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終礼が終わると、掃除を始める生徒、部活に行く生徒、速やかに帰宅する生徒、教室で友達と雑談をしてからのんびりと帰宅する生徒にそれぞれ分かれる。
掃除当番が帰った後の、人の少ない静かな放課後が私は好きだ。吹奏楽部の各生徒達による練習音が響き渡っているこの時間。渡り廊下を抜けた先、一つのガラスの戸を越えると、防音設備が施されているわけでもないのにオーボエの音もトランペットの音も耳に入らなくなる。
入学した当初から放課後の図書室通いは日課のようなものだ。図書委員と司書が座っている受付の横を通り過ぎて視聴覚コーナーの方へ足を進め、教えて貰った映画のタイトルを検索機に打ち込む。無ければレンタルしようという考えは杞憂に終わった。
場面に表示された棚の番号を記憶すれば、あとはそこから探すだけ。
(洋画コーナーの左から六番目の棚……あった!)
幾つも並んでいるDVDを一つずつ指で辿り、目的の一枚を探す。この作業が割と苦手で、つい見落としてしまうことは珍しくない。今日は運が良いようで、観たい映画は直ぐに見つかった。
この棚の近くにもパソコンはいくつもあるけれど、あえてそこは選ばない。CDやDVDの棚から遠い、周囲が本棚で固められている付近の机が利用者の少ないお気に入りの場所だからだ。何度もディスクを入れ替える音楽鑑賞が目的であれば不便な場所だけれど映画を観る場合はそうでもなく、人が背後を行き来することがない分、下校時刻まで気が散ることなく集中出来る。それも今だけだろうけど。
(視聴覚室になったら、ここも人が増えるのかな)