対象:瓜屋優二
*注意 人によっては胸糞描写あり
「あ、あなた!警察を、救急車も!お父さんが...!」
「ああ分かった!............な、何で電話が繋がらないんだ...!?」
「うわああん!うわああん...!」
娘夫婦が電話に繋がらないこと(結界で阻まれているから当然繋がらない)に狼狽し、孫はパニック起こして泣いている。ババアは腰を抜かして呆然したままだ。それらを全て無視して標的のところへ向かう。瓜屋を無理矢理起こして、その胸倉を乱暴に掴み上げる。
「う、ぐぅお...!」
「あの冬の日...お前は確かこんな風に俺の胸倉を掴んで鉄柵に押し当てやがったよなあ?バイト入ってもう数か月目のくせに、未だにミスをする俺に苛ついて、ああいうことをしたんだよなァ?
そりゃ俺にも非はあったよ?物覚え悪くて同じミスまでしてしまって、切れたくなる気持ちはもっともだ。
けどさァ、だからといって暴力振るうのは違うよねぇ?お前はそうやってミスした部下・後輩に向かって暴力振るのか...よっ!?」
ドスッ「っ!?ごぷ、ぅ...!」
鳩尾に拳を入れると瓜屋は血と胃液を吐き出して早くも満身創痍になる。年齢は今50才以上。見た目は昔に比べてだいぶ老けている。体力無いのは当然か。コイツはすぐに殺してはダメだ、学校の虐め主犯格どもと同じくらいの地獄を体験させなければならない。
「そんでこんな風に、会社の駐車場に俺を連れて反論したか何かの理由で、俺を締めようと殴ったり蹴ったりもしたよなぁ。家族を持ってそれなりの社会人の男が、自分にも非があったくせに。自分のことは棚に上げて俺を罵って暴力振るったなァ...!お前みたいなクズやろうがどうして社会人なんかなれてんのかな?何で父親なんかやってんのかな?娘の前でもそういう汚いところ見せてきたのか?その汚い面と手で、子どもを育ててきたのかと思うと笑えなさ過ぎて笑えてくるわっ!」
胸倉を掴んだままコイツの人格を貶して嘲笑っていると、やっと喋れる体力を戻した様子の瓜屋はここで反論してきた。
「ぐ......さっきからベラベラ俺を貶してくる、が...お前は何なんだ?誰だ!?いきなり家に入ってくるなり俺に暴力振るいやがって...!この犯罪者がっ」
「...俺のこと憶えてねークチか...。どいつもこいつも加害者どもはそうやって傷つけた奴のことは忘れやがるもんなァ。おら、俺の記憶を見せてやるよ。お前が俺に犯した罪が何なのか教えてやる」
瓜屋の頭に自身の過去と俺の記憶を流し込む。瓜屋が思い出すまでの間、他の四人を前回と同様に縛り付けておいた。コイツらも重要なゲストだからな...!
「ぐ...お...!そうか、お前はあの時のバイト...!俺を苛つかせたクソバイトか...!」
「おいおい、クソバイトとは随分だなァ?自分の方がもっとクソだというのにまた自分のことを棚に上げてやがる、マジで性格最低のクズだな」
「何、言ってやがる...!数か月経ってもロクに仕事が出来ない。同じミスもしやがるし、職場の人間の輪にも入らない...。そのくせ文句は言ってくる...そんな社会不適合者のクズが、何逆上して俺を襲って来てんだ?お前が全部悪いくせに、今さら何だお前は!?お前のやってることはただの逆恨みだろうが!幼稚な思考したクズが、俺に復讐するとか的外れにもほどがあるだろうがぁ!!」
「ふーん。で?」
「な...!?ハッ図星かよ。こうやって俺に復讐しに来たってことは、お前は引越センターをクビになってからもロクに職場に馴染めず、仕事も全く出来ない愚図のくせにまた文句を言って、煙たがれて、そして解雇されて!たらい回しにされては問題起こして解雇されての生活しかしてねーんやろどうせ!そりゃそうだ、お前みたいな無能の愚図なんか誰も必要としない!社会のゴミクズが、下らない逆恨みで俺に犯罪犯してんじゃねーぞ――「もういい、うるさい。ベラベラ長ったらしく喋るなや、このゴミクズ」
ズパン......
「――――は...?」
瓜屋があまりにも臭い口でうるさく不愉快な言葉を吐くので、短気を起こした俺は.........娘の旦那の首を斬り殺した。
「きゃああああああ!?あなたァ、あなたぁ!!」
「わああああああああ...!!パパぁ!!」
「は...は、ぁ...!」
突然の娘旦那の死にそれぞれ驚愕・悲嘆・絶望した。
「と、俊樹...!嘘だ、さっきまで生きてて………人がこんな、簡単に……!?俊樹、俊樹ぃいい――ガンッ!――がっ!?」
息子の突然死に慟哭する瓜屋を殴って黙らせる。あーもうまだうるさいな。
「あのさァ、お前今の状況分かってる?お前を軽々と蹴り飛ばして片手で簡単にお前を掴み上げて、さらには謎の力で家族を縛ったりもするこの俺を、少しは変だ・異常だって思わねーわけ?」
「.........あ、ァ...!」
「それなのにお前は立場を弁えずまだクソ態度を取りやがるしよぉ?過去を思い出すなり俺をまた愚図だのクズだの社会のゴミだのと、好き勝手俺を貶しやがってよぉ?
もう一度言うぞ?ここからは自分の今の立場を理解した上で喋れよ?今の俺はァ、簡単に人を殺せる力があるんだからなァ!!」
「何が......わけ分からない力で、俊樹を...!この人殺しがァ!!」
「ハァ、何年も仕事しててそれなりの地位に上ってる割には低脳だなお前も。まぁ良いけど...(どうせ全員殺すし)それっ」
パァン! バタッ………
軽いノリで今度は瓜屋の奥さんを撃った。
「あああああ!?お、お母さん!?お母さんがっ!!」
「お、ばあちゃん!嫌だよぉ...!おばあちゃん!!」
「あ......あ.........ふ、文恵ぇ!そん、な...!」
「はい、お前が俺を苛つかせたからまたひとりいなくなりましたー。これで奥さんと息子があっさり死んだねぇ......お前がクソ態度取った、せいでっ」
瓜屋を無造作に放り投げて指を突きつけてそう言ってやる。瓜屋は反論する気も無いらしく奥さんの亡骸を見つめている。勿論そっとしておくわけもなく、後ろから瓜屋をまた蹴り飛ばす。さらに手足に大きめの五寸釘を突き刺して床に拘束させる。
「ぐっ、がああああああ...!!」
「さって~~、これ以上俺を苛つかせたら、うっかり娘とガキもぶっ殺しちゃうかもやからマジできをつけろよー(まぁ最後は殺すけど)?」
「ぐっうう......分かった、分かったから、娘...紗紀と孫の宗也は止めてくれ...!俺の家族には、手を出さないでくれ...!」
「は?クズの分際で俺に指図すんなや。お前の態度次第だって言ったよね俺。下らない勘違いしてんじゃねーぞコラ」
ペッと床に唾を吐いて虫けらを見る目で瓜屋に冷たく告げる。孫は相変わらず泣き喚いているが無視する。
注意 人によっては胸糞描写あり
「う、ぐ......分かった、分かりました...。さっき言ったことは撤回する。おまぇ…いや、杉山さんを侮辱した発言をしてしまってすみませんでした...!」
「...で、他は?」
「それと......バイトだった杉山さんを散々除け者にしたり、罵声を浴びせたり...暴力も振るったりして、本当にすみませんでした!!本当に反省してますっ!」
「......ぷあはははははっ!まさかお前の臭い口から俺をさん付けしたり敬語で謝罪の言葉が出てくるとはなっ!?くっっっそウケるwキモいくらいにwwぶはははははははぁ......あ~~~~~~~~~~~無様だな、そんでキモいわお前」
「う......あ...!」
「お前さァ?本気でそう思ってるわけ?俺に申し訳ないって思ってるわけ?俺に
対しての言動・態度・暴力について反省なんて、ホンマにしてんのか?口だけじゃねーのか。残りの二人殺すぞ?」
そう言って二人に近づいて大剣を突きつける。そしたら血相変えて、頭を地面にこすりつけて、必死に喚くものだから面白いキモいw
「ほっ、本当に思ってます!本当です!!反省してますっ!!ごめんなさい!!すみませんでしたァ!!」
「あーあ、そうやって大声で反省してます・ごめんなさいとか言っても、なぁんも伝わんねーなァ...。......あそうだ」
ふと面白い(=残酷な)提案を思いついたので、手足を解放して手だけを治療してやる。解放されるなり瓜屋は娘と孫の前で俺に無様に土下座をした。ぷぷっ、必死やなww
「ああそういうのいいから。何の誠意も伝わらないから。やっぱ言葉より行動で示してくれないとなァ......ほらっ」
カランと瓜屋の目の前にスプーンと剣を落としてやる。それらを訝し気にみやる瓜屋に......俺は嗤いながらこう命令した――。
「そのスプーンで自分の片目を抉れ。その剣で自分の両足と片手を斬り落とせ。反省してるなら、俺に赦して欲しいなら、二人の命が惜しいならそれくらいやれるよなァ!?」
「な......!?」
俺の悪魔の命令に、瓜屋は目を見開く。娘も呆然としている。
「ほらさっさとやれよ。ごめんなさいっておもってるんだよな?自分は悪いって反省してるんだよな?あの二人は殺して欲しくねーんだよなぁ?だったら自傷行為くらい簡単にできるよなぁ?父親であるお前ならそれくらいできるはずだよなぁ?」
「...............分かりました。やります...」
了承してスプーンを手にする。娘はそんな瓜屋を息を吞んで見つめる。
「ああそのスプーンは高性能でな。何でも簡単にくり抜けられてな?《《生物の目玉なんかも》》簡単に取れるぜぇ?」
「......!...............」
瓜屋は無言で、しかし顔を真っ青に脂汗を垂らしながらスプーンを左目に近づけていく。そして――
「お父さん止め――」
「―――つ、ぎゃああああああああああああ!!!」
娘の制止も聞かず、一気に実行した。直後、瓜屋の大絶叫が響く。ショック死されては困るからとりあえず血だけは止めておく。罰ゲームはまだ終わってねーし。
「よし...じゃあ次は足いってみよー!今から1分で足を斬れよ?俺は待たされるのは嫌いだからな」
「~~~~~!!わ、わがっだ...!」
右目の激痛に耐えながら、今度は剣を手にしてそれを自分の足に向ける。
「その剣も良く斬れるから力はそんなに要らねーぞ」
「止めて、お父さん止めて...!」
「おじいちゃん、何で、自分に剣を向けてるの...!?」
二人は瓜屋に自傷行為を止めるよう声をかける。そんな二人を面白がりながら奴に目を向ける。
「ああ言ってるけど、どうする?止めるか?俺はどっちでも良いけどなー」
「い、いや...やります!それで誠意が伝わるなら...!」
「そっかー、頑張れよーw」
「そんな...!」
俺らのやり取りを聞いた娘は絶望する。そして瓜屋は自分の両足を斬り落とした!
ズパン!「―――がぎゃあああああ”あ”あ”あ”あ”あ”!!げおああああああ...!!!」
欠損した足首部分から夥しい血が噴き出ている。娘は泣き崩れ、孫は失禁して泣いてる。
「あははははははははは!やるじゃん!けどまだ残ってるなァ。最後はどっちかの手首落とせ」
「~~~~っ!あなたっ!!いい加減にしてよっ!!何でお父さんが、こんな目に......」
「――紗紀ぃ!良いんだ...。俺のせいで、二人を死なせた。この男の恨みを買った俺が、悪いんだ...!後は俺の片方の手を落としてお前たちを解放させてやれるから、黙っててくれ...」
誰が解放するって言ったよ?まぁどうでもいいか。
で......意を決して、最後に左手首を勢いよくズバンと斬り落とした!
「う、あ”あ”あ”あ”あ”...!!」
左腕を押さえて悲鳴上げる瓜屋を、俺はただ面白がって見下していた。最高だ。標的自らに自分を甚振らせるという新しい拷問法をやってみたが、これはこれで面白い、笑える!実に良い気分だ!
「はぁ......はぁ......ぜぇ.........お、わった、ぞ...。これで、俺が、本当に、謝罪してるってこと...証明し、た......」
「ああ.........そうだな」
さて......満足したところで――
「じゃ、じゃあ二人を――」
「お疲れさーん。というわけで消去」
―――ッ
「.......................................あ?え...?」
一気に二人を光の魔術で消し去ってやった。
「―――!え、は――??あれっ?えっ――??............ぁ」
「面白いもん見せてもらったわー。だから二人には苦しみを与えずにすぐ殺してやったぞ~~。俺は無関係の人間には残虐なことはそうしないから」
一瞬沈黙。そして......
「~~~~~~~~~~~うわああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああっ!!あああああああああああああああ紗紀ぃいいいいいいいいいい宗也ああああああああ...!!」
「ぶふぅ、あっはははははははははははははははぁ!!ねぇ何で俺がお前の望む結末を用意してあげなきゃならねーんだ!?俺はァ、お前に復讐しに来たって言ったよな!?お前に散々罵声を浴びせられ、俺をハブり者にして、貶して!さらには嫌だと言ってるのに無視して俺に副流煙を吸わせたりもして!あれのせいで俺は体調崩したりもしたんやぞ?性格クズの人間はヤニカスでもあるんだな、この喫煙モラルが糞以下のドグソ野郎が!」
「.........そんなことで......そんなことで娘たちをおおおおおおおおおおおおおお...!!!」
「俺にとってはそれだけのことだったの!!ここまでしたくなったくらいに憎悪をいだかされたのっ!!!お前が俺にしたことだろうが、お前がそうやって切れる権利はねぇんじゃボケ、クソカスっ!!」
ズパンッ
「大体何?お前結局反省してねーじゃん。そうやってまたブチ切れるってことは全く悪いと思ってねー。だからお前の家族は殺されたんやぞっ!」
ザンッ!ザン!
「お前が俺のこと社会のクズとか言いまくったせいで、俺はさらに落ちぶれて、精神を患って、何もかも失って、死んだんだっ!!お前もたいな人間のゴミクズの分際がっ、俺の人生潰してんじゃねーぞ!!俺を貶してんじゃねーぞ!!クソ野郎の分際でぇえ!!!」
ブシャアアア!
「が...あ”ぁ......」
体の部位を悉く斬り捨てられて達磨状態となった瓜屋を、さらに数十分間蹴って叩きつけて、瀕死になるまで暴行を続けた。
「......もう飽きた。お前のキモい面ももう見たくねー。もう死ねよ。人間のクズ」
――グサッ「......ちく、しょう.........」
最後に家を放火して終わらせた。これでこの国に蔓延る汚物を少しは減らせただろう。いい気味だ...。
「これで、アー〇引越センター大東支店への復讐は完了した。良い気分だ...!」
ゲラゲラ笑いながら拠点へ帰った――。
帰宅後、瓜屋をはじめとする引越の正社員どもへの復讐達成を祝して、酒盛りをした。その間で復讐対象としている会社連中のリストを確認。
殺そうと思ってる残りの奴らは、二つ目の会社から4人、三つ目から4人…ってところか。
リスト以外にも殺したい奴は何人かいるから、実質あと十数人ってところか。
「二つ目の会社――佐〇急便東大阪営業所は、主に年下の奴らを殺したいんだったよなー。あとは上司一人ってところか...。俺を理不尽にクビにした罪は死で償ってもらわなきゃな」
それ以上に、あの3人にはさらに地獄を体験させなきゃ気が済まねーのだが...。
「三つ目のとこは...俺が死んだ地域にある清掃会社だったな。次の復讐が終わったら、最初のアパート部屋に戻るとするか...」
酒を飲み終わった頃には、残りの復讐プランを全て組んで、あいつらの殺し方をシミュレートしながら格ゲーして夜を過ごした...。
*
アー〇引越センターを辞めてから約1か月後、無気力のまま色んなとこで面接を受けては落とされて落とされ続け、俺の生活は日を追うごとに荒んでいった。
この頃から家族との仲の険悪さもさらに増していった気がする。同居しているにも関わらず、家族との会話は月に1回あるかないかだったと思う。
で、そんな荒んだ生活の中で次に見つけた勤め先が、日本で有名な宅急便会社でのアルバイトだ。そこでの面接なんだが...なんか面接というよりただの説明会だった。まるで入ることを前提としたような感じだった。前の引越センターと同じだ。面接らしいことをせず、仕事の大まかな内容をビデオで説明して、後日仕事先に来いみたいなことを言って終わりだった。
だからこの時点で俺はここもアカンやつやと見切りをつけて退くべきだったのだが、収入源を早く確保しておきたいという焦りがあって、結局入社してしまった。
「杉山君やね?僕は営業所のバイト責任者の渡邊です。早速やけど今日入ってもらうところは――」
最初の数か月はまぁ害はなかった。暑い中エアコンも無い作業場で荷物を仕分けしてトラックに積む仕事は辛いものだったが、黙々と作業する系の仕事は、人と関わることが厭になった俺にとっては悪くはなかった。
が、どんな職種であろうと、こうして外に出て仕事する以上はどうしても人と関わることは避けられない。色んな奴がいるんだ。無害な奴がいれば当然その逆もいるわけで......
「なぁ、えーと杉山さんだっけ?俺ら休憩入るから俺の担当場所での仕分けもよろしくー。......でさー」
「いやおい待てよ、里山...だったな。お前さっきも休憩行ってたやろ?作業中の途中休憩は2回まで。お前もう2回行ったやろ。つーか俺がこれから休憩行くからお前がここ残れよ」
「は?何言ってんの。さっきのは渡邊さんからちょっと手伝って欲しいからって呼ばれて離れただけで、休憩なんかまだしてへんから。というわけで頼みますわー」
「.........(ピキィ...)」
嘘だ。ここからでも全体の作業の様子が見えるようになっている。あいつが仕事してるとこなど一切目にしなかった。明らかに不正してやがる...。
俺が入ってから半年くらい経った頃、新しいアルバイトが4人入ってきた。全員俺より年下の男だった。
その中でも俺が不快に思った奴が...里山浩基《さとやまこうき》だ。あいつは上手いこと仕事をサボる。しかも渡邊を始めとする正社員どもに取り入って仲良くしてもいる。休憩中とかよく談笑しているのを目にする。
それだけで...アイツら正社員どもは、里山らを贔屓するのだ。俺がいくらあいつらの怠慢を報告しても聞く耳持たずで、仕事に戻れだのと言ってあしらわれてしまうばかりだった。
(またや......また俺に味方してくれないパターンだよ。仲が良いからといってサボりを大目に見るのはおかしいだろうが。あいつらのやってることは給料泥棒なんだぞ?ふざけんな...!)
やはりこの世界はおかしい。俺に対して都合の悪いことが起こり過ぎている。どうしてこうも俺に対して悪意が降りかかってくるのか。
「おはようございます」
「よう、坂本。今日はどこ担当?」
「俺はな―――。ところで田原ー。今日上がった後どっか食いに行かね?」
「ええでー行こかー」
「.........(挨拶されたら返せよ。つーか俺にだけ挨拶してねーよなコイツら)」
完全に俺を舐めきっていて、タメ口利くし、礼儀も最悪だ......俺に対してだけ、だ。どうせ休憩のこととか、仕事態度を指摘したとかで逆恨みしてのそのクソ態度なのだろう。
どう考えてもあいつらに問題があるはずだが、気付けば何故か俺が問題ある奴として職場では認知されてしまっていた。誰ともロクに会話しようとせず、仕事の出来は大したことない、そのくせ文句を言ってくるとかで俺に対する嫌悪が広まっていた。
そして1年経った頃には俺はまた孤立していた。別にサボりとか無礼をしたわけじゃないのに、またしても“優しくない世界”が形成されていた。
......そうなるように、里山らが仕組んだのだと、後から気付いた。
「杉山君。里山君らが言ってたけど、彼らの悪口ブツブツ言ってるそうやね?アカンよそういうの。言われた方は傷つくし、それを聞く他の社員も気分悪くするから」
「は?いや俺は作業中とかにそんなこと――」
「今後はそういうこと無いように。お互い気持ちよく仕事出来るように努めるように」
心の中では確かに悪く言ってたよ。だけど本当に口に出したりはしなかったわボケ。里山...あいつらがデタラメ言ったんだ。俺のありもしない悪評をばらまいて俺を貶めてやがるんだ。下らない逆恨みで俺を...!
学校のあいつらと同じことしてやがる。俺が気に入らないからそうやって徒党を組んで俺を排除しようとする。いちばん嫌悪して憎んでることだ。
で、それを指摘しても誰も俺の肩を持たない。それどころか俺が悪いと糾弾されて終わり。悪であるあいつらが庇われるんだ...。
ここでもそうだった。いくら言っても全員里山らの味方をしやがるんだ。どうせ...渡邊らも俺が気に入らないから、里山らと一緒になってハブにして理不尽に貶めてきやがるんだ...!
そんなクソ職場に対する我慢の限界が近づいていたある冬の日......その時は来た。
寒い中、俺はトラックから搬出されるバラ荷物がベルトコンベアに上手いこと乗るように手をつける(何て表現したら良いか分からん)作業をやっていた。ある程度搬出し終わってところで、俺は手を腰に当てて仁王立ちポーズを取って一息ついた。まぁ向かいにはまだ作業している奴がいるのだが、やること終わったことだしと気を少し抜いた。が......それを目にした渡邊が俺のところに来て怒り口調で俺の姿勢を咎めやがった。
「目の前に作業している人の前でそうやって腰に手をあてて突っ立ってるのはおかしいやろっ!」
「......いや、それはそうですけど...」
「態度改めてほしいな。ちゃんと仕事してくれよ?」
それだけ言うと渡邊は作業に戻った。
......いや、確かにその通りなんだけどさぁ、そこまで怒らせて言うことか?お前が不愉快に思っただけやろ?何でキレられなアカンねん。俺はそんなことよりもっと不愉快な思いさせられてるのに、目の前で雑談しやがるあいつらの前で黙々と働いてたんやぞ?それはどうなんや、あ?
ついさっきの渡邊の若干理不尽な注意に苛つきながら再び作業していると......
「渡辺さん、ホンマですかそれってー」
「うん。俺も最初見た時はマジかよって思って――」
俺の近くで作業している渡邊が、隣にいる里山と雑談しているのを目にする。話しながら作業するのはまだ良い。だがあいつらは...
「――。www」
「...!――。ww」
手を休めて、腕を組んで、完全にサボり姿勢で雑談してるだけだった。しかもそさらに隣と向かい側では忙しく働いている奴がいるのに、だ。
さっき俺が同じようなポーズを取ってたら注意したくせに、自分らは許されるっていうんか?
――はぁ?ふざけんな!!
よく見れば、さっきの俺と同じポーズで一息ついてる奴がいるのに、渡邊は一切注意しやがらない。結局は別にそういう態度で良い言うことやんけ!
馬鹿馬鹿しく思って、後日同じ作業してる途中で一息つく時にまたあのポーズをとっていたら、渡邊はまた咎めに来た。そこで俺は先日の渡邊自身らのことについて指摘してやると......
「は?何を言ってんの?どうでもええやろ今そんなことは。今杉山君が人の前でそうやって問題ある態度取ってんのがおかしいっていう話で――」
「―――いい加減にしろよっ!!何で俺ばっかりが悪く言われなアカンねん!自分らは良くて俺はアカンとか何なん!?自分らのこと棚上げにして俺ばっか非難してんじゃねーよっ!!」
限界だった。その場で思っていること全てを渡邊に叩きつけてた。怒りをぶつけた。
普通の人間だったら、この程度ならこらえてみせたのだろうが、生憎俺はもう普通なんかじゃない。学生時代から続いた虐めと以前の引越センターでのことで心がだいぶ荒んでいる俺は、簡単にブチ切れてしまうようになってしまっていた。
ここでブチ切れてしまったら結局里山たちの思うつぼだってのは分かっていた。だけどこの頃の俺にこれ以上堪えるという選択肢はなかった。一度決壊してしまったら最後、そこからはひたすら罵声を浴びせ続け、所長に帰らされて、明日からもう来なくていいとの電話が入って、俺はまた終わった...。
――どうせ里山たちは今頃俺がクビになったことを喜んで、嘲笑ってるんだろうな。そして渡邊は俺なんかさっさと忘れて、なかったことにしてるんだろうな。せいぜい“虫けらが何か喚いた”って思ってるんだろうよ。
また俺は、理不尽にハブられて、貶められて排除されたんだ...。ちょっと会話が出来ないから、コミュニケーションが取れないからとかいう理由で、俺はこんなにも差別を受けて弾かれるっていうのかよ。
いや―― “杉山友聖は理不尽に虐げられる”運命だから、か?そういう運命だから俺だけが理不尽に、不当に差別されて排除されるのかよ。
ああそれなら理解できるよ。同時に諦めとさらなる憎悪も芽生えたよ。
お前らがその気なら、俺も理不尽ってやつを存分に行使して、欲望のままに行動してやるよ。
お前らをぶち殺してスカッとしてやろう...!!
当時のあいつら年下バイトどもは宅急便会社には就職せず、それぞれ別の会社で勤めているようだ。人の将来なんてそれぞれ違ってくるから当然と言えば当然だけど面倒だな。まぁ瞬間移動で回るから大した手間は取らないか。あいつらの住所は一瞬で分かる。
すぐに行こうと思ったが、先にあのクソ責任者...渡邊宗貴への復讐を済ませるとしよう。あいつは4人への復讐における前座だ。ヘイト度合いとしてはあの4人よりは低いからな、先に低い奴から殺すとしよう。
――で、数秒で移動した先にあるのが......2年近く勤めてい宅急便会社 佐〇急便東大阪営業所だ。
アイツは現在ここの所長を務めていると知った...順当に地位を上げてはいたようだな。ここを辞めた時点での奴の見た目の年は28才だったと思うから、今は少なくとも50才にはなってるってわけか...。
まぁいい。早速行こうか。今は勤務中だろうから中にいるはずだ...!
よしと叫ぶと同時に勢いよく所内に入り、周りの従業員どもを昏倒させて、一分も満たないうちに標的を発見した...!
「――なっ!?だ、誰や君は!?彼らを......いったい!?」
「お久しぶりですー、渡邊さーん。もう覚えてねーかもしれないけど、ここの元アルバイトの杉山友聖ですー。お前をぶち殺しにきましたーぁ!!」
ガツンンンンンンッ!! ガシャアン!!
「ぐぉ...!?」
有無を言わさないまま渡邊の後頭部を上から叩き殴って、デスクも破壊した。大丈夫だまだ死んでいない。
「とりま思い出しとけや。......お前は俺なんか虫けらとしか思ってなくて、どうせ俺がバイトしていたことすら憶えてねーんだろうよ?お前にとって俺の存在なんかその程度だったんやろーな」
「う......お...!」
「まぁどうでもいい他人なんて所詮その程度の認識だよな?当時の俺は、お前らとはまともにコミュニケーションを取ろうとはせず、残業なんて絶対しないで帰るし、仕事も大して出来たわけじゃなかったしなァ。そんな人間だったから、お前らは理不尽に俺を排除しようって考えてたんだろ?ちょうどあの4人のクソバイトが俺を忌々しく思っていたのもあって、俺をここから追い出そうとしたんだ...そうだったんだろ?」
「そ...そうか。お前は20数年前の...!俺はただ......里山君らが君の素行に問題があったという報告を受けたから...。報告だけだったから君をどうこうするわけにはいかなかったから、クビにしようとはしなかった。これでも僕は君のことは大目に見ていたんだぞ!?」
.................何言ってんのコイツ??
「俺の素行に問題?お前はそんな奴らのデタラメ報告を簡単に信じたのかよオイ。俺がお前に告げたあいつらのサボり報告の方がまだ信憑性があったんじゃねーのかよ、え?」
「......彼らのサボりを大目に見てやった代わりに、君の悪い評判についてもなかったことにしてあげた僕に、むしろ感謝してもらいたいと――」
バキィ!「――づごっ!?」
「.........もういいよお前。
あいつらの下らない妄言を真に受けて、その嘘で作られた悪評をつきつけない代わりに俺がガチで告発したあいつらのガチの不正を無かったことにした......要はそういうことだろ、お前があの時やったことはよぉ。
仲が良かったあいつらの嘘を信用して、職場の輪に入れず仲など一切良くない俺の本当の事はロクに信用しない。まぁ......それが“社会”ってモンだよな?信用・信頼、それらをするに値しない人間の言葉なんか、どれだけ正当で真実を帯びていようと受け入れられないのが現実だ...」
ヒュ――ドガッッ「ぎゃあっ!」
「まぁそれ以前に......俺という人間には誰も味方なんて存在しないから、あんな理不尽を強いられたんだろーな?俺が腰に手を当てて一息ついただけであんな大声で人前で俺を咎めておいて、お前らは好き勝手にやってたのは、単に俺が鬱陶しかったからだったんだろ!?」
ドゴッ、ガスッ!「がふっ、おえぇ...!」
「よくも......よくもよくもよくもよくも!俺を陥れてくれやがったな!?俺をハブって理不尽に咎めて、クビにしてくれたな!?あいつらの不正をスルーしやがったな!?赦さねー......ぶち殺す...!!
......ってのが俺の心中だ。そういうわけだから俺に残酷に殺されろ、渡邊宗貴...!」
グイッ...「まっ待て...!彼らは本当に君の素行不良を目にしたと主張していたぞ!?それを棚に上げて、こうして僕に突っかかるのは間違って――(ザシュ!)ぐあああああ!?」
「もうお前と討論する気はねー。俺の言葉が嘘か誠かについて証明する気も失せた。ただただ俺の恨みをその汚い体で受け続けろ...!」
全身を五寸釘でぶっ刺しまくり、顔面・腹を蹴って殴って、手足を釘ごと踏みにじって、熱湯を傷口にかけるなど……思いつく限りの拷問を執行した。
「ぎゃああああああああ!!ぎゃあああああ”あ”あ”あ”!!助けてえええええ”え”え”え”え”...!!!」
「俺は誰にも味方されずに生きてきた。誰からも味方されない、助けてもらえないという孤独感と絶望を実感しながら苦しめよ、ほらァ!!」
「誰かぁ、誰かァ!!助けてくれェ!!この狂人を止めてくれっっ!!!」
「......その無駄に出る声は邪魔だな......潰れろ」
「―――がひゅっ!?―――っが......」
喉を蹴りつけて声帯を破壊したことで、渡邊はもう声が出せなくなった。コイツの命乞いとか聞く気は失せた。後はひたすら甚振って潰せれば良いや。
「お前にはあのクソバイトどもや今までの連中と比べて悪意はそれ程少ないのは分かった。それでも俺にとっては殺意を抱かせる程のヘイトを溜めてしまっているから、殺すことに変わりはねー。だけどまぁそこまで残酷に甚振ることは止めておいてやるよ......死ね」
「ひっ!~~~~~~~~っ」
拷問を始めてから1時間後、最後は大剣で叩き斬ってぶっ殺した。
死ぬ間際の渡邊の最期の顔は、絶望に染まっていた。はは、いい気味だ。
「よし。前座の復讐はこんなもんで良いか。
残りの奴らに対しては、一人一人訪問して、殺すとしよう…!」
営業所を爆破して、俺は次の標的のところへ向かった――。
ドガッッ 「ごぁ、は...!」
「いちばん近くにいるお前から潰しに来たぞ、田原元気《たはらげんき》」
今回は普通にインターホンを押して標的のもとへ訪問した。標的...田原がドアを開けて顔を出した直後、有無を言わさず顔面を殴って部屋の奥へ吹っ飛ばした。家の中に入って防音防振動の結界を張って準備を整える。
そして奥で伸びている田原の髪を乱暴に掴んで思い切り投げ飛ばして窓に叩きつける。
ズタンッ!「ぐぉっ...!」
「里山と一緒になって俺に対するデタラメな悪評を職場でまいて、何度かサボって俺の仕事を増やしてくれたなぁ...?」
投げ飛ばされて床に落ちたところを拾って、壁目がけてまた投げつける。
ビタンッ!「か...はっ」
「お前は勤務初日から俺に対してタメ口だったな?俺に対してだけ、だ。何なのお前...?俺を始めから舐め腐った態度を取りやがってよぉ。不愉快だ、死ね」
「お...い、さっきからお前は何言って――」
「職場の先輩に対してお前とは何事だ!?人を舐めるのも大概にしろぉ!!」
刀で滅多刺し、銃も使って蜂の巣にしてやり、数分後には損傷激しい死体が完成された。その間の田原は醜い絶叫を上げ続けていた。
「...いかんなぁ、ブチ切れてしまってつい当時のことを思い出させるのを忘れてたわ...。まぁいいか。今日の復讐は...ただ単に殺すしよう。いちいち相手に思い出してもらうのメンドくなったし...」
別に思い出してもらう必要無いか。この憎悪を晴らす為の復讐...殺人が成せれば良いのだから...。
次、行こう。
「杉山...?知らない奴――」
「はいはいお前の意見はどうでもいい、お邪魔するよ。村田和也《むらたかずや》君」
ドッッッッ!「ぐぉえぇ!?」
二人目は、里山と同じ中学・高校だったらしい村田のもとを訪れた。金属バットを奴の腹に投げつけて派手に吹き飛ばして、倒れたところにさらに追撃...マウントを取って顔面をひたすら殴りつける。
「ごっ、がっ、ぺぎぃ...!お、おばえっ!何なんだ!?俺に”、何の理由があっでこんな...!」
「ん...?心当たりねーのか?20年以上前のことなんだけど......佐〇急便って言っても分からんか?」
「さが.........あ...!?」
「おお、少しは思い出したって感じだな?俺はぁ、お前らの下らないデタラメ悪評のせいで職場から孤立させられたり、あのクソ渡邊から苛つくこと言われたりもして...すぅ~~~~~~っごく不愉快で最低な思いをさせられたわけ。だから、あの時の恨みをこうして晴らしに来てんだよ、オーケー?」
胸倉をキツく掴みながら簡単に事情を説明してやる。途中首が絞まったらしく、村田は顔面蒼白なって聞いてるのか分からない態度を取っていた。再び乱暴に投げ捨てて武器を創ってる間に、村田は慌てて起き上がって電話に手をかけてコールする。
が、繋がらないと知って苛立たし気に頭を掻きむしる。
「ちくしょう、何でっ!?ここが圏外なはずがないだろ...!?」
「結界張ってあるから無駄だぞー?お前らの電話機器は全て使えねーようにしてある」
「結界...?何訳の分からないこと言ってんだこの狂人が...!」
「お前も狂人呼ばわりかよ。まぁいいや。というわけでもうぶち殺すから」
そう冷たく言い捨ててサバイバルナイフを脅すように掲げてみせる。すると奴はさっき首を絞められた時みたいに顔を蒼白にさせて後ずさっていく。
「お...おいっ!何だよソレ...。あのバイトの時は確かに杉山...さんの嘘の悪評をばらまいてあんたの印象を最悪にしたことは...今思い出した!だ、だからといってそれで...まさか俺を...刺すっていうのかよ...!?」
「うん。コイツで今からお前をぐちゃぐちゃににて殺そうかなって」
「ひぃい!?か、考え直せっ!おかしいだろっ!?そんな理由で人を殺すなんて狂ってるっ!い、慰謝料ならちゃんと払うから...!こ、ここまでで――」
「一応俺は先輩なんだから敬語使えよクソが」
グサ………―――!――――!!
「――あぎゃあああ...がふぅ、ごぷぅ...!ア、アア......ァ」
最後まで聞く耳持たずに、俺は村田をナイフで存分に苦しめて殺した...!
全身の血を流したんじゃないかってくらいに傷をつくって血を出してやって、村田は苦痛で歪んだ顔をしていた。その顔を俺は満足気に笑いながら見下して、死体を弄んでから家を出た。
さぁ次だ。
次の標的となる男は、運良く村田宅の近くにいた。営業回りの途中だったのか、車内で食事をしているところを強襲した。
「坂本歩《さかもとあゆむ》...お前は里山と同じくらい俺にヘイトを溜めさせたなぁ。里山の前にお前を惨殺させてもらうぜー...!」
大破した車からパニックを起こしながら出てきた坂本を、無慈悲に殴りつける。
「うわああああ!うわああああ!?何だ、何なんやお前はぁ!?く、車を一瞬で破壊して...!」
「俺は杉山友聖!20年以上前、お前らに貶められた恨みを晴らす為の復讐をしに来た」
「杉山だと...?20年も前の......まさかっあの追い出した男...!?」
「そうや...久しぶりやなぁ。あの時のバイト間ではお前らは後輩だったのに、先輩だった俺に対してだけは微塵も敬意を払わず、それどころかサボって俺に仕事押し付けるわ、里山らとグルになってふざけた真似してくれたなぁ?明らかにお前らが悪だってのに、何で俺が悪者扱いされなきゃならなかったんだ?お前らのせいで、俺はあの勤め先でも居場所を失ったんだ!」
「そ、そんなこと言われたって知るかよっ!あれは、お前が悪いんだ!俺らを悪く言うから...気に食わないことしたから俺らに疎まれたんだ!」
逆ギレしながら坂本はスマホを取り出して通報しようとする。コールする前に俺は風魔術を飛ばしてその腕を斬り飛ばした。
「あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”っ!?俺の腕がああああ...!!」
「全く...気に食わなければああやって俺を貶めて良かったってのかよ。......つくづく思うよ、お前ら虐げる側は勝手過ぎるって。自分らの勝手な思想・思考・理由・感情、その他色々で平気で人を虐げて排除しようとしやがるもんな...。ああ、ホントクズだなお前らはぁ!!だからそんなクズのお前を、ここでぶち殺しまーすっ!!」
さらに風の刃を飛ばして、もう片方の腕・両足・両脚を順番に斬り飛ばしていく。
「あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”っ!いぎゃああああああ...!!」
血達磨状態になった坂本の顔面に、濃硫酸と熱湯を交互に浴びせてやる。面白いくらいに苦痛に悶えて絶叫する様を嘲笑う。
「やめでぐれぇ!謝るっ!あの時のことを恨んでるなら謝りま”ずっ!!ごめんなざい”い”っ!!デマを流して貶めたごどじでしまってごめんなさい...!!」
「うるせーバーーーッカ!!そのまま苦しみまくって死ねよカス野郎っ!!」
「あ...あ”ぐま”ぁ、あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”.........」
――――――
「くはははは...!良い絶望面して死にやがったなぁ?俺を意図的にハブって排除したからこうなったんや。攻撃する相手は選びましょうねー?」
坂本の無様な死に様を撮影してから、この場を去った。
さぁ後は一人だけだ、奴には絶対にいちばん地獄を見て死んでもらおう...!
対象 里山浩基
「村田の奴、もう約束の時間過ぎとるやんか...電話にも出んし...。何やっとんねん」
里山浩基《さとやまこうき》は駅前でスマホ画面を眺めながら、約束の時間になっても現れない旧友への愚痴を零しはじめる。元々村田は待ち合わせの時間にはルーズな方で、待ち合わせはいつも彼が後から来ることになっている。
久しぶりに二人で飲みに行こうとのことで、里山は一足先に待ち合わせ場所に来たのだが、待ち人の村田は未だ来ずである。
「時間にルーズなんは相変わらずやなぁ。けど電話すら寄越さんのはおかしいな...いつも遅れるって連絡は来るはずやのに」
あと10分経って何も連絡が来なければ、今日は中止にしようと決めつつスマホゲームで暇を潰すこと5分経ったところで、
「...?あれ?誰もおらへんな...?」
スマホを閉じて改札を確認してみると駅内の異変...自分以外の人間が誰一人としていない事態に気が付いた。ついさっきまで人の声がしていたはずが、今は風の音しか聞こえなくなってる。改札から人が出てくることさえないのは明らかに異常だ。
不穏な気配を察した里山はここから立ち去ろうとしたが...
「あ...?な、何で行き止まりが!?」
見えない壁が何かが里山の進行を妨げているような現象が発生して、駅から出られなくなってしまっている。増々異常な事態に半ばパニックに陥っていると、自分以外の人の声が耳に入ってきた。
「お前がさっきから待ってる奴は、もう来ねーぞ。俺がぶち殺したからなぁ」
「...!?」
若い男の声......だがその声は以前どこかで聞いたような気がする。戸惑っている里山をよそに、さっきの声の主が姿を現した......血まみれの鋸を手にした状態で...。
*
検索魔術で里山の動向を確認したところ、奴は今日、村田と飲みに行く約束をしていた。
日中のうちに田原と村田、そして坂本を殺しているうちに、里山と村田がこの駅で会う時間が迫ってきていたので、急いでこの駅まで移動した。
今回も誰にも見られることなく復讐がしたいということで、人払い結界を張り、駅構内にいる無関係の奴らを排除した。
さらにこの駅に電車が停車しないようにもしておいた。
これで存分に復讐ができる...!
「お、おいアンタ......この異常現象を起こした奴か!?俺の待ち人をどうこう言ってなぁ?それに......その凶器に見える鋸はな、何や...!?」
「いっぺんに質問すんなや。まず一つ目の答え...駅に誰も人がおらへんかったりここから出られなくなってるのは俺の魔術の仕業や」
「......は?」
「二つ目...待ち人である村田和也は、俺に復讐されて無惨に死んだ。」
「ちょ、おい......」
「三つ目...この鋸はお前らの同期バイトだった坂本歩の奴をぶち殺した時に使った物や。ついさっきアイツを殺してきたから、まだ血が乾いてないんだよねー」
「待てやおい...!!」
軽い口調でペラペラと疑問に答えてやったのに、何か怒り口調で呼びかけてきたので、不愉快そうな顔を向けて何だよと問う。
「アンタ...村田を殺したって言ったのか!?だから...さっきから連絡が...!」
「あー電話かけてたのか。アイツは今から1時間近く前には殺したからな、連絡出来なかったのは当然だな」
「何、言ってやがる...!人を殺しておいて、よくそんなヘラヘラしていられるな!?俺の旧友を殺しやがって...!!」
俺の態度が気に障った様子で俺に怒りの言葉をぶつけてきたのに対し、俺も憤怒を湛えた表情で言葉を吐いた。
「お前こそ、過去に俺を貶めておいてよくキレていられるなぁ、え?俺を理不尽な目に遭わせたから今のこの状況になってんだろーがよ。逆ギレしてんじゃねーぞ、ゴミカス野郎がっ!」
俺の剣幕と声量に少し怯んだ様子でいたが、気を持ち直して反論する。その顔には怒りに加えて困惑の情も見られた。
「俺が......アンタに何かした言うんか!?というよりもその声、さっきから覚えがあるぞ...!誰なんやアンタは!?」
「へー俺の声に覚えあるんかー......俺は杉山友聖。20年以上前、お前らに貶められたことに対する復讐をしに来まし、たっ!!」
ザシュウ!!「―――ぇ、ああああああ...!?」
返事の終わりと同時に、俺は里山の真横に瞬時に移動して、手に持っている鋸を振るった。里山の右腕が深く抉られた!
その直後、里山が激痛のあまりに悲鳴を上げてへたり込んだ。ちょうど蹴りやすい位置に奴の顔があったから、その顔面に爪先蹴りを入れて吹き飛ばしてもやった。
倒れたままでいる里山の前に立って見下す。里山は半泣きになりながら俺から逃げようとするが、容赦無く追撃をかける。
ズババン!「――うぎゃああああ!!」
脚の腱を深く斬って逃げ足を潰した。もう逃げることは出来ない...!
「ひぃああ...!止せ、止せぇ!!俺がアンタを貶めたって何やねんっ!?人違いしてんじゃねーのか!俺は何もやらかしてへんわクソがぁ!!」
「あぁ?この期に及んでまだ白を切ってるのか、本当に憶えてねーのか...どっちでもええけどとりあえずお前の記憶を引っ張り出してやるよ...ほら」
いつものように頭に手を当てて標的の記憶を引っ張り出してやる。途端に里山は顔色を変えて俺を凝視する。
「そうか......思い出したぞ!SGフィルダー(=佐〇急便)でのバイトでいたあのいっこ上の先輩...杉山、か...!あの時、俺がお前を貶めた...だからアンタは、ここに...!」
「そういうこと~。ハァ、それにしても相変わらず俺を呼び捨てか。先輩に対する態度じゃねーよなぁ、お前らどいつもこいつもは...」
「...ハッ、アンタに払う敬意なんかねーよ...!あの時も、先輩のくせに仕事の要領が悪い、そのくせ周りの従業員らとロクに会話・コミュニケーションを取ろうとせずボッチでいやがる......そんな奴はあの場には要らないと、俺たちは判断したんや!アンタみたいな人間がいると空気が悪くなる!アンタ自身に問題があるからああいう目に遭ったんやっ!!」
「......まーた俺が悪いって、そう言いたいのか」
「あ、ああそうやっ!杉山、アンタは存在そのものがその場の空気を悪くするような人間やったんや!アンタがもうちょっと人と上手く付き合える性格であったらあんなことにならんかったんや!俺らが流した噂もあながち間違ってへんかったはずやぁ!」
「だから?俺を排除しようと、上司らに上手く取りなして味方につけて、上手いこと俺を敵扱いさせたってわけかよ......つくづくお前らは、俺を理不尽に消さなきゃ気が済まねーのか...?」
「し、知るかそんなの!とにかく全部アンタの性格が問題やったんや!それなのにアンタはこの期に及んで逆上して、俺の友達をたくさん殺しやがって......ふざけんのも大概にしろやああああ!!」
終いには里山は怒りに任せて好き放題言ってくる。結局こいつは、正当な注意をした俺が悪者、あからさまな悪意を持って俺を害してきたコイツラが正しい……といった、意味不明な主張をしかしてねーな。
...要するに、反省の余地は皆無。ただただ胸糞悪い気分にさせられただけだ。
「――よって、惨殺刑」
大罪人里山への死刑宣言を告げると、何もないところから炎でできた剣を創り出す。そしてその剣を里山の左肩に躊躇無くぶっ刺した!
グサッ......ジュウウウウウウウ...!!
「え...?――っあぎゃあああああ”あ”あ”あ”!!いだっ、あづいいぃ!?火ぃ、火がっ!?」
刺された激痛と炎の灼熱の痛みによる刺激は、里山に地獄を体験させるのに十分な責め苦となった。この炎剣で刺したところで対象を燃やすような事態にはならない。代わりに灼熱による激痛を味わわせている。
肩の次は......指先を刺すとしよう!指先と足指をそれぞれ1本ずつしっかりぶっ刺していく。1本1本に灼熱の激痛が里山を容赦無く襲う。平和ボケしたこの世界で生きてきた人間にとっては、こんな拷問だけでも十分地獄なんだろうな...。
「ほらほらさらに1本ー!あはははは!痛いですかぁ!?」
「いぎゃあああ...!!いだい”、あ”づい”ぃ!!指が、指ばぁ!!だずげ......」
「おい気絶すんなっ、これで終わりにするわけないやろうがい」
熱湯投下。
「――つぎゃあ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”づいいいい!!」
「よし起きたな。じゃあ続けようか、地獄の拷問を」
次も炎で創られた凶器を使う。今度は五寸釘だ。コイツを対象の腹に数本埋め込んでやろう!
「待っ―――いであああああああっ!!あづい熱いあづい”あ”づい”熱いぃいいいいい!!!」
「おおー腹が真っ赤っかだー。その汚い腹で焼肉が出来そうだなww」
「あ”っ謝る、謝りまずぅ!!俺の勝手な考えでアンタを職場から居場所を潰してしまってすみませんでしたアァ!!!」
「うん、そうやって自由に喚いてろよ。こっちは存分に拷問を楽しんで復讐するからさ」
「そ、そうじゃなくて、止めてぐれぇ!!俺が悪がっだ!そ、そうだよな?人には色々何かしら抱えているもんな!?あ”...アンタだって何かワケがあって人と上手く関われなくなっでだんだろ!?あの時の俺らはそんなこと分からずにアンタを攻撃してしまった...!今なら分かる、分かりました...!マジでごめんなさいぃ!!赦してくだ――」
「赦さねーつってんだろ。ウゼーんだよ。分かってねーのに分かったような口を叩くなや、この嘘つき野郎が」
俺のこと何も理解できていないカスが、何が分かりましただ。アホらしい。
「虐げる側が俺らのことを理解するには、俺らが経験してきた地獄を同じ...あるいはそれ以上のレベルで経験することが必要なんや。お前はまだ足りてねーんだよ...俺を理解するに必要な地獄経験が...!」
「ぞ、ぞんなごどはない”っ!!もうわがっだ!アンタの痛みはこれくらいの地獄だってごど、わがっだがら......赦して、ぇ...!」
泣き叫んでひたすら助けと赦しを乞う里山を...俺は悪魔の笑みを浮かべて冷酷に告げた――。
「残念ながら俺が味わった苦痛と屈辱は、こんなもんじゃねーよ。勝手に人の味わって来た地獄を決めつけるなゴミクズが」
次の瞬間、里山は業火の渦に呑まれた...!
「ぎゃあ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”っ!!皮膚が溶けるっ!!目が焼げでいぐ...!助けてっだずげでぇ...!あづいぃ、嫌だぁああ”あ”あ”あ”...!!」
摂氏せいぜい100~200℃ってところか。根性焼きを全身一斉に延々と入れられてるようなレベルだ。いつも通りの出力でコレを放ったら、生物は一瞬で炭になってしまう。
ただ焼き炙ってるだけじゃつまらないから、斬撃性を帯びた風魔術も投入した。渦の中から体が斬り裂かれる音とそれによる里山の悲鳴が聞こえてきた。中は相当エグいことになってそうだなww
「はぁ~~~面白っ。何かを燃やしてるところを見るのって、心が落ち着くよな~~。ましてや憎い奴をこうやって燃やすのは最高に安らぐわー。
......心が清まったところで、止めは派手にいこうか!」
しばらく炎渦と斬撃の拷問の様子を観賞してから、引火性が凄めの粉塵を詰めた瓶をいくつか作る。そしてそれらを全て、渦の中に放り投げた...!
「ご、ごんなごどなら”っ、あのどぎあんなごどずるんじゃながっだ...!!俺は、どんでもない人をおごらぜ―――」
――――ドガァアアアアアアア.....!!!!!
里山の最期の言葉が終わる前に大爆発が起こり、空には凄く汚ぇ花火が上がった...!
「あぁ^~~~~~~~愉快愉快っ!!心がまた浄化されたようだ...!嘘だらけの噂で人を貶める奴らには当然の報いや!」
空に中指を突き立てて、拠点に帰って行った。
翌日。朝食を済ませた後、私物を全て最初のアパート部屋に戻す作業を始めた。ここ大阪での復讐対象はもういなくなったからである。
まぁ正確にはもう一人と一匹、殺したいのがいたんだけど、両方はもうとっくに死んでいたそうだ。事故死らしい。ざまぁ。
というわけでここの拠点は完全に用済みだ。撤収作業をさっさと済ませて、退去する。
日本に戻って最初の拠点にしていたアパートの近くに、3つ目の復讐対象となる会社がある。今度はとある社員と社長が標的だ。
社会人生活で出来た復讐対象は残すところ4人。全員、今頃は耄碌した老害人間となっている年頃だろう。幸い、全員普通に生きていることが分かった。寿命で死んでたら不完全燃焼だからなぁ。
30分くらいかけて全ての私物を転移し終わった後は...この用済みとなった故清水の家を粉々に破壊してやった。ざまぁ。
そして瞬間移動で久々に最初の拠点に帰って来た。4~5週間ぶりだから別に懐かしいとは思わない。復讐に走ってる間に、最近読み集めはじめた作品の最新刊が出たとのことで、今日はそれらを熟読して過ごす。夜はステーキ肉を食いまくって明日への英気を養う。
「さあって!明日も復讐対象を存分に甚振ってぶち殺すぞぉ!!」
酒に酔いながら俺は明日の抱負を叫んで、そのまま眠った...。
*
大阪市阿倍野区にあるとある一戸建て...の跡地。そこにはパトカーが数台停車してあり、数名の刑事が調査をしているところだった。
昨夜ここで爆発音がしたとの通報を受けて、来てみれば既に粉々になっていたという状況だった。
「火事......じゃなさそうですよね。焦げ痕が見つかりませんでしたし...」
「ここまで粉々に壊したとなると...爆破したとしか考えられへんな...。それもトンネルを開通する際に使うレベルをも凌ぐ規模の火薬を使ったと考えられる。どこでそんな凶器を手にしたのやら...。
......ところで例の人物の関係者への調査はどないや?」
「はい......まずは彼...杉山友聖の身内へのコンタクトには成功しました。彼とご家族とは彼が亡くなるおよそ2年前から絶縁関係になっていて、ご家族が彼の遺体を目にしたまでは一切の連絡もしていなかったそうです。彼らの仲は険悪だったと考えられます」
「孤独死するくらいやから、家族仲が最悪なんは予想できてたけどな...。んで、身内以外の人物には接触出来たんか?」
「それが......ご家族の話によると、彼は学生時代で酷い虐めを受けていた...そうだ、とのことで親しい人は一人もいなかったと分かりました...」
「何や歯切れ悪いな?親は息子が虐めに遭ってたこと把握してたわけやなかったんか?」
「ええ......彼からそういう相談はされたけど、当時は虐めだと把握出来ていなかったと言ってましたね...」
「んー。息子から虐めを受けていると言われたけど本気にしなかったと...。そういうのが拗れてしまって絶縁した言うことか...。っていうか、これじゃあ何の手掛かりにもならへんな...。次は......馬鹿馬鹿しいかもしれんが、杉山友聖を最近目撃した人がおらんかったか、被害者たちが住んでた地域の店の人らに聞き込みに行くぞ。監視カメラをチェックして奴らしき人物がおらんかったか捜すんや」
「了解っす」
故清水宅の調査を終えた後、不審死を遂げた人物らの住宅地周辺での杉山友聖に関する聞き込みを始めた。
そして調査開始から約3日後、彼の姿を捉えていた監視映像がいくつも発見された――。
二つ目のバイト先をクビになってから、俺の心はさらに荒れていった。些細なことで家族に当たり散らすようになり、家庭内暴力手前のことを起こしてしまった。それをきっかけに、あのクソ叔父が出てきて俺は勘当処分されて大阪を出て行くことになった。
家族とはもう関わりたくないということで、俺は思い切って単身で、実家から遠く離れた地...北国へと移った。
安いアパートで暮らし始め、しばらくニート生活を送っていた。しかし働かずの生活は当然長く続かなかった。
目減りしていく貯金を見て危機感を抱いたところで、仕方なく再々就職を決意した。
この段階でかなり心を病ませていて鬱になりかけていたのだが、生きるには金を稼がなきゃならないということで、嫌々働きに出た。働き甲斐など微塵も無い。金が無くなった死ぬから、仕方なく金の為に働くしかないのだ。
相変わらず面接を受けては落とされての繰り返しがしばらく続いて金(履歴書と証明写真の代金)と時間を無駄にする日が続いたが、やっと内定をくれた会社と出会った。
清掃会社「オネストメンテナンス」 独立して立ち上げた小さな清掃会社で、社員も社長含めて3人しかいないという規模だった。俺みたいな人間を雇ってくれる職種はもうこういうのしか無いだろうと思ったから、今度こそはああいう理不尽が起きなければ良いなと願いながら勤務を始めた。
まぁ、当然その願いは虚しく叶えられなかったんだけどな。
まず外での清掃業はほぼ定時に帰れない。現場移動の変形労働時間制のせいで、現場によっては早く終わることもあれば、9時間以上働かされることもある。
応募欄には8時間労働制と書いてあったからここに応募したのに、この時点でここはブラックだと確信したわ。
しかしここを辞めたらもう俺に働き口が無いという事態になりそうだったから、よほどのことが起きない限りは辞めないという方針で行くことにした。残業時間があれば定時より早く帰れることもあるから、イーブンだと妥協することにした.........本当は不本意なのだが。
「杉山君、正確にするのは大事だけど、慣れたら速くこなすこともできるようになってね」
「この道具は、こう使う。そう、そういう感じ...」
「ちょっと休憩するか......何飲む?」
社長の名は杉浦俊哉《すぎうらとしや》、当時60才のジジイだ。身長は俺より高く180㎝はあった。奴はこれまでのクズどもと比べれば、まぁマシだった。定時を守らないのはムカつくが、俺に対して嫌味も無く、ハブり者にすることもしなかった。雑談に興じてくることもあり、今までよりかは比較的マシだった。
他の社員もまぁ害はなかった。ヤニカスもいなかったし。だからこの社員だけだったら上手く続けられていた...。
問題が発生したのは、勤めてから1年経った頃のこと。杉浦が他の清掃会社からお手伝いを要請するようになってからだ。元々お手伝いしてもらっている清掃会社とは長い付き合いで、杉浦とある社員が同期ということもあって度々一緒に仕事をすることがあったとか。
で...その清掃会社の連中が、俺の心に止めを刺してくれたゴミクズどもだった...!
きっかけは...あの老害...遅川《おそかわ》たけしの人前での喫煙行為だった。俺は引越センターでの度重なる受動喫煙とハブり者扱いによって、副流煙を少しでも吸うと気分がわるくなり、体調を崩すようになってしまった。まぁ単純に副流煙は体に害だし、なるべく吸いたくないというものだが。
引越センターの仕事以降、普段でも歩きタバコのクソどもにも辟易するレベルになってしまい、特に仕事中とかは俺の前で喫煙行為は止めて欲しいと、面接でそう言っておいた。そのせいで面接を落とされるという理不尽を受け続けたのはまた別の話。
そういうわけで勤務中での受動喫煙は無いように努めてもらったんだが、奴は...遅川は俺の風紀を乱してきやがった...。
「遅川さん。俺タバコの煙が無理なタイプなんで、そういう煙吸ったら体調悪くなるんです(という設定にしてある)。ですから俺の前で喫煙は止めて下さい。ご協力お願いします」
俺は間違ったこと言ってない。そもそも受動喫煙は非常識であり、喫煙者は分煙に努めるべき、非喫煙者への配慮をきちんとしなければならない。だから俺には何の非はなかった。あるはずがなかった。
なのに......
「ちっ......。鬱陶しい」
俺に注意されたあの老害は謝るどころか、舌打ちして陰口を吐いてそのまま喫煙を続けようとしたのだ。その時は俺が再度止めろと言って止めさせてその場は終わった。
俺の立場に異変が起きたのは、次にお手伝い連中と仕事した時のことだ。
俺はまた、意図的にハブられるようになった。
(......あいつや、あのクソヤニカス老害が...!)
先日俺に注意されたことがそんなに不快に思ったのか、遅川が主に手伝いにきた社員どもを唆して俺を輪から追い出したんだ。
遅川と一緒になって俺を無視したり感じ悪い視線と態度を飛ばし取ってきたクソ社員らの名前は一応憶えている。
説田義一《せったよしかず》と池谷隼《いけたにじゅん》。池谷は、お手伝いに来る会社の社長だ。30代後半で妻子持ち。
そして説田は眼鏡をかけていた中年野郎。俺はしっかり仕事してるのに、水分補給してるところを見ただけでサボり扱いしやがった。サボってねーのに奴は杉浦にデタラメを吹き込みやがった。サボってねーのに俺は注意されるハメに遭った。
ここでも、嘘を言ってる奴の言うことを信用するというクソ展開が起こった。
いい加減ブチ切れそうだった。会社に戻ってから奴らが俺に対してだけ感じ悪いということを告げても...
「そんなことはないだろ?彼らとは長く仕事を共にやってるけど、特定の誰かに嫌がらせをすることはしないはずだ。...それより杉山君、以前たけし君と少し揉めたそうだね?まぁ俺たちは一緒に仕事する仲だからさ、あまりギスギスして欲しくはないよな。そこんところよろしくな――」
...なんてことを言うばかりだから取り付く島もない。このジジイは単に遅川どもとは友達だ、だから彼らと不和を起こしたくない、揉め事は御免だ...ってことが言いたいらしい。後は本当に奴らが俺に嫌がらせしてるとは思ってねーんだろうな。友達贔屓甚だしいクソジジイってわけだ...。