アクアソル王国に休暇に行く事が決まって数日後。
俺達は『シュルト』として、報酬の件で王様から呼ばれ、真夜中寝静まった王城を訪れ、ビズリオ様に案内されて王様の下に到着した。
王様の執務室には、王様とジェローム様、ビズリオ様の三名。
どうやら宰相様は王様の飾り役職らしくて、全く権限もなければ、意見も出来ないので呼んでいないらしい。
こちらは、真っ黒い衣装と仮面を被った団長の俺と副団長の『フロイント』、『シュベスタ』と『ブルーダー』の四人で参加した。
「『シュルト』。此度の戦争の援助、感謝する」
「いえ、ゼラリオン王国の力になった事を誇りに思います」
「うむ。今回はその報酬の件だ。まず最初に、ハレイン軍との戦いに参戦してくれた件で、随分楽に勝たせて貰った。その報酬に『シカウンド地域』の土地を欲していたな?」
「はい。ゼラリオン王国の一部としてで構いませんが貴族位は必要ございません」
「分かった。ただし、各町の役場や城は拠点としてゼラリオン王国が所有で良いな?」
「はい。まだゼラリオン王国の税金の詳細を知らないので、税金の額や時期なども後ほど教えて頂けたらなと」
「それは追って書状で知らせよう。本来なら貢献度に応じての貴族位で税金を変えているのだが、最低率にするので心配はせずともよい」
「感謝します」
かの土地は全てビズリオ様が所有しているようで、ビズリオ様から土地の保有権を記入した正式書面を渡されて『ヒンメル』とサインをすると、俺の中に『シカウンド地域』の土地が移った事が確認出来た。
「では次の件だが、ハレインを討ち取った件だが、欲しいモノはあるか?」
「はい。王国内の『販売権利』でいかがでしょうか?」
「ほぉ……『シュルト』は販売も手掛けるのか?」
「ふふふっ、実は我々の仲間に『鴉』という者がございまして、彼女は商売に精通しております」
ビズリオ様の表情が一瞬ピクリと動く。
「彼女の提案で、とあるクランと交流を持とうと思っております」
「ほお? 『シュルト』が交流を持つクランがいるとは」
「いえ、これはあくまで『鴉』が商売として手掛ける企画で、『シカウンド地域』の土地を有効活用する為の術でございます…………くれぐれも皆様には我々『シュルト』が関わっている事をかのクランに伝えないようにお願いします」
俺は低い声でそう告げた。
これは言わば、『事情を話した場合、敵対と受け取ります』と言っているのと同様な意味を持つ。
本来ならゼラリオン王様にこういう無礼は通用しないが、今回の戦争で『シュルト』の戦力が凄まじい事と、ここにいる四人でもその戦力が大きい事を既に見せつけている。
王様もそれを知っていてか、嫌な顔はしない。
これで堂々と『鴉』を使い、『シカウンド地域』の土地だけでなく、王国全土で『銀朱の蒼穹』として商売が出来るというモノだ。
「分かった。ただハレインが持っていた財産は全て王家で貰うぞ?」
「かしこまりました」
一緒に聞いているビズリオ様から「後日盗賊ギルドに届ける」と言ってくれた。
「では次はミルダン王国軍の件だが、こちらに関しては提示させて貰おう。ミルダン王国からの賠償金がこれから定期的に支払われる。その額の一定額を支払おう。これは次のエリア共和国の件も同様だが、どうかね?」
「既に沢山の報酬を頂いておりますので、こちらが指定する報酬はございませんので、その通りにお願いします」
「うむ。ミルダン王国の均衡を壊してくれたので、ミルダン王国側の賠償金は二割を支払う。エリア共和国は其方達が入手した証拠がなければ得られなかったので、エリア共和国側の賠償金の八割を支払おう」
「ありがとうございます。――――――それと一つだけ個人的な疑問があるのですが宜しいですか?」
「うむ。答えられる事なら」
報酬の件ではなく、一個人として疑問に思った事を聞いて見る事にする。
「先日、ハレインが王様と戦っていた時に話していた件ですが、もしよろしければ事情をお聞きしても?」
「うむ。構わぬ。グレイストール家は元々王家の血筋の一つであった。しかし、ゼラリオン家とグレイストール家で確執があり、長い間覇権を巡り争い続けた。そのままだったら良かったのだが、先代のグレイストール家当主が反乱を目論み、そして失敗。グレイストール家は潰される事となったのだ」
グレイストール家はゼラリオン王国の王になりたかったのだろうか。
「グレイストール家が潰される時、当主が下町で産ませた子供が一人だけ生き残った。それがハレインだ。グレイストール家の先代当主とはそれなりに長年の仲だったから最後の願いとして、ハレインの命だけは生かす事にした…………陰ながら友人でもあった先代当主の息子を支援もしていた」
王様はとても深い悲しみを帯びた目を見せる。
「ハレインは優秀ですぐに頭角を現し、王国に仕えると仕官に訪れた。そのとき、ハレインに全てを打ち明けたのだが、その事がハレインの復讐心を駆り立ててしまった…………まさかあそこまで復讐心に燃えているとは思わなかったが、あれも一人の我が子のように思い、玉座を奪われるならそれもまた一興と野放した結果が、この結果だ」
淡々と話した内容に深い悲しみが滲み出た。
もしかしたら、ハレインを自分の後継者として考えていたからこそ、ああなっても見守っていたのかも知れない。
俺達は『シュルト』として、報酬の件で王様から呼ばれ、真夜中寝静まった王城を訪れ、ビズリオ様に案内されて王様の下に到着した。
王様の執務室には、王様とジェローム様、ビズリオ様の三名。
どうやら宰相様は王様の飾り役職らしくて、全く権限もなければ、意見も出来ないので呼んでいないらしい。
こちらは、真っ黒い衣装と仮面を被った団長の俺と副団長の『フロイント』、『シュベスタ』と『ブルーダー』の四人で参加した。
「『シュルト』。此度の戦争の援助、感謝する」
「いえ、ゼラリオン王国の力になった事を誇りに思います」
「うむ。今回はその報酬の件だ。まず最初に、ハレイン軍との戦いに参戦してくれた件で、随分楽に勝たせて貰った。その報酬に『シカウンド地域』の土地を欲していたな?」
「はい。ゼラリオン王国の一部としてで構いませんが貴族位は必要ございません」
「分かった。ただし、各町の役場や城は拠点としてゼラリオン王国が所有で良いな?」
「はい。まだゼラリオン王国の税金の詳細を知らないので、税金の額や時期なども後ほど教えて頂けたらなと」
「それは追って書状で知らせよう。本来なら貢献度に応じての貴族位で税金を変えているのだが、最低率にするので心配はせずともよい」
「感謝します」
かの土地は全てビズリオ様が所有しているようで、ビズリオ様から土地の保有権を記入した正式書面を渡されて『ヒンメル』とサインをすると、俺の中に『シカウンド地域』の土地が移った事が確認出来た。
「では次の件だが、ハレインを討ち取った件だが、欲しいモノはあるか?」
「はい。王国内の『販売権利』でいかがでしょうか?」
「ほぉ……『シュルト』は販売も手掛けるのか?」
「ふふふっ、実は我々の仲間に『鴉』という者がございまして、彼女は商売に精通しております」
ビズリオ様の表情が一瞬ピクリと動く。
「彼女の提案で、とあるクランと交流を持とうと思っております」
「ほお? 『シュルト』が交流を持つクランがいるとは」
「いえ、これはあくまで『鴉』が商売として手掛ける企画で、『シカウンド地域』の土地を有効活用する為の術でございます…………くれぐれも皆様には我々『シュルト』が関わっている事をかのクランに伝えないようにお願いします」
俺は低い声でそう告げた。
これは言わば、『事情を話した場合、敵対と受け取ります』と言っているのと同様な意味を持つ。
本来ならゼラリオン王様にこういう無礼は通用しないが、今回の戦争で『シュルト』の戦力が凄まじい事と、ここにいる四人でもその戦力が大きい事を既に見せつけている。
王様もそれを知っていてか、嫌な顔はしない。
これで堂々と『鴉』を使い、『シカウンド地域』の土地だけでなく、王国全土で『銀朱の蒼穹』として商売が出来るというモノだ。
「分かった。ただハレインが持っていた財産は全て王家で貰うぞ?」
「かしこまりました」
一緒に聞いているビズリオ様から「後日盗賊ギルドに届ける」と言ってくれた。
「では次はミルダン王国軍の件だが、こちらに関しては提示させて貰おう。ミルダン王国からの賠償金がこれから定期的に支払われる。その額の一定額を支払おう。これは次のエリア共和国の件も同様だが、どうかね?」
「既に沢山の報酬を頂いておりますので、こちらが指定する報酬はございませんので、その通りにお願いします」
「うむ。ミルダン王国の均衡を壊してくれたので、ミルダン王国側の賠償金は二割を支払う。エリア共和国は其方達が入手した証拠がなければ得られなかったので、エリア共和国側の賠償金の八割を支払おう」
「ありがとうございます。――――――それと一つだけ個人的な疑問があるのですが宜しいですか?」
「うむ。答えられる事なら」
報酬の件ではなく、一個人として疑問に思った事を聞いて見る事にする。
「先日、ハレインが王様と戦っていた時に話していた件ですが、もしよろしければ事情をお聞きしても?」
「うむ。構わぬ。グレイストール家は元々王家の血筋の一つであった。しかし、ゼラリオン家とグレイストール家で確執があり、長い間覇権を巡り争い続けた。そのままだったら良かったのだが、先代のグレイストール家当主が反乱を目論み、そして失敗。グレイストール家は潰される事となったのだ」
グレイストール家はゼラリオン王国の王になりたかったのだろうか。
「グレイストール家が潰される時、当主が下町で産ませた子供が一人だけ生き残った。それがハレインだ。グレイストール家の先代当主とはそれなりに長年の仲だったから最後の願いとして、ハレインの命だけは生かす事にした…………陰ながら友人でもあった先代当主の息子を支援もしていた」
王様はとても深い悲しみを帯びた目を見せる。
「ハレインは優秀ですぐに頭角を現し、王国に仕えると仕官に訪れた。そのとき、ハレインに全てを打ち明けたのだが、その事がハレインの復讐心を駆り立ててしまった…………まさかあそこまで復讐心に燃えているとは思わなかったが、あれも一人の我が子のように思い、玉座を奪われるならそれもまた一興と野放した結果が、この結果だ」
淡々と話した内容に深い悲しみが滲み出た。
もしかしたら、ハレインを自分の後継者として考えていたからこそ、ああなっても見守っていたのかも知れない。