1 始まりはおなじみの事故から

「先生、最終確認をお願いします」
「分かりました」

私、由良日向(25)はデビュー作品〘異世界転生記〜落ちこぼれ男子は王女様のセコム!?〜〙で見事に大ヒットした新人作家。
ちなみに私の本は現代の落ちこぼれ男子が異世界に転生し、イジワルな継母王妃から王女様を守るという話だ。

「由良先生、監督からお電話です」
「すぐ出ます」

ありがたいことにアニメ化のお話まで頂いて、私の毎日は最高に充実していた。


そして、その日がやってくる。

「由良先生、夜遅くまでお疲れ様でした」
「ありがとうございました」

担当の編集者との会議が終わり、歩いて家に帰る。
暗い夜、人気のない道路、そして私の考え込むタイミング。
これらが絶妙にマッチし、私は左からやってくる車に気づかなかった。

「…あっ」

とっさに目を瞑り、体に車体が触れ、私は意識を手放した。



パチッ

目を開けると、車に轢かれたはずの私はふっかふかのなにかに横になっていた。

…病院?

とりあえず起き上がる。
周りを見る。

「…」

周りを見て、絶句した。
目の前には銀世界が広がっていたのだ。

いや、なにかの間違いだ。
一旦横になり、目を閉じて、しばらくして開く。
起き上がる。
周りを見る。

「…」

絶句した。
当然なにも変わらず、目の前に広がる銀世界にただただパニックを起こした。

(銀色の椅子、銀色の机、銀色のソファ、銀色の花瓶…。え、待って待って、まさか)

部屋にある銀色の大きな鏡の前に立つと、またまた絶句した。

「…」

…ぎ、ぎ、銀色の、髪…!?

―――転生

ふとその単語が頭をよぎった。
しかも…

「自分の作品に転生した…!?」

おもわず後ずさる。
鏡の女性も後ずさる。

「ヒュッ…ゲホッゲホッ」

危ない危ない。
ショック死するところだった。

見た目はしっかり一緒だけど、まだ確証はない。もし、万が一、私の異世界転生記だったら、もうすぐ侍女のブランシェが走ってくるはず…

バタバタバタ
バンッ

「王妃様!?」

バタッ

「きゃーー!王妃様!!」

気絶した。


「はぁ…」

再びベッドで目覚め、ため息をつく。
ベッドの傍では侍女のブランシェが涙ぐんでいた。

「ごめんね、ブランシェ。もう大丈夫だから」
「はい、そうですね」

頬がリスみたいに膨らむ。

「…ブランシェ、私は平気よ」
「はい、そうですね」

目に涙を溜める。

「ブランシェ…」
「うわーん!!」

ブランシェは本格的に泣き出した。



「ごめんなさいね、ブランシェ」
「王妃様がご無事なら、それでいいです」

ハンカチで涙を拭き、ブランシェは「お茶をお持ちしますね」と言って部屋を出た。

「さて…」

一旦落ち着いて状況を整理しよう。

まず、私は担当の編集者さんとの会議を終えて帰宅する途中、トラックに轢かれた。
…今考えたらだいぶおなじみの転生原因だな。
で、目が覚めると銀色で統一された知らない部屋にいた。
この部屋の特徴と鏡に映る人物には、とても、とーっても覚えがあり、侍女が部屋にやってくるタイミングもしっかり分かっていた。
以上のことから、私は自分の作品〘異世界転生記〜落ちこぼれ男子は王女様のセコム!?〜〙に王女様をいじめる継母王妃として転生してしまったと考えられる。

「マジか…」

はっきり言って、しんどい。
普通に嫌。
でも転生してしまったら高確率で事件に巻き込まれる。
ここで生きていくために、イジワル王妃として頑張るしかない。

では次にイジワル王妃こと、ローズライラ・セラフィムについて整理しよう。
は、作品の舞台・フリーデン帝国のセラフィム公爵家に生まれた。御年19歳の女盛りで、皇帝の従兄・ヴァイザー王(28)の正室である。ヴァイザー王には今は亡き側室が遺したアイファー王女がおり、一人娘として可愛がっているが、ローズライラはアイファーを嫌っている。


そうだ、アイファーのことがあった…

アイファー王女に冷たく接するせいで夫であるヴァイザー王はローズライラを毛嫌いしており、また皇后とも対立している。

はぁ…自分の作品とはいえ、この立場難しすぎるっ!

頭を抱えていたが、とりあえずブランシェが持ってきてくれたお茶を飲む。

うまっ!

普通に美味しかった。


「いいわ、やってやろうじゃない。転生したからには全力でハッピーエンドにしてやるわ!!待ってなさい、私の最高傑作ーー!」
「…王妃様、大丈夫ですか?なにやら大声が聞こえましたけど…」
「え、ええ。なんの問題もないわ…」

…やっぱり無理!!!


2 待って、カワ(・∀・)イイ!!

「ねえ、ブランシェ」
「なんでしょう、王妃様」
「私はなにをしていたのかしら」
「…はい?」
「え?」
「なにをって、普通に生活してらっしゃいましたよ。先程はなかなか起きていらっしゃらないから心配して参っただけです」
「あ、そう?」
「どうされたんですの?」
「…いや、変な夢を見たから一応確認しただけよ」
「悪夢ですか?」
「いや…なんか、こう、とにかく変な夢」
「そうですか」

ブランシェの手を借りて着替えをすませた後、朝食を食べるために食堂へ向かう。

…たしか、この朝食でひと悶着だよね

今日はヴァイザー王が朝早くから出かけているため、朝食はローズライラとアイファーの二人で取る。

アイファーが遅刻するのよね…

夜遅くまで本を読んでいたというアイファーは朝食の席に遅刻する。それにキレたローズライラが読書禁止令を出し、急いで帰ってきたヴァイザーが怒るという流れだ。

食堂までやってくるが、いつも先に座っているはずのアイファーの姿はない。

本当にその流れでいくのか…

ヴァイザーに怒られることが分かっているのでキレたくはない。
しかしアイファーの遅刻を優しく許すほど性格が変わり過ぎるのもマズい。
どうしたものか。


…全然来ない

それなりに待ったが、アイファーは全然来ない。

「王女はまだなの?誰か、王女を急かしてきなさい」

これは原作でも言ってる。

「遅いわね」

と、言って朝食に手を付けようとしたとき、

「おはようございます、王妃殿下!遅れてしまい、大変申し訳ございません!!」

とアイファーがやってきた。

「…」

え!?待って待って、めっちゃ可愛いじゃん!コミックより実物の方が断然可愛い!!

「王妃様をお待たせするなんて随分なご身分ですわね、アイファー王女」

ブランシェが嫌味ったらしく言うと、アイファーは体を縮こませる。

「王女、なぜ遅れたのです?」
「…夜遅くまで本を読んでいたからです」

消えそうなほどの声で言う。

「はぁ…」

頼むからそんなに怯えないで。こっちが罪悪感を抱いちゃうから。

「いつまで立っているつもりですか。座りなさい」
「え…?」
「聞こえなかったのですか?座りなさいと言いましたが」
「は、はい!」

慌てて席に座る。

「そんなに急いで座るのはみっともないですよ。王女としてもっと落ち着きを身につけなさい」
「はい…」

アイファーはまだこちらを見ていたが、気にせず食べ始める。

え、なにこれうっま。

どこぞの高級レストランに出るような食事だった。

二人で黙々と食べていると、食堂のドアがバンッと勢いよく開いた。

「アイファー!」

ヴァイザー王だ。

「おはようございます、殿下。毎朝毎朝お元気ですこと」
「アイファー、大丈夫か?」
「は、はい」

え、めっちゃ無視するじゃん。

「ローズライラ、アイファーになにかしたら許さぬぞ」
「はいはい。親馬鹿もほどほどになさいませ」
「アイファー、朝食を終えたら俺の部屋に来い」
「はい、お父様」

え、お前から話しかけたよな?

創造主が目の前にいるというのになんと薄情な奴だ。

「いいか、アイファー。なにかされたらすぐに言うんだぞ」

もういいからさっさと行けよ…。

ため息をついて食事を再開する。

かなり面倒なキャラになってしまった。
戻れたら書き直そうかな。


3 どっかのなんかのパーティー

「失礼致します、王妃殿下」

転生してから一週間ほど経ったある日、執事長のリベルトが部屋に来た。

「王殿下から王妃殿下へご伝言でございます。今夜、皇宮でエリザベス皇后陛下主催のダンスパーティーに参加する故、支度をせよとのことです」
「今夜?」

時計をちらりと見る。
今の時刻はだいたい16時。
パーティー開始は18時。

…わざとか?
2時間前に伝えに来るとか性格悪すぎ。
まあ知ってたけど。

「分かったわ。殿下に、次回はもう少し早めにお伝えくださらねば殿下が恥をおかきになりますよとお伝えしなさい」
「…かしこまりました」

リベルトが退出し、早速支度に取り掛かる。
時間がまったくないので無言で支度した。


結果:間に合った。
知ってるんだから黙ってても無駄なのにね。

馬車に乗ると、ヴァイザーの隣にアイファーが緊張した面持ちで座っていた。

そっか、アイファーも行くのか。
なんか社交界デビューみたいな感じよね。
アイファー11歳だし。
…11歳!?
え、こいつ(殿下)11年前に子供作ってんの!?
たしかあいつは28だから…まあそんなもんか。
私が若いだけか。

いろいろ考えてたら皇宮に到着した。

「アイファー、行くぞ」

相変わらずアイファーしか目に入らない親馬鹿。

まずは主催者の皇后と夫の皇帝にご挨拶。
やだー。

「皇帝陛下、皇后陛下にご挨拶申し上げます」
「楽になさい」

ヴァイザーは皇帝に連れられてどこかへ行ってしまい、皇后はアイファーをジロジロ見ている。

いやアイファーを連れて行けよ。

「側室が産んだ娘を育てるなんて、ローズライラ王妃は可哀想ね」

皇后は扇子の陰でくすくすと笑いながら言った。
その言葉にアイファーは体を硬直させる。

「わたくしは自分の血を引いた子供が二人もいて幸せよ?」

アイファーの前で言うなんて、さすが性悪。

「その御子の中に皇子様が含まれるのはいつでございましょうか」
「なっ!」
「側室が産んだ娘は賢い子だと思いますよ。少なくとも皇女様方よりは」

皇后の娘たちは勉強嫌いで有名だ。
母親に似たんだろ。

「なんですって!?無礼な!!」
「それは失礼致しました。王女、行きますよ」
「は、はい!」

皇后がブチギレる前に(手遅れだけど)アイファーを連れて退散する。

「あ、あの、よろしかったのですか?」
「いつものことです」

どれほど腹が立っても皇后の実家はセラフィム公爵家には劣るため、ローズライラにむやみに手を出すことはできない。

「王妃殿下、ありがとうございました」
「なんのことでしょう」
「私のこと、賢いと言ってくださって…」
「…」

もじもじしてる!!可愛いぃ!!

「別に、深い意図はありません」
「そ、そうですか」

縮こまりながらも嬉しそうにはにかむアイファーにKOされたとき、

ドンッ

誰かがアイファーにぶつかった。

「痛いっ」

アイファーは尻もちをつき、ぶつかってきた相手は大声で泣き出した。

「いたーい!お母様ぁ!!」
「どうしたの!?」

光の速さでやってきたのは皇后。

うっわ(引)

「お母様!この子ったらヒドいのよ!わたくしにぶつかったのに謝らないの!」
「なんですって!!」

そう、ぶつかった相手は第二皇女のネレシアだった。

…え?

アイファーの可愛さにKOされている場合ではなかった。

「アイファー王女!ネレシアにぶつかったというのに謝りもしないなんて最低ね!」

いやいやそっち直立してんじゃん。うちのアイファー転んでんだけど。

周りの貴族たちがこちらを見てざわざわしている。

「それから、ローズライラ王妃!あなた、娘の教育もまともにできないのね!なんて不出来な母親かしら!」

とりあえずアイファーに手を差し出して立ち上がらせる。

「王女、怪我は?」
「…大丈夫です、王妃殿下」
「ちょっと、わたくしを無視しないで!」

ここで騒ぎ立てれば良くないことになる。
大人しく謝るのがベストだ。

「申し訳ございません、陛下。娘には私からよく言って聞かせますのでお許しを」
「…ふん、分かればいいわ」

皇后はネレシア皇女を連れて席へ戻っていった。
周りの貴族たちをちらりと見れば、ビビった様子で目をそらした。

「申し訳ありません、王妃殿下」
「…別にあなたが謝ることではありません。明らかにネレシア皇女からぶつかってきたのですから」
「でも、私のせいで王妃殿下が…!」
「分かっているのなら、これ以上私に恥をかかせないようになさい」
「…はい…」

それから、騒ぎを聞きつけてやってきたヴァイザーと共に早々にパーティーを抜けて王宮へ戻った。


パーティーからの帰り道、馬車の中で必死に思い出したけど原作ではネレシア皇女がアイファーにぶつかるなんていうシーンはない。
アイファーに過失を作るのはそうだけど、やり方が違う。
おかしい…。


4 面倒くさい教師

あのネレシアダンスパーティー事件(自分が勝手にそう呼んでるだけ)から数日後、王宮にとある一団がやってきた。

「はじめまして、王妃殿下。わたくし、皇后陛下よりアイファー王女の教育を申しつけられましたモンテール伯爵の妻でごさいます」
「…」

仰々しく挨拶をしたモンテール伯爵夫人を見て顔をしかめる。

くっそ、よりによって今日あいつがいねぇ…。
※ヴァイザーは皇帝に呼ばれてる

この人嫌い!やだ!
なんかめっちゃ侍女連れて来てるし!
ちゃんと滞在費払えよ!?

大勢の侍女を従えているモンテール伯爵夫人は私の横に立っているアイファーをジロッと見る。

「王妃殿下、二度と先日のダンスパーティーのようなことがあってはならぬのです。どうかご理解くださいませ」

わざとアイファーに過失を作り、教育係として息のかかった伯爵夫人を送り込む。
それは一緒なんだけど…。

「…そうですね。それではお頼みします」
「かしこまりました」

モンテール伯爵夫人はにっこりと笑い、出された紅茶を飲んだ。


翌日

「アイファー王女!姿勢が悪いですよ!」

「アイファー王女!もっと静かに!」

「アイファー王女!無駄な動きが多すぎます!」

今日からモンテール伯爵夫人によるスパルタ教育が始まった。
さすがに体罰とかはないみたいだけど、アイファーからは笑顔が消えてしまった。
もともと少なかった貴重な笑顔が見れなくなってこっちの機嫌も悪くなる。

しかも。

「王妃様!もう我慢なりません!」

最近、ブランシェを筆頭としてモンテール伯爵夫人付きの侍女に対しての苦情が増えた。


廊下にて

「うふふ」
「くすくすくす」

ブランシェたちが廊下を歩いていると、モンテール伯爵夫人付きの侍女たちが廊下で笑っていた。

「あなたたち!口ではなく手を動かしなさい!」

見かねたブランシェが注意すると、

「あら、ブランシェさん」

モンテール伯爵夫人の首席侍女・メレネを筆頭として、廊下を塞ぐように侍女たちが立ちはだかったのだ。

「どいていただける?」

当然、ブランシェたちにもプライドがある。
毅然とした態度で接すると、メレネたちはニヤニヤ笑いながら一列でブランシェたちの横を通り過ぎていく。
と、思いきや。

「きゃあ!」

なんと横を通るときにブランシェのロングスカートの裾を踏みつけたのだ。
ブランシェは転んでしまい、メレネたちはブランシェを嘲笑いながらその場を去ったという。


うんうん、知ってる。
ほんとにイヤな人たちだよね。
でももうちょっと耐えてほしいんだよな…。
今頑張って解雇する理由を探してるからさ…。

それを伝えて軽く頭を下げると、ブランシェたちはもう少し我慢すると言ってくれた。

なんて優しい子たちなの…!


5

モンテール伯爵夫人の一団が王宮に来て約二週間が経とうとしていた。
相変わらずモンテール伯爵夫人はアイファーを叱りつけており、アイファーの目は死にかけている。
これはさすがにマズいと、ちょうど実家から送られた(送らせた)本を読書好きなアイファーに差し入れることにした。

ブランシェたちを伴って広間へ行くと、アイファーはダンスの練習をしていた。
頭の上に本を乗っけるという某プリンセスと同じ方法で踊っているアイファーは、ひどく疲れた顔をしている。

「止めなさい」

モンテール伯爵夫人がピアノ伴奏を止めさせた。
そしてアイファーに近づき、本を下ろす。

「アイファー王女、もっと背筋を伸ばして」

モンテール伯爵夫人はアイファーの背中を叩いた。
アイファーはグッと唇を噛み締めて耐えている。

…え、叩いた?
体罰だけは避けて書いたのに。
なんで?なんで叩いてるの?

おかしいと思いながら広間に入ると、アイファーが弾かれたように顔を上げ、

「王妃殿下…!」

と言った。

うん、今日も可愛い。

「…王妃殿下」

モンテール伯爵夫人と侍女たちは顔をしかめて礼を取っている。

「王女、外国のおとぎ話に興味はありませんか?」
「…あります…!」
「そうですか。それならこの本を差し上げましょう。私の父が珍しい本をたくさん送ってくれたので、王女におすそ分けです」
「あ、ありが…」
「アイファー王女」

モンテール伯爵夫人が口を挟んだ。

「お分かりですね?」

モンテール伯爵夫人の意味深な笑顔にアイファーの顔がこわばる。

え、なになに?

「…王妃殿下、あの、大変ありがたいお申し出ですが、私は、本は…あの、いりません」

…は?なんで?アイファーって本大好きでしょ!?なんで拒否るの!?

「王妃殿下、アイファー王女もこうおっしゃっておられますので、その本はお持ち帰りくださいませ」

…こいつか。
アイファーに無理やりいらないって言わせただろ。本の虫のアイファーが本を断るはずがない。

「しかし、王女は…」
「王女はいらないとおっしゃっておられるのです!」
「…」

アイファーを見ると、目に涙を溜めてうつむいている。

「…分かりました」

それを聞いたモンテール伯爵夫人はニヤッと笑った。

あー、もう無理だ。

「ではあなたを解雇します」
「!?」

モンテール伯爵夫人は驚いた表情をしながらも冷静に尋ねた。

「王妃殿下、今、なんと?」
「あなたを解雇すると言いました。すぐに王宮から出ていきなさい」
「なんですって!?」

今度こそ冷静さをふっ飛ばし、ぶるぶると震えながら口を開く。

「王妃殿下、わたくしは皇后陛下から直々に命を賜ってここに参ったのですよ」
「それがなにか?」
「皇后陛下の命に背くのですね?」
「皇后陛下の命には背いておりません。二週間ほどあなたをここに置いたでしょう」
「そんなこと…!」
「ヴァイザー王殿下がご不在の今、この王宮の主は私です。王宮の主として改めて命じます。今すぐここから出ていきなさい」

冷めた声で命じると、モンテール伯爵夫人は顔を真っ赤にして広間を出ていった。
ブランシェたちは嬉しそうに笑っている。

「王女、受け取ってくださいますね」
「…はい…はいっ」

アイファーは震える手で本を受け取り、ぎゅっと抱きしめた。

あの伯爵夫人は放っておくとして、問題は皇后の方だ。
あの皇后が大人しく引き下がるはずがない。
いざとなれば実家の権力を使いまくろう。
うん、それがいい。

解決した。


数日後

「…」

色とりどりの薔薇。
芳しい香りが辺りに漂う紅茶。

そして目の前には怒り狂った皇后。

ある意味地獄絵図。

「それで、私にどのような御用ですの?」
「どのような御用?モンテール伯爵夫人を王宮から追い出しておいてよくそのようなことが言えるわね!!」

ガシャンッ

あーあ、カップ割れたじゃん。

皇后が床に叩きつけたカップを見て、お金の心配をする。

高そうなカップだったのになぁ…。
もったいなーい。
こいつがこんなことしてるから、皇宮は金がないんだよ。

「あの者は王女に対して教育と呼ぶに相応しくない行いを繰り返しておりました。追い出すだけで済ませたのですから、感謝して頂きたいくらいですわよ」
「なにをっ!」
「それに、娘の教育は他人には任せられません」
「あなたが王女を教育すると?」
「そうですわ。どこかの夫人に任せて勉強嫌いに育っては困りますので」
「っ!!」

皇后は唇を強く噛んでいる。
もちろん、勉強嫌いに育って、というのは皇后に対する嫌味。

皇女たちは天性の馬鹿だもん。
それを分かってるから、皇后はこんなにも悔しそうな表情をしてるんだよね〜。

「…そう。それならお好きなようになさいな!わたくしを怒らせたことを後悔するのね!!」

皇后は悪役の決め台詞をしっかりと残し、どこかへ行ってしまった。

あんなに怒ったら皺増えるぞ?
てか常に怒ってんのによく肌すべすべでいられるよな。

てか…このお茶ってなんでこんなに美味しいの?

カップを見つめてしばらくボーッとしていた。


7 とりかえしのつかない誤算

転生してから一年後

「王妃殿下!」

庭を散歩していると、アイファーが走ってこちらへやってきた。

「どうしたのです?」
「今日お父様と外へお散歩に行ったときに、綺麗なお花を見つけたのです。どうぞ!」

と、数本の花を差し出した。

アイファーを教育し始めてから、かなり心を開いてくれるようになったと思う。
こうやって花をくれるなんて、以前までは考えられなかったことだ。

「ありがとうございます、アイファー」

名前を呼び、差し出された花を笑顔で受け取る。

外から見れば、イジワルだった王妃の性格もかなり穏やかになり(ちょっとずつ性格を変えていったから穏やかでも不審に思われなくなった)、

「ここにいたのか。アイファー、ローズ」
「ヴァイザー様」

ヴァイザーとも、アイファーに対する態度が変わったことで打ち解けることができ、以前よりも夫婦らしくなったと思う。
なんかローズって呼んでるし。

「今日は日差しが強い。二人とも、中へ入ろう」
「はい」
「はい!」

なんか、転生してから一番楽しいゾーンに入った。
ヴァイザーはちょっと馬鹿だけど普通にイケメンだし、アイファーは安定に可愛いし、皇后は最近静かだし。

この前なんか、

「ご機嫌麗しゅう、皇后陛下」

って挨拶したら

「ごきげんよう、ローズライラ王妃」

って返してくれたもん。
笑ってたし。
いいことでもあったのかな。
なんか気持ち悪いけど八つ当たりされるよりはマシだよね。

一年の間にいろいろあったけど、こっちでの生活にも慣れてきて、結構楽しい。


でもさ、一個忘れてたことがある。
…原作の主人公のこと。

原作の主人公・浦野陽太。
自己主張が弱く、一学年につき一度留年している落ちこぼれ男子。
おなじみの事故でこの世界に転生し、後にイジワル王妃からアイファーをセコムすることになる存在。

もうセコムいらんくね?
みんなそう思わん?


「…そうか、分かった。下がれ」
「はっ」

アイファーと共にヴァイザーの部屋へ行くと、ヴァイザーはなんとかっていう将軍と話をしていた。
誰だっけ。

「ヴァイザー様、先程の方は…」
「それについて話がある」

ヴァイザーの真剣な表情に、ブランシェを呼び、アイファーを任せる。
アイファーとブランシェが退室してから、ヴァイザーはソファに座ってため息をついた。

「陛下より、出兵の命が下された」
「…え?」

もうそんな時期か。

「どこと戦うのですか?」
「テナリア山脈を越えた向こう、クリーク帝国だ」

我がフリーデン帝国の北東に位置するテナリア山脈。
それを越えた先にあるのがクリーク帝国だ。

「最近皇帝を名乗り始めた異民族ですね」
「そうだ。俺が総大将として戦場に向かうこととなった」
「そうですか…」

戦う相手は同じ…。

「皇帝が二人いてはならぬのだ。仕方ない」
「そうですわね。陛下もきっと、信頼する従兄様を頼られたのでしょう」
「ああ、そうに決まってる」

二人して笑い、夕食の席へ向かった。


数日後

「いってらっしゃいませ、ヴァイザー様」
「お父様、いってらっしゃいませ!」
「ああ、行ってくるよ、二人共」

ヴァイザーは明るい表情で出立した。

これが、三人の最後の会話になるとも知らずに。


8 別れ

ヴァイザーが戦場へ赴いてから2ヶ月後

「…遅い」

窓から外を睨み、ぼそりとつぶやいた。
もう2ヶ月も経つというのに、ヴァイザーはまったく帰ってこない。
戦いは1ヶ月くらいだったはずなのに。

「王妃殿下、お父様はまだでしょうか…」

私の部屋で本を読んでいたアイファーが顔を上げる。

「もう少しですよ、アイファー。もう少しで―」

バンッ!

「王妃殿下!!」

執事長のリベルトが部屋に駆け込んできた。

「何事なの、騒がしい」
「大変でございます!ヴァイザー王殿下が…」
「ヴァイザー様がなに?」



「…討ち死にされました!!」
「…えっ…?」

衝撃が走る。
嘘、でしょ?
死んだの?やだ、ドッキリ?

ドッキリならなぜ、リベルトはこんなにも苦しそうに涙しているの?


なぜ、あの人は死んだの?

だって、だってだって、転生した浦野陽太が助けるはず…!!


現代で事故に遭い、この世界に転生してきた浦野陽太は、ヴァイザーがいる戦場へ落ちてきた。
そこでたまたま陽太がヴァイザーを助け、感謝したヴァイザーが陽太を王宮に連れてきて、そこから物語が進んでいくはず。


それなのに。

「いやぁぁ!お父様ぁ!!」

部屋に響き渡るアイファーの泣き声。

衝撃で固まったまま動けないブランシェたち。


一筋の涙が、頬を濡らした。



翌日、皇宮にてヴァイザーの葬儀が盛大に執り行われた。

「アイファー…お父様に最後のお別れをなさい」
「…はい…」

アイファーは涙に濡れた手でヴァイザーの眠る棺に触れる。

「お父様…なぜですか…?戦いから帰ってきたら、王妃殿下と三人で、旅行に行こうって、おっしゃってたのにっ…」
「アイファー…」

優しくアイファーの背中を撫でる。

「うぅ…」

震えるアイファーを抱きしめ、棺に額をつける。

「ヴァイザー様…アイファーは私が責任を持って立派な淑女に育てます。どうか、どうか安らかにお眠りくださいますよう…」

決して涙を見せることはなく、棺の前で静かに誓った。



「ヴァイザー王殿下のこと、残念でしたわね」

葬儀が終わり、一人で庭園を散歩していると皇后がやってきた。

「…皇后陛下」
「あなたがわたくしに逆らうから、こんなことになるのよ」
「は…?」

嘘でしょ?
こいつが仕組んだの?

なんで!?どうやって!!?

「ふふ、あなたのその絶望にまみれた顔!わたくしはその顔が見たかったのよ」
「…」

…そんなことのために?たったそんなことのために、ヴァイザーが死ぬように仕向けたの?

「わたくしを訴えようとしても無駄よ?だって証拠がないもの」
「…消したの?」
「そうよ」
「…」
「ふふふ、はははは!」

皇后は嬉しそうに笑いながら庭園を去った。

ぽつりぽつりと雨が降り始める。

「…」

私はアイファーやブランシェが探しに来るまで、ずっとその場に立ちつくしていた。


1ヶ月後

「皇帝陛下、私は亡き夫、ヴァイザーの王位を返上致します」

広く壮麗な皇宮に、私の姿はあった。

「理由は」
「王位を継ぐ者が不在であるからです」
「王女と、そなたはどうする?」
「私は娘と共に実家へ下がります」
「…いや、こちらが手配しよう。小さいが、領地を与える故王女と共に下がれ」
「感謝致します」

実家とも話し合って、私はヴァイザーの王位を皇帝に返上することを決めた。
皇帝は自分の命で出兵した従兄が戦死したことに、かなり負い目を感じている。
皇帝は、国を守らなければならない。
身内の死をずっと引きずるわけにはいかないのだ。


9 新天地へ

「アイファー、準備はいいですか?」
「はい」

王位を返上した2日後、アイファーと用意された領地・スレライカ領へやってきた。

「のどかな田舎ね」
「空気がとても綺麗ですね!」

アイファーは初めての遠出に大はしゃぎ。

「アイファー様、あまりはしゃぎ過ぎるとお怪我を致しますよ」

アイファーへの当たりが冷たかったブランシェも、今では姉のように接している。

「まったく、ブランシェたちまで来ることはなかったのに」
「いいえ、私たちがお供したいんです」

王妃付き首席侍女だったブランシェ、王女付きだったユリア、そして最後までヴァイザーに付き従って戦った女騎士ミレーナの3人は、私とアイファーに従ってスレライカ領へやってきた。

ほんっとうにいい子たちよね…!
作ったのは誰?
そう!私!(馬鹿)

「王妃殿下、今日からここで暮らすのですか?」

目の前には王宮よりも小さな(と言っても普通にでかい)屋敷が立っている。

「ええ、そうですよ。それと、もう私は王妃ではないのですからその呼び方はおやめなさい」
「あ、そうですね!では…お母様?」
「アイファー…!」

お母様って呼んでくれた!
アイファーが!

感動しすぎて倒れそうになりながら笑みを浮かべる。

「お母様…?」
「なんでもありませんよ、アイファー」
「?…それよりお母様、悪夢はもう大丈夫ですか?」
「…」

アイファーの言葉におもわず苦笑する。



(ヴァイザーの葬儀を終えた数日後の夜)


カンッカンッ

剣を交える音が聞こえる。

『…を!』
『…だぞ!』

そこらじゅうに倒れる兵士たち。

『ヴァイザー王殿下!もう無理です!』
『もうすぐ援軍が来る!それまで持ちこたえろ!』

必死に鼓舞しながら剣を振るヴァイザー。

『…殿下!後ろ!』

部下の声に振り向いた、そのとき。

ドスッ

ヴァイザーの額に、1本の矢が突き刺さる。



「っはぁ、はぁ、はぁ…」

驚きの光景に飛び起きた。
外はまだ薄暗い。

「なに、あれ…」

夢を思い出し、大粒の涙が頬をつたう。

「なぜあんなことに…」


《日向ちゃん、転生ものを書くときは、絶対に2人以上を転生させては駄目よ》
〈なぜですか?〉
《…中の世界が、大変なことになってしまうからね…》


いつかの先輩作家との会話が耳に蘇る。

「…まさか、私が転生したから…」

そうか…そういうことだったのか…。

「すべては、私のせいだったんだ」

兆しはあった。
ネレシア皇女がアイファーにぶつかったこと。
モンテール伯爵夫人がアイファーに暴力を振るったこと。

由良日向という人間が転生してしまったことでこの世界が歪み、原作とは変わってしまったのだ。


「…私は、ヴァイザーを殺してしまった。私が、殺したんだ…」

ベッドの中で三角座りになり、私は泣き続けた。


(現在に戻る)

「大丈夫ですよ、アイファー。もう最近は悪夢を見なくなりました」
「そうですか。それならよかったです」

夢は見なくなったけど、眠りが浅く早朝に目が覚めてしまう。

「私は、あなたが笑顔ならそれでいいのですよ」
「…私はお母様にも笑って頂きたいです」
「!…そうですね」

これからアイファーの笑顔に救われる日々を送ることは、間違いないのだろう。


10 最後の決断

「ブランシェ!こっちよ!」

田舎の屋敷に住み始めてまだ日は浅いが、アイファーたちはすっかり屋敷に慣れたようだ。
今もアイファーとブランシェとユリアは広い庭で鬼ごっこをしている。

「ローズ様、お外に出られないのですか?」

ソファに腰掛けていると、ミレーナがお茶を持ってきてくれた。

「今はあまり日に当たりたくないの。あなたはアイファーのところへ行ってきなさい。ブランシェとユリアが転びそうよ」
「はい」

鬼ごっこにミレーナが加わり、楽しそうな声が庭に響く。

なんか眠くなってきたな…。

暖かい風に誘われて、ゆっくりと目を閉じた。



「起きてください、日向さん」

久しぶりに、本当の名前を呼ばれた気がする。

「…ここは?」

目を開けると、そこはなにもない真っ白な空間だった。
そして、優しそうに微笑む男の子が1人。

「あなたは…」
「はじめまして。僕を作ってくれた、由良日向さん」
「っ!?なんでそのことを…」
「僕にもよく分かりません。ですが、僕は貴方を知っています」
「…」

そこにいたのは、浦野陽太だった。

「日向さん、ここから、元の世界へ戻ることができます」

真っ白な空間の一部が破れ、少し開く。

「しかしこの機を逃せば、もう元の世界に戻ることはできるません」
「…」
「日向さんは、どうしたいですか?」

どうしたい…?
それは、私が一生ラフツィアとしてこの世界で暮らすことを望めば、それが叶うということ…。

なら、答えは決まってる。

「私はここに残りたい。だから、あなたは元の世界へ戻って」
「…いいんですか?」
「アイファーの成長を傍で見守れるのなら、私はそれでいいの。様々な賞も、作家としての名誉も、なにもいらない」
「…そうですか。本当に、後悔しませんね?」
「ええ」

自信たっぷりに頷くと、空間の破れ目が光り出す。

「さようなら。僕を作ってくれて、ありがとう。あなたのおかげで、僕はこの世界でたくさんのことを学べましたよ」

光で視界が真っ白な中、その言葉だけが耳に残った。



「…さま、お母様」
「……?」

そこは真っ白な空間ではなく、それまで座っていたソファの上だった。

「もう、お母様ったら。夜にあまり眠れないのはこうやってお昼寝をなさっているからではなくて?」

アイファーが腰に手を当ててぷりぷり怒っている。

可愛い。

「ごめんなさいね、アイファー」

体を動かそうと立ち上がり、外に出ると、柔らかい日差しが体を包み、あまりの暖かさに軽く睡魔に襲われる。

私は一生、元の世界に戻ることはできない。
でも、それでいい。
それが私の選んだ道。
ラフツィアは20を越えたばかりだし、まだまだ人生これからよ。

「…お母様」
「?」
「私、ずっと気になっていたことがあるんです」
「なんでしょう」
「なぜ、お母様は、私に優しくなったのですか?」

ピタリと動きを止めた。

…いつか聞かれるだろうとは思ってたけど。
だって以前までのラフツィアは嫌味や罵声は当たり前、めっちゃ不味いお茶は出すし、贈り物に虫の死骸入れるし。
だいぶヤバいことしてたからな…。

「…アイファーは、転生を信じますか?」
「えっ?」
「ふふ」

小さく笑って庭へ続く小道を歩く。

「…信じます!」

アイファーが後ろから大きな声で叫ぶ。
私は足を止め、少しだけ振り向き、微笑む。

「そう」

それ以上は、もうなにも言わなかった。
11 寵妃からのお誘い

「ローズ様!アイファー様!」
「どうしたの、ブランシェ」
「セレイア皇妃の御遣いが来られ、ローズ様とアイファー様を皇宮にお招きしたいと!」

アイファーと共にスレライカ領へ移り住んでから5年後、皇帝は側室の1人・セレイア皇妃を寵愛している。
セレイア皇妃は御年19歳。
今や政治においても大きな発言力を持ち、皇帝を除いて唯一、エリザベス皇后と肩を並べられる存在だとか。

「セレイア皇妃…」
「それって皇帝陛下が寵愛なさっているという?」
「そうです!」
「お母様、どうしますか?」
「…」

…めんどくさーい。

セレイア皇妃は悪意があって招いたわけではないだろうけど、絶対なんかあるでしょ。

私が転生してしまったことで、この世界は原作とはすっかり変わってしまった。
もうなにが起こるのかは誰にも分からない。

だからスレライカでゆっくり好きなことして過ごそうと思ってたのにぃ…!

「…お断りしますか?皇宮はお母様にとってもあまり良い場所ではありませんし」
「…少し考えます」
「お母様…」

ため息をついてブランシェを見れば、ブランシェは心得たというように頷き部屋を出た。

「お母様、どうかご無理をなさいませんように」

皇后と会う可能性を気にしているアイファーは不安げに眉を寄せる。

「ええ、ありがとう。アイファーは優しい子ですね」
「お母様ったら。私はもう幼子ではありません」

アイファーは今年で17歳。
対して私は25歳。
若すぎる母娘だ。

可愛らしく頬を膨らませるアイファーにくすりと笑い、出かける支度を始める。

「お出かけですか?お供しますわ」
「いいえ、あなたはそれよりもやらなければならないことがたくさんあるでしょう。ヴァイザー様の鎮魂祭(※年回忌法要のこと)で頂いたお見舞い品の整理をして、お礼の手紙を書いて、それから返礼品も用意しなければ」
「分かりました。でもミレーナは連れて行ってくださいね!」
「分かっていますよ」

亡きヴァイザーの唯一の娘としての務めがあるアイファーは毎日多忙だ。
私にできることはアイファーの負担をなるべく減らし、アイファーを一生支えられる男性を探すこと。

…まさか娘の婿探しをするなんてねぇ…。

広い廊下を歩きながら複雑な心境に苦笑いをこぼす。

「ローズ様、どこへ行かれるのですか?」
「ヴァイザー様の慰霊碑よ」
「王殿下の…」
「最近は忙しすぎてあまり行けていなかったでしょう。アイファーのことをちゃんとご報告しなければ、あの方のことだもの、とても心配なさっているわ」
「…」

ミレーナは口をつぐむ。

「ミレーナも、ヴァイザー様になにか言いたいことがあるんでしょ?」
「っ!」
「ゆっくりお話ししてきなさいな」
「ありがとう…ございます、ラフツィア様」

うつむいて礼を言ったミレーナの頬は涙で濡れていた。


「ヴァイザー様、参りましたよ」

馬車に乗ってヴァイザーの慰霊碑へやってきた。

「アイファーはたくましく育っております。なにもご心配なさることはございません。ただ…そろそろ一生を共に過ごす婿殿を決めても良いやもしれませんね」

ヴァイザーの姿を思い浮かべながら話しかけると、自然と涙が出てきた。

「貴方がこの世から去って、今年で5年が経ちます。月日が経つのは早いものですね…」


屋敷へ帰ってくると、アイファーが笑顔で出迎えた。

「おかえりなさいませ!…って、お母様ったらお泣きになったのですか?ミレーナまで。まさか、お母様…」
「アイファー、ただいま」

なにかを察したアイファーに微笑みかけ、自室へ戻る。

ベッドにダイブしてごろごろしていると、少し気持ちが落ち着いた。

コンコンコン

「ローズ様、ブランシェです」
「入って」
「失礼致します」

ブランシェが入室してきた。

「ローズ様、セレイア皇妃の御遣いがローズ様のお返事を急かしておりますが」
「…」

…忘れてたー!!!
ヴァイザーのこと思い出して泣いてたらすっかり忘れてた!!
もー!皇帝の寵妃が私になんの用だよ!!?

「…日時が確定したら伝えさせて」
「よろしいのですか?」
「いいわ。皇帝の寵妃の誘いを断れば面倒なことになる」
「かしこまりました」

ブランシェは静かに部屋を出た。

「もー…頼むからほっといてよぉ」

面倒くさーい…。


12 いざ皇居へ

「セレイア皇妃に失礼のないように、アイファー」
「はい、お母様」

二人で気合を入れて馬車から下りる。

「ようこそいらっしゃいました」

数人の女官たちが私たちを出迎える。

「ローズライラ夫人、アイファー嬢、ようこそ」
「…アイファー嬢?」

おもわず聞き返した。

私はいいとして、アイファーに敬称がないのはおかしいでしょ。

「なぜ敬称をつけられないのです?亡きヴァイザー王殿下の奥様と姫様ですよ」

眉をひそめた私に代わってブランシェが怒ったように言う。
女官たちは特に焦る様子もなく笑顔でブランシェを見返す。

「大変失礼致しました。しかしお二人とも正式な位階がございませんのでこのようにお呼び致します。お許しを」
「位階がないですって?」

そこにユリアが参戦する。

「ええ。たしか夫人は王位を返上なさったはずですが、わたくしの勘違いでしたでしょうか」

女官AとBとC、笑顔で言ってるのつよ。
しかしブランシェやユリアも黙っていない。

「王位を返上してもお二人が皇家の一員であることは事実です。貴女がたは皇族に無礼を働いているのですよ」
「ですが―」
「なんの騒ぎなの?」

奥から一人の女性が女官たちを従えてやってきた。

「セレイア皇妃様」

AとBとCが頭を下げる。

…なるほど、これが皇帝の最愛か。

セレイア皇妃は穏やかな笑みを浮かべた優しそうな女性だ。
しかし、だからこそ油断はできない。

「あら、こちらのお二人は…」
「ローズライラ夫人とアイファー嬢です」

呼び方を改める気はないらしい。
もうなんでもいいから中に入れてよ…。

「そうなの?ようこそ、皇宮へ。わたくしがセレイアですわ。はじめまして、ローズライラ様、アイファー様」
「はじめまして」
「それにしてもこのような場所でなにを?」

ちらりと女官ABCを見る。

「この者たちがなにか?」
「皇族に対しての態度について少し注意しただけです。お気になさらず」
「そう…ですか。まあいいわ、お二人ともこちらへどうぞ」

セレイア皇妃が先導し、私たちはやっと皇宮に入った。


「本日は庭園にお席を設けさせていただきましたわ。色とりどりの花が愛でられますのよ」
「素敵なお庭ですね」

当たり障りのない感想みたいに聞こえるかもしれないけど、マジで素敵よ!?
どこに神経使ってんだってぐらい整ってる!!

「ふふ、ありがとうございます」

全員が席につくと紅茶やお菓子が運ばれてきた。

カップや皿の色を見てから、ブランシェが大事なことを思い出す。

「セレイア皇妃、大変恐縮ではございますが、ローズライラ様並びにアイファー様のカップやお皿などはすべて銀色のものにしていただけますでしょうか」
「なんですって?」

セレイア皇妃から笑顔が消える。

「ローズライラ様は以前、毒を盛られたことがございますので」
「わたくしが毒を盛ると?」
「決してそのようなことは。しかし、女官や下女の中にローズライラ様方に毒を盛るような輩がいないとも限りません。どうかお聞き届けくださいますよう」

ブランシェは深々と頭を下げる。

「そうなのですか、ローズライラ様」
「ええ。王妃だった頃に黄金のカップを勧められて毒を…」
「そうでしたのね。それなら過敏に反応なさるのも仕方ありません。ローズライラ様とアイファー様は陛下の大切なご家族です。万が一のことがあってはなりませんものね。誰か、銀色の食器をここへ」
「ありがとうございます」
「いいえ、間違いがあっては大変なことになりますし」

うーん、これはよくない流れ…。

セレイアの複雑そうな笑顔をちらりと見て、アイファーに目配せする。

よし、行け!アイファー!

アイファーは小さく頷いてセレイアに話しかけた。

「セレイア皇妃様、私、スレライカのお土産をお持ちしましたのよ」
「スレライカ領のお土産?」
「はい。イルテの実ですわ」
「イルテ!?」

イルテの実は日本でいうイチゴみたいな果物で、フリーデンでは貴族たちから絶大な人気を集める高級果実だ。

「我がスレライカではイルテがよく育つのですよ。フリーデンで最も日が当たる領地ですから」

そう、実はスレライカってフリーデン帝国の中で一番日当たりのいい土地と言われていて、たくさんの日光を浴びて育つイルテの実は極上の甘さを宿すの。

この世界の人間を味方につけるならスレライカのイルテは欠かせないのよね〜!!
とりあえずイルテあげれば敵になることはないっしょ!

ってかなり楽観的に考えてたけどまさかほんとにうまく行くなんてねぇ…。

「わたくし、イルテの実が大好きですの!」
「私も大好物です!あの甘さがクセになりますわよね!」
「ええ、ええ!わたくしはとっても甘いのに後味はさっぱりしているところが好きですわ!」
「セレイア皇妃が召し上がってくださるのなら、我がスレライカの領民たちも育て甲斐があるというものです」

横から口を挟むとセレイアはアイファーと私の手を握った。
手汗が心配なんだけど。

「アイファー様とローズライラ様には感謝しかございませんわ」
「そう言っていただけて光栄です。民たちも喜びますわ」

『イルテによってセレイアを味方につけた!』
というゲームでの表記のようなものが頭の中に浮かんだ。
前世はゲーム大好きだったもんなぁ…。


それから三人は穏やかに談笑し、解散となった。

「セレイア、今日は招いてくださってありがとう。とても楽しかったわ」
「ローズ様、わたくしも楽しかったです。また三人でお話ししましょうね」
「今度はセレイア様がスレライカにいらしてくださいな」
「陛下のお許しが出れば訪ねさせていただくわ、アイファー」

私たちは名前で呼び合う仲になった。
でも私がセレイアって呼んでも大丈夫なわけ?
仮にも皇妃よ?しかも後宮一の寵妃よ?

「ローズ様、アイファー、今日お迎えした際にわたくしの女官がお二人に無礼な振る舞いをしたと聞きましたわ。ここに謝罪致します。すべてわたくしの責任です」

セレイアは少し頭を下げた。

「セレイア、顔を上げて。私たちは気にしていないわ。それよりもあなたが出迎えてくれたことの方が驚きだったもの」
「ヴァイザー様のお妃と姫君ですもの」
「あら、ヴァイザー様と親しかったの?」
「…いいえ、陛下からよくお話をお聞きしていたのですわ」
「そう」

なんか間があったよね!?あの間はなに!!?
え、待って待って、ヴァイザーとセレイアって仲良かったの!?
にっこり笑って答えたけど絶対セレイア嘘ついてるでしょ!!

「まあいいわ。今日はこれで失礼するわね。わざわざ見送りに来てくださってありがとう」
「はい、お二人も道中お気をつけて」
「ありがとうございました!」

馬車に乗り込み、アイファーがセレイアに手を振ると、セレイアは慈愛に満ちた暖かい眼差しで手を振り返す。その様子になにかもやもやを抱えながら、馬車は皇宮を後にした。


「…ね、お母様」
「えっ?」
「お母様ったら聞いていらっしゃらなかったのですか?セレイア様はお優しいお方でしたねって言ったのですよ」
「え、あ、ええ、そうね」
「私はセレイア様とお母様がなんだか似ていらっしゃるように感じましたわ」
「私がセレイアと似ていると?」
「ええ。なんと言えばいいのでしょうか、私への接し方がお父様やお母様に近く感じました」
「そう…?」

たしかに、言われてみればセレイアのアイファーへの態度や眼差しは慈愛に満ちたものだった。
それはまるで、我が子に接するような―。

「…我が子…」
「え?」
「まさか…、待って嘘でしょう…?」

私は馬車の中で体を震わせた。


「…皇妃様、そろそろお部屋へお戻りになっては?」
「うるさいわね!黙っていなさい!」
「は、はい…」

セレイアは腸が煮えくり返るほどの怒りを感じていた。

「絶対に許さないわ…ローズライラ…!」

その原因は先程帰っていった客人。

「戻るわよ!」

セレイアは遠くに見える馬車を睨みつけ、踵を返した。


13 敵の敵は味方

帝都から遠く離れた町に住むシュナには父、母、そしてセレナという姉がいた。一家は貴族ではなく貧しい庶民。両親は流行り病で早くに亡くなった。
両親を亡くしたシュナはセレナと一緒に修道院に入り、そこで働きながら修道女に勉強を教えてもらっていた。

ある大雨の日、2人のいる修道院に1人の男性がやってくる。男性と男性が乗っていた馬はずぶ濡れで、一晩泊めてほしいと言うのだ。
しかし修道院は男性を拒否した。
しかも泊まりたいのなら金を出せと要求したのだ。
お金も持ち合わせておらず、困り果てていた男性を助けたのはセレナだった。

『ぜひこちらでお休みになってください』

セレナは修道女に嘘をついて男性のために風呂を沸かし、食事と眠る場所を用意した。
男性はセレナに深く感謝し、翌日去っていった。

その一週間後、修道院に客人が現れた。
遠き帝都におわす皇帝の従兄・ヴァイザー王だ。
王は先日の男性が自分であったことを明かし、改めてセレナに感謝を述べた。
そして、王はセレナに求婚する。
セレナはそれを受け入れ、シュナと共に王宮で暮らすことになった。

一年ほどして、セレナは娘を産む。娘はアイファーと名付けられた。幸せの絶頂にいる二人を見るのが、シュナは好きだった。
両親が亡くなってからずっと苦労してきたセレナが幸せそうな笑顔を見せることが、なによりも嬉しかったのだ。
しかし、幸せは突然終わりを告げる。
セレナが病気で亡くなってしまったのだ。
ヴァイザーはもちろんシュナも深く悲しみ、立派な葬式をしてセレナを送り出した。
セレナが亡くなった後、シュナはアイファーの乳母としてアイファーの養育にいそしむ。

セレナが亡くなってから二年後、ヴァイザーはフリーデンの名門・セラフィム家から王妃を迎えることになった。
シュナが三歳のアイファーと共に出迎えると、そこには豪華な花嫁衣装に身を包んだ少女がいた。
ひどく傲慢で、我儘な少女だった。
結婚して日が経っても、ヴァイザーに対しての傲慢な態度は変わらない
ある日、アイファーと庭を散歩していたら王妃に会った。王妃はアイファーの存在が気に入らないと言い、その母であるセレナをも罵った。
それからだ。王妃がアイファーに強く当たるようになったのは。
朝食を用意させなかったり、贈り物の中に虫を仕込んだり、廃棄寸前の茶葉を使ったお茶を出したり。
シュナは反抗した。大好きな姉の忘れ形見であるアイファーを守るために。
しかしシュナが反抗しても、王妃にとってはハエが飛び回るのと同じ。シュナは無実の罪を被せられて王宮を追い出された。

王宮を追い出されたシュナは助けを求めようと帝都に向かった。そこで親切な伯爵夫妻に出会う。
シュナは名を変え、セレイアと名乗り、二人を上手く言いくるめて二人の遠縁ということにしてもらい、貴族令嬢としての教育を受け、実の娘のように二人に尽くした。
子がいなかった夫妻はとても喜び、セレイアを皇宮へ連れていく。
皇帝に挨拶をしてパーティーに参加し、屋敷へ戻ってくると、夫妻はセレイアが皇帝に見初められたことを告げた。
皇帝の妃になれば王妃なんて敵ではない。
そう思って後宮に入った。
しかし皇帝はなかなかセレイアの前に現れず、月日だけが過ぎていった。
鬱々としていたセレイアの元に、ヴァイザーが戦死したという知らせが入る。
己の命令で出兵したヴァイザーの死に、皇帝は大きなショックを受けているらしい。
これは使える。今が皇帝に取り入る最後のチャンスだ。

セレイアは自責の念に駆られていた皇帝を慰め、寵愛を受けた。

ヴァイザーが亡くなってから五年後、セレイアは後宮一の寵妃になっていた。敵対する妃をことごとく蹴落とし、残る敵は皇后のみ。
皇后本人やその実家は実に厄介で、セレイアを世話していた伯爵家よりも格上の存在だった。
皇宮、特に後宮では実家の格の違いが妃の扱いに大きく影響する。いくら寵妃であれど、この格の違いは足枷となってセレイアを縛っていた。
自分一人では、いつまでも格の違いに縛られる。
しかし皇后を退けねば、今はスレライカ領の領主となっている憎き女を倒すことはできない。
その中でセレイアが出した答えは、

『敵の敵は味方』

この言葉だ。

まず、元王妃とアイファーを皇宮に招く。そこで二人を取り込み、皇后と対立するように誘導する。
皇后には一時休戦を申し込み、以前まで不仲だった元王妃と再び対立するように仕向ける。
二人が激しく対立し、セレイアは高みの見物をする。二人が衝突し、仲良く砕けた後、アイファーを引き取って手元で大切に育てるのだ。

第一段階はかなり上手くいった。どうやらあちらもセレイアを取り込もうとしていたらしく、スレライカでしか採れない貴重な果実を手土産に寄越した。顔を知られているから向こうが気づく恐れはあったが、幸いにも気づかれていないようだ。
次は皇后。あの皇后は思っていることが表情に出やすいため非常に動かしやすい。実家はかなり厄介だが。


馬車を見送った後、セレイアはエリザベス皇后の宮殿を訪ねた。

「後宮一の寵妃がわたくしの宮殿に来るなんて、不思議なこともあるものね」

セレイアの姿を見た皇后は一番にそう言った。
口元には可笑しそうな笑みが浮かんでいる。

「わたくしはずっと、皇后様とゆっくりお話ししたいと思っておりましたのよ。良い機会ですし、散歩をご一緒致しません?」

皇帝を落とした笑みで言うと、皇后は少し考える素振りを見せ、ソファを立った。

暖かい午後の日差し。
柔らかい日光が辺りを優しく包み込む。

「それで?今日はなんのご用なの?」

皇后が口を開く。

「このお花、とても素敵ですね。わたくしの宮殿にも同じお花を植えようかしら」

セレイアは皇后の言葉を無視して庭の花にゆっくり手を伸ばす。

「あなた、わたくしの話を聞いているの?」

皇后の苛立ちを含んだ声に、セレイアは少し振り返る。

「もちろん聞いておりますわ、皇后様」
「なら早く要件を言いなさい」

セレイアは花に伸ばしかけていた手を止めた。

「先程、亡きヴァイザー王殿下の王妃と王女を招きましたの」

ヴァイザーの妃という単語に、皇后はしっかり反応する。

「ローズライラ・セラフィムが来たの?」
「ええ。わたくしがお招き致しました」
「っ!」
「皇后様はローズ様と折り合いが悪かったとお聞きしましたわ。ですので、どのような人物かを見極めるためにお招きしました」

再び花に向かってゆっくり手を伸ばす。
そして一輪の紅い薔薇を愛おしむように撫でた。

「…会ったのね。感想は?」
「…」

セレイアは黙ったまま薔薇をジッと見つめ、握り潰した。

「皇后様があの女を厭われる理由がよく分かりましたわ」
「…そうでしょう?」

皇后は口の端を持ち上げて自分も薔薇へ手を伸ばした。

「一時休戦としましょう。ローズライラ・セラフィムを倒さねば、皇妃とて不安なことがあるものね」
「…どういうことですの?」
「あの女は陛下の正妃候補だったのよ」

セレイアと同じように薔薇を握り潰す。

「っ!?」
「先の皇后と折り合いが悪かったこともあって、候補に上がった途端セラフィム公爵夫人が辞退させたらしいわ」
「…」

まさかそんな事情があったとは。初耳だ。

「もしかしたら、皇妃もあの女に寵を取られるやもしれないわね」

皇后が挑発しているのは分かっている。
それでもなお、腹が立つのを抑えられなかった。

「ローズライラ・セラフィム…!」

皇后などではない。
やはりこの女がセレイアの宿敵だ。

「そんなに怒らないで。わたくしたちが協力してあの女を倒しましょう」
「ええ」

二人は互いを軽く睨み、握手を交わした。



それからエリザベス皇后とセレイア皇妃はローズライラを倒すため陰謀を企て、ローズライラは投獄され、最終的に処刑される。

そしてローズライラが目を覚ましたのは一面銀色の部屋。見覚えのあるその部屋はヴァイザー王を主とする王宮の王妃の部屋で、ローズライラは自分が転生したときと同じ日に戻ったことを悟る。

自分は投獄された挙げ句処刑され、アイファーも殺された。ローズライラはヴァイザーとアイファー、傍で仕えていた侍女たちなど、愛しい家族を奪ったエリザベス皇后とセレイア皇妃に復讐すること、そして次こそ家族を守り抜くことを誓い、一歩を踏み出す。

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