないよね。
そのまま歩き、道を進むと広場に多くの人々が集まって盛り上がっている。
多くの人達が大きなジョッキーに黄色い飲み物――――帝国で大人に大人気だという『バクシュ』という飲み物を持って大騒ぎをしている。
周りに沢山の屋台が出ていて、屋台の店主が元気そうに声をあげていた。
「そこのカップルさん~うちのバクシュは美味いぞ!」
近くの店主さんが俺達を見て、声を掛けてくる。
「店主さん、お酒じゃないものってありますか?」
「おお、珍しいな? それならアクアソル王国でも有名なモミの実の果実水があるよ」
「それを二つください」
「まいどあり~! 飲み終えたらジョッキーはあそこに返してね!」
ジョッキーは屋台で共用しているようで、返却場所が用意されていて、沢山の空のジョッキーが並んでいるのが見える。
「ここって、いつもこんな祭りみたいになるんですか?」
「毎日ではないが、十日に一度は開かれているさ。アクアソル王国のおかげもあって、翌日にはアクアソル王国に移動する人も沢山いるけど、何故かアクアソル王国から明日入国を十日間禁止にするって通達があってね~、今日はそれもあってここでパーッと飲む人が多いんだよ。まあアクアソル王国様様だがね~ガーハハハッ!」
アクアソル王国の入国禁止……?
あれ?
俺達が十日間泊まるって伝えた期間と変わらないね?
もしかして、何かあって入国できなかったりするのかな?
そうなったら、方向を変えて南に進んでアポローン王国に観光に行くのも手かも知れない。
賑わっている場に酔う感じで、俺達も果実水を楽しみながら宴会を楽しんだ。
途中で愉快な音楽が流れて、踊りながら楽しい時間を過ごした。
◇
次の日。
アクアソル王国に行こうと思うんだけど、入国禁止になっているのがね……。
と悩んでいると、俺達を訪れて来てくれた人がいた。
「『銀朱の蒼穹』のソラくんだね。久しぶりだな」
「お久しぶりです。というか初めましてな感じもありますね」
俺達よりも一回り大きいその男は、幾度かダンジョンの前で出会ったクラン『エデン』のクランマスターだ。
「そうだったな。自己紹介がまだだったね。俺はクラン『エデン』のマスターをしているアインハルトという。もう一つの肩書もあるが、それは向かいながら説明しよう」
アインハルトさんが右手を前に出す。
俺も右手を出し、その分厚い手を握ると、優しくもガシッとした手が握り返される。
握手を終え、俺達はアインハルトさんに付いて行き、アクアソル王国に通じる門に向かう。
入国禁止について聞いてみると、「千人もの客が一気に来るんだ。街を閉じなければ大混乱が起きるだろう?」と言われた。
あっ……まさか俺達の所為だったなんて……。
移動する馬車に乗り、馬車が少なすぎる事に疑問視していたアインハルトさんだったけど、みんなが俺の影に入ると「ガーハハハハッ! これを見たら一生『銀朱の蒼穹』には敵対出来ないな!」と大声で笑った。
人数が多すぎるので、一つの宿に二百人くらいしか泊まれないから、街にある宿五つも貸切った。
ただ、思っていたよりは値段も高くなく、今日まで貯まりに貯まったお金を少しでも減らせられて嬉しい。しかも、メンバー達のために使えるならとても嬉しい。
みんなに旅費を渡そうとすると、それは自腹がいいと千人ものメンバーに訴えられて諦める羽目になった。
「ソラ兄さん」
執事服をビシッと決めているルリくんが小さい声で呼ぶ。
「実は外からソラ兄さんを見張っている連中がいるよ。全員捕まえてくる?」
「ん~帝国に関わりのある人なのか、冒険者なのかによるだろうけど…………一旦そのままにするけど、もし宿に入りそうだったら迷わず捕まえていいよ」
「分かった。こちらに侵入しようとする者がいたら全員捕まえるね」
うちのクランメンバーがこんなに多く滞在しているのに、まさか入り込むなんてしないだろう……。
宿屋は急な人数が増えすぎたためアタフタと準備を進めてくれるが、あまりに多い人数が急に増えたのもあり、食材も色々大変そうだったので、シヤさんを通して安値で『アイテムボックス』に貯蔵している食材を売ってあげると喜ばれた。
食事も終え、ゆっくりとワンド街を散策する。
ゼラリオン王国とは違う雰囲気がとても新鮮だ。
「何だか外国の街並みって不思議ね」
どうやらフィリアも同じ事を思ったみたい。
「うん。そもそも街の作りが違うのもあるんだろうけど、一番違うのは景色かな?」
「景色?」
僕は街の後方に続いている高い山脈を指さす。
「あんなに高い山がこんなに近くにあるから、余計に違う景色に感じてしまうかな」
「それもそうね。アクアソル王国に入る事が出来る唯一の道『シュランゲ道』と、両脇に高くそびえ立つ『シュランゲ山脈』…………ゼラリオン王国では見れない光景だものね」
フィリアの言うとおり、この景色はゼラリオン王国では見る事が出来ない。
そもそもこんなに高い山脈は存在しないからね。
ゼラリオン王国からまっすぐ東に進めば、違う意味で凄い景色は見れるけど、普段から近づきたくはないよね。
そのまま歩き、道を進むと広場に多くの人々が集まって盛り上がっている。
多くの人達が大きなジョッキーに黄色い飲み物――――帝国で大人に大人気だという『バクシュ』という飲み物を持って大騒ぎをしている。
周りに沢山の屋台が出ていて、屋台の店主が元気そうに声をあげていた。
「そこのカップルさん~うちのバクシュは美味いぞ!」
近くの店主さんが俺達を見て、声を掛けてくる。
「店主さん、お酒じゃないものってありますか?」
「おお、珍しいな? それならアクアソル王国でも有名なモミの実の果実水があるよ」
「それを二つください」
「まいどあり~! 飲み終えたらジョッキーはあそこに返してね!」
ジョッキーは屋台で共用しているようで、返却場所が用意されていて、沢山の空のジョッキーが並んでいるのが見える。
「ここって、いつもこんな祭りみたいになるんですか?」
「毎日ではないが、十日に一度は開かれているさ。アクアソル王国のおかげもあって、翌日にはアクアソル王国に移動する人も沢山いるけど、何故かアクアソル王国から明日入国を十日間禁止にするって通達があってね~、今日はそれもあってここでパーッと飲む人が多いんだよ。まあアクアソル王国様様だがね~ガーハハハッ!」
アクアソル王国の入国禁止……?
あれ?
俺達が十日間泊まるって伝えた期間と変わらないね?
もしかして、何かあって入国できなかったりするのかな?
そうなったら、方向を変えて南に進んでアポローン王国に観光に行くのも手かも知れない。
賑わっている場に酔う感じで、俺達も果実水を楽しみながら宴会を楽しんだ。
途中で愉快な音楽が流れて、踊りながら楽しい時間を過ごした。
◇
次の日。
アクアソル王国に行こうと思うんだけど、入国禁止になっているのがね……。
と悩んでいると、俺達を訪れて来てくれた人がいた。
「『銀朱の蒼穹』のソラくんだね。久しぶりだな」
「お久しぶりです。というか初めましてな感じもありますね」
俺達よりも一回り大きいその男は、幾度かダンジョンの前で出会ったクラン『エデン』のクランマスターだ。
「そうだったな。自己紹介がまだだったね。俺はクラン『エデン』のマスターをしているアインハルトという。もう一つの肩書もあるが、それは向かいながら説明しよう」
アインハルトさんが右手を前に出す。
俺も右手を出し、その分厚い手を握ると、優しくもガシッとした手が握り返される。
握手を終え、俺達はアインハルトさんに付いて行き、アクアソル王国に通じる門に向かう。
入国禁止について聞いてみると、「千人もの客が一気に来るんだ。街を閉じなければ大混乱が起きるだろう?」と言われた。
あっ……まさか俺達の所為だったなんて……。
移動する馬車に乗り、馬車が少なすぎる事に疑問視していたアインハルトさんだったけど、みんなが俺の影に入ると「ガーハハハハッ! これを見たら一生『銀朱の蒼穹』には敵対出来ないな!」と大声で笑った。