俺達は魔女アンナの交渉内容を聞いて、別室でメンバー全員で話し合った。

 簡単に結果から言えば――――



「お待たせ、アンナ」

「いいよ~」

「早速だけど、今回の件…………アンナの申し出を全面的に受ける事にしたよ」

「うふふ、それがいいわ。『鑑定術』によって、君達はさらなる高みを知るのだから~」

 さらなる高み…………か。

 あまり考えた事はなかった。

 実は今回の戦争で、『銀朱の蒼穹』はとんでもない力を手に入れたのではないかと思っていた…………自分が思っていた以上に大活躍が出来たから。

 特にフィリアが持つ力は、一対一であれば勝てる者などいないだろうと予想していたけど、アンナに会ってそれが幻想である事を思い知った。

「アンナに出会えて本当によかった。もしアンナに会えなければ、俺はここで足を止めていたと思う」

「うふふ、ソラくんはもう人間では最強戦力だからね~でもその油断がいつか痛い目をみるわ~」

「うん。だから、ありがとう。アンナ」

「…………うふふ。うん~」

 一瞬表情が固まったけど、いつもの楽しそうな笑顔を見せるアンナ。

 魔女王様とどういうやり取りになるかは分からないけど、その時は『銀朱の蒼穹』のみんなで乗り越えようと思う。



 アンナに言われ、『銀朱の蒼穹』のみんなを食堂に集める。

「では一人ずついくよ~!」

 相変わらずノリノリなテンションのアンナ。

「お~!」

 隣でルナちゃんが可愛らしく手を上げて答える。

 意外と姉妹みたいで可愛い。

「では一番弱い君から~」

 真っ先にミリシャさんの前に立ったアンナは、「鑑定術~」と唱えると、衣装から触手のような手がいくつか伸びて、ミリシャさんに付着する。

 見た目だけは、かなり異様な光景で、事情を知らない者は助けに入るかも知れない光景だ。

「はい~君の固有スキルは『不運を持つ者』~」

「『不運を持つ者』?」

「そう~十八歳まで不運が続いてその分の運が十八歳に一度だけ花開くスキル~」

「あ…………凄い納得…………」

「因みに、ハズレスキルの中では当たり~」

 ミリシャさんが肩を落とすが、何となくそのスキルの効果が納得できた。

 アンナはそうやってカールから順々に固有スキルというモノを鑑定してくれた。


 カールは、『氷雪に生きる者』で、ある程度周辺に氷が展開されていると、全てのステータスが一割上昇する。

 シヤさんは、『読心を極めし者』で、相手と話した時、その言葉の嘘偽りを見抜けるスキルだそうだ。

 意外と『交渉者』のスキルではないんだなと思ったら、アンナ曰く、普通には発動しないそうで、『交渉者』のスキル『読唇術』というスキルに便乗して発動しているらしい。

 カシアさんは、『獣王を秘めし者』というスキルで、スキル『獣王化』というのが使えるらしい。

 これは大当たりのスキルらしく、デメリットは全くなく、使用した場合『獣王化』し、継続時間は3分。終わってから使えるまで1時間が必要だそうだ。

 試しに使って貰ったカシアさんは、もっと獣に近い姿に変わり、とんでもない威圧感を放っていた。

 この状態なら、今のフィリアにも簡単に勝てそうだった。

 次はルリくんとルナちゃんなんだけど、大当たりスキル『双子星座に生まれし者』という固有スキルだった。

 これは双子のみにしか現れないスキルで、しかも大当たりらしい。

 内容は、双子が持つ極スキルがお互いに効果をもたらすというスキル。

 本来ならこの固有スキルを持っていてもまともな職能が開花せず、腐る場合も多いらしい。

 二人は千年に一組の逸材との事だ。


 アンナ曰く、ハズレ固有スキルは一度のみ効果を持つスキル……ミリシャさんのようなスキルを指すそうで、ミリシャさんのモノでもかなり大きな効果を持つが、それまでの十八年間不運が続くので、命を保てない人も多くいるそうだ。

 その次は当たりの部類である、常時効果発動か、特定条件下で常時発動系のスキルのようで、カールがそういう固有スキルに当たる。

 固有スキルは、全ての者が生まれた時に必ず(・・)授かるスキルで、確認するには『鑑定術』でのみ確認出来るらしい。

 多くの者が、理解できないまま、そのスキルの恩恵を受けているそうだ。今までの俺のように。

 さらに固有スキルは9割ハズレ、残り1割の中で9割が当たり、残りが大当たりで、大当たり1万人の中の1人の確率で『神威』という大当たり中の大当たりがいる確率だそう。



「君は『双を司る神威』だね~珍しい神威だわ~」

 フィリアの固有スキル『双を司る神威』……。

「双を……司る?」

「うん~、何でも双が付くモノ(・・)なら効果が激増する神威スキルだね~神威の制限は範囲が狭いけど、効果は絶大なモノが多い~」

 もしかしてうちのフィリアって、とんでもない存在………………だよな、きっと。

「君が持っている『剣神と謳われし伝説』の現在の数値も知りたい?」

「し、知りたい!」

「うん~。なんと~」

「なんと?」

「一倍~」

「一倍!?」

「つまり、効果は等倍しかない~最大の時は、私でも勝てないかも~?」

 意外な事実を知った。

 フィリアには効果が高いスキルが沢山付与されているから既に一番強いまである。

 なのに、それから単純計算なら、今の十倍は強くなれるって事なのか。

「今の君は、大陸の中の人間で、ポテンシャルは一位でも~現在は十位以下~」

「っ!?」

 フィリアがものすごく落ち込む。

 俺はそっとフィリアの肩に手をやる。

「フィリア。これから一緒に強くなれればいい。今までのフィリアの活躍がかすむ訳でもないし、寧ろこうしてちゃんと知れてよかったよ。アンナのおかげだね」

「うん。私、もっと強くなる!」

 簡単に立ち直ってくれてよかった。


「次は最後~ソラくん~」

 アンナから伸びた触手が俺に触れて暫くして、アンナの口角が異様に上がる。

「うふふふふふふ! やっぱり! 私の想像通りの神威だったね~! うふふふふ!」

「あ、アンナ?」

「うふふふ、ソラくんの固有スキルは――――









 ――――『限界を越えし神威』だよ~」

 限界を越えし……神威……。

 ふと、帝国の『転職士』を思い出してしまい、その効果の意味を予想出来てしまうね。



「君は~自身が持つあらゆるスキルの『限界』を()段階突破する神威だよ~どんな職能だったとしても、とんでもない効果の神威だね~うふふふふ~」

 アンナの嬉しそうな声に俺は自分自身が持っていた固有スキルについて、改めて理解する事になった。


 ※文字数が多くて他の二人は削除。次の話で名前を確認してください。ちなみにハズレです。