天界)
天使を育成する機関や生活する空間がこの舞台の主軸となる。
多くの天使は心優しいが、どこか人間に近いところが多い。
多くの場合、二人一組で行動しており、兄弟のように生活をしている。
天使のほかに、様々な不思議な生き物や植物が存在する。
天界のでは学校や訓練をする場所、公園など人間の施設に近しいところが存在する。
天使)
天使の生まれる場所【ツリー】という場所で不思議と生まれてくる存在。
多くの場合、その出自を知ることなく生活をしている。
戦争や、警備のために鍛える天使もいるが、多くの場合幸せを運ぶお手伝いやその他神様や先輩天使たちの支えとなることが多い。
魔界)
死の風が常に吹き荒れる異質な空間。
恐怖と悲鳴の轟かない日はないほど荒れている。
上空には、血で染めるような赤色で地面には、ひび割れた土が広がる。
明確な上下が存在している。
ここに存在するのは悪魔だけでなく、奇怪な魔界生物や魔界植物も存在する。
悪魔)
下級悪魔は、多くの場合名前を持たずして生まれる。
大抵は堕落した人間や、歪んだ悪意が悪魔になる。
悪魔の仕事は、人間を堕落させるために願いを叶え、その魂や寿命を頂くことだ。
一定以上の仕事をこなすと悪魔としての格が上がり上級悪魔へと近づく。
メリー)
下級悪魔にしては珍しく、名前をもって生まれた。
名前は誰からつけられたでもなく、自覚しているためそう名乗っている。
天使になってからは、同じくメリーという名前を付けられた。
悪魔としての姿は、漆黒の黒い短髪に闇を閉じ込めたような瞳、ヤギの角と下半身をしている。
他の下級悪魔と比べると稀に見る人に近い姿をしている。
天使としての姿は、金髪の短髪に青天を閉じ込めたような青い瞳をしている。
天使クリス)
メリーの教育係。
金髪の挑発を一つにくくり、目の下にはクマをいつもつけている。
瞳の色は綺麗なブルーで、健康的になれば、なかなかの美貌だ。
普段から、疲労を感じており、ため息が漏れることが癖になっている。
身長は、メリーよりも少し高いくらい。
いつも分厚い本を持ち歩いており、ほとんどの人が知らない。
目の下のクマを隠すために、仮面を被ることがある。
悪魔仲間)
メリーとともに魔界に生きる悪魔たち。
悪友として記憶もない時からともにいる。
天使仲間)
心優し天使達、メリーと共に成長し、学んでゆく。
各々しっかりとした夢や憧れを持ち生きている。
俺の名前はメリー。
この体が一番合ってるといえるほど、自由に生きている。
ここは魔界。
血塗られたような空にひび割れた地面。
死を呼ぶ風が気持ちよく吹く。
稀に苦痛に歪む悲鳴や、壊れた高らかな笑い声が聞こえる平和な世界だ。
「なぁ、メリー。今日は何人騙したんだよ。」
「一人。」
俺は、適当に答える。
「少ねぇなぁ~。それでも悪魔かよ。」
「これでも悪魔だよ。」
「張り合いがねぇなぁ~。」
「それが俺の取り柄だろ?」
「だな。」
目の前の悪魔は、高らかに笑いながらそう答える。
こいつは、俺と同じく下級悪魔の仲間だ。
霧のようなぼんやりとした影の姿をした悪魔。
形の定まらない姿も下級悪魔らしい。
対照的に、俺は下級悪魔らしからぬ姿をしている。
漆黒の黒い短髪に闇を閉じ込めたような瞳、ヤギの角と下半身をしている。
悪魔同士の仲の良さは、結局は馴れ合いでしかない。
優しさなどないこの世界で、悪魔としての格である等級が仲間である証となる。
「見てみろよ。この首輪。」
「それなんだよ。」
「かっこいいだろ。」
奴が手に持っているのは、白い粒状のものが連なっている首飾りのようなものだ。
「こいつは、今回の人間を騙して手にした歯だよ。綺麗だろ~。」
「はいはい、そうですね。」
横目でちらりと見る程度で、おさめる。
「興味なしかよ。」
「ねぇ~な。」
「じゃあ、お前の歯をくれよ。」
「なんでだよ。」
「俺たちよりお前のほうが綺麗そうだから?まぁ、いくら抜いたところで、死なねぇんだからいいだろ?」
「よくねぇよ。」
「ちぇ…。」
奴はいじけてどこかに行く。
遠くから走って何かがやってくる。
黒い影が目の前に現る。
「今日もお前はやる気は無しか?」
「ねぇよ。」
現れたのは、黒い服装に身を包んだ少し位の高い元下級悪魔だ。
ボサボサの緑の髪の毛に無駄に歪んだ目をしている。
俺が悪魔として生まれた時からよくそばにいる変な奴だ。
「仕事をやるから、これ行ってこねぇか?」
「もう、今日の分は終わったからパス。」
「殺すよ。」
殺気立って俺を脅そうとする。
「好きにしな。」
それを軽くいなす。
「ほんっと、お前って張り合いがねぇなぁ~。」
「それが俺のいいところだろ?」
「間違いねぇや。」
目の前のこいつは、自然な手つきで、俺の髪をぐしゃぐしゃになるようにかき乱す。
「はぁ…。」
俺は溜息を吐き、その場に寝転がる。
「なんだよ。お疲れですかい。」
「ああ、お前の相手をしてたら疲れたよ。」
「なんだよ。面白いこと言いやがって。」
目の前のやつは、ふわりと空を浮かび消えていった。
きっと、人間にでも会いに行ったのだろう。
「めんどくせぇ…。」
一言漏らして、目を閉じる。
いつものように気ままに眠りにつく。
いつものように、気持ちよく目を覚まそうとする。
伸びをし、目をゆっくりと開く。
明らかに、おかしい。
魔界の歪み切った闇のような空気は流れていない。
輝かし光が空を満たし、地面には柔らかな感触がある。
草だ。
人間界でよく見かける草だった。
悪魔である俺が触ろうものなら、一瞬で朽ちててしまうはずなのに、そうではない。
手を見る。
この手は、俺のものじゃない。
俺の手ならば、黒く汚れた爪をし、灰のようなくすんだ肌をしているはずだ。
この手は、艶やかな血色のいい色をしている。
なにかがおかしい。
「お目覚めかな。」
目の前にいたのは、明らかに悪魔ではない。
金髪の長髪に透明感のある青い瞳、色白の肌。
目の下にどんよりとしたクマがあるが、白い衣に身を包む姿は恐らく噂に聞く天使だろうか。
冷や汗をかく。
僕みたいな、下級悪魔が天使と対立したとき、きっと生き残ることはできないだろう。
「どうしたんだね。もしかして、口をきけないのかい?」
「い、いや。」
俺は思わず、反応してしまった。
「そうか話はできるのか。よかったよ。新たな仲間よ。」
”新たな仲間”という単語に疑問を覚えた。
「仲間?」
「まだ、生まれたばかりだから自覚できてないのか。君はこれから僕たちと同じく天使として生きていくんだよ。」
「天使?」
「これが、君の姿だよ。」
目の前の天使が指を鳴らすと、地面の草が伸び、丸い枠を作った。
丸い枠に、透明な膜が張られると俺の姿が反射して映った。
悪魔だったときとは対照的に、純白の衣に身をまとい、金の短髪に頭上に広がる空の綺麗な色を埋め込んだような瞳をしていた。
「嘘…だろ。」
「何を言ってるのかわからないが、これからよろしくね。メリー。」
「どうして、俺の名前を。」
「どうしって、これからそれが君の名前ということだよ。文句があっても、僕たちよりも高貴な人たちが決めた名前だから受け付けないよ。」
なぜ、俺の名前を知っているのかを知りたかったが、それはここで新しくつけられる名前のようだ。
「俺は、これからどうしたらいいんだ?」
「僕が、君の教育係になるクリスだよ。よろしく。」
目の前の天使は、優しく手を差し伸べる。
「よろしく…。じゃなくて!」
とっさに取ってしまった手だったが、思わず振り払う。
「僕は、忙しいから今日はこの子の案内に従って自分の部屋で休んでてくれるかな。」
「は、はい…。」
目の前に飛び出したのは、白い鳥だった。
空の光をふんだんに吸収したような綺麗な輝きを放つ鳥は、僕の肩に留まって指示を待っているようだった。
「あと、一言だけ。その口調はなるべく早く治してくれると嬉しいよ。」
そう一言告げると、どこかわからないこの場所に、一人残されてしまった。
いや、正確に言えば、一人と一羽残された。
「では、ご案内しますね。」
耳元で綺麗な女性の声がする。
そちらを向くと、先ほど現れた鳥が僕に語り掛けていた。
「では、こちらです。」
鳥は、翼を柔らかく羽ばたかせ、先を行く。
置いて行かれないようにと、慌ててついて行くことにした。
俺は、白い鳥に連れられるように先の道を行った。
一度その鳥に追いつくことができると、後ろに目でもあるかのようにゆっくりと羽ばたき、俺の歩幅に合わせて飛んでくれていたようだった。
「なぁ、これからどこに行くんだ?」
「これからですか?」
「ああ。」
「貴方様の部屋でございます。」
「俺の部屋?」
「はい。」
「俺に部屋をくれるのか?」
「もちろんでございます。」
魔界では、その辺で寝ることが当たり前だったのに対し、ここでは、自分の部屋があるようだ。
まるで、それを当たり前のように、この鳥は答えている。
会話は途切れ、ただ静かに鳥の行く通りに道を進んだ。
途中何人かの天使にあったが、まるで、俺が悪魔ではないかのように自然とふるまわれた。
怪しい俺にあいさつをする者もいた。
「こちらでございます。」
壁から出たランプの上に留まり、木の扉を翼で指し示す。
見上げれば、上空には天使と思われる翼をもった者たちが飛んでいた。
周りには、天使が出入りしている建物が多くみられる。
人間界で言うところの宿のようなものなのだろうか。
目の前の扉を開く。
あの鳥が、勢いよく部屋に飛び込む。
それに合わせて、恐る恐る中に入る。
見上げると、3階まであるつくりであることが分かった。
そこまで、一気に見渡せるように一階は三階の天井まで突き抜けていた。
正直な気持ち、綺麗だと思ってしまった。
「こっちですよ。」
あの鳥が、階段の手すりに留まり、話しかける。
ゆっくりと階段を上り、二階の指示された部屋に入る。
部屋は綺麗な白い壁で囲まれており、木製の机と、一人用のベットがあった。
「すごい…。」
思わず声が漏れる。
今まで、自分のものと言えるものがなかった。
そのため、ここまでしっかりと休める空間が自分のものになると思うと、驚きが隠せない。
「では、ごゆっくり。」
そう言うと、あの鳥は、俺の部屋の開いていた窓からどこか飛んで行ってしまった。
俺は、とりあえずベットに座ってみた。
木製の枠に囲まれたベットだったが優しく、そして柔らかい。
思いっきり寝転がると、背中が痛かった。
机の上にあった鏡を手に取り、背中を必死で覗いた。
背中には、あの鳥と同じような白い大きな翼が付いていた。
まだ、理解の及ばないこの体に疲れを覚え、ベットに横になり眠りにつくことにした。
もう一度目を閉じれば、もしかしたら悪魔のあの体に戻るかもしれないと思ったからでもある。
これから、メリーの教育係になる天使クリスに連れられ、多くの天使と出会っていく。
食いしん坊のフルー。
甘えん坊のアリス。
真面目なマクス。
個性豊かだけど優しい、そんな天使たち。
悪魔と天使の中間のような存在のメリーが、成長しながらも天界の慣れない日常を歩んでいく。
ここでは生まれたてのメリーが、仲間たちと、天使として一人前になろうと奮闘していく。
天界での基礎的な学びを得る学校、いざという時における訓練や楽しく愉快な冒険。
慣れない世界で必死になって学び、吸収し、新たな姿に少しずつ変わろうとする。
仲間とともに成長をしながら、天使として生きる元悪魔の現天使メリー。
初めて触れる風景に感動を覚えたり、初めて感じる感情に少し動揺したり。
彼は、好奇心と不安感を織り交ぜながら、誰よりも多くを見て、多くを聞き成長していく。
物語も中盤、夢のようこの空間になれたことで余裕が生まれ、再び疑問として湧き上がる。
どうして自分が天使となってしまったのか、また悪魔になってしまったのかという謎。
その謎を究明しようと新たな冒険を始める。
新しくできた信頼できる仲間とともに、自分の出自を探していく。
悪魔として生きていた意味。
天使として生まれた意味。
優しさに囲まれた世界だからこそ、自身について見つめ直す。
本当の自分の姿について、誰も疑問を覚えないこの世界で、メリーは真実の自分を追い求める。
ここにいるのは、本当の姿の俺なのか。
それとも、長い夢の中なのか。
終盤、欠落した記憶の中の人物との感動的な再会を果たし、天界でのこれから続く平和を歩んでいくこととなる。
あくまで天使な主人公がこの世界で一番人間らしく暮らす。
そんな一つの人生。
そんな物語。