転生して帰って来た俺は 異世界で得た力を使って復讐する(全年齢)


 老害はとっとといなくなれ

 俺がああいうクソジジイ・クソババアどもに抱いている気持ちはそれしかねーよ。そもそも「老害」って何なんかって話やけど。

 俺の見解としては、老害とは自分勝手な人間をそのまま老人化させた奴。自分の快しか考えていない自己中思考で沸点が低い幼稚人間の類。自分さえ良ければ他の奴らにどれだけ迷惑が被ろうが知ったことではないとしやがる人間のクズ。

 後は...ああこれもや、古い慣習に拘ってる奴とか。「昔はこんなことしてても許された。だから今もやったって別に問題無い」とかほざいて違反行為をする身勝手どものことを指す。例としては、駅ホームで喫煙をするとかがそうや。

 あとこれも老害認定やな、座席を譲れとうるさい老害。妊婦に向かってそうほざくガイジを見たことあったわ。イカれてるとしか考えられへんわ。
 で、間違ってることを指摘するとあいつらは決まって逆上してくるってね。マジで国の秩序を乱す有害ども。公害より質の悪い国の膿やあいつらは。

 何よりも老害が老害たらしめている行為と言えば、路上喫煙やろうな。さっきも言ったが、ああいうクズどもは昔の慣習だったから別に問題あらへんっていう理由で、今はダメなことを平気でするんや。昭和以前の時代では路上喫煙は非常識ではないって認識やったから、平成半ば~令和時代になっても普通に歩きタバコしてやがるわ。

 俺は思うわ、世の中のマナー悪い人種は大半以上が高齢者やってこと。あいつら老害がマナー悪い素行をしていてルールを破るから、そういうのを見た勘違い馬鹿どもが真似をする。若者の路上喫煙とか騒音とか、元を辿れば老害が元凶だってことが言えるんとちゃうか?
 で、そんな老害どもにも、年金は給付されるんだって?
 国の秩序を乱す身勝手なクズどもが、何俺らの税金でのうのうと暮らしてるんだよ。

 ふざけんな。
  

 社会人時代の最後の復讐相手は...遅川どもを庇って俺をクビにしやがった当時の社長…杉浦俊哉だ。
 現在のあの清掃会社の社長は、奴の息子だそうだ。そいつとも仕事やったっけ、印象薄くて全く憶えてねーけど。

 遅川の家から瞬間移動して、先にかつて勤めていた会社...オネストメンテナンスのところに着く。
 若干建物の色が変わっていて、社用車が2台止まっている。今も少ない社員で仕事をしているようだな。
 中に侵入して見渡すと、やはり部屋の様相は変わっていた。道具が新しくなってたり、ロッカーが増えてたり、机が新しくなってたり...まあまあ変わっていた。

 「......ここに来ると余計に思い出してしまうな。当時感じたあの怒りを、憎しみを...!嫌なことしか思い出せねーよ...!」

 そして、感情のまま暴れて、この会社を粉々に破壊した。人に見つかって騒がれる前にその場から消えて、適当な建物の屋上へ移動する。

 「どう考えても遅川が悪かったのに、あいつを友達を庇って俺をクビにしやがった、杉浦…。そんなお前を赦せるわけがない。あんな理不尽を許容してる社会も同罪だ!!
 だから、杉浦を殺した後は、その社会も全部壊してやるよ。何もかもな...!」

 全部言葉に出すことで気持ちを落ち着かせたところで、再び移動を開始する――




 清掃会社オネストメンテナンスから約2キロ程離れたところにある一戸建ての家...杉浦宅。

 仕事を終えた現社長の嘉喜《よしき》(50)は、元社長の父俊哉(82)と母と3人暮らしをしている。

 「明日は...早いんだったな?何時に出るんだ?」
 「7時には会社から移動しないといけないから、その30分前には出ようと思ってる」
 「最近入ってきた子は、どんな様子だ?」
 「覚えが早くて、指示もすぐに聞いてきてくるし、しっかりした子だ。あれなら3人社員でもやっていけそうだ」
 「まったく......家の時くらいは仕事以外の話をしたらどうなんよ?嘉喜、休みは次いつなんだい?」
 「あー、休みは......」


 そうやって穏やかな家族間の雑談はしばらく続く......と思われた。


 「ドガァン!...ってな。俺参上!」
 

 目的の家に着いたと同時に中から聞こえてきたのは、聞くに堪えない家族団欒の雑談。
 ...ムカつくんだよ、俺を排除した奴がそうやって楽しく暮らしているというのがよ...!

 さっきの会社のように怒りに任せて玄関ドアを爆破して家に侵入した。三人とも突然の事態に固まったままでいた。


 「二十年以上ぶりでーす、社長...あ、今は元社長かぁ。遅川たけしのクソ老害と同様、今はそうやって余生を楽しく過ごしてるってわけか...。
 さぞ楽しいんだろうなぁ。社会人時代でつくった友達と遊んだり、家族とお気に入りのドラマを観たりとか。
 それはそれは...充実した老後生活をなさってますねぇ!?」


 俺の狂気じみた発言に、寝台に座っている杉浦元社長は眉をひそめて俺の顔をまじまじと見る。その目は“どこかで見た顔だ”...と言いたげだった。

 「......君は、以前僕と仕事したことがあった、かな?」
 「あったも何も、お前が社長だった頃に入社して、理不尽に解雇された男やろうがっ!!」
 「なん、だと...!?な、名前を聞かせてくれ...」
 「ハァ......杉山友聖だ」

 俺の名を聞いてしばらく思案した後、杉浦はまさかと目を見開いた。

 「そうか......たけし君と揉めて、そのせいで君を解雇してしまって...。ところで、これはいったいどういうつもりなんだ?」
 「へぇ?今までの奴らと違って割と冷静じゃねーか。意外と胆力あるじゃねーか?遅川…あのクソ老害とは違うぜ」
 
 いつもの様に標的を見下して煽って嘲笑うところから始めてやる。残りの二人は…ババアが電話を手にして通報するところ。 
 息子の方は......ほう、スタンガン持ってきたぞ!アレはドンキにも売ってた防犯用のスタンガンやな?

 「おい若いの...。親父に用があるみたいだが、これは不法侵入および器物損壊にあたるぞ。これで痛い目見る前に早くここから消えてもら......」
 「そんなもので俺をどうこうできると?やってみろよ、ほら。もたついてるとここでひと暴れしても良いんやで?」
 「く......正当防衛だ...!おおおっ!」

 挑発されたところで躊躇いを無くした息子社長が吠えながらスタンガンで俺を殴りつけてきた。それを片手で受け止める。同時にスタンガンから電流が流れる......が、俺には全く効いてない。
 異世界でたくさんの炎・雷などをくらってきた俺に、現代世界の...それもこんな非殺傷道具なんかが効くわけがない!
 作動中のスタンガンを力いっぱい握って粉々に砕いてやる。

 「は...?ばか、な!?」

 よほど衝撃的だったらしく、息子社長は間抜け面を晒して壊れたスタンガンを見つめる。それを雑に吹き飛ばして、杉浦の前に立つ。

 「さて、俺が何でここに来たのか...今さら何の用かについて途中やったな?
 復讐や。あのクソ老害を庇って俺の収入源を潰しやがったお前に対する、な...!」

 殺気を飛ばしながら低い声でそう告げる。

 「復讐...。そう、か......君は僕に恨みがあってここに。さっきたけし君の名前を出してたけど、まさか君は...!?」
 「ああ。少し前に奴の家に押し入ってぶち殺してきたところや。ヤニカスで幼稚な精神でクソ自分勝手思考の老害のアイツは死んで当然のゴミだったからな。いや~~、実の孫二人に“死ね”って言われたときの奴の面と言ったら……ぷぷ、ははははははははは...!!」
 「......」
 「お前さァ、よくあんなのと友達でいられたな?あいつは人前で喫煙するような勝手過ぎるクズだってのに。友達選び失敗にも程があるやろ、ええ!?」

 「...たけし君は、そんな男じゃない......と言っても、君の中でのたけし君はどう足掻いてもそういう評価になるんだろうね...。そう決めつけている以上は僕がどう反論しても無駄というわけか」
 「まだ遅川のことを“誰かを貶めるようなことはしない男”だと思ってたのかよ。下らねー。
 まぁそういうわけで、お前も復讐対象にしてるから...とっととぶち殺されろや」


 そう告げると俺の手からサバイバルナイフが出現し、それを武器として襲う仕草を全員に見せつける。まだ電話がかからずにいて混乱しているババアがそれを目にしてさらにパ二クり出すが無視する。
 未だ寝台から動かないでいる杉浦は、ナイフを向けられてもなお騒ぐことはせず、ただ俺に哀れみの目を向けてきやがった...!


 「は...?何だその目は?遅川は死にたくないだのと喚いてたのに、お前はこの期に及んでまだ落ち着いてられるのかよ?」
 「たけし君を、殺したのか......その様子だと殺したのはたけし君だけじゃないな?何人、いや何十人も殺してきている...」
 「ああその通りだ。説田も池谷も殺した。これはお前には関係無いことだが、学校で俺を虐めた連中や前の会社で遅川と同じように俺を排除した連中も殺してきた!俺を虐げて除け者にして排除した奴らは全員この手でぶち殺してやったぞ!!!」

 少し熱くなって全部話してしまった。相手が冷静過ぎるからか、俺は今まででいちばんムキになってる気がする。もういいだろう、後はコイツを滅多刺しにして終いだ...。


 「君を、そうさせてしまったのは......僕やたけし君、そして僕ら世代の大人たち、君を虐めた子らを放任してきた親世代......なんだろうな。僕も無自覚に君を傷つけてしまっていたのか...」
 「さっきから何が言いたい?ベラベラ語りやがって...」


 すると杉浦は布団から出てきて、その場で土下座しやがった...!


 「...!?」

 「すまなかった。君をそうさせてしまったのは、僕のせいでもある。あの時君の言う通り、たけし君にも何かしらの罰を下すべきだった。
 君が言っていたことを真に受けなかった僕の責任だ...!」

 今までに無い展開に俺はしばし絶句してしまう。が、すぐに我に返って怒りをぶつける。

 「——今さら何だ!?お前今さらそんなこと言うてるけどなぁ、お前ら社会にとってはそれが当たり前だったんだろ!
 仲良い奴が悪い事をしました、大して仲が良いわけじゃない被害者がそれを訴えました!すると誰もが前者を方を庇って、後者を容赦無く切り捨てるんだ!
 人間、仲が良い奴ばかり贔屓しやがる。悪い事をしたそいつを庇って、被害者の方はどうでもいいと片付ける、泣き寝入りさせやがる!かつてお前が俺にしたように!!

 ―—それがお前らの世代が創り上げた、クソッタレな社会ってやつなんだろうがっ!!!」
 
 いっぺんに叫んで、息を荒げてしまう。

 「......そうなのかもしれないな。それを当たり前にしてるのが今の社会なのかもしれない。それによる被害をいちばん受けてきたのが、君だってことを理解したつもりだ」

 「あっそ。理解したからと言って俺がこのまま退くと思うな?お前はここで殺す。それで復讐は成し遂げられる...穏やかな老衰からの安楽死は諦めろ、苦しんで死ね」
 「そうか...。僕を殺す、か...」

 杉浦は尚も騒ぎだり喚いたりはせず、ただその事実を受け入れた様子でいる。あまりにも拍子抜けする展開になったが、もう気にすることはしない。いざ復讐を執行しようと歩を進めたその時、また杉浦が話しかけてきた。


 「最後に......妻と息子は見逃して欲しい。殺すなら僕だけにして欲しい...。頼む――」

 「黙れ死ね」

 ドスッ!ブシュウウ!!グサッ、グサッ、ザクゥ...!

 そんなの知るか…と答える代わりに、俺は無慈悲にナイフで杉浦を滅多刺しにした。
 血の噴水を上げて、肉と骨が斬れて、杉浦俊哉という人間をあっという間に破壊して殺した...!

 「あ、あああああああああ......!!」

 その一部始終を見ていたババアが恐怖と絶望でへたり込むのを一瞥してから、部屋にオイルを撒いて火をつけた。そして大岩を窓と玄関ドアの前に生成させてから天井を破って出て行った。俺と同じように天井から出ない限りは、家に閉じ込められたまま炎に焼かれて死ぬだけだ。

 「お前が言った通り、二人には直接何もしないでおいたぞ?後は二人で何とかしろってんだ」



 そう吐き捨てて俺は帰宅した。これで...社会人時代での復讐対象は全員消した。最後は何か、違う終わり方だったがまぁいい。殺せたんだから納得するしかねーよ。

 「ハァ...なんかたりー。しばらく寝るか」

 帰り途中で手軽に食える物を適当に買い込んで、飲み食いしてからすぐベッドへ向かって横になった。


 だが、ベッドに入って数分後微睡んできたところで......


 『(バイクか何かの騒音)』

 「.........うるせぇな」

 魔術で防音と防振動を施しておくのを忘れていたせいで外の音がモロに聞こえるようになってるのを失念していた。そのせいで今しがた通路を通りがかったバイクか車の比較的うるさい音が聞こえてしまった。

 この部屋は安アパートなので隣部屋と外の音がけっこう聞こえてしまう。生前のここでの生活も...以前殺した瀬藤は言うまでもなく、他には今みたいな外の騒音をよく拾ってしまい、それはそれは不快極まりない日々だった。
 無職引きこもりになってずっと部屋にいるようになると、より多くの騒音を拾う羽目になってしまった。

 日中の騒音バイク・車の通過音は仕方ないと、業腹だが割り切ることにしたけど……夜時間になるとそうも言ってられないだろ…!
 今みたいなバイクの無駄にうるさい音とか、集団でデカい声出して道歩くイキりあるいはウェイの連中とかには、凄く殺意が湧く。凄く不愉快だ。

 極めつけは、今みたいにこれからさぁ寝ようってところで聞かされる騒音だ。マジで頭にくるやつ。いつも騒音出すそいつをぶち殺してやろうって思ったけど、当時にそんな力は無かったから、結局泣き寝入りするばかり……。

 けど、今は違う。
 俺には人を簡単に殺す力がある...。
 たとえ今騒音鳴らして通過していったカス運転手をも殺せる術を持っている!

 「...というわけだから、殺します」

 “追尾爆殺弾”

 小型ミサイルを創り出し、それに追尾性能をつけて飛ばす。

 “標的はさっきここをうるさい音出して通過しやがったクソ人間だ”

 そんな雑な命令でも俺の武器はきちんと任務を全うしてくれた。10秒もしないうちに爆発音が遠くから響いてきた。

 「夜中に騒音出して住人を不快にさせるような人間も、世の中には必要無いよね?そんな害虫野郎を速やかに駆除した俺の行いは正しい...。やり方なんて知るか。俺が良ければそれで良い。死んで当然のゴミだ」

 念願の「騒音出す奴を駆除する」ということを為せて満足した俺は、しっかり防音結界を張って今度こそ就寝した。

 (いずれはああいう人間と乗り物もこの世から消してしまおう...必ず) 




 「ダメです...。杉山が利用していたとされる店の周辺の住宅地と賃貸会社を全て回ってみましたが、彼が住んでいるという情報は全く掴めませんでした」
 「周辺の宿とかホテルにも行ってみたが、これらにも奴が利用した履歴は確認できひんかった...。となると奴は野宿して過ごしてた言うんか。その割には身なりはきちんとしとったって確認できたしなぁ...何のこっちゃなんやらホンマ...」

 こんな調子で、杉山友聖の捜索を担当している刑事たちは捜索に困難を極めている始末であった。彼らの捜索はどれも的を射ているものであり普通ならすぐに標的の尻尾を掴めるレベルではあるのだが、相手が現代には存在しない魔術を駆使して彼らの目から逃れているとは知る由もない。完全に相手が悪過ぎなのだが、その事実を未だ気付けないでいる刑事らは頭を抱える一方だった。

 その翌日、彼らは新たな殺人事件を耳にした。東大阪市にある宅急便営業所での惨殺事件と大東市にある引越センターの建物破壊および従業員多数殺害事件とのこと。
 何故これらの会社が被害に遭ったのかについてだが、担当刑事らはすぐにその答えにたどり着くことが出来た。

 杉山の親によると、彼はかつてその二つの会社で勤めていたことがあったのだ。おそらくそれぞれの勤務先で何らかの殺人動機を持ったことから今回の事件が起きたのだと推測された。
 
 「恐らく彼は自身が通っていた学校と、かつて勤めていた先の職場の人間を殺して回っていると考えられますね。となると...彼が通っていた学校・勤めていた会社の人たちの住宅地域で待ち伏せをしていれば、彼を押さえられるのでは...!」
 「だとするなら......おい、奴の遺体が発見された場所はどこだった?」
 「二十年前の報道によると、北の方...山形県になりますね」
 「なら......次はそこに当たるぞ」

 彼らの追跡は、徐々に標的に近づいてきている。



 家族との仲が悪くなり始めたのは、中学で虐めに遭ってから1~2年経った頃だったか。
 
 中学生になってから本格的に虐められるようになり、学校側の大人どもに訴えても取り付く島もない反応に終わるばかり(たぶんクズ展開特有の、学校の体裁に障るとか何かで虐めの件を揉み消そうって魂胆だったんだろうよ)で。
 残った相談先はやはり家族だというわけで母に相談したのだが......


 「そう言ってホンマは友聖もクラスメイトに乱暴してるんやろ?小学校の時もそうやったよな?クラスメイトの男子何人かに怪我させて、母さんその子らの親に謝りに行ったんやから」
 「あ...あの時はあいつらも俺にけっこう暴力振るってきたやろうが!覚えてるはずや!俺もいくつか傷を負ってて、それで向こうも痛み分けってことで手打ちになったんや。けど今回は俺がほぼ一方的にやられた!見ろよこの傷を!あちこちに打撲痕もあって痣もある!明らかに虐めや!」
 「その割には顔は無事やんか。それにほぼってことは友聖もクラスメイトの子らを傷つけたんとちゃうん?そんなんやからみんなから攻撃されるのよ?」
 「顔に傷が無いのはあいつ等が狡猾に虐めを隠す為だ!それに、俺から傷つけたことなんて一度もねーよ!いつも、いつもあいつ等から攻撃してきてんだよ...!」
 「だったら友聖もやり返そうなんて考えず、暴力に暴力で対抗することを止めるべきやろ?それで学校の先生らにきちんと事情を説明して、そういうこと起きないようにしたらええやんか。
 それよりもさっきから親に対してその口の利き方はアカンよ」
 「―――――」


 話にならなかった。

 というか、冗談だろ?って思ったわ。学校じゃ誰も当てになる奴がいないから親に相談しに来たのに......結果がコレかよ。
 俺の体の傷を見ても全くどうにかしようって気を起こさず、それどころか俺に非があるから攻撃されるだのと非難して、口の利き方を注意して終わりやがった。

 自分の子どもが痛ましい姿をしてることには全く触れようとしないとか、親として終わってんだろ。
 父親と離婚してからずっと母に育てられてきたが、俺はこの母から愛情を受けたことは無かった。ただ惰性で育成してきたってことがよく伝わった。だからあの時の虐めに対してもほぼ無関心だったんだろうよ。

 相談した日をさかいに、俺は家族をも嫌悪するようになった。家族にはもう一人、姉がいたのだか、そいつも俺にとって糞な存在だった。
 虐めのせいで成績がダメになっていく一方で、難関高校に受かってそこで優秀な成績を修めている姉だったが、ムカつくことにあいつ事あるごとに俺を見下してきた。
 直接口に出してくることはしなかったが、いつも侮蔑を込めた目で俺を見やがる。
 母も出来の良い姉を贔屓しがちで、落ちこぼれと化した俺に全く気をかけることはしなかった。

 時が流れ、高校卒業後は地元近くでアルバイトを始めるが、クソッタレな事情で2つとも辞める。そんな俺を見た家族二人は......


 「アルバイト辞めた理由が人間関係って...。上手く付き合えない自分に問題があるからやないの?そんままやと社会のクズになるで。あー、もうなりかけてるんか。大学すら進学できないくらいやもんな」

 俺をひたすら見下して侮蔑するクソ姉。

 「前もバイト辞めた理由が相手に問題あるか何とかでってやったよね?今回もそんな理由で辞めちゃったの?なぁもう少し堪えるって能力を身に付けなアカンよ?ただでさえ大卒でも厳しい世の中やのに、友聖そんなんじゃ生きてられへんよ?」

 なんかそれっぽいこと言ってる割に全くこちらを心配する気配が無いクソ母。


 ああこの時期だったか。俺が家族に当たるようになったのは。
 でも仕方ねーだろ。マジで誰一人として俺の味方になってくれる奴はいなかったんやから。
 悩み相談所?労基?ハッ、あの連中だって結局は赤の他人相手に本気で支えようってなんて思ってねーよ。事実それらに相談しに行ってもこの俺がいる始末なんやから。

 そういうわけで、俺は二人に罵声を浴びせるわ、物を投げるわ、家具を投げるわで、かなり荒れた。で、その結果が......


 「友聖!!お前という奴は、人として最低のことをしてる自覚が無いのか!?お前は身内の恥だっ!!」

 ドガッッ「ぐあ...!」

 俺が荒れるようになってしばらく後、母が助けてほしいと連絡をよこしたことで埼玉から突然割り込んできた俺の叔父にあたる男…平塚大輔《ひらつかだいすけ》は、俺を怒鳴りつけると顔をぶん殴りやがった。

 「お前、最近家族だけじゃなく近所の人にも暴言吐いたりドアを蹴ったりしたそうだな!?その年で家庭内暴力とは何事だ!?」

 「るせーよ...。中学・高校と散々見下されて、味方もしてくれなかったこのクソ家族に対して、今までよく堪えた方だろうが!
 近所の家のドアを蹴ったのは……俺が通る度にクソ犬がぎゃんぎゃん吠えてきたからや!飼い主に注意しても全く改善しやがらないもんやから、分かりやすい形で教えてやったんや!俺がどんだけ迷惑被ってるかを!!」

 マンションの管理人に苦情を言えば済む問題だった。だけど当時の俺はそんな思考が浮かばない程に病み荒んでいた。
 つーかちゃんと躾をしなかったあの飼い主が明らかに悪い!そして俺に対して喧嘩売るようにうるさく吠えてくるあのクソ犬もな!マジで殺してやりたいと思った。

 「口の利き方もなんだそれは!これ以上その腐った性根を直さないつもりならここを出て行ってもらおうか!これ以上家族と近所に危害と迷惑をかけさせるわけにはいかないからな」
 「ちょっと待て!なんでアンタが勝手に決めてんだ!?ふざけんな!無関係の人間がしゃしゃり出んな!!」
 「無関係なことあるか!自分の親...俺にとっては妹の洋子(母の名前)に乱暴するような奴はクズだ!
 それに...このままこの家に居座るっていうのならお前を今すぐに警察に突き出すぞ。家庭内暴力および近所のドアを蹴って傷をつけたことによる器物損壊でお前は確実に前科がつくぞ。
 お前はまだ若い。これからの人生に瑕をつけたくないのならここから出て行け!!」

 「.........クソが。クソがクソがクソがクソがクソがクソがクソが...!
 分かったわ出て行ったるわ。俺の虐め問題や人間関係の悩みについてまともに向き合ってくれねーようなクソ家族なんかと一緒に暮らしてられるか!
 もう無理だ!我慢の限界だわ!望み通り、出て行ってやらぁ!!」


 母も結局はクズだ。あのクソ叔父がいなければこうやって俺に言いたいこと言えないでいる。面と向かって出て行けだの何だのすら言えないでいる。
 俺はこんな弱くてクズな母のもとで育ってきたのか......こんな奴味方じゃねー。

 だが何よりも腹が立ったのは、俺の事情をロクに知ろうとしないであれこれ詰って非難して悪者扱いして挙句勝手に勘当させたあのクソ叔父だ...!
 俺の虐げられ事情とか家族間の問題とか近所トラブルとか何の関係も無い野郎が、何しゃしゃり出てきて俺を排除してるわけ?
 妹に助け求められたから?せやな、一応道理は少しは通るやろうな。

 けどそんなもの、俺には関係ない話だ!!
 お前もそうか、俺の敵として俺を排除するわけかい。
 ああそうかよちくしょう。この世の中はホンマ、俺に味方してくれる奴はおらんのな?
 家族親戚でさえこれかよ......もうなんかここまでくると笑うしかねーわマジで。

 こんな親から生まれてしまった運命を酷く恨み憎み、呪った日だった...。


 「ここか......家は少し年季が入ってるか?」

 埼玉県入間市のとある住宅街。ここが次の…いや、最後の復讐対象がいるところだ。
 目の前にある表札には“平塚”と書かれている。

 そう、これから最後の復讐を決行するのだ。
 これから復讐する奴の、当時の年齢は50半ばだったから、今は70後半ってところか。病気になってなければまだ意識は明瞭であるはずの時期だろうな。

 幸いにも標的は元気らしい。少し前に肝臓に腫瘍があったと情報が出たが今は普通らしい。まぁ相手は高齢のジジイだ。うっかり本気出すとすぐに殺してしまうからな。
 早速、最後の復讐をはじめよう!

 「というわけでお邪魔ー!」

 例の如く無遠慮無礼にドアを破壊して堂々と住居侵入。呑気にリビングでくつろいでいた老夫婦の顔が瞬時に凍りついた。

 「ははは、二十年も経つとやっぱすげー老けてるなァ。久しぶりだな...クソ叔父、いきなりで悪いが今日がお前の命日、だっ!!」

 ――ドゴッ「ぐぎゃ!?」

 一方的に挨拶をした後、瞬時に標的...平塚大輔の顔面に拳を入れた。

 「あの時...俺を思い切りぶん殴ってくれたよな?まずはあれの仕返しをさせてもらうで」

 床に叩きつけられるように殴られて、何が起きたのか分からないでいる様子の平塚を俺はゴミを見る目で見下す。そんな俺に緊張した声で話しかけてくるババアが。

 「あなたは......もしかして、友聖《ゆう》君?」
 「ああ、その呼び方、小学生の頃以来だなァ、玲子おばさん」

 白髪のやや痩せた老婆...平塚玲子に昏い笑みを浮かべた顔で返事をする。このババア(当時はおばさん)と最後に会ったのは小6だったっけ。

 「やっぱり...!遺影写真とそっくりだったから......それに最近警察からあなただのことで調査が来たからまさかって思ってたけど......それよりも、どうしてこんな...!?」

 ...ちょっと待て、警察が俺を調べてる?ああそうか、俺が残してしまった痕跡で俺のことがバレてたのか。いつかは足がつくと思ってたが、もうその段階にまできてたか...。
 まぁ俺にとっては何の不都合もないからどうでもいいが。

 「まぁ見ての通り、このクソ叔父には恨みがあって。その復讐に来た所存でしてー」

 そう返事しながら平塚を宙に浮かび上げて奴に憎悪の目を向ける。

 「ぐ...ぐが.........お前、は......友聖...!?」
 「そうだっつってんだろ。まぁ驚くのも無理ないか。俺は実際死んでたわけだし。まぁ色々あって転生してここに帰ってきたんで、俺を虐げて排除しやがったゴミクズどもに復讐して回ってたんだわ。
 で、お前もその対象なのでこうして痛めつけられてるわけ。じゃあ早速――」

 「な、何だこれは...!?」
 
 いざ楽しい処刑タイムに移ろうとしたその時、リビングに第三者が入ってきた......いや、この家の本当の家主が帰ってきたが正しいか。

 「ああ、太樹!大変なことにっ!昔とっくに亡くなったはずのゆう君が生き返って、それでお父さんをいきなり痛めつけて......」

 この二人の三男息子である平塚太樹(47)は、自分の母の狼狽混じった説明に困惑しつつも俺と宙で磔になっている平塚を交互に見て顔を険しくさせる。

 「君は...何なんだ?冗談にしては度が過ぎているな。馬鹿な真似は止めてすぐにここから出て行け!!」
 「そういうわけにはいかないんですよー。このクソ叔父には十分な苦痛を与えてから殺すって決めてるから。それが済んだらすぐに出て行ってやるよ。お前らには特に何もされてはなかったから何の憎悪も無いしな」

 太樹がものすごい剣幕で睨んできても嘲笑いながら軽い口調でそう返して、平塚の拘束をさらに強める。まずは手足を潰そう。気圧を操って奴の手足を一瞬で砕いた。

 「がぁああああああっ!!」

 「お父さんっ!!」
 「おい止すんだっ!!父さんがお前に何をしたって言うんだ!?それにお前は誰だ!?」
 「ああ?さっきそこの玲子...今はババアか。玲子婆さんが俺のこと呼んでたろうが。“ゆう君”って。お前もお互いガキの頃は俺をそう呼んでたよな?」
 「ゆう、君............まさか、友聖君か...!?」
 
 返事の代わりに悪い笑みを浮かべてみせる。

 「そんなはずは......君は二十年以上も前に自宅で遺体として発見されて...葬式も挙げて、納骨も済ませて...!」
 「へぇ!?ご丁寧に俺の葬式を?どいつもこいつもあれだけ俺を侮蔑して無関心でいて、排除した連中が俺の葬式をぉ!?
 はっはっはっはっは!!マジで笑える!何だソレ!?お前ら何がしたいわけ!?勘当して赤の他人にしておいて、その赤の他人をわざわざ弔って供養するって......意味分かんねーんだよボケえええええええええええ!!!」

 「あ”、あ”あ”あ”っ!!」

 思わず情緒不安定になって加減をミスって、奴の骨を何本か折ってしまった。喀血して苦しげに声を上げる様は愉快だが。

 「止めてくれっ!!さっきからどうして父さんをそんな目に...!君にいったい何をしたというんだ!?」
 「あー説明すんのもめんどい。ほら、こういう経緯だ」

 軽く愚痴りながら太樹の頭に雑に手をおいて俺の記憶を流し込んでざっと状況を理解させる。

 「ぐ.........そん、なことが...!君は、学校で虐めを受けて!?知らなかった...」

 「まぁ俺らが最後に顔を合わせたのは小6の頃だったからなぁ。あれ以降の俺の人生は“地獄”と言っていいものだった。
 お前は良いよなぁ?良き友に恵まれ、学業がイマイチでも横の広いつながりと世渡りが上手さで給料と環境が良い会社に入って、素敵な女と結婚して家庭を築いて...。会社では上からも同期からも下からにも慕われて超リア充している。
 ハハハ、なんだその勝ち組人生は!?あの頃の俺の境遇と比較すれば天と地の差そのものじゃねーか!」

 「そ、それで......父さんを、殺そうと!?そんなこと、止めるべきだ!確かに父さんにも行き過ぎたところはあったのかもしれない。
 勘当なんてことは、“逃げ”と同じことだ...。君のお母さんやお姉さんにも問題はあったのかもしれない。だがそれでも!こんなことは間違いだってことは、君も分かってるはずだ!!辛かったと思う。赦せないんだと思う。でも分かってくれ!君が死んだと知った洋子さんが、どれだけ悲しんでいたかを!!あの人は君のことを何とも思ってないことはなかったってことを...!!」

 必死な、マジな形相で俺に説得する太樹を、俺は鼻で嗤った。

 「あのクソ母が俺の死を悼み、悲しんでた…だ?何かしらは思っていた…だ?おかしいなァ、じゃああの時勘当に賛成するなんてこと、無いはずだったよなぁ?
 大方お前らのお通夜雰囲気に流されて泣いてただけやないのか?あの二人はあの時から俺に対して完全に家族を見る目じゃなかったからな。
 当の本人である俺が言うのだから違いねーんだよっ!」

 ミシメシ...!「がっ、ぎゃあ...!」

 「止めて...ゆう君もう止めて...!」
 「そんなはずは、無い...!分かってくれ!もう父さんを解放してくれっ!!」

 「太樹君、俺に言ったよな?“こんなことは間違いだ”ってことは...。だよなぁ?理由はどうあれ家族や親族をこんな風に痛めつけるのは人として間違ってるよなァ」

 「そうだ、その通りだ!やっぱり君も本当は分かって――「で・も・なァ!!」――え...?」

 太樹は思わず俺への説得を中断してしまった。正確には俺が奴の言葉を遮った、か。

 「“感情”が赦さねー限りは!俺は止めたりはしねー!!コレが、俺にとって最適手で!俺にとって正しい行いで!俺にとって正義そのものだから!!」
 「な......友聖君、何を.........」

 間違ってることを間違いだってこと、悪いことを悪いって分かっている。分かっているのにそれでもその手を止めない奴は......そいつは、自分で“自分が正しい”ってことを信じられているから。

 自分が今やっていることは、嘘偽り無く自分の為だけの正義だ。
 それを完全に認知して容認して信じているから、どんな外道で悪辣非道な行いも平気で為せるんだ!

 だから俺は何の躊躇いも無くあいつらを残酷に処刑できた...!
 “正義”ってのは人それぞれにある。俺の正義は......


 ―――俺を攻撃する人間・排除しようとする人間・不快にさせる人間 それら全てをこの世から消すことだ!!!


 「俺は自分が良いと思ったらその通りに動く。俺が信じる正義の為なら人だって殺してやる。
 いや、もうとっくにそうしている。ここに来るまで俺は何十人も殺してきた。何人もを復讐して、殺してきた。
 そしてこのクソ叔父が最後の復讐対象だ。コイツを処刑して、ひとまず終わりだ」

 そう言ってから磔にしている平塚に闇魔術をかける。コイツを直接痛めつけるのはもう飽きた。後はテキトーに苦しめて終わりだ。じわじわ死という終わりへの恐怖に震えるといい!!

 「う......う”ごあ”あ”あ”っ!!い、痛い!全身が焼けるようにいだい”...!!」

 あっという間に全身が赤紫に変色し、細胞が壊死していくことで、平塚は地獄を体験している。喉が裂けんばかりに声を上げて足掻く様は痛快だ。

 「父さんっ!友聖君、いい加減にしてくれ!!こんなことしても自分を貶めるだけだ!!止めてくれ......俺の家族を殺さないでくれっ!!」

 太樹が俺を押さえようとこちらに向かってくる。俺をどうこうしても魔術は止められねーってのに。とりあえず適当に壁際まで転がしておいた。

 「ぐううう......おい、ゆうせ、い...」
 「あ?何ですか?」

 苦しみの声を上げながらどうにか俺を呼ぶ。何か言いたそうだ。ほらほら頑張って声張らないとここまで届かねーぞ。

 「お前には...すまないことを、した...。友聖が抱えていた深刻な事情をロクに知ろうともせずに、お前を勘当させたこと...。
 お前がいなくなってから、洋子からお前が虐められていたことを相談されたってことを、聞いた。
 あの時洋子の報告を聞いた俺、は...友聖が本当に酷い虐めに遭っていたのではと、予感していた...ぐあああ!!」

 「ああ...理不尽な虐めを受けていたのは事実や。ついで言うと大阪で勤めていた2つの会社から不当な扱いを受けて理不尽に解雇されたのも事実や」

 手足が赤黒く変色して他の箇所からも血が出始めて苦しそうに藻掻く平塚の言葉に適当に返事する。つーかコイツも、まさかの第一声が謝罪とはな。

 「やっぱり...そう、か――がふっ!友聖が本気で苦しんでいたのに、洋子や佳奈子(姉の名前)、そして俺も助けようとしなかった...。それどころか...ぐふぉ!......それどころ、か...心を病んでいただろうお前を、事情を聞かずに勘当させたこと、俺が間違っていた...すまなかった...!
 俺のせいで.....お前を取り返しのつかないレベルの救えない犯罪者にまで堕としてしまった...!」

 「俺がもう救えないレベルの犯罪者に墜ちた、ねぇ......言い当て妙やないか。お前ら社会で生きているクソ人間どもからは俺はそういうカテゴリーに分類されるようやなァ。
 別に否定しねーよ。俺がどれだけエグい奴になってるかなんて、最初から自覚してるからよォ。まぁ心の拠り所になろうとしなかったお前らクソ身内のせいで俺がこうなったってのも...確かかもなァ。
 お前らはあの日俺を......捨てたんやからなァ...!!」

 さらに血がたくさん出てくる。体力と感覚が無くなってきたのか、もう苦悶の声すら上げなくなった平塚に改めて憎悪の念をとばす。
 対するクソ叔父は......さっき殺したあの元清掃社長と同じように俺を哀れむような目で見てきやがった...!

 「......何やその目はよォ?墜ちるとこまで墜ちた俺を蔑んでんのか?だったら残り僅かの時間内で、そうやって俺を見下してるがええわ!!それでお前の気が済むんならなァ!どれだけ俺を見下しても、今のお前はただの無力な負け犬やけどなァ――ぁはははははははははははははっ!!」

 俺の嘲笑を受けても、尚も俺をただ見つめるだけのクソ叔父は、やがて再び口を開いた。

 「玲子、太樹。駿に隼人。そして、洋子...。すまない。俺が間違ったせいで、友聖をこんな凶悪人に変えてしまった...。俺がきちんと向き合ってあげていれば......こ、ん......な...こ......とに、は.........」

 焦点が合わなくなった目をどこかに向けながら、自分の家族に謝罪の言葉を零した。因みに駿と隼人というのはコイツの息子、太樹の兄どもだ。

 「ははは!それは残念やったな!!お前が間違えたことをしたせいで俺にこんなに憎まれて、地獄の苦痛を味わいながら死ぬんやから。
 ――お前はホンマに、愚かやったなァ」

 最後に冷たく罵った直後、平塚大輔への復讐を完遂した。

 「あ、ああああああ、あ......」
 「う、そだろ......」

 無惨に死んだクソ叔父を二人は呆然と見ることしかできないでいる。そんな状態をしばらく続くかと思ったら太樹が掠れた声を出した。

 「なぁ。昔はよく二人で、父さんからサッカー教えてもらったよな。友聖君も、夏休みや冬休みは俺たちと一緒に遊んだよな。俺たちは、仲良くできたはずだった...」
 「ふーん。ああ、そんなことあったなー。まぁどれも小学生時代のことやったけどな」
 「君は...!俺の父さんを、君にとっては叔父をこんな残酷に殺して、何とも思わないのか!?しかも復讐動機が、あんなことで――「はぁ??」――っ」

 太樹の言葉に一部聞き捨てならないところがあったから反応してしまった。

 「《《あんなこと》》、やと...?ああそうだよな。お前にとってはあの出来事は所詮“あんなこと”やろうな。些細で小さな、あるいは下らない理由として捉えてるんやろうな...。順風満帆な人生を送り立派にリア充しかしてこなかった勝ち組君にとっては、負け組底辺だった奴の気持ちなんか毛ほども理解できない。いや理解しようともしない!だからそういう言葉しか出てこねーんだよなぁ!?」

 「ぐ、ぅ......い、まはそんなことを言ってない!!君は、自分の叔父を…身内を殺したんだぞ!?それも平然と!
 勘当されたことは確かに堪えがたいことだったかもしれないが......叔父を、殺すことなのか......」

 「はぁ~~語るに落ちてるって気付かねーかなぁ。もういいや。
 ところで“何とも思わないのか”って訊いたな?
 思わないわけないやろうが」

 その一言に太樹は反応して俺に顔を向ける。だが俺は、奴が期待するような言葉を紡がない...!

 「最っっっ高に清々してるよ!!マジざまぁって気持ちだ!!よくも俺を排除しやがったなって気持ちをぶつけた結果がコレだ!!
 “気持ちが良い”。短くまとめるならこの言葉に尽きるね!」

 歪んだ笑顔で声高にそう告げた俺を、太樹も玲子おばさんも化け物を見るような目を向けてくる。悲哀、若干の憎悪などがない交ぜになった様子でいるが、何よりも勝っている感情は、未知なる化け物に対する生理的恐怖って言ったところか。
 その対象が、今の俺やゆーことやな、ククク...。

 「.........もう、壊れてしまったのか君は...。何もかも手遅れだったというわけ、か...」
 「はっはっはー、せやな。俺は壊れた。けどな、俺をそうさせたのはお前ら社会と世の中そのものや。
 この言葉理解できるか?まぁお前ら如きには一生分かんねーやろうな。少なくとも俺と同じ目線に立とうとしない限りは“俺”を理解することなんて不可能や...」

 もはや抜け殻同然と化した二人を、殺す価値無しと決めて背を向ける。

 「最後に、お前の兄二人...駿君と隼人君によろしく言っといてなー。まぁもう二度と関わること無いやろーけど。じゃあなー」

 軽い口調でそう吐き捨てて、俺は平塚宅から去った。いつの間にか外は雨が降っていた。


 ―――復讐は全て終わった。俺の心は救われた...浄化された!

 すごく、すごく気持ちが良い...最高だ。
 自分を理不尽に虐げたゴミクズども、少し気に入らないからってハブにして理不尽に排除しやがったクソカスども全てを、この世から消し去ることができたのだから。
 転生する前の自分には想像もつかなった未来だったろうな。

 復讐し、殺したいとは思っていた。だけどそれをするだけの力が無かった。だから泣き寝入りするしかできなかった。

 それがどうだ、今俺はこうして、自分の敵全てを残酷に殺してみせた!ずっと妄想してたことが実現した!
 これを喜ばずにはいられるかよ!


 「――ぁはははははは!あーーーーーっはははははははははは...!!」


 雨の中帰っている間の俺は、ずっと笑い続けていた―――





*第一部の復讐回はこれにて終了。あともう少し短編ストーリーを入れて第一部は終わります。
ネタバレ予告:主人公がさらに理不尽化します。

粛清編


  あの後、復讐対象の平塚大輔(クソ叔父)以外は殺さずにしておいた。誰一人として俺にヘイトを溜めさせていなかったし、どうでもいい連中だし。

 いつもの瞬間移動で山形の拠点にひとまず戻......ったまでは良いのだが…


 「ん...?」

 アパートの前にパトカーが数台停まっておりアパート内も少し騒がしい。住人も戸惑いの顔を浮かべて警察の行動を見ている。
 奴らを検索してみると、大半が地元の警察署から来た刑事と警官だが、そのうち二人の刑事は山形警察の人間ではないようだった。

 「大阪府の刑事?何でわざわざ北国のここに、それも俺がいるアパートに......いや、ああそうか...!」

 考えてみれば簡単なことだった。俺が復讐で暴れ回ったことで発生した事件を辿れば、俺のところに辿り着いたってわけだ。いくつもの殺害現場から僅かに残った手がかりを集めれば、まぁ犯人が俺だってこと気付くわな。
 それにスーパーや色んなところの監視カメラに対してちゃんと姿を隠さないで行動していたものだったから、バレるわな。

 で、大方俺の出生と経歴を全て調べ上げて結果、ここに辿り着いた…ってことか。最近はここでも復讐活動したから、この地域が俺の拠点だって確信したのだろうなぁ。
 
 (ほ~~、こういう犯人の捜索レベルってフィクションドラマの中ばかりやと思ってたけど、現実でもここまで嗅ぎつけられるのかぁ。日本の警察も、無駄な部分では優秀なんだな...)

 こういった犯人特定・捜索スキルはとても優れていて有能なのに、肝心の“予防スキル”とやらは底辺ゴミレベルやもんな、警察って。

 だってそうだろ?あいつらはいつも“事件”が起きてからしか動けねーもんな。未然に防ぐという能力は未だ皆無じゃねーか。
 俺が進行形で虐められててもあいつらは動かない。傍観者同然の姿勢を取るだけだ。

 虐めは犯罪だとか抜かしておいて、その犯罪行為を未然に防いでみせたことは果たしてあったのか?ストーカー被害に対する護衛もしてくれない、マスゴミのプライバシー侵害レベルの取材への対処もロクにしようともしない。
 交通についてもそう。交通マナーの取り締まりがザル過ぎて、簡単に事故死を許してしまう。
 これのどこが、国民の安全を守ってますなんて言えるのか。

 お前ら警察は“全”の治安秩序にしか目を向けることをせず、“個”の人権・平穏・治安などには毛ほども対応しない。歯牙にもかけていない。
 だから虐めで人が死ぬんだ。だからストーカーに殺されたりするんだ。だから労働環境が底辺の会社も出てくるんだ。

 俺は警察という組織が堪らなく不快だ。簡単な理由、俺を救ってくれなかったからだ。
 学校もダメ、家族もダメ。じゃあ警察......もやはりダメ。
 お前らに相談した自分が惨めになったあの日はマジで辛かった。国民の税金で生活している公僕どもは、国民の平穏など全く守れてやしねーんだよ。


 ......いつの間にか変な回想をしていた。とにかくその警察どもが何故ここにいるのかだが、確実に俺に用があるのだろうな。本人を捕まえて事情聴取をして、証拠が揃えば俺を逮捕でもするつもりなんだろうな。

 まぁ?今の俺ならあんな公僕組織なんか一瞬で灰にできるし。事後処理も完璧にできるし、足も全く残さないし。ここは、挨拶するとしましょうか...。


 躊躇いなく俺の拠点部屋に入る様を見た警官らが慌てて俺の前に立つ。

 「ちょっと君。大学生...なのかな?この部屋は今警察による捜査が入っているから部外者は立ち入り禁止になってて......」
 「じゃあ大丈夫だ。俺は部外者じゃねーから」
 
 俺の返答に警官が戸惑っていると、刑事がこっちに来た。

 「その青年はどちらさんで.........おい待て。そいつ、まさか...!?」

 中年刑事が俺の顔を見た途端、驚愕の表情をしてポケットから写真を取り出す。それと俺の顔を交互に見てから険しい声で俺に質問を投げかける。

 「お前さん......杉山友聖やな?」
 「はいそうです。わたすが杉山友聖です......何つってな」

 刑事の関西訛りが混じった問いかけに俺は馬鹿にした口調で答えた。直後、周りの警官どもが俺を取り囲んだ。

 「穏やかじゃねーなァ?俺にいったい何の用?
 大阪府から来た刑事お二人さん?」
 「.........用件はただ一つ。お前に連続殺人事件の容疑がかかっている。今すぐ大阪の署までご同行願ってもらうで」

 すっとぼけた様子でいる俺に構うことなく中年刑事は刑事手帳を見せてそう告げた。対する俺はというと...

 「――お断りいたします☆」

 “全員ここから撤退して元いた所へ帰る。今日のこと全ては忘れること”

 ――パンッ!!

 手を叩いた直後、警察全員は部屋から出て行き、パトカーに乗って去って行った。
 心が広い俺は今回は見逃してやる。次また俺の前に立ち塞がるようであれば、その時は慈悲無く殺すとしよう...。

 何にせよ、全ての隠蔽工作は完了。今日いっぱいはここで過ごして、明日からまた新しい住居に移る。そして次の活動に入るとする...!

 「今日はその次の段階に向けて英気を養う日でもある。さぁ買い物に行こう」

 数十分後、大量の高い食品と上等な酒を買って戻り、夜は盛大に食って飲んで過ごした。

 「ああ...改めて最高の気分だ...!俺はやり遂げたんや。俺を虐げたり排除したりした奴らに復讐を果たした。まぁ一部寿命や事故で先に死んで殺せなかったクズもいたが...何はともあれ俺は最高の復讐が出来た!憎い奴らをたくさん、たっくさんぶち殺した!」

 因みに復讐出来ずに終わったのは近所トラブルの元となったあのクソ犬とその飼い主だ。飼い主が事故で死んで、犬は寿命で死んだ。まぁ少しでも溜飲を下げるべくあいつらの墓場を盛大に荒らして汚してやったが。
 
 「気持ちいいっ。復讐がこんなにも甘美で快楽的だなんてなァ!心が洗われた。闇を払拭した。屈辱と悔恨と無念全てすすぎ落とした!ずっとこびりついていた負の垢が...落ちた気分や!
 あ~~~~~~~~最っっ高っ!!っはははははははは!!くぅははははははははははははっ!!!」
 
 奴らへの復讐の余韻は数日間続き、結局引越したのは三日後となった。 



 拠点は利便性に富んだ大阪の、大阪市内。比較的孤立してる一戸建てを俺の永住地にする。元の家主には悪いが、催眠術で実家に帰ってもらって家を明け渡させた。そこにまた私物を全て配置して揃えて、あっという間に理想の部屋を創り上げた。

 作業が終わったところで一休みしていると、外から明らかに騒音レベルのバイク音が響いてきた。

 「......だからぁ、たかが移動でそんなうるさい音出す必要がどこにあるんだ!?るっせぇんだよ!!」

 致死性のホーミング弾を指先から放って、騒音の元凶であるガイジ野郎を消し飛ばした。少し遠くから破壊音が聞こえた後、あのうるさい音は消えた。
 はぁ......今の騒音通行にしろ、喫煙所外での歩きタバコにしろ、歩行を遮るような横断をしてくるマナー違反のクソ運転にしろ......そろそろああいうの全てを消さなきゃアカンよなぁ。

 というか復讐が終わった次は、この日本を俺が理想とする秩序に改造することを前から決めていた。今こそ、その目論見を実行する時がきた!俺が問題視していることを誰も改善しようとしないなら、俺が改善してやれば良い。
 変えるんだ...俺が変える。呼びかけとか罰金とかそんな生温い手段じゃねーぞ――

 「“粛清”...。これから行うのは俺の為だけの粛清だ。俺にとって害になる人間全てをこの世から抹消して、この国を改造する...!復讐の時とは比べ物にならない規模の殺戮...そう、あの異世界での復讐以来の量の血を流させてやろう...!!

 ―――革命を起こすぞっ!!!」


 大阪府警捜査部署。


 「くそ...!目的の人物が目の前におったのに、何で途中切り上げてここに戻ってたんや!?」
 「僕も先輩と同じで、気が付くとここに戻っていて...」

 怒りと困惑で頭を抱えているこの刑事二人。先日山形県にまで出張捜査をして、連行対象の人物と接触したのだが、そのすぐ後二人の身に異変が起こった。自分の意思とは関係無く、その人物のもとから退散してしまい、何もせず署まで帰ってきたのだった。

 「少し前に山形県警から報告がきたのですが、彼らも気が付けば各署に帰ってしまっていたそうです。それもあの日から三日も経った状態で...」
 「三日か...。俺らも同じや。杉山友聖と対面したあの日からもう三日も経ってる。俺らはその間ずっと眠ってたわけないゆーてたな。ここにいる皆は俺らはいつも通り出勤してたって聞いたし」
 「あと報告の続きなんですが...あのアパート部屋はもぬけの殻になっていたそうです。杉山の私物は一つ残らず消えていたそうです。恐らく県外へ逃亡したと考えられますね」
 「薬物か何かで俺らを催眠にでも落としたゆーんか。益々警戒せなアカンでこりゃ」
 「......やはり杉山が例の連続惨殺事件の犯人として進めるべきですかね?」
 「せやろな。あの時直に奴と対面したけど......アレは普通やないで。人を殺したとかそんなレベルやない、人間かどうかすら怪しい存在やっておもたわ...」

 中年刑事の深刻な顔でそうぼやく様子を、後輩刑事は茶化すことはしなかった。
 しばらく沈黙が続いた後、若い刑事が二人のもとへやって来た。

 「ここにおられましたか!市内で突然惨殺事件が発生しましたっ!」

 男の突然過ぎる報告に二人はまさかといった顔を浮かべて行動に移った――





 この国は色々腐っている(俺視点で)。

 主に性格や人格が(俺基準で)破綻してる低脳な連中と、マナーを全く守らない連中、そしてモラル意識が底辺の連中が、世の中にたくさん蔓延ってるからだ。
 そのせいでこの日本という国の社会は、もはや俺にとって受け付けられないレベルに堕ちてしまっている。どうしようもなく腐ってしまっている。
 せっかく漫画・小説やアニメ、ゲームにおいて豊富で発達した文化を持ち、美味い食い物も揃ってる素敵な国なのに、そんな低脳でクズな連中のせいで台無しだ!

 ああ、なんて嘆かわしい現状だ!?魅力的で優れた文化がありながら、人間・社会の環境といった要素のせいで全部台無しにしてるとかクソ過ぎる、冗談じゃねーぞ!?
 俺が転生する前から、この国は相当腐っていた。そして今の時代も死んだ方が良いクズ人間が蔓延っている。事実、復讐に走っている間、俺を不快な気持ちにさせたクズが何人いたことか...。

 だからこの国に住む人間は、俺にとって害が無く、生活と文化を支える仕事をしている人間だけにする。それ以外全ては殺す、皆殺しにする。
 それが為せれば、この国は俺が理想とする素敵なものとなるだろう。
 
 しかしそういった選定作業は些か面倒だ。だからまずは、俺が特に不要で消えるべきだと断定している腐った人種どもを殲滅していく!

 何、やり方は簡単だ。この検索魔術は全てを俺に教えてくれる。誰を消せば良いかなんてあっという間に分かるし、あっという間に全員消せる。


 理想国家………唐突になるが、「ド〇えもん」のエピソードには“どくさいスイッチ”という大変興味深い道具があったな。
 あれは自分にとって邪魔者・気に入らない者を、スイッチを押すことでこの世から消し去るというそれはそれは愉快……いや、恐ろしい道具だとか。スイッチ一つで人を抹消するのもヤバいが、あの道具のもっとヤバくて怖いところは...スイッチを使用した者を除く全ての人間から、消えた奴に関すること全てが記憶から消去されて、初めからいなかったことになるということだ。
 だがあの道具は、使用者の欲求をただ満たす物ではなく、独裁的な者を懲らしめる為の物だとか。次第に孤独という状況に陥らせて反省させるのが目的だとか。
 まぁとにかく俺がこれから何をするのかと言えば、その“どくさいスイッチ”と同じことをするということ。

 ただ、人をパッっと消すだけでは済まさない......最初のうちは今まで殺した連中と同じようにやろう。大衆の前で害悪どもを消していく!見せしめと宣伝の為にな。
 俺は自分の力で邪魔者どもを消していく!!
 強い決意とともに俺は粛清活動を開始した。





 「ここはァ、喫煙して良い場所じゃないよなぁ!?タバコ吸う場合は喫煙所でするのが常識でありマナーであり、法律でそう決まってるはずやろ! 
 にも関わらずこんなところで吸うヤニカスは、俺の中では重罪人です!
 だからこうして、 “粛清”してやりましたーー!」
 

 路上喫煙していたヤニカス(既に死体、殺した)の胸倉を掴んで、周りの奴らに聞こえる音量で、殺した理由を丁寧に告げてやった。

 この後記憶操作をして今の出来事を忘れさせる...なんてことはもうしない。もう隠す必要が無くなった。むしろ見せつけるようにしなければ何の意味もなさない。

 これからこの国を俺好みに改造するのだから...!

 「あーあー!安心しろー。別にお前らを無差別に殺す気は無いぞ。こいつを消した理由は、ここで歩きタバコをしてたからや。
 喫煙は喫煙所でするという当たり前のことを、このクズは守ることなく受動喫煙を俺にさせようとした。だから殺しましたー。
 お前らもこうなりたくなければ絶対に歩きタバコは止め――あらら、全員聞いちゃいねー。騒いで逃げやがったか。まぁいいや。これを続けていればいずれ伝わるやろーし」

 ここいらはパニック地帯になっちゃったから、少し移動する。数十キロ離れた区域に移り再び散歩を開始。そして数分後、横断歩道を渡る途中で横から車が入ってきて俺を横切って通過しやがった。

 
 「歩行優先という交通ルールを守らなかった。よって“粛清”」


 直後、引力で今通った車を引き寄せて真っ二つにする。さらに中からクソ運転者を引きずり出してその腐れ野郎の頭を掴む。

 「ひ、ひぃ...!?」
 「ひぃじゃねーよゴミクズが。お前俺が歩道渡ってるの見えてへんかったんか?歩行者と自転車が渡ってる間は、白線の前で停止して通過するのを待つこと...常識やろがああ!?ああやって歩行を邪魔されるのがもの凄い不快だって分からねーかなァ、ええ!?」
 「あああああああんた、何言ってんだ――」
 「反省の余地無しと見た。よって死刑に処す」

 ――ブチャアアアアァ

 有無を言わさずに殺す。ゴミ箱にゴミを捨てるように死体を道の端っこに放り捨てて何事も無かったかのように散歩を再開。
 周りから悲鳴が聞こえる中、ひと際うるさい耳障りな音が辺りに響く...バイクだ。必要無いだろう騒音を出して通過しようとするバイクを不快気に睨みながら“粛清”をする。

 「俺の前で、そのうるさい音を出すのを止めろやッッ!!」

 虚空から巨大な岩を召喚してそのまま下へ落とす。ちょうどバイクが岩の真下を通って......そのままグシャリと下敷きになって潰れた!

 「ええか!移動するのにあんなうるさい音出す必要は無いはずや!運転してる本人はスピード出して気持ええんやろうけど、俺にとってはそのうるさい音が堪らなく厭で不快や!!
 だから“粛清”した!俺に耳障りな音を聞かせるクズどもは皆殺しやッッ!!」

 これもまた聞こえるように叫んで、移動する。見せしめ活動はまだしばらく続行する。


 「死ねヤニカスどもっ!!!」
 ズバン!グシャア!!グチャア...ッ!

 「歩行者と自転車を優先しろっ!!横断歩道の真ん中で止まんな!!消えろっっ!!!」
 ドガァン!!ゴキャア...ン!!

 「うるせェンだよ!!静かに通過しろや!!!」
 ヒュン...ドォオオン...ッ!!!


 害悪もたらすクズどもが、次々と“粛清”されて消えていくのだった。


 この国のクソなところを挙げるとするなら、いちばん初めに浮かぶ点はやっぱりこれになる。

 喫煙モラルが低すぎる。

 日本の喫煙モラルは頭おかしいレベル、狂ってる。何で平然と人前、それも非喫煙者の目の前でタバコ吸い始めやがんねん。
 分煙推進、受動喫煙による人体の悪影響、悪臭......タバコに関する対処と悪影響とか色々問題視されて世界では昔よりだいぶ喫煙に対するマナーと配慮が改善されているのに。日本だけは何なん?
 申し訳程度の喫煙エリアに、適当に置いてある灰皿......は?それだけ??ちゃんとした喫煙所はオフィス内だけ設置。コンビニとかデパートとか大衆が利用する施設内に設置してるとこはほんの僅かや。

 せやから気が短くて我慢するということが出来ひん精神年齢がガキのニコチン依存のヤニカスどもが歩行路や道端でスパスパ喫煙し出すねん。

 もちろん喫煙所外で、しかも禁煙区域で喫煙しやがる奴らが悪いけどな、ああいうクズどもに対してまともに対処していないこの国の運営そのものがおかしいし悪いねん。

 いや造れよ設置しろよヤニカス収容所(喫煙所)くらい。それくらい予算おろせるやろ。横領した金(憶測、ていうかどうせ政治家みんな横領とかしてるや) を返してそういうの増やせよ。お前らの無駄に高い給金をヤニカス撲滅に回してこいや。
 お前ら国を運営している連中のモラルが低いから、勘違いしたガイジどもが平然と歩きタバコやったり人前で喫煙し出すねん。お前ら副流煙が人体にどれだけ害を及ぼしてるのかまだ分かってへんのか?

 外で吸ったくらいなら濃度低いしええやろとか思ってんじゃねーぞ?
 濃度関係無しに体に悪いの!!主に心肺機能に悪影響を及ぼすの!!肺炎になったり肺がんに対する免疫機能が落ちるの!!
 別にお前ら喫煙者どもがいくら喫煙しようが勝手や。お前らの責任や。肺炎でも肺がんでも勝手にかかって勝手に死ねばええ。けど無関係の俺に、お前らが吸ってる煙よりも有害物質を含む煙を吸わせてんじゃねーよ!!この歩く害悪どもが!!!




 という気持ちで書きました。

 事実日本の喫煙モラルは低いです。中には子どもやペットの前でタバコを吸う親や飼い主も見かけます。成人した人間よりも未熟児・未成年の人間や猫・犬など小型動物らの方がタバコの煙による害が被りやすいという事実を、果たしてどれくらい存じているのでしょうか。
 少なくとも喫煙者らは理解していないでしょうし理解しようともしていないでしょうね。じゃなきゃ普通子どもらの前で喫煙するとかあり得ないですし。人間の嗅覚でもタバコの煙は相当不快感を与えるから、動物なんかは大層ストレスになるでしょうね可哀想に。

 最近ではそういう有害物質を多く出す紙巻タバコに代わって、電子タバコ・副流煙は一切出さない水蒸気タバコなどが普及......されてませんね全然。
 あれらは値段が高い。経済に余裕がある人間しか買ってません。経済に余裕がないからああいうのを買えない、だから紙巻タバコを買う、そして我慢できなくなって(あるいは普通に吸って問題無いとか考えてるんでしょうね)途中で歩きタバコをする。
 これが喫煙モラルが低い要因なのではと考えています。
 たばこ税がまた上がり、一箱の値段がさらに上がったそうですが、それが何だというのでしょうか。そんな物に値を上げるよりももっとすることがあるのでは?
 例えば電子タバコの普及を広める為の値段大幅下げとか、ちゃんとした喫煙所の増加とか。

 普通に考えてできるはずが、どうしてそんなことが未だに出来ていないのでしょうか?この国はそこまで余裕がないのでしょうか?