いつものように、気持ちよく目を覚まそうとする。
伸びをし、目をゆっくりと開く。
明らかに、おかしい。
魔界の歪み切った闇のような空気は流れていない。
輝かし光が空を満たし、地面には柔らかな感触がある。
草だ。
人間界でよく見かける草だった。
悪魔である俺が触ろうものなら、一瞬で朽ちててしまうはずなのに、そうではない。
手を見る。
この手は、俺のものじゃない。
俺の手ならば、黒く汚れた爪をし、灰のようなくすんだ肌をしているはずだ。
この手は、艶やかな血色のいい色をしている。
なにかがおかしい。
「お目覚めかな。」
目の前にいたのは、明らかに悪魔ではない。
金髪の長髪に透明感のある青い瞳、色白の肌。
目の下にどんよりとしたクマがあるが、白い衣に身を包む姿は恐らく噂に聞く天使だろうか。
冷や汗をかく。
僕みたいな、下級悪魔が天使と対立したとき、きっと生き残ることはできないだろう。
「どうしたんだね。もしかして、口をきけないのかい?」
「い、いや。」
俺は思わず、反応してしまった。
「そうか話はできるのか。よかったよ。新たな仲間よ。」
”新たな仲間”という単語に疑問を覚えた。
「仲間?」
「まだ、生まれたばかりだから自覚できてないのか。君はこれから僕たちと同じく天使として生きていくんだよ。」
「天使?」
「これが、君の姿だよ。」
目の前の天使が指を鳴らすと、地面の草が伸び、丸い枠を作った。
丸い枠に、透明な膜が張られると俺の姿が反射して映った。
悪魔だったときとは対照的に、純白の衣に身をまとい、金の短髪に頭上に広がる空の綺麗な色を埋め込んだような瞳をしていた。
「嘘…だろ。」
「何を言ってるのかわからないが、これからよろしくね。メリー。」
「どうして、俺の名前を。」
「どうしって、これからそれが君の名前ということだよ。文句があっても、僕たちよりも高貴な人たちが決めた名前だから受け付けないよ。」
なぜ、俺の名前を知っているのかを知りたかったが、それはここで新しくつけられる名前のようだ。
「俺は、これからどうしたらいいんだ?」
「僕が、君の教育係になるクリスだよ。よろしく。」
目の前の天使は、優しく手を差し伸べる。
「よろしく…。じゃなくて!」
とっさに取ってしまった手だったが、思わず振り払う。
「僕は、忙しいから今日はこの子の案内に従って自分の部屋で休んでてくれるかな。」
「は、はい…。」
目の前に飛び出したのは、白い鳥だった。
空の光をふんだんに吸収したような綺麗な輝きを放つ鳥は、僕の肩に留まって指示を待っているようだった。
「あと、一言だけ。その口調はなるべく早く治してくれると嬉しいよ。」
そう一言告げると、どこかわからないこの場所に、一人残されてしまった。
いや、正確に言えば、一人と一羽残された。
「では、ご案内しますね。」
耳元で綺麗な女性の声がする。
そちらを向くと、先ほど現れた鳥が僕に語り掛けていた。
「では、こちらです。」
鳥は、翼を柔らかく羽ばたかせ、先を行く。
置いて行かれないようにと、慌ててついて行くことにした。
伸びをし、目をゆっくりと開く。
明らかに、おかしい。
魔界の歪み切った闇のような空気は流れていない。
輝かし光が空を満たし、地面には柔らかな感触がある。
草だ。
人間界でよく見かける草だった。
悪魔である俺が触ろうものなら、一瞬で朽ちててしまうはずなのに、そうではない。
手を見る。
この手は、俺のものじゃない。
俺の手ならば、黒く汚れた爪をし、灰のようなくすんだ肌をしているはずだ。
この手は、艶やかな血色のいい色をしている。
なにかがおかしい。
「お目覚めかな。」
目の前にいたのは、明らかに悪魔ではない。
金髪の長髪に透明感のある青い瞳、色白の肌。
目の下にどんよりとしたクマがあるが、白い衣に身を包む姿は恐らく噂に聞く天使だろうか。
冷や汗をかく。
僕みたいな、下級悪魔が天使と対立したとき、きっと生き残ることはできないだろう。
「どうしたんだね。もしかして、口をきけないのかい?」
「い、いや。」
俺は思わず、反応してしまった。
「そうか話はできるのか。よかったよ。新たな仲間よ。」
”新たな仲間”という単語に疑問を覚えた。
「仲間?」
「まだ、生まれたばかりだから自覚できてないのか。君はこれから僕たちと同じく天使として生きていくんだよ。」
「天使?」
「これが、君の姿だよ。」
目の前の天使が指を鳴らすと、地面の草が伸び、丸い枠を作った。
丸い枠に、透明な膜が張られると俺の姿が反射して映った。
悪魔だったときとは対照的に、純白の衣に身をまとい、金の短髪に頭上に広がる空の綺麗な色を埋め込んだような瞳をしていた。
「嘘…だろ。」
「何を言ってるのかわからないが、これからよろしくね。メリー。」
「どうして、俺の名前を。」
「どうしって、これからそれが君の名前ということだよ。文句があっても、僕たちよりも高貴な人たちが決めた名前だから受け付けないよ。」
なぜ、俺の名前を知っているのかを知りたかったが、それはここで新しくつけられる名前のようだ。
「俺は、これからどうしたらいいんだ?」
「僕が、君の教育係になるクリスだよ。よろしく。」
目の前の天使は、優しく手を差し伸べる。
「よろしく…。じゃなくて!」
とっさに取ってしまった手だったが、思わず振り払う。
「僕は、忙しいから今日はこの子の案内に従って自分の部屋で休んでてくれるかな。」
「は、はい…。」
目の前に飛び出したのは、白い鳥だった。
空の光をふんだんに吸収したような綺麗な輝きを放つ鳥は、僕の肩に留まって指示を待っているようだった。
「あと、一言だけ。その口調はなるべく早く治してくれると嬉しいよ。」
そう一言告げると、どこかわからないこの場所に、一人残されてしまった。
いや、正確に言えば、一人と一羽残された。
「では、ご案内しますね。」
耳元で綺麗な女性の声がする。
そちらを向くと、先ほど現れた鳥が僕に語り掛けていた。
「では、こちらです。」
鳥は、翼を柔らかく羽ばたかせ、先を行く。
置いて行かれないようにと、慌ててついて行くことにした。