*性描写あり
「滅茶苦茶で結構。さっきは何か語ってしまったが、結局は......単に俺がお前らを殺したいと思ってるから、俺はその気持ちを行動に移してこうしてるだけだ!復讐に具体的な理由なんて要らねー。殺したいから殺すだけだ!!だから、お前も死ねよ」
「いやっ嫌ぁ!!助けて、ななァ!!助けて助けて助けて―――
(バシャアアアアアッ!!)
――ぃぎあ”あ”あ”あ”あ”あ”!!やだあ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”!!!」
皮剥ぎに飽きがきた俺は、あとは雑に処刑を執行した。バスタブが満タンになる量の濃硫酸を吉原の真上から一気に注ぐ。もの凄い音がして徐々に体が溶けていく様と激痛で絶叫を上げるあのゴミ女の泣き様は実に面白かった。
数分後、もはや原型が分からなくなった吉原の死体が出来上がり、それを足蹴にして吹き飛ばす。そしてもう一人の方へ目を向けてチェーンソーを掲げる。
「あ......嫌、嫌ぁ!あんな目に遭いたくない!お願い、やめてぇ!!」
恐怖にブルブル震えて必死に制止を求めてくるが、無視してチェーンソーを稼働させる。音が近づく度に顔を蒼くさせて涙を流しす。あと数歩のところまで行くと板敷は土下座姿勢を取る。
「すっ、杉山様の言うこと何でも聞きますからっ!一生あなたに従いますから!奴隷にでもなりますから、ななだけにはあんなことしないで、下さいっ!!」
「......」
「あ......こ、この体でいやらしいことしていいですからっ!知ってる?私AⅤ女優やってるから、杉山様のしたいこと何でもして上げられるよ?し、シても良いから...た、助けてぇ!!」
そこまで言った板敷の体を、俺は無言で眺める。そして無言のまま髪を雑に切ってショートにさせる。次いで服も乱暴に切り破る。
「!?へっ?いや...!」
「俺、見た目はショートヘアの女が好みなんだよね。お前の顔と体はまぁ、あのゴミブス女と違ってギリギリ抱ける対象に入るから………良いぜ、その体使わせてもらうよ」
「!!あ、ありがとうございます!!好きにして下さいっ!!」
見れば板敷の頬がほんのり上気して、発情した顔を見せてきやがった。無性に腹が立った。これは復讐だというのに何相手を悦ばせてしまってんだよ。
いや......良いこと考えた。
始める前に板敷の顔をこちらに向けて催眠術をかけてやる。
「あっ......はぁ♪」
そして始めたのだが……痛がるどころか、気持ちよさそうに喘いでやがる。最初のうちは快楽に喘いでいたが、しばらく経ったところで―――
「っ!?え......いっ痛い痛い痛い痛い痛い!!な、何で?何でぇ!?」
快感だったはずが突如激痛として感じるようになり、喘ぎ声が悲鳴に変わりだした。
「いっいだい”...!!ちょっと!止めて、止めてぇ!!痛い、痛いからッ!がはっ!あ”...やめ、で...!!」
「そうか?俺は気持ちいいが。つーか好きにヤって良いって言ったのお前じゃん。止めるわけねーだろうが」
「そっぞうだげどっ、い”ぎぃ!?あ”......いだい!!いだいぃ!!!」
「はっはっはっはっはー!そら、早く動かすぞ!」
「!!つぎああああ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”!!!」
板敷が何故突然激痛に襲われてしまってるのかは、さっきの催眠術が原因である。
“痛みの刺激と快楽的な刺激の感覚が逆になる”
つまり今のコイツは、殴られて斬られるなどといった刺激を気持ちよく感じるようになり、こういう痛くない刺激は激痛として捉えてしまうようになってる。
これは復讐だ。その標的があんなに悦んで蕩けた面をするのは我慢ならない!最後までコイツは苦痛と絶望に顔を歪ませてりゃ良いんだよ!!
「お”願い”い”い”い”い”い”!!!もう”終わりにじでえええええぇ!!!」
「黙れ、お前は俺に快楽を与える為の玩具だ」
十分後には板敷はうんともすんとも言わなくなり、顔を覗いてみると完全に生気が抜けていた。腹上死したか。
その屍を撮影してそのまま捨て置いて外に出る。
因みにさっきまでの行為は一部始終全て撮っておいたからまたネットに晒してやろう。
―――あいつらがやってきたようにな...!
「学生リスト10人削除完了」
「おい谷里、こいつか?締めてほしいっていう野郎は」
「うっす!弱いくせにイキってて、俺らの悪口も散々言いやがってて!しかも俺らサッカー部のことも悪く言ってましたよ!」
「ほぉ~~?それはいけないなぁ、そこの後輩?人の悪口言ってはアカンってこと、先輩が教えてやらんとなぁ...!」
ドスッ「ぐふっ...!わ、悪口は俺の方が酷く言われてる.....俺は俺をこんな目に遭わせてるクズどもにしか悪口は言ってねぇ...!」
「ほらっ!コイツ今もそうやって俺らのことクズって!ホンマ杉山は悪い奴やなぁ!」
「おうおう、確かに聞いたなぁ。じゃあ先輩の責務として後輩を締めるかっ」
ドガッ、ゴッ、ゴスッ...
「......っ、うぅ...」
「ははは!面白いサンドバッグだ!そんでムカつきもするなぁ?未だ俺のことを睨みやがるところがなぁ!!」
谷里と中林が連れてきたサッカー部の上級生 下田天武《しもだてんむ》。俺のことは事前に谷里から聞いていたらしく、説教っぽいこと言いながらも内心はただ俺を甚振ることだけが目的の、先輩などと敬う要素ゼロの糞カス野郎だ。
2年生になると、奴も俺へのリンチに加わり、時には仲間の上級生も連れて俺を甚振りやがった。
「や......め、ろ......や!!」
「ああ?先輩への言葉遣いがなってへんなぁ、クソ後輩がっ!!」
「ゲラゲラゲラゲラゲラ...!!」
こんな奴に敬語使う価値無い......この世に存在する価値も無いクズだ!
この糞カス野郎も......殺してやりたい、いつか――!
「いつか......ぶち殺そう!ってそう決めてたんで、こうしてお会いにきましたよー!先~~輩っ☆」
「あがが...!?」
「ぐ...あ......」
「ば、けもの...!」
場所は名前も知らないキャバクラ...の路地裏(店内じゃあ嬢たちに迷惑かかるしな~)。店内で騒いでいた復讐対象含む3名をここに引き摺って連れてきた。もちろん誰も俺らのことは気にならないように細工しておいた。引きずられながら周りの奴らに助けを求めてたこいつらは滑稽だったな。
で、ここにいる復讐対象は下田天武だけだが、残りの二人は...一人は下田と同じ中学で俺への暴行にも加わったことがあったクソ野郎(確か生野《いくの》って名前だったか)で、一人は無関係のオッサンだ。こんな奴の仲間になるような奴もどうせクズなんだろうから、全員殺そう。
「が......がぴぃ」
掴んだままでいる下田の顔面に爪をさらに食い込ませて、頬の骨にヒビが入ったところで下田を乱暴に投げ捨てた。
「お前には1年近くも殴られたり蹴られたりして虐げられたなぁ。あそこに転がってる生野って奴も唆して俺に暴行させたよなぁ?ただ面白がって俺を虐げてくれたなぁ。だからこうして復讐しに来たわけだけどぉ、お分かりいただけたー?」
グサッ...「~~~っぎゃあああああああ!!」
ナイフが脛部分に深く刺さると激痛に転がり回って絶叫する下田。四十後半の男あみっともない醜態晒してやがる。面白いので撮影した。ながら生野とかいうクソ野郎にもナイフを数本突き刺す。頭踏んづけてるせいで手足だけをジタバタしてる格好もまたお笑いだった。
「ひぃえああああ...!ち、中学の......お前、谷里たちに虐められてた下級生の...」
「お前も虐めに来てたろうが惚けてんじゃねーぞ糞カス野郎っ」
グソサァ!「あぇぎああああああああああ!!か、勘弁してくれ...!!」
「忘れたんなら別にそれでもいいや。俺が憶えてさえいれば良いしな...。あの時の虐めに対する報復をここで執行する。お前は処刑だ...!」
「お、覚えている!お、俺はあの時お前に暴行をしてしまって、生野も唆して一緒になって...!ひっ、ごめんなさい!!悪ふざけが過ぎたぁ!!」
動かなくなった脚を引きずって俺から距離をとって、必死に謝罪をした。
「謝るんなら何でそうやって俺から逃げて――」
「~~ああああああああ!!!」
ドンッ!!
体に衝撃がきたと思ったら、腹に弾丸がめり込んでいた。無関係の男が半狂乱になって発砲したようだ。だから距離をとったのか。
「は、はははははは!!復讐だかなんだか知るか!死ねよクズが!!はははははははッ!!」
俺の腹に着弾したのを確認した下田は、先程と打って変わって下卑た笑みを上げて俺を罵った。撃った本人も半笑いだ。まったく......効いてないってまだ気付いてねーのか。
「俺の体を銃なんかで壊せるかっての...」
「はははははは......え?は...??」
何とも無い様子で腹にめり込んだ銃弾を取り出す俺を見た下田たちの下衆顔が凍り付いた。呆然とした様子でいるさっき撃ってきた男に、銃と同じ速度で弾を弾いて頭に当てる。男は即死した。
「は?え、へ......!!?ぁあ...?」
「ごめんなさいする気ねーよなお前?さっきの態度でよぉ~く分かったからもう地獄に落ちろよ糞カス野郎」
グサドスザクブシュッ!!
「あぐぇごぁぎえがっ......げああああ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”...!!」
指全部と脇腹など特に痛覚がよくはたらく部位にナイフを深く突き刺して、文字通り地獄を体験させる。この糞カス野郎が泣こうが止めて赦してなどと喚こうがもう知らん。ただ残酷な処刑を求めて虐げ続けた。
「祖アtvんTヴぇGおお”prおげあぁ...!!」
「いぎゃあああああ!!!いだいっ!やべでぐれぇ!!」
「も”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”!!!」
目の前で生野を爆殺してお前もこうなるんだよと脅してみたり...
「あああああああ...嫌だ嫌だ、なりたくない...あんな最期は嫌だ...!!」
身も心も絶望に染めてやったところで、そろそろ仕上げに入る。地面を高熱のフライパンのように加熱する。脚から血を流し過ぎたせいでロクに立つことができない下田は、その場で無様にのたうち回る。
「ぎゃああああああああづい!!たすっ助げてぇ!!さっきはごめんなさい!!魔が差したんだぁ!!もうしません、あんなこと言いません!!お願いですごめんなさい赦してぐだざい”っ!!!」
「知るかよ、お前はもう残酷にぶち殺すって決めたっつったろ?解放したらどうせ発砲でもするんだろうが。つーか復讐しにきたんだから、もう生きること諦めろよ糞カス野郎。早く死ねよコラ」
ジュウウウウウウウ!!
「う”わ”あ”あ”ああ”あ”.........」
地面の温度が大体500度に達したところで、全身焦げがついた下田天武は死んだ。全身焼き爛れて焦げて、肉が焼けた臭いが充満していた、臭い。
「学生時代はこれで11人か。残る主犯者は二人だ...どっちも凄く殺したいって思ってるから楽しみだな~~」
ウキウキ気分でキャバクラを後にしてしばらく歩いてくと、また歩きタバコ吹かしてるヤニカスが近づいてくる。
顔面に金属バットで殴りつけて、そいつの頭を遥か彼方まで吹っ飛ばした。
「だぁかぁら~~受動喫煙させようとしてんじゃねーよ俺にさぁ!この国はマジで喫煙モラルがクソ過ぎるはホンマさぁ!!」
ドガラシャアン!!
八つ当たりで金属バットを投げ飛ばしてどっかの店のガラスを壊してしまった......が、誰も気にしない様子でいる。俺がそうさせているから誰も騒がない。
「ヤニカスはいつか全員滅ぼす。まずは復讐が先だ...!」
そう自分に言い聞かせて、ゴミクズが蔓延る繁華街を出て拠点へ帰って行った。
数分後、ガラスが派手に割れている様と頭部が無い死体を目にして大パニックを起こしたそうだが、どうでもいい。
対象 上方逸樹
「ふ~~食ったぁ...」
合計1万円相当の寿司を平らげて一息つく。日本食はここに戻って来てからはほぼコンプリートした。大トロよりも中トロの方が、中トロよりもサーモンが好きなタイプの俺はほとんど同じネタを食ってた。因みに場所は、廻らない高級寿司店。板前は俺の食いっぷりに啞然としてたが特に突っ込んではこなかった。こういう人間こそ生かしておくべきなんだ。面白がって人を傷つけて辱める奴・喫煙所外で喫煙するヤニカス・交通ルールとマナーをロクに守らない奴なんかは全員死ねば良い。
まぁ...そういう線引きは、復讐完遂後しっかり行うつもりだ。
今回珍しく外食しに来たのは、色々理由がある。一つはこういう寿司は現場で食うのが一番美味いからだ。出前も美味いのは美味いのだが、なんか足りない気がする。やっぱ寿司は握りたてが一番美味いね。
もう一つは......これから復讐しに行く奴が近くに住んでるってことで。そいつが帰る頃をここで待ってたってわけだ。待ってたから10000円以上分も食ってしまったが、金は無限にあるから構わない。
(そろそろ......帰ってる頃か)
店を出てそいつの自宅へと向かう。中村と小西と一緒になって俺の未来を潰したお前にはそれ相応の罰を与えてやるぞ............
上方逸樹《かみかたいつき》...!!
*
「おい杉山、お前中村と小西に虐められてんだって?その理由が、お前相当クズなんやってー?」
「何言ってんのお前?クズはあいつらやろうが...!こっちは理不尽に虐めを受けてきてんねん。それなのに、誰も俺を味方する奴はいない...」
「そらそうやろ?そうやって人のことをクズって呼んでる時点でアウトやろー?まずはそういうところから治さなアカンとちゃうの?」
「いや、いやいや。違うだろ。俺を面白がって暴行するような奴らをクズと呼ばずして何て呼ぶんや、ええ?ふざけんなっ!!」
「うわぁ......ホンマにコイツ悪い奴やなぁ。いきなり怒鳴るとか。そうやって他人のこと悪く言ってるから虐めに遭うんやろーが、あーあ」
「お前まだ言う......(ざわざわ、ひそ...)...くっ!」
上方と口論した場所が悪かった。他の生徒がいる教室で、実際に人の悪口を言ってしまった俺が悪だと、周りはそう思ってしまうのは当然だった(それもそれでおかしいはずだが)。
そして後で気付いた......クラスで孤立させることが、上方の狙いだったってこと。
野球部の坊主頭野郎の奴は、中村たちと仲良くなりそこで俺のことを聞いて、運悪くも性格がゴミクソの奴は面白がって俺の虐めを見物してやがった。
「ははは!オモロっ!実際に人が虐められてるところ見るの初めてだけど、オモロいもんやな~~wwいいぞーもっとやれー!」
上方はクズだ。最低な趣味をしてやがる。人が虐げられてるところをただ面白がって見物するのが大好きな、最低下衆な傍観者だ。本当に反吐が出るくらいに最低だ。
高校では主にアイツが俺の醜態をネットにばら撒きやがった。代わりに自身は手を汚すのを防ぐべく暴行には加わらなかったのだが、いずれにしろ奴は虐めに加担したと言って良い。
高校での虐めの主犯格にお前も入ってる......絶対に赦さない、ぶち殺す...!!
*
「清水や井村らと同じように、自分も虐めの被害に遭ってみようかここで~!なぁ上方くーん?」
ドガッ「ごぇ...!?」
上方の自宅に侵入するなり、重力を操作して奴を床に叩きつけた。そのまま床に這いつくばらせた縛り付ける。訳が分からない様子のままでいる上方に、自分が今何故こういう目に遭ってるのかを分からせるべく頭に触れてあの時の出来事を思い出させてやる。
「あ.........まさか、杉山、友聖...!?本当に杉山がここに...!?」
「ああ。高校振りだなぁ。今ので分かってると思うが、お前に復讐しにきた。今度はお前が、あの時の俺の立場になる番だ...!」
そして数分間、あの時俺が受けた暴行と同じように上方を甚振り続けた。顔面・腹・背中・指先・腕・脚・頭に拳と蹴りを入れて、全身痣だらけにしてやった。
暴行を受けている間の上方は、ただ止めてといった言葉を吐くだけだった。まるで虐めを受けている弱者であるその様を、俺は面白がって見下していた。
「どうだ?これが俺が味わってきた痛みと屈辱だ。お前が嗤って見ていた俺は、3年間ずっとその苦痛を受けてきたわけ。俺もさっきのお前みたいに止めろって言ってきたのに、あいつらは止めることなく俺を虐げてきたっけ。そしてお前はそんな俺をずっと嘲笑ってきたんだ...!自分は安全で害が無い場所でゲラゲラ嗤ってくれたなぁ?」
「ご、ごめんなさい...!反省してます、赦して...!」
痣だらけになって歯もいくつか折れた無様な上方は、ひたすら恐怖していた。なんて小心者で、折れるのが早い貧弱野郎なんだ。こんな奴に嗤われてきたのかと思うと苛立ちが増してくる。
「あ~~~~ホンマ苛つくわっ!!お前みたいな最低クソ野郎なんかにずっっっと嗤われて虐げられてきたと思うとさぁ!!ホント何だったんだよお前さぁ!?俺を傷つける為に生まれてきたような人間か?だったら俺自身がこうやって処分しないといけないなぁ!!」
そう言って上方の手足に五寸釘を深く、深く突き刺す。情けない悲鳴を上げる上方にさらに暴力を振るう。今回はひたすら殴って蹴ってこいつを甚振ろう。こんな奴に魔術使うのすら億劫だ。俺自身の腕力で、コイツを地獄に落とそう!
さらに1時間以上は、上方を一人でリンチし続けた。意外に良いもんだった。こうやって力一杯暴力振るうことで、あの3年間のクソッタレな思い出が浄化されていく気がする。泣き叫ぶ上方の顔を見るとより一層実感できた。
「あ”っばがっごぇえ......もう、赦してっぐだざい...!!」
「いや赦す選択肢とかねーから。お前は死ぬまで俺に虐げられ続けるだけだっての」
ボキィ!「ぎゃああっ!!おっ、俺だけじゃなかったはずだ!杉山が虐められてたところを面白がってた奴は他にもいたはずだ!たしか......井原っ!そうだ井原和磨!!あいつも杉山のこと笑って見物していた!だから......そいつへの復讐で、もう赦して......」
「ああ憶えているさ......井原っていうクソ野郎のことも。言われずともアイツも殺しに行くぜぇ?といっても、アイツはせいぜい見物していただけ。虐めのところを撮影して色んなところに情報をばら撒いたお前の方がよっぽど罪は大きいから、お前はこのまま残酷に殺すけどなぁ!」
「そ、んなあああああ...!!」
「このまま殴り殺そうかって考えてたんだが、もう飽きたわ。後は適当に燃やして殺すことにするわー。お前相手に時間使うのが馬鹿らしく思えてきたわ。もう後は勝手に死ね」
上方と上方の部屋にオイルを雑に撒いて、適当に火をつける。
「まっ、待ってくれぇ!!助けて......解いて!死にたくない!頼む、頼むううう!!」
「知るか馬鹿、早よ死ねや」
「......!!俺たちは、クラスメイトだったろぉ!?虐めは悪かったって思ってるけど、殺すごど、ないやろうがああああああああ!!!」
ヤケになって怒声を上げた上方に、俺はこいつ何言ってんだ的な顔を向ける。
「お前......3年間クラス同じじゃなかったじゃん。お前が勝手にやってきて糞絡みしてきただけじゃん。つーかクラスメイトだろうが関係ねーって言ってんじゃん。復讐なんだし。じゃあさっさと燃えて消えろ」
そう吐き捨てて上方の家から出て行く。数秒後、上方の断末魔の叫びが中から聞こえてきて、思わず笑った。
「さぁ......学生時代の復讐対象はあと一人。アイツには特にエグい復讐方法で殺すとしよう...!楽しみだァ!!」
対象 谷里優人
きっかけは、奴…谷里が一方的に絡んできたところからだった。意味不明で理不尽な、くそ下らないちょっかいだった。
全校集会に行く途中、谷里がいきなりヤンキーが絡んでくるみたいな顔でこっちに近づいて来た時のことだ。サッカー部所属で側頭部を刈り上げた男だった。
「おい!何睨んでんねん!?」
「はぁ?お前が変顔しながら近づくから思わず顔を顰めただけやけど?つーかお前がそんな悪ふざけしてくるのがアカンのちゃうんか」
「おい......イキってんじゃねーぞゴラ」
「イキってんのはお前の方やろ。しかも普段から、授業中教室から出て騒いでんのはどこのどいつでしたっけー?話す時はちゃんと言葉選んでからにしましょうねー?」
「イキってんじゃねーぞ!おいゴラ、ボケぇ――!!」
そうして谷里からつっかかってきて、殴り合いになろうかってところで教師に止められてその場は鎮火した。明らかに谷里だけが悪いはずが、挑発するようなことを言った俺まで悪い奴扱いされた。事実言っただけなのに、授業妨害してるようなクズのアイツを、ここでも庇う馬鹿どもがたくさんいやがる。ホントに俺に味方はいねーのかって話だ。
もちろんあのまま終わるわけがなく、谷里は昼休みに俺がいる教室に乗り込んできて俺を潰しにかかった。俺も殴り合いに応じてその場で争ったが、この時は谷里に殴り合いで負けてしまった。
顔面腫らして腹に何発か蹴りが入って激痛で蹲り、奴に見下された。近くにいた前原や青山は、そんな俺をゲラゲラ笑ってやがったな...。さらには教室で野蛮に喧嘩起こした俺の評判がここで一気にガタ落ちして、カースト底辺に落ちてしまった。
普通ならここまで下落することはないはずだが、やっぱりそういう運命なのかって......俺は人望に恵まれず、常に敵ばかり増えて味方になる奴はいない、みたいな人間だからこうなるんだろうなって、後からそう思った。
考えてみれば、あの時をきっかけに俺は孤立して理不尽な虐めに遭うようになったっけ。中学校での本格的な虐めの口火を切ったのは、谷里だった。アイツのせいで、俺は最低な毎日を送るようになったんだ...!
「ゴラぁ!!イキんなよ杉山ぁ!俺に負けたくせに、まだ逆らう気か?底辺陰キャラのボッチ杉山が、俺らにそうやってキモい態度取りやがって!!お前の存在キモいんじゃ!!」
「ごぉ...!お、前の存在の方が、キモいわクソ野郎...!性格クズのクソ野郎っ!!」
「――そういうのがっ、苛つくっつってんだよクソがぁ!!」
あれ以降も谷里は俺を虐めの標的にして、本山や中林、前原らと一緒になってリンチしてきた。3年間もだ。時にはサッカー部の先輩である下田も呼んで俺を虐げてきた。
3年生に上がると、部活で筋肉をつけた谷里の力はさらに重くなった。酷い時は骨にヒビが入って炎症を起こしたこともあった。集団暴行でいちばんダメージが入ったのは谷里の攻撃だった。
「ひゃははは!痛ぇか?なぁおい、俺のパンチと蹴りは痛ぇかよ?このまま死んでみるかよおい!?ぎゃあっはははは!!」
殴られ蹴られ、砂や泥をかけられて、汚水もかけられて......アイツからも散々虐げられてきた。しかも奴には――
「...お?ミズキからだ。おう......おおそっか!後で行くわー!」
あんなクズでキモい面してるくせに、奴には年下の彼女がいた。顔は見たことないがその学年では人気者の女子らしい。何でこうして人を虐げてるクズが、異性交遊なんかしてるのか、意味が分からない。こんなにクズで悪い意味でのイキりで、生きる価値無いゴミクズなんかが、そうやってリア充しているのは、おかしいだろ?
高校へ進学してからは、谷里とは会わなくなり虐められることはなくなったが、あの3年間のことは今もフラッシュバックしてきて思い出してしまって、今も腸が煮えくり返る思いをしている。奴のせいで酷い虐めが始まったようなものだからな。
絶対いつか奴には不幸に遭って絶望の淵に沈んで、地獄に落ちてほしい、と願っていた...............それは間違いだってことは、死んで転生して帰ってきてから気付いた。
(そういう願いは、自分の手で...力で、叶えるべきなんだ...!)
そう...今の俺にはそういうことが出来る力が、術がある。だから決行する。叶えに行く。
自分が為したいと考えてきたことを、全て実行しに行くぞ...!
*
時刻は夕方の7時。場所は谷里宅。間取りは3ⅬⅮKのマンション部屋だ。家族構成は四人でうち二人は子どもだ。長男20才と長女12才といったところだ。
現在谷里家は、長女...明里《あかり》の誕生日祝いをしている。いつもより贅をかけた料理作りを、長男...大志《たいし》は母を手伝っているところだ。
その最中、玄関から「ただいまー」とやや野太い声がして、明里は笑顔で玄関に向かって行った。この年になっても父親に対する反抗期はまだきていない。
「おかえりーお父さん!」
「おーう明里~今日は何が何でも仕事を終わらせてきて約束通りの時間に帰ってきたぜー!」
愛娘の出迎えに、谷里優人《たにさとゆうと》(45)は満面の笑みでそう応えた。側面に剃り込みを入れた短髪でやや強面の顔をしていて、職場ではヤーサンと呼ばれている彼だが、家の中ではどこにでもいる子煩悩の父親となる。大志に対しても未だに子どもと接する態度でいるくらいだ。
「おかえりなさい。もうちょっとかかるからお風呂済ませてきて下さいな」
「ああ分かったミズキ。楽しみにしてるぜ~」
妻の瑞希《みずき》(44)は、大志と料理しながらそう言葉をかける。茶色がかった黒髪を今は一括りにしている。顔年齢は最近計ったところ25と出たらしい。
旧姓は植田、中学時代から二人は交際していて、大学卒業と同時に結婚した。二人の仲は今も変わらず睦まじい。
まさに今が、幸せの絶頂期と言えるだろう――。
谷里が風呂から上がると明里はリビングでアルバムを開いていた。
「明里、そのアルバムは......」
「うん、お父さんとお母さんの。中学生くらいの頃だよねこれって」
「おお......懐かしいなぁ。どうだ?お父さんこの時から中々ハンサムやったろ~?」
「えぇ~~そうかなぁ?お母さんは可愛いかったけどな~」
そう言い合いながら二人は谷里の中学時代のアルバム写真を眺めていた。谷里自身も当時を懐かしみながらページをめくっていく。
「4月になったら明里も中学生やなー。楽しみにしとるかー?」
「うん!私部活したいなー。お父さんは、中学校生活どうだった?」
「俺か?そうだな......サッカー部に入ってて、あー......授業はあんまり真面目じゃなかったっけなーははは」
―――ぎゃあっははははは!イキってんじゃねーぞ〇〇!!陰キャラが調子に乗ってんじゃねーぞボケ!!
ふと、当時は裏ではとある生徒を虐めていたっけと、この時谷里は思い出してもいた。だが娘にそういう暗い部分を明かすわけにはいかなかった」
「俺はこの頃はけっこう......やんちゃしてたっけなー」
「へ~~見たまんまだねーあははー」
そんなことを言いながら笑い合っていると、瑞希が準備できたよと呼ばれ、全員テーブル席に着く。
「明里、プレゼントはケーキと一緒に出してあげるから、楽しみにしてろよ~」
「俺も用意してるからな明里!」
「お父さんお兄ちゃんありがとー!」
「良かったわね明里」
二人の誕生日プレゼントにワクワクする明里を見て瑞希は穏やかに微笑んだ。因みに彼女は既に明里にプレゼントを渡してある。明里が今付けているヘアピンだ。
そして全員グラスにそれぞれ飲み物を注いでそれを手にして乾杯しようとしたその時―――
「...?地震...?」
ふと強い揺れを感じて動きを思わず止めてしまう。テーブルの料理などは無事な程度の揺れだったが、この国は過去何度も大規模な地震の被害に遭っている。すぐに避難できるよう谷里は玄関ドアを開きに行く。
「え...?何だか、寒い...凄く寒いわ」
「おかしいな?エアコン切れたのかな......だとしてもいきなりここまで気温が下がることないはずだけど。これじゃあ外と変わらないじゃないか...」
強い揺れの次は室内の急な温度低下。あっという間に外気温と同じになった。明らかな異常現象に誰もが不気味に震えていると......
「あー悪い悪い。俺の殺気で温度かなり下げちゃったかな?ほい、これで少しはマシになったかな」
「な――!?」
いつの間にか、リビングには家族四人以外の人間が一人、紛れ込んでいた。年若い男性が、不気味な笑みを浮かべて谷里を見ている。玄関のドアは閉められていた。
「ああさっきの揺れも、俺がやったことだから気にせんでいいよー。家具が倒れたりはないから。まぁ......お前らの無事は、保障できひんけどなァ」
青年......杉山友聖は、今度は射殺すような目を向けて、四人にそう告げた――。
「おい......お前何や?人んちに何勝ってに上がりこんでんねん」
俺を視認した直後の谷里は啞然としていたが、すぐに我に返ってその強面を活かして顔を凄ませてきた。昔も今も変わらずちっとも動揺することなく、今に至ってはむしろ鼻で笑うくらいだ。無言のまま魔術を展開して谷里をその場で金縛りにして、頭を掴んで、記憶を(あるいは俺が体験した記憶を)呼び覚まさせた。
「お前.........あの、杉山か...?」
「ハッ、イキりクソゴリラでも一応俺のことは思い出せたか。安心したわー。久しぶりやなぁ谷里。本山程じゃないがまぁまぁデブになったなー。強面度もけっこう増していて、どうせならお前が闇金組長にでもなってたらよかったんじゃねーのか?w」
突然のかつての同級生の訪問・謎のフラッシュバックで驚愕した谷里は、俺の軽いディスりに反応できないでいた。
「おいアンタ!いきなり家に上がり込んできて何のつもりや!?泥棒しに来たんか?通報される前に出て行けや!」
奴の息子が谷里の横にやってきてスマホを片手に俺を追い出そうとする。名前は......大志、か。
「はいはい通報はご自由に...出来ればだけど」
「っ!?ぐぉ...!」
息子も同じように拘束する。その拍子に息子はスマホを落とした。
「大志...!?優人も、どうしたの!?」
瑞希が二人の異変に動揺して近づこうとする......が、俺がひと睨みすると怯んで立ち尽くす。娘は奥で呆然としている。この事態に対する理解が追いついてないようだ。
「谷里ぉ......俺を散々虐げて、俺の将来を潰した原因を作ったお前が......何人もの頑張りを邪魔してきたお前が、そうやって結婚して子どもをつくって、幸せな家庭を築いてるなんてなァ?
いや~~~~~あぁ~~~~~~~~世の中ってどぉしてこうも理不尽で差別的なんだろーなぁ?お前の酷く理不尽な虐めを受け続けた俺は最後まで不幸でいて、一方の加害者であるお前は幸せになれているなんて......おかしくねーか?」
「お、お前...!」
「......虐め?あなたは何を言ってるの...!?」
谷里は自覚があるらしく、言い返せないままでいるに対し、妻の瑞希は俺の言葉に疑問を呈した。子ども二人も同様の反応だ。
「へぇそうか。子どもはおろか、妻にも自分の本性話してなかったんだ。このクソ野郎が過去に何をやってきたのかを...。じゃあここでいっちょう暴露といこうかぁ」
そう言って三人の脳に直接谷里の過去に犯してきた罪の全貌を伝えてやった。中学校での虐めはもちろん、その後のことも全て教えてやった。検索魔術は対象の過去も全て見通している。俺が何も知らないことは無い...!
「これって......うそ...優人、この人を虐めていて」
「お父さん...人を殴ってる......それも友達と一緒になって」
「高校の時も......親父、そうだったのか」
「...!!あ、ぁ...」
こいつらが今見ている景色は、かつての谷里による虐め現場だ。中学校では俺に対する虐めを、高校では別の誰かに対する虐めをリアルに再現している。瑞希は驚愕し、娘は信じられないといった様子で、息子は意外そうな反応をしていた。
そして谷里はそんな反応を見て愕然とする。
「お父さん...」
「ち、違うんだ明里...!これは、これは......」
「何が違うんだ?おい、早く言えよクソ野郎おい、ええ?」
「ぐ...黙ってろやお前は――」
「は?俺にそんな口聞ける立場か今?なァ?言葉選びは慎重にいけよなァ」
ドゴッ!「ごぅ...!」
膝蹴りが顔面に入り後転させる。床には奴の血がついていた。
「お、お父さん...!」
娘が谷里に駆け寄ろうとするも、俺が怖いのか近付けないでいる。
「明里って言ったっけ?何も違わねーよ。こいつはな...かつて虐めっていう、それはそれは卑劣で最低で、人の尊厳を汚す行為をしてきたんだ。俺はそいつの被害者ってわけ。中学の時、こいつから理不尽に絡まれて暴力振るわれて、それに対して反抗したら逆上して虐めをエスカレートさせて、友達や先輩を連れて俺にたくさん暴力を振るってたんだ」
「......」
「しかも高校生になってもまた別の生徒を同じように虐めていた。やっぱりな、お前みたいなクソ野郎は、そうやって気に入らない奴を甚振って虐げるのが大好きな最低人間だもんなァ」
「ぐ...!ち、中学の時はともかく、何で高校の時のことまでお前は知ってんだ!?あれから一切会わなかったはずだ...!」
「ああそうだな?んー説明するの面倒だから、あれから俺に何が起きたのか、色々端折って説明してやるよ」
谷里の脳に俺の記憶を見せてやる。転生したことで今の異常現象を起こせるようになったことなどを。
「お前......死んでたのか!?20年以上も前に......転生して、そこで魔術とかわけの分からん力を得て、そして日本に帰ってきて......あ、あいつら皆殺しやがったのか!?」
「そうそう。学生時代の復讐対象は残すとこお前一人なんだわ。お前は特に残酷に殺してやろうと思って、最後に回した」
「ち、ちょっと!殺すって、え...冗談、でしょ?」
瑞希がここで口を挟んでくる。俺の不穏な言動が聞き捨てならなかったらしい。
「...残念ながら、冗談ではありませーん。今日コイツはー、俺に復讐されてー、地獄に落ちてしまいまーす☆」
ズダンッ「ぐはっ!」
谷里を床に強く叩きつけて、そのまま重力で拘束させる。辛うじて首と口と舌だけは動かせるようにしておく。そして今度は残りの三人を谷里の目の前に浮かび上げさせて拘束する。
「「きゃあっ!」」
「ぐおっ!?」
空中でバタバタ藻掻く三人を尻目に、息子の方に近づいて正面に立つ。
ドスッ「ごあぇ...!」
「た、大志...!
予備動作無しのパンチを腹にくらわせて、息子の大志は空中でえずく。
「...今まさに俺がコイツにやっていることを、そいつはかつてやっていたんだ。数人で押さえつけて、動けないでいる俺に何度も拳や蹴りを入れてきて、泥水や生ゴミとかをかけてきた。いつもいつも、友達と笑いながら俺を甚振って傷つけてきた。それがそいつにとって楽しい楽しい学校生活の一部だったとさ」
「う......ごほっ、ごほっ!」
「いや......谷里本人だけじゃなかったな?君もかつて同じようなことやっていたんだっけなぁ、大志君?」
「な...!?」
俺の一言に、息子大志は痛みが忘れたかのように驚愕した顔をする。その様子を俺はニヤニヤしながら見る。
「大志...?今のは、どういうこと?」
「ち、違うっ!母さん、明里、親父もっ!俺は虐めなんかしてねー!アンタっ、何デタラメを吹かしてんだ!?ふざけるな!!」
「ハァ、白を切るのは勝手だけどなァ、事実だろ?ほらよっ」
再度検索魔術で見た内容を全員に見せてやる。そこには高校時代での、大志らによる集団リンチの内容などが送られた。
「なっ!?あ、あ...」
「お兄ちゃんも...!?」
「こ、こんなことが...!」
全員息子(兄)の凶行に呆然としてしまった。本人も絶句してしまっている。あまりにもおかしくて爆笑してしまった。
「うぁ~~ははははははは!!親がクズならば子もクズに育つってなァ!親子揃って虐めの加害者とは何とも救えない話だなぁ!?瑞希さんとやら、お前が数十年慕ってきた男はそういうクソ野郎なんだよ。昔も今も変わらない。おい谷里、俺は知ってるぞ?今勤めているところでも、部下にパワハラしてるそうだなぁ?」
「な......お前、どこまで...!」
「だから全て知ってるんだって。全く...本質はずっと同じだな?お前はずうっっとそうやって人を虐げ続けてきたんだな?そんな奴が、こうして幸せに家庭つくって幸せに暮らしているんだ、これが笑わずにはいられるかよ?」
「う......ぐぅ!」
「そんな、そんなことって...!」
「う、あぅ......」
谷里は顔面蒼白、瑞希は愕然とし、明里はまともに声が出せないでいる。
「なんなんだよ......あんたは俺の過去を暴いたところで、どうしようってんだよ!?」
「別に何も?いや...何もはないか。むしろ感謝したいと思ってるよ。お前も、君もあんたにもなぁ」
俺の言葉に誰もが理解できないでいる。構わず俺は続きを話す。
「俺は思うんだ。人にとって最悪なことっていったいなんだろうかって。俺としては、自身の命が失われることだって考えてるんだが......他はそうじゃないこともあるよな?財産が失う。家が無くなる。誰かに嫌われる。そして......最愛の人・家族の命が奪われる、とか?」
ニタァと笑いながら最後の一言を吐いた俺を、谷里と瑞希がこれ以上ないくらいに動揺した。
「まっ、まさか...!?」
「お前は俺のあるはずだった未来と将来を奪った。そのせいで俺はロクな人生を送ることができなくなって、その命までをも失くしてしまった。お前は俺の命も間接的に奪っていったんだ。俺にとっていちばん大切だったものを、面白がって奪いやがったんだよ。そんなことをしておきながら自分だけ何の罰も無く、家族とのうのうと幸せに生きているってのは、理不尽で不平等過ぎるとは思えないかな~~?ねぇ大志君?」
「はっ?あぁ...?」
谷里と同じように顔面蒼白で震えている大志の眼前に、黒い刀を出現させる。これから俺が何をするのかを察した谷里と瑞希は揃って悲鳴を上げる。
「「やめ―――」」
「――やめません☆」
グサ...
躊躇い無く、突き刺した――。
*人によっては胸糞に思う展開あり。
「いやああああああああああっ!!」
「大志、大志いいいいい!!」
リビングには二人の絶叫が響く。首を刺された大志は、血の泡を吹いて数秒で死んだ。
「「あああああ...!!」」
谷里と瑞希は今も慟哭を上げているのに対し、明里は声一つ上げず、ただ目を見開いて兄の死体を眺めていた。ショックのあまり声も出なくなったか。
「谷里、お前の家族は......お前が不幸と絶望のどん底に落ちる為の要因に過ぎねーんだよ。こうやって、積み重ねてきたものを目の前で一気に全て潰して奪って灰にする。お前にとってこれ以上ない復讐方法が実現できそうだ!
ありがとうな、こんな素敵な家族をつくっていてくれて!お陰でお前を今まで以上に残酷な目に遭わせられるんやからなァ!あはははははははっ!!」
「杉、山...杉山ァ!!」
「あーーーーっはあははははぁ!!そうそう!こういうシチュエーションをずっと待ってたんだ!お前のそのキモい顔をさらにキモく歪ませることをなぁ!」
哄笑しながら今度は両手に大きな魔力を込めて、瑞希と明里を近くに並べる。
「おい......おい待て。待て待て待てまてマテ...!どうするつもりや?止めろ、止せ...!」
「この二人には感謝しなきゃなぁ、谷里、お前がそうやって今も顔を苦痛に歪ませる程に、二人を大切に想ってるんだなぁ?いやぁ.........殺し甲斐があるわぁマジでぇ」
「頼む...!もう止めてくれ!俺が悪かった。中学のことはマジですまねぇ!!ごめんなさいっ!!こ、殺すなら俺だけにしてくれ。俺が憎いなら俺だけを殺せば良いはずだ!だから二人を解放してくれ!!」
態度を変えて谷里は俺に制止するよう懇願する。自分を身代わりに二人を見逃してほしいのだと。俺は冷たい目で、馬鹿にした笑いを漏らす。
「聞いてなかったのか?俺はお前がいちばん絶望するような復讐法を実践するって言ったよな?その方法が、こいつらを殺すことなんだが?
というかさぁ、あれだけ理不尽に人の人生滅茶苦茶しやがった分際が、自分の都合通りに助かるとか馬鹿じゃねーの?」
「それは......分かってる。俺がお前にどれだけ酷い虐めをしてしまったんかを。俺のせいでお前の学校生活を台無しにしてその後の人生に支障をきたしてしまったんかを...。だから、ここは俺の身と大志の命で引いてくれねーか...?」
「分かってねーだろ?お前の要求は通らねーって言ってんだ!つーか通させねー!俺が過ごすはずだった...過ごせたはずだった青春を、時間を楽しみを...踏みにじって灰にさせたのはお前らだ。しかもお前らはそれが悪いことと自覚したうえで面白がって罪を犯してきた」
「お前らにとってはその時限りで終わって、後は無かったことにして忘れようとまでする。
対して俺はどうだ?あの傷はずっと残ったままでいる、癒えることは決してない。お前らに対する憎悪と殺意は昔以上に強くなっている」
「以前殺した前原らにも使った言葉をまた使うぞ...お前らが幸せだと、俺が幸せになれねぇんだよ。前に進めない。お前らが絶望に染まり残酷に死んでくれない限り俺は幸せになれない...時間が止まったままだ。永久に俺の時間は進まなくなる...」
だから...と続きの言葉を無慈悲に告げる。
「――だけどこの復讐を為すことで、俺はようやく前進することが出来るんだ...!」
止めてくれと未練がましく叫ぶ谷里を無視して、両手から赤い光を発生させる。その動作の最中、今度は瑞希が口を開いた。
「お、お願い!私だけにして。この子は......明里だけは止めて、止めて下さい!明里の未来を奪わないで下さい...!」
「お母さん...お、父さん......」
明里は未だに上手く話せないでいる。が、その目からは涙が流れていた。
「ぜ~~~~んぶ、あの男が悪いんだ。あの男が俺を虐げて俺をブチ切れさせて憎ませたから......お前らもこんな目に遭ってるんだ」
「.........ぜ、ん、ぶ......お父さんの、せい...?」
掠れ声で呟いたのは、そんな質問だった。谷里が絶望したような顔をし始める。瑞希は嗚咽を漏らしてる。
「ああそうだ、全部、全部全部...谷里優人、君のお父さんが、君をこんな目に遭わう原因をつくったんだ。お父さんが、俺にこんなことをさせたんだ。ほんっっっっっっっとに、ロクでもない酷いお父さんだよね~~~?」
煽るようにこの状況を谷里のせいだと明里に教え込んでやった。明里は俺と谷里をしばらく交互に見て、虚ろな目でこう呟いた。
「...............うん。全部、お父さんの、せい」
「―――――」
それを聞いた谷里の顔は......ぶふっwwダメだ面白すぎるwww人ってマジで絶望した時はあんな顔するんだな?www
面白い物を見て満足した俺は、赤い光を二人に放った。
「待て......杉山、待ってくれ止めてくれ!!おい頼む、止めてくれええええええええええ!!!」
「はい、乙ーー」
カッッッ
次の瞬間、二人がいた場所は、床にわずかな焦げ跡が残っているだけで、何も無くなっていた。
「あ......」
妻と娘がいたはずの場所を谷里はしばらく呆然と眺めていた。そして―――
「~~~~~~ぅあああああああああああああああああ!!あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”!!あああああああああああああ!!!」
遅れて醜い慟哭を上げた。
「―――あーーっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっは!!あ~~面白れぇ!マジ面白れぇ!!傑作だ!憎い奴の大切なモンをこうやって奪って消してやるのは!
最高だ!お前みたいな憎いクズ野郎が、幸せでいた状態から不幸と絶望のどん底状態に反転する瞬間を目にするのは!
ナニコレ?面白過ぎる楽し過ぎる快感だわマジマジぃ!!」
対する俺は可笑しくてたまらないといった様子で大爆笑していた。他人が不幸になって絶望する様はホントに面白い。蜜の味なんてモンじゃない、最高級の牛肉ステーキの味だわコレ!!
「ねぇどんな気持ち?かつて虐めて完全に下に見てた男に家族全員の命を奪われてしまってどんな気持ちぃ?さっきまで幸せな日々だったのが、突然何もかも奪われて踏みにじられて消されてしまってどんな気持ちぃ!?プギャープギャーwww今のお前最高にキモ~~~い!!」
絶望に沈んだ谷里を嘲笑いながら重力の拘束を解いてやった。この後この男がどういったアクションを取るのかが見物だからだ。しばらく慟哭していた谷里だったが、やがて立ち上がり俺を睨んで、中学のあの時のように殴りかかってきた。
「殺す!!殺してやるぅ杉山あああああ”あ”あ”あ”!!!」
そうそう...あの時もコイツは怒鳴りながらそうやって殴りかかってきて、俺は避けきれず頬にくらったんだっけ。そんで、殴り合って負けたんだ...。
が、今は――
ゴスッ「おぶぅ...!」
カウンター蹴りで簡単に返り討ちだ...!
「いいぜ、また殴り合うか...あの時みたいに俺を負かしてみろよクソが」
で......俺に一発も入れられないまま、谷里は全身殴られ蹴られ、汚いボロ雑巾のように倒れた。
「こっちは転生してから武器を持った化け物どもと戦ってきたんだ、ゴブリン以下の戦闘力しか持たないお前なんかゴミ同然なんだよバーカ」
「あ”......ぐは...」
再度床に這いつくばった谷里の髪を掴んで顔面を床に何度も叩きつける。結界張ってるので誰も気付かない。
「さって......ここからはお前が俺にやってきたこと全部何倍もの苦痛にして返すとするか。お前だけは楽に死なさねーぞ」
「ず......ぎ、や.........」
「全部お前のせいだ。家族が失ったのは、お前が俺を理不尽に虐げたたからだ。お前が俺を虐げなければ、あの3人は死なずに済み、今も娘の楽しい誕生日パーティーを開いていただろうなぁ。お前が全部この状況をつくったんだ...!」
「あ......あ.........」
「後悔するなり俺を憎むなり、好きに思え。俺は気が済むまでお前を理不尽に虐げてやる......地獄に落ちろ、谷里優人――」
それからは、夜が明けてもずっと谷里を拷問し続けた。
「ぎゃあああああ...!」
飽きることなく、
「ずぎやま゛ぁ!!殺ずぅ、殺してやる――ぅあ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”!!」
ずぅぅぅっと…!
「いだい”いだい”いだい”...!!」
———
————
—————
全て終わった頃には、リビングには谷里の汚い血で汚れていた。
「へ、へへへ……へあはははははははは…!ははははははははははははっ!!!」
原型を留めないくらいぐちゃぐちゃになった谷里の死体を見下ろして俺は大爆笑した。気は晴れた。心が洗われた。今まででいちばんスカッとした復讐だった。憎い奴の大切な物を目の前で奪い去る行為はホントに楽しかった。奴の絶望した顔を見て幸せな気持ちになれた。
「これで......虐めの主犯格は全殺しにしたか。あとは、その他もろもろだな...」
結界を解除して血生臭い部屋を出た俺は、残りの学生時代の連中への復讐へ赴いた。
“陰キャラ”って言葉で俺らをカテゴリーすることについて。
は?なんで“普通に”しているだけでそう呼ばれるわけ?授業中に騒ぐこともなく、声高に何か言うこともなく、ましてや誰かを大勢の前でからかったり殴ることもしてないだけの、“普っ通”の俺らが何で陰気呼ばわりされなきゃあかんわけ?
そもそも陰キャラって単語って何やねん。お前らみたいに騒がないだけで陰気扱いされるとか意味分からんのやけど?俺らはただ規律を乱すことはせず、節度を守ってそれなりに楽しくしているわけやろーが。
会話が苦手で喋らない奴のことを声高に“陰キャ”とか呼ぶけどな、それは陰キャじゃなくて“内気”もしくは“コミュ障”って呼ぶんや、このガイジどもが。
じゃあお前らは何やねん?喋らない騒がない奴らが陰キャなら、喋って騒ぐお前らは“陽キャラ”とでも名乗るつもりか?
ハッ、ちげーだろ。お前らはただイキってるだけの雑魚どもだ。
集団でしか喋れない・騒げない小物で、一人になった途端に静かになる......アレェ?それってお前らが馬鹿にしてきた“陰キャ”って奴じゃねーのかなぁ?そうやって一人になった途端に騒がなくなって大人しくしてるだけになったお前は、それでも俺らとは違うって、果たして言い切れるのかよ?
馬鹿かこのガイジが。何も変わらねーだろが。お前は結局は一人じゃロクに目立つことをしようとはしない、ただ閉口してるだけの暗い、陰気な人間や。お前こそが陰キャじゃボケ。
まぁ例外も当然いるわけで、そいつが率先して騒いで乱暴する奴がたりするわけやけど、そんな奴は陽キャラとは言わへん。
ただの“イキり”もしくは“ガイジ” “クズ”や。陽気って言葉の意味辞書でも使って調べてこい。分かるやろ?そいつらに“陽”なんて言葉が毛ほども似合ってねーってことが。
人に迷惑と不快感しか与えないガイジ・クズ・公害や。
で?そんなお前らは自分の行いを棚に上げて、清く正しく生きている俺らを馬鹿にして辱めて傷つける権利があるわけなんかな??
まぁお前らみたいな究極の自己中どもは、構わず俺らを潰そうとするんやろな。
お前らがこのクラスの中心、カーストトップに君臨してるんやって言いたいように。で、そんなお前らに反抗したら...自分の意に沿わないことをしたら、
“陰キャのくせに”って逆上して排除しにかかるんや。
で、“虐め”が形成されるわけや。
あ~~~~~~くっっっっっっだらねえええええええええええええええ。
クズさで言えばお前ら騒いで人を嗤いながら貶めるだけのイキリガイジどもが明らかに底辺の人間なのに、なんで俺らが底辺扱いされなければならないのか。
厭やから厭って言っただけで俺は孤立して排除されるこれは一体何なん??
悪いのはあいつ等だけやない、心が弱くて卑怯な、陰キャラ扱いされてる有象無象どもにも、非があるんや。
だから、“下らない虐め”が“取り返しのつかない虐め”にまで炎上するんや。
そしてそれを未だに野放しにしているこの腐った世の中・社会も、悪いんや――
「何やってんねん!あそこは取っとけよな、使えねー。お前のせいで敗けたやんけ。
死ねよお前」
「――って言ってくれたよなぁ、板垣光亮《いたがきこうすけ》!お前が死ねよクソがっ!」
「ぎゃあああ!?」
東大阪市 某駐車場――
「あの時、死ねって言われた俺が反論したらお前はさらに俺を非難して散々悪口言ってくれたなぁ!俺は今でも憶えてるぞ、ムカつくこと言いやがって、お前が死んで消えろぉ!」
「おい止せ、待て――うぎゃあ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”...!!」
板垣光亮 復讐 達成
大阪市旭区 某オフィス内
「おい、井原和磨《いはらかずま》......高校の時では上方と同じように俺を貶してくれたなァ。上方程じゃないがお前にも十分殺意が湧いてんだよぉ。地獄に落ちろォ!!」
「い、いったい何の――ぉあ”あ”あ”あ”あ”!!びえげえええええええええ!!」
「授業の一環で行われた課題発表の時間、お前がクソウザい茶々を入れられた俺は赤っ恥かかされて、そのせいで他の奴から不愉快な呼ばれ方までされた!だぁかぁらぁ!そういう悪ノリでぇ!人を傷つけてんじゃねーよ!高校生にもなってそんなことも分からないでいたのかお前は!!」
「がぼがぁ!?た...助けて...!」
「面白がって人を傷つけるようなクズが社会人やってんじゃねーぞ、死にやがれぇ!!」
「お願いだ赦し――い”ぎゃあああああああ”あ”あ”あ”あ”...!!」
井原和磨 復讐達成
東大阪市 川路自宅前
「よぉ、川路雄太《かわじゆうた》......相変わらず背が高いなぁ」
「あぁ?............す、杉山!?」
「おうそうだ俺だ、杉山友聖だ。小学6年の時クラス同じになってお前に喧嘩吹っ掛けられ、その後俺がクラスで孤立させられて嫌な思いを強いられた杉山だよ」
「ぐ......そんなことも、あったな...」
「中学ではお前は俺への虐め暴行には加わってはいなかったけど、小学校のことは根に持ってるんで.........殺すね?」
「な!?待て――っごぁ!?ぐおあああああああ!!」
「お前も家族ができたのかぁ。お前顔は良かったからモテたんだろうなぁ。女も選り取り見取りってやつだったか?全く...お前なんかがモテるとか意味分かんねーんだよっボケが!」
「があああっ!!お、前...そんなことの為に、俺を殺そうと...!?」
「ああその通りだ。俺は根に持つタイプで、短気だからな......何でもすぐに殺意が湧いてしまうんや。今すぐから......数十年間もな」
「な...何!?いったい何がどうなって...!?」
「ま、真美!来るなっすぐにここから逃げて警察に通報を...!!」
「ああ、お前の奥さんか。安心しろ、殺すのはお前だけに絞ってやるよ。谷里と違って家族まで殺すことはしないでおくからさァ」
「お前っ!?谷里を殺して――」
「もうどいつもこいつも殺したよっ」
「ごはっ!............あ”、ぁ............」
川路雄太 復讐達成
「いやあああああああああ!!嘘よ、嘘よぉ!!」
「パパ...?ぱ、パパが...!!」
「じゃあね~。お前らが無事なのは、俺を虐めなかったパパの正しい選択のお陰ってことで」
―――という感じで、その他もろもろ恨みを持つ連中をサクッと復讐してぶち殺して、学生時代で殺したい奴らへの復讐を全て実行して完遂した。
残りの連中の復讐動機は、どれも小さな些細なことばかりだった。たかが体育の授業でミスプレーしただけで暴言を吐かれたから、理由も無くつっかかれたから、不愉快な呼び名をつけられたから、等々。俺はそういう些細なことでも殺す動機に結びつけることにする。二十年以上経とうがその時の怒りは変わらない、ずっと燻り続けている...。
俺は深く根に持つタイプだからな...。
帰宅後、俺は祝杯を挙げた。数万使って高級食品と酒を買って、一人で祭り気分になっていた。
ひとまずは学生時代での復讐対象には全員地獄を体験させて惨たらしく殺せたという達成に対する自分への褒美だ。20人近くも殺した。学生時代がいちばん恨みを持って、殺したいと思った人間が多い気がする。
やっぱり学校というものはロクでもない場所だ。こんなにも殺したくなるクズ人間どもが集まってきたのだから。これなら学習塾に通うだけの方が良い気がする。
学習カリキュラムに道徳とか人権とかを取り入れているくせに、じゃあどうして虐めなんかがどこでも発生しているんですかって話だ。そのカリキュラムに価値なんか全く無えって言えるじゃねーか。何が道徳だ、何が人権だ。生徒誰一人に対して教えが浸透出来てねーんだよ。
教師どもが無能だから、虐めなんかが横行されるんだろうが。もう日本には今の学校制度は要らない。更地にしちまえば良いんだ。皆死ねば良い。
まぁ...もう終わったことだしどうでもいいか。今は飲もう食おう、笑おう...!
数時間後、酔いが少し醒めたところで、俺は復讐リストを見る。
学生時代が終わった次は......会社の連中への復讐だ!
これまで俺は三つの会社を転々と変えて勤めてきた。どこも最低最悪のクソ職場・ゴミクズ上司と後輩しかいなかった。俺だけが不当な扱いをされて、最終的には心を病んでしまって働くことを止めたんだ。
俺を精神的に傷つけやがったあいつらも、地獄を体験させて残酷に殺してやる...!
「明日から早速開始だ!まずは......《《あの会社》》から行こうか...!あ~~楽しみ楽しみ!!」
*
『――次のニュースです。大阪府の各地で、連続猟奇的殺人事件が相次いでいます。被害者は皆40歳後半の男女で、その数は確認できたのが12人で、行方が分からないのが4人になっています。』
『発見された遺体はどれも損傷が激しく、犯人は彼らに強い怨恨を持っていたと思われます』
『なお、遺体が発見された場所がマンションのところでは、近所の方からは争ったような騒音は一切聞こえなかったと供述しており、振動なども感じなかったとのこと』
『また、被害者の襲撃内容とその遺体を撮影した動画がネットに流出されているということも判明されており、警察はその発信源を捜索中で―』
「こんなことがあるんか...?どの事件にも目撃者が全くいなかったやなんて。こんだけ大胆な殺しをたくさんやっとるのに...」
「本当に奇妙ですよね......しかもとても残虐極まりない殺し方をしている...。僕その現場へ行きましたけど、直視できませんでした...」
「犯人は被害者に強い恨みを持っとった。少なくとも被害者全員は、犯人とは面識があったはず...。今も被害者の身内や職場関係なんかを調査させとる。あとは...彼らの学校の同級生なんかも調査対象やな...。」
「この事件、相当骨が折れますね。担当する捜査官は何人いるんです?」
「俺を含めて府内の警察100人にも上る。調査するところが多過ぎるからな。後はドアノブに付いてた指紋の鑑定結果待ちといったところだ」
大阪府警は、この連続猟奇的殺人事件の捜査に尽力している。捜査の範囲は府内全域にわたっている。
そして、最近発生した一家惨殺事件の現場...谷里家の部屋から採取された指紋や毛髪を現在鑑定しているところである。
その結果、思わぬ事実が発覚した...。
「杉山友聖...?妙やな......この男の戸籍がどこにも存在しとらん。こんなことがあるんか――」
「先輩っ!この杉山という男なんですが――」
「なん………やと!?二十一年も前に死亡した仏やと...!?」
捜査は早くも迷宮入りしようとしていた――。
次回から 社会人時代編
会社復讐編
俺が最初に勤めた会社は、引越し業者を職種とするところだった。入社したのは201×年の10月頃。社名は今も覚えている......アー〇引越センターだ。全国で有名な社名だからな。あの時は自宅の近く...大東支店で勤めてたっけ。勤めてたと言っても、アルバイトとして入っただけだが。
はっきり言おう。引越し業者なんてどこもブラック会社だ。
引越し業の正社員は全員性格最低で人格最悪な人種ばかりの、ゴミ山会社だ。バイトとして勤め始めてから僅か1週間でそう確信してしまった...。
「おいバイトぉ!それはそこに置けって言ったやろが!また言わせんなやっ!」
言ってねーだろうが...。
「そこ持つんじゃねーよ、ここだここ!...あーもうクソが、使えねー!おい岡橋、この愚図バイトと代われ。一緒に運ぶぞ!」
初めてなんだからすぐ正確に運べるわけねーだろ...。
「何やってんねん、おい!いちいち仕事を増やしてんじゃねーよクソがっ、殺すぞお前!!」
はい暴言ー。いやミスした俺にも非はあるけどさぁ、何でそこまで言われなアカンわけ?
「お前さぁもう18やろ?それくらいのこと聞かなくても分かるようにしとけや。マジで使えねーバイトだわお前(フーーゥ)」
「げほっ...あの、タバコ止めてもらえません?」
「は?知るか。仕事出来ない愚図が意見してくんなボケ」
仕事の出来不出来関係ねーだろが、人に向けてタバコの煙ぶちまけるのはおかしいやろうが!!
「.........チッ...」
「あ...?お前今舌打ちしたな?これだからガキは!これくらいのことでいちいち文句言ったり不貞腐れやがるんだ。ハッ、下らねー!お前みたいな社会の底辺は黙って働いてれば良いんだよボケが!」
「確かに、仕事出来てからそういう口叩けってんだ。バイトの分際で俺らに文句言ってんじゃねーぞ」
他の社員にそう言われてまた煙を向けられる。......殺したい。
どいつもこいつもクソ野郎ばっかりだ。初出勤早々俺には難しい指示を飛ばして、出来なければ使えない・愚図呼ばわりしやがる。しかもその日は定時上がりにはならず、13時間は働かされた。明らかに残業時間になると分かっておきながら、お前ら社員の都合でバイトの俺に了解の確認もしないで勝手に仕事を増やしやがった。そして俺を罵りながら働かすんだ。
で、あれだけ長時間・罵倒されながら働いても、日給1万円しか貰えなかった。時給もクソだった。それ以降も、どの正社員もキツい・汚い言葉を俺に吐き、目の前で喫煙して、何も言わずに予定してない仕事に向かって行く...その繰り返しだった。
たまに他のバイトと話す機会があってどんな感じか話を聞くと、どいつも正社員の態度がキツ過ぎるとのことだった。その数日後、そのバイトは来なくなった。
正社員はアルバイトのことを、替えが効く道具としか見ていないというのがよく分かった。実際そうだもんな。言葉遣いは荒くて心が無いし、初めてのことでミスしても罵声を浴びせるし、昼時は俺を置いて正社員だけで飯食いに行くし、目の前で喫煙して分煙する気ゼロだし......マジで俺らバイトのこと人間扱いしてねーのが分かるわ。
中でもいちばん俺にヘイト溜めさせたのが――
「あの...席、詰めてもらっていいですか?食べる場所が無いんせすけど」
「知るか。トラックの後ろでも食ってろ役立たず」
...この冬空の下でか。このクズ野郎は特に俺のこと人扱いしやがらねぇ...!
瓜屋優二《うりやゆうじ》 28歳(当時)。長身の無精ひげ生やしたクソ野郎。
最初の時からも奴は俺を...というかバイトをハブり者にして完全に見下す態度をするゴミカスだ。そんなクズ野郎でも、家族はいるらしい。一児の父親のくせに俺に対する性格がクズ過ぎる。どの正社員もそうだったが、仕事が出来ない奴を特に見下してハブったりもする。バイトが辞めたのは大半があの男が原因だ。
そして俺も、そのうちの一人だった...。
ある冬の日、日没してもまだ搬入作業していた時のことだ。道具の名称がまだ覚えられず何に使うのかも知らないやつを持ってこいと指示されて、その道具について聞いたら――
「ああ?お前まだ覚えられてねーのか?.........あのさァ、初めは新入りだからと大目に見てたが、もう4ヶ月も経ってんのにまだそうやって役立たずされるとよぉ......」
グッ...!「っが...!?」
「こうやって俺に胸倉掴まれるんや、おいごら...」
俺の仕事の出来なさに腹を立てた瓜屋に暴力を振るわれた...。
「.........ってーな、クソ野郎...」
「.........はぁ?おい杉山、今なんつった?」
「仕事をミスする、覚えが悪い。それは俺が悪いことだし申し訳ないとは思うしそう言ってきた。......けどさァ、だからといって上司がそうやって暴力振るうのはどうなんわけ?このご時世でさぁ!」
度重なるクソ扱いと今回の事でとうとう堪忍袋の緒が切れた俺は、仕事中...依頼人宅の玄関で切れ口調で瓜屋に吠えかかった。
「......おい、バイトのガキが......未だに仕事が出来ない愚図がぁ、偉そうにほざいてんじゃねーぞボケぇ!!」
そして再度俺の胸倉を掴んで拳を振り下ろそうとしたところで、もう一人の正社員が一応は制止に入って、争いは避けられた。
で、作業が終了して営業所に戻った後......俺は瓜屋に駐車場に連れてかれて殴られた。
「ガキが何俺にタメ語使ってんねん!愚図が!役立たずのくせに文句は一丁前か!調子に乗ってんじゃねーぞゴラ!!お前なんかとっとと辞めちまえ!お前みたいなバイトなんかなァ、いくらでも替えが利くんだよ!お前なんか要らねーんだよ!」
「黙れ!!こっちが下手に出てりゃあふざけたことほざきやがって!!お前ら正社員にも問題があるんじゃねーのか!?新入りにも関わらずハードワークさせるし、ミスしたら罵声浴びせるし、俺らの前で平気で喫煙するし。しかも俺に対してのハブり者扱いが酷い!お前ら正社員どもの性格に難があるのも問題だろうがクソ野郎!!」
「言わせておけばお前だのクソ野郎だの!誰に向かって口きいてんだガキがあああ!!」
「おい、あいつらヤバいんじゃねーか?」
「おい所長呼んで来い、俺が止めに行くから――」
そして、口論と殴り合いをしてしまい、俺も瓜屋も暴力振るったことが問題に挙げられた。先に手を出した瓜屋に非があったのに、奴は厳重注意で済まされた。一方の俺は...
「は?クビ...俺だけが??」
「う~~ん...まぁそうなるね。杉山君さぁ瓜屋のことだけならまだしも、他の皆のことも悪く言ってたって聞いたよ。性格に問題あるとかクズとかさぁ。それは良くないと思うなぁ」
「いや......事実でしょうが!土井さんとか柿本さんとか大庵さんとか森本さんとかさァ!どいつも俺に罵声浴びせるわ、確認取らずに目の前で喫煙するわ、ハブり者にするわ、俺は被害者だ!!」
「んー。まぁ彼らにも問題があったのかもしれないけど、杉山君にも問題があったんやないのかな?瓜屋みたいに暴力振るうには悪いことやけど君も手を出してしまったし...。ウチとしては社員を減らすのはあまりしたくないことやけど、問題起こしたアルバイトを雇うのは無理かなーって思ったから...」
............。結局お前もソレかよ。社員贔屓、バイトは替えが利く道具。どっちかが同じ問題起こしても罰の度合いは俺らの方が重くされる...。目の前のコイツも、俺を道具...それも使えない奴としか見てねーんだ。
「ああそうかよ...。もうええわ。非正規雇用者に対する扱いがクソな会社なんて、こっちからお断りだ...!あんなクズどもが蔓延るこんな会社なんかに、これ以上勤めてられるかよ!!ああ辞めてやるよクソがっ!!!」
「......ハァ、ちょっと嫌なことがあったからってそうやって切れる君こそ、問題あるやないか。もうすぐ成人するんやからそういうとこしっかり――」
所長のウザい小言を聞くことなく、俺は部屋を出て更衣室へ行った。普段は社員らに挨拶して出て行かなければならないのだが、今日で辞める俺はもちろん無言で出ようとする。
「おい杉山...挨拶は?」
「...今日で辞めるんで。つーかお前らクソ野郎どもに挨拶なんかする価値無いわ」
「ハッ、自分が仕事出来ないくせに、ちょっと乱暴されたくらいで逆ギレするとかガキかよ」
「お前みたいな社会のクズなんかを雇うとこなんかねーよ。あったとしてもどうせすぐに辞めるのがオチやろ」
「初めからこっちに来なきゃよかったんやお前なんか。とっとと消えろガキが...!」
最後の最後まで俺を貶してゲラゲラ笑う社員どもに、靴入れや中身が入った箱を投げつけて、一言二言怒鳴りつけてから俺は出て行った。
この時から俺は社会に酷く嫌悪を抱いていた...。