【はじめに】
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更新をお待ちしていた方々には大変お待たせしてしまい、申し訳ございませんでした。
皇雅と連合国軍が戦い始めた同時刻に、新たなる脅威が誕生しようとしていた。
場所は5日前に起きたある二人による争いで滅んだ名も無き島の真下…地底にはあらゆる生物を死に至しめる瘴気が充満している。その瘴気に唯一耐性を持つ魔族...魔人族の本拠地の近辺に、「彼」はいた。
《これは...ああ、良いぞ!力が!今まで感じたこと無い力が!!素晴らしい、ここまで上等な器とはな!ザイートめ、かなり優秀な人材を遺してくれたな!流石は“俺”が認めただけはある!≫
「彼」は一人、溢れる力に歓喜していた。だがそれもすぐに終わり、
《......そろそろ《《本体》》が起きる頃か。ククク...また、愉しませてもらうぞ。存分に振るうがいい、その力を。そして復讐するがいい!その為に“俺”がいるのだからなぁ...!!≫
《《彼》》に託して消えていった...。
(―――――)
「ぐ......。俺は、気を失ってたのか?誰かに話しかけられて、そして何かが体に入ってきたと同時に、何かを授けられた気がしたが......」
辺りを見回しても誰もいない。感知しても、近くにいるのは生き残った同胞3人とわずかに残った屍族くらいだ。
「まぁいい...。それよりも、準備をしよう。奴への......」
魔人族序列2位《《だった》》男、ヴェルドは昏い笑みを湛えて......
「――カイダコウガへの復讐をな...!!」
同胞たちを纏めるべく動き出した。
本拠地に戻ったヴェルドを最初に目にしたのは、偵察を終えて戻ってきたネルギガルドだった。ヴェルドの姿を目にした彼は、すぐにその異変に気が付いた。
「ヴェルド、様?」
「.........ネルギガルドか。丁度いい。大至急、同胞全員を集めろ。屍族もいるなら同様に呼べ」
「......っ!」
「これより新たなる魔人族軍の始動だ...!」
既に始まった二大勢力による戦争が、彼らの介入でさらに荒れることになるのは、もう少し後のことになる――。
6章前編 完
人物の追加詳細(主に6章前編の内容。ステータスも一部追加・更新)
カミラ・グレッド(19才)
5章にあった戦争で主人公単体に絞って発動させた「未来完全予測」が、半年経った今では、十数体同時でも半年前の単体レベルと同じ内容まで予測できるようになった。策略を練るキレも増して、体力も上げるなどさらに己を高めることに成功した。
身長は伸びなかったが、バストが少し大きくなった。主人公による“健全な”マッサージが関係しているとされる。修行期間中に、鬼族から里の復興策について相談されたりもした。
人族 レベル50
職業 軍略家
体力 500
攻撃 100
防御 150
魔力 100
魔防 150
速さ 300
固有技能 未来完全予測 剛力 堅牢 加速 遠見 危機感知 気配感知
叡智の眼
連合国軍一覧
高園縁佳(18才)
狙撃において、もはや彼女の右に出る人族は存在しなくなった。弓矢・狙撃銃の扱い全てが桁違いに優れている。災害レベルの生物でも防ぐことは不可能。
戦争では多くのモンストールと魔物を討伐して仲間たちから英雄視される。魔人族を討伐できなかったことを悔やんでいる。その後主人公の活躍と企みを聞いた彼女は、彼と戦う決意を固める。
藤原美羽(23才)
治癒・魔法ともに人族最高最強の称号を持つ程に成長を遂げる。戦争ではクィンとともに敵を圧倒。彼女のお陰で犠牲者は少なく済んだ。魔人族討伐にも成功したが、切り札を使う際己の身を大きく削って大きく疲弊した。魔人族をも倒し得る切り札が、彼女にはあるらしいが...。
主人公と戦い、止めると決意。
クィン・ローガン(23才)
八俣倭に次ぐであろうかと言わせる程の戦士へ成長を遂げる。戦争では美羽とともに戦った。魔法剣で災害レベルの敵も単独で討伐する活躍を見せた。美羽の切り札を使うことの危うさに不安を抱く。
魔人族との戦争中断後、主人公と戦う決意を固め、八俣倭と共に彼の前に立ち塞がる。そして彼と共に出陣したアレンと戦闘を始めた...。
ミーシャ・ドラグニア(16才)
軍略家としての才能が開花して、連合国軍の副将と参謀を務める。半年間、軍略の勉強に加えて魔法や武術の鍛錬も毎日行っていた。その結果、元々素質があった魔力がいちばん成長して、召喚魔術の精度も上がった。さらには身長とバストがそれぞれ少しずつ成長したことに、誰も見てないところでひっそり喜んでた。
人族 レベル50
職業 軍略家
体力 300
攻撃 25
防御 50
魔力 1000
魔防 200
速さ 75
固有技能 遠見 アイテム召喚 魔力障壁 雷魔法レベル5 光魔法レベル5
ガビル・ローガン(60才)
サント王国の王にしてクィンの祖父。国政に身をやつしていながら現役戦士でもある。5年前のモンストール侵攻の際も、出陣して敵を退けた。王国の民と兵士と貴族全ての信頼を得ている。連合国軍では総大将を務めた。クィンには、彼女が幼い頃から剣術と魔法を教えてきた。二人でいる時は、顔がすごく緩む。過去に、単独で災害レベルの魔物を何度か討伐した実績を持つ。
戦争では魔人族とも戦い疲弊して負傷するも、生き延びた主人公との戦争にも参戦するもよう。指揮を取って出陣する。
見た目:金髪 190㎝ ゴツい体型 顔年齢40後半。
人族 レベル120
職業 戦士
体力 6000
攻撃 9900
防御 5100
魔力 3000
魔防 5500
速さ 3900
固有技能 怪力 絶牢 神速(+縮地) 魔力障壁 剣聖 嵐魔法レベル7 雷電魔法レベル7 光魔法レベル8
その他救世団:全員「限定強化」発動すれば、Sランクの敵とも互角以上に戦えるくらいに成長はしている。中身は大してクs......良くはなってはいない様子。
堂丸勇也 大砲《おおづつ》を駆使して多くの敵を同時に討伐。主人公のことを聞いて、憤慨した。
中西晴美 魔法と治癒を駆使して善戦した。悪く言えば美羽の下位互換だがいちおう中西の戦力は世界最高レベルではある。主人公のことを聞いて、だいぶ引いた。
曽根美紀 彼女の盾は、魔人族の渾身の一撃をも一度は防ぎ切れる耐久力がある。主人公のことを聞いて、それでも彼を止めるべく戦いに出ることを決意した。
米田小夜 後衛に徹して、災害レベルの生物を召喚して対抗した。縁佳に次ぐ後衛のエキスパートである。主人公のことを聞いて、可愛らしく怯えた。
マリス(♀25才)
約5年前絶滅したとされる海棲族の生き残り。瀕死のところを倭に救われて以降、ラインハルツ王国の兵士団に入り、モンストールと戦ってきた。誰よりも多くモンストールを討伐した実績を認められて、入団してから1年で副兵士団長に任命された。モンストールと魔人族を激しく憎んでいる。遊泳速度は亜音速に達する。
見た目:青みがかった黒のセミロングヘア 身長179㎝ 首部分にエラがついている。腹周りに鱗があり、背中に背びれがついている。胸サイズC~Ⅾ
海棲族 レベル110
職業 戦士
体力 9000
攻撃 6600
防御 5000
魔力 7000
魔防 5000
速さ 3300(水中時10倍)
固有技能 剛力 気配感知 水魔法レベルⅩ 嵐魔法レベル7 雷電魔法レベル7 魔力光線(水 嵐 雷電) 魔力防障壁 剣豪 限定進化
竜人族一覧
ドリュウ(50才)
主人公との実戦訓練や多くの災害魔物を討伐したことで、竜人族戦士の中で戦闘力序列3位にまで上りつめた。竜人族の中では、ドリュウがいちばん鬼族たちと打ち解けていた。
限定進化でより強化された尻尾を武器にして戦う。尻尾先に魔力をこめて様々な属性の斬術を繰り出す。
戦争では、国に単独で乗り込んできたヴェルドに深手を負わされて戦線を離脱した。次に彼と戦う機会が訪れる時は殺された同胞の無念も晴らすべく、リベンジを誓う。
竜人族(恐竜種) レベル120
職業 戦士
体力 59000
攻撃 60800
防御 50000
魔力 19700
魔防 29600
速さ 35100
固有技能 絶牢 怪力 竜人斬術皆伝 炎熱魔法レベル9 光魔法レベル9 大地魔法レベルⅩ 大咆哮 気配察知 魔力光線(炎熱 光) 限定進化
エルザレス(150才)
主人公とカブリアスに、かつての魔人族との戦争について語ってくれた。ザイートとは何度か戦ったことがあるらしく、お互い大怪我を負わせたこともあった。本人曰く、昔のザイートは主人公が知っている彼と性格が異なっている。戦いに積極的な人格ではなかったとのこと。
因みに、ベロニカやネルギガルドとも戦ったことがあるが、ネルギガルドが特に嫌だったとのこと(主に口調が無理だった)。
戦争ではヴェルドに国を蹂躙されて実質的な敗北を許してしまい、責任を感じている。今回の戦争が完全に終わった後、カブリアスに族長の座を渡す気でいるらしい。
カブリアス(85才)
修行期間はよく主人公に実戦訓練を申し込んで己を磨いてきた。急成長したドリュウをライバルとして認め、彼とも実戦訓練していた。
限定進化すると、雨を自在に降らせることができ、干ばつ地帯に雨を降らせてとある村を救ったことがあるらしい。
ヴェルドが去った後すぐに、死んだ同胞を弔って、残った同胞たちを纏めた。次の魔人族との戦いに勝つ為に、鬼族と共闘しようと画策している。
引き続き、人物追加詳細(ステータス追加・更新あり)
魔人族一覧
ザイート(135才)
成体になることで、完全な「限定進化」を遂げてみせて主人公の前に立ち塞がる。魔人族一要領が良かった彼は、人の技を見ただけで真似てものにすることができる才能を持つ。武術も剣術も体の動かし方も薬の調合も......あらゆる技術はマスター出来る。
百数年前までは、先代族長の忠実な部下であったが、リーダーシップやカリスマ性は皆無だった。ところが地底に逃げ延びてしばらくした後、強い悪のカリスマ性を放つようになり、魔人族全員をしっかり纏めて軍をつくりあげた。
昔から探求心と好奇心が強い性格で、自身の強化方法や鍛錬に熱心でいた。主人公にもかなり質問をぶつけようとしていた。出会い方が違っていれば、主人公とは案外馬が合っていたかもしれない。
(“限定超進化”時の能力値)
体力 5026900000
攻撃 9005000000
防御 5030700000
魔力 570000000
魔防 5000530000
速さ 7009050000
*見た目は通常の進化形態よりもスリムになるが、その分より力が圧縮されて増して、攻撃とスピードの質を高めることに成功する。瘴気を自発的に発することが出来るようになり、耐性が無い生物は彼に近づいただけで死に至る。
この形態になるには“成体”になっておく必要があり、発動したとしても持続できるのは僅か数分。さらに人としての感情が無くなる副作用もつく。その代わりに超圧倒的な力を発揮する。
主人公のスペックを軽く凌駕するチート性能であり、僅かな時間だったが世界の頂点に君臨した。
ヴェルド(110才)
魔力の高さはベロニカに次ぐレベル。暗黒魔法に優れている他、「武器錬成術」で剣や槍を即座に創り出して戦いもする。特に剣の腕は歴代の魔人族戦士の中でも最高峰で、ドリュウを斬り沈め、エルザレスに重傷を負わせるなどをやってのけた。
限定進化した姿は、頭に黒い角が二本、背中に闇色の大きな翼が生えて、悪魔そのものとなる。肉体強度が数十倍になり、剣速も格段に上がる。翼自体が武器となり、剣となったり魔力光線を放つこともできる。
戦争中にザイートの訃報を聞いて戦意喪失して戦場から離脱。その後失意のままでいて絶望に沈んでいたが......。
レベル510
職業 ―
体力 8000000
攻撃 9267000
防御 6980000
魔力 8090000
魔防 6680000
速さ 7108990
固有技能 剣聖 槍術皆伝 怪力 瞬神速 気配感知 魔力防障壁 全属性魔法レベルⅩ 魔力光線全属性使用可 武器錬成 限定進化
ネルギガルド(137才) ステータス:不詳
ザイートとはほぼ同期で、百数年前の戦争でも大暴れしていたが、初代異世界人に負けたことがある。地底へ逃げ延びた時、ザイートの変化にいちばん早く気付いたが、追及することはせず彼を族長として認めた。
地底生活の間、ヴェルドやクロックに戦闘訓練を実施して彼らの戦力を大きく伸ばした。それによって序列が異動したが本人は全く気にしていない様子。
戦争では災害モンストール数体を率いてパルケ王国に攻め入り、亜人族を滅ぼした。「限定進化」を発動したかどうかは不明だが、精鋭の亜人戦士たちを理不尽な力で蹂躙したことから、実力は未知だが世界を脅かすレベルであることは確かだ。
ザイートの訃報を聞いたヴェルドの様子を見たネルギガルドは、彼はダメだと思い自分が魔人族を率いるという覚悟をしたのだが……。
ベロニカ(123才 見た目年齢は美羽やクィンと同じ)
百数年前、幻術と超サイコ能力を以て人族と魔族をたくさん苦しめてきた。魔石を摂取してからは、更にそれらの質が向上、天災を起こすレベルですらある。地底に拠点を置いてからは、ザイートと共同で研究施設を造り、そこで研究と開発もしていた。
限定進化した姿はそんなに変わらない、髪が伸びて身長とバストが何故か成長するくらいである。形態は変わらないが魔力は桁外れに増加する。死角からでも幻術にハメられるようになり、魔人族レベルの生物を召喚できるようにもなる。
侵入してきた主人公の精神を壊すべく幻術と召喚魔術で攻撃に出るも、全て破られて逆に完全に心を折られた。ザイートに救われ、逃走。その後もザイート亡きの世界に絶望していた。
クロック(115才)
魔人族序列4位。魔人族ではザイートに次ぐ瞬足の持ち主。魔人族の中では情報収集に長けた男としても有名。
5年前に海棲族を滅ぼした魔人でもある。滅ぼした後、調子に乗って悪目立ちした罰で、ザイートに髪を燃やされる。以降影になることを徹底させられる。
戦争ではラインハルツ王国に侵攻するも、倭に討伐される。
見た目*黒長髪 細身 軽装で短剣を腰に差している。
レベル350
職業 暗殺者
体力 6000000
攻撃 5200000
防御 3100000
魔力 2950000
魔防 2990000
速さ 9998000
固有技能 暗殺術皆伝 瞬神速 怪力 魔力防障壁 気配遮断 夜目 瘴気耐性 炎熱魔法レベルⅩ 嵐魔法レベルⅩ 暗黒魔法レベルⅩ
魔力光線(炎熱 嵐 闇) 暗殺剣技 限定進化
*限定進化後は、光の速度4分の1程のスピードが出せる。速さも脅威だが、消音技術も優れていて、音を立てる事無く全速力で駆け回ることができる。彼の姿を目で追うことは、よっぽどの異次元レベルの強さを持たない限り(例 主人公、ザイート、倭など)不可能である。
リュドル(120才)
魔人族序列7位 ヴェルドやクロックとは仲が良く、5年前は3人でこっそり地上で大暴れして、ザイートに拳骨されて1年間療養したことがある。
見た目茶髪 灰色肌 中肉中背
魔人族 レベル275
職業 ―
体力 901000
攻撃 700600
防御 630000
魔力 700500
魔防 600350
速さ 650000
固有技能 瘴気耐性 剛力 瞬神速 絶牢 魔法全属性レベル8 魔力光線全属性使用可 限定進化
ジース(118才)
魔人族序列6位 戦争では縁佳の狙撃に対応してきて、連合国軍の主戦力戦士たちを苦しめた。地底生活になってから、ベロニカからよく茶会に誘われていた。
見た目 灰色のショートヘア 身長170㎝ スリム体型(胸Bカップ)
魔人族 レベル299
職業 ―
体力 900100
攻撃 770700
防御 550000
魔力 308700
魔防 500350
速さ 750000
固有技能 瘴気耐性 怪力 瞬神速 絶牢 危機感知 気配感知 見切り 魔法全属性レベル6 魔力光線全属性使用可 限定進化
アオザ(♀130才)
序列8位。弟のリトムを溺愛している。主人公に瞬殺される。
レベル200 身長165㎝ 黒色ロング髪 褐色肌 胸Cカップ
リトム(♂125才)
序列9位。姉のアオザと常に行動。彼女の序列を超えようと鍛錬に励んでいた。主人公に瞬殺される。
レベル200 身長176㎝ 灰色髪 褐色肌
異世界召喚一期生
八俣倭(偽名:ラインハート)170才
ラインハルツ王国の兵士団長。だがその正体は、百数年前主人公たちと同じように異世界召喚された日本人で、主人公たちがいた時代から数百年前...戦国時代末期の時代の人間だった。
しかも召喚される直前の倭は、御年65歳での高齢者であり、当時は病で床に臥していた。召喚の特典で、健全な肉体と全盛期の年齢(17~18才)までの若返り、さらに肉体の老いが遅くなるという特殊技能などを授かり、戦士として返り咲いた。
しかし、戦闘才能に関しては特に秀でたものが無くて、最初は苦労した様子だった。けれど倭は折れることなく毎日鍛錬を積んで毎日能力値を伸ばしていった。
その結果、他の仲間たちと同じくらいの強さを手にして最強の侍剣士となり、魔人族を多数討伐した。その努力ぶりは、主人公が先輩と言わずにはいられないくらいに尊敬されるものだ。当時はザイ―トやネルギガルドとも交戦したことがあるが決着はつかず。仲間とともに当時の魔人族の長を討伐して英雄となった。
その後、当時の同盟国の各要人たちの意を汲んで、彼らの代を最後に魔人族と自分たちのことを隠すことにした。唯一、ラインハルツ王国の王族たちにはその歴史は語り継がれている。
仲間想いで、兵士団の面倒をよく見ている。訓練において、男は吐いても訓練を止めさせず、女は吐く寸前まで追い込むなど鬼教官ぶりを発揮。それでも兵士たちは皆、彼のことを慕っている。
見た目:黒短髪 身長180㎝ 侍服装、腰に日本刀を差している(二本)。
今でも、能力値は僅かだが伸び続けている。あと数十年すれば今の主人公をも超えるステータスになると予測される。戦争では序列4位の魔人をも単独で討伐するなど、救世団の数十倍も強い戦力を発揮して見せた。
現在ベーサ大陸では、二箇所で大規模な争いが勃発している。
一つは故カイドウ王国。皇雅によってつくられたゾンビ兵士と連合国軍の兵士が激突している。数は後者側が多いことが有利となり、連合国軍側が優勢になっている。
その中で戦力がずば抜けた者たちが4名いる。
甲斐田皇雅(分裂体)と八俣倭・アレンとクィン・ローガン。それぞれハイレベルな戦いを繰り広げていた。
そしてもう一つは...サント王国である――。
*
( “分裂”...そんな固有技能を得たのですね。これはかなり使える技能です!コウガ程の戦力なら、2~3人分裂しても問題はないはず。ただ...ヤマタワタルやフジワラミワの二人と遭遇した場合は、なるべくアレンといた状態で戦ったほうが良いですね。それもオリジナル体じゃない方で戦うとなれば尚更です!)
カミラの助言通り、オリジナルの俺は八俣とクィンから離れて行き、分裂体を残して彼らと戦わせる。八俣のスペックを考えて、最大7割の力までを発揮できるレベルの分裂体を相手させることにした。その程度だと、本気出したあいつに負けることになるかもしれないが別にいい。足止めになれればそれで良い。
因みにオリジナルの俺は、攻撃力や耐久力、魔力が数割低下したがあまり気にならない。脳のリミッターを強制解除できるからいくらでも強化できる。本来の数値を下回るが、今回の復讐対象はどれも雑魚ばかりだし問題無い。
ザイートどころかその部下の魔人どもすら一人で討伐出来ないゴミクラスメイト5人など、何の脅威にもならない。存分に痛めつけて苦しめて、殺す...!!
『コウガ、サント王国では既に盤石の布陣が敷かれています。どうやら連合国軍の全兵士は、コウガと戦うつもりのようですね。数万はいます』
「邪魔するってか、雑兵共も...下らない仲間意識を持ってて、お友達が数万いるから怖くないってか?......馬鹿だなぁ、っくく!数なんて意味無いってこと教えてやんよ...」
『そして、その中に、救世団らしき人物も確認できました。変わった武器を持っているので恐らく彼らがそうかと』
「...どんな武器を持ってる?性別は?」
『大きな砲筒を持った男性一人、プリースト特有の杖を持った女性、そして、っ!フジワラミワです...!」
途中言葉を途切れさせながら最後に最も警戒している藤原の名前が返ってきた。そして他の2名だが...男の方は一人は堂丸勇也、もう一人は...プリーストだから中西晴美で間違いないだろう。
藤原がいるのは面倒だが、残りの二人がいるってのはラッキーだ!あの二人は特に殺したいと思ってるゴミカスどもだから、最初はあの二人に復讐するぞ...!
カミラの報告を聞いた俺はそう決意し、殺意を全開に漲らせて駆けていった。そして数十分程したところで、戦場となるサント王国の平地に着いた。そこで俺が最初に目にしたのが...
「うん?これはこれは...!?」
前方見渡す限り、武装した兵士がいっぱい。人、人、人!うぇえキモぉ!!何コレ?
人が数万集まれば、ここまでキモい絵面になるんだ。黒光りG虫の群れを見てる感じだわ。あ、ヤバい。気持ち悪くなってきたわ本当に。まさか、コレが俺対策の(精神への)攻撃法だとするなら、その作戦は成功したと言えるだろう...。あそこに魔人族がいたら俺の首は刎ねられていたな。
今回はそんなレベルの戦士はいない。藤原たちはかなり後方にいるみたいだし、すぐには攻撃できまい。...あ、やっと俺の存在に気付いたみたいだ、数人から十、百と俺に気付く数が増えていき、武器を構えて殺気を放ってきた。
とりあえず...このキモい光景を、消そう。惨たらしく!!
「お姫さんの奴、随分な嫌がらせをしてくれたなぁ。仕返しにこいつらには、えげつない死に方をしてもらおう......“王毒”」
直後、劇毒の波が雑魚兵どもを飲み込み、飲み込まれた兵士どもの断末魔の叫びがあちこちから響いた。
「「「「「「ぎゃあああああああああああああ”あ”あ”あ”あ”あ”!!!」」」」」
溶け死ぬ者、窒息死する者、爛れ死ぬ者...色んな死に方をして消えていく兵士どもを見て俺はほくそ笑んだ。
「よし、今ので数千は死んだか?次は空から毒を落とすか。魔力光線も良いけど、毒で一掃するのも悪くねーな」
もはや倫理など完全に消え去り、人の死など何とも思わなくなった俺は、面白がって跳躍してそこから「王毒」の雨を降らせた。これでさらに数千、いや1万は死ぬだろうと残酷に笑いながら眺めていると...
「ん、あれ?」
雨の範囲に入っていた兵士どもに、何か光のベールが覆いだした。そして俺の毒を防いでみせたのだ。障壁をも溶かす世界一強い毒なのだが、いったいこれは...?
『コウガ、これはフジワラミワの仕業です。彼女の“全状態異常耐性”が付与されたベールでコウガの毒を防いでます!まさか、これ程とは...!』
「藤原...厄介だなぁ。この毒をも防ぐかぁ。しかもあんな大勢の雑魚どもを守りきるし」
やっぱり来るか藤原。流石は超一流の回復術師、なら魔法系での攻めは無理か。
「ここからは直接攻撃でいくわ。搦め手でいくのは失敗するみたいだしなぁ」
『なら... “分裂”は解除した方が良いのでは?いつ彼女の、確定していませんが予想したあの魔術がくるか分からない以上は...』
「かもな。八俣をここまで来させることになりそうだが仕方ねー。動物ゾンビ兵たちに足止めしてもらおう......“解除”!!」
「分裂」の解除と同時に、脳のリミッターも解除した。そして動物ゾンビ兵全員に八俣の足止めを優先するようにも命じた。
準備を整えた俺はクラウチングスタートの姿勢をとり、スタートを切る。いざ侵攻開始...!
軍勢の中に入る直前、走った勢いのまま空気を思い切り殴りつけた。当たらずとも衝撃波が周りの奴らを襲う。今の拳の速度はマッハ4桁はいってるので、当たらずとも雑魚は死ぬ。一瞬でたくさんの兵士どもの体が裂けて、弾け飛んで、血のスプリンクラーが生じた。
次に光の速さ4分の1に達する速さの拳と蹴りを放ち続け、雑魚どもを消しまくった。少しは減らせたか?さらに一万は殺したのではと思いながら駆けて行くと...
――ドギュゥンンンンンン!!「――お?」
真上からいくつもの弾丸が襲い掛かってきたので腕をクロスさせて防いだ。が、腕から煙がシュウウと噴いて出て少し溶けた。これは、カミラ率いる兵団が使ってた“聖水”か!この軍勢もやっぱ同じ対策をしてきたな...油断ならない。
そして、この拙い射撃は...。
『コウガ、今の射撃は...』
「ああ。だが高園じゃない。あいつだ...!」
「よし、効いてる!聖水効果もあるだろうが、俺の弾丸の威力がスゲー上がってるぜ!甲斐田ぁ!!お前はここで終わりだ!!」
堂丸勇也...!あいつはガンシューターだっけ?無駄にデカい砲筒で射撃してきやがったが。
「高園の下位互換が!射撃はできても狙撃はできない雑魚がぁ!!随分粋がってんじゃねーの!?」
「お前、高園も殺す気らしいな!?絶対させるかよ!お前みたいな最悪糞野郎に殺させてたまるか!!」
俺の挑発にあっさり乗った堂丸が額に青筋立てて殺意を漲らせて急降下してきた。こいつも...クィン程じゃないがステータスが普通じゃない。初期のステータスを見たことあるだけにこの成長率はおかしいからな。何かあるな...。
ドウマルユウヤ 18才 人族 レベル75
職業 ガンシューター
体力 100000
攻撃 500000
防御 100000
魔力 100000
魔防 100000
速さ 100000
固有技能 全言語翻訳可能 気配感知(+索敵) 炎熱魔法レベル8 精密射撃 限定強化
...と言っても一般的な人族の場合なんだけどな!?俺から見たら雑魚同然~!
「砕けろ!!」
急降下しながら砲筒を大槌のように振り下ろした。というか大槌になってた。近距離武器に変形するらしい。躱す必要無いがあえて躱した。地面が大きく陥没して数十メートルの大穴ができた。
「その威力、 “限定強化”のお陰だけじゃないな?ついさっきも人族にしてはあり得ない能力値の奴と遭遇したんだが、テメーも似たクチか?」
「 “限定強化”を知ってるのか...ああそうだよ!倭さんからもらった新しい強化素材だ!
“魔石”を細かく砕いてつくったドーピング粉末を摂って、俺たちはもの凄く強くなったんだよ!!」
堂丸から発した魔石という単語に、俺は驚きのあまりに目を見開いた...。
~回想~
(魔石って、今の魔人族がああなった原因で、瘴気が発生した源でもあるあの...!?)
ミーシャが指を少し震わせながらテーブルにある魔石を指して発言した。倭がたった今取り出した“魔石”と呼ばれる幻の鉱石。魔人族を今の魔人族にたらしめた全ての元凶であり、屍族《モンストール》の発生の源でもあるという、人族と他の魔族たちにとって悪魔の鉱石だ。そんな物を倭がいきなり取り出したのだから、皆驚くのも無理はない。
(鍛錬で使ってたある洞窟地下深くでこいつを見つけて拾った。さらに言うと、討伐した魔人族の中にも破片として埋まってたんで、それも採取しておいた。魔石は何も魔人族だけを強くする物じゃあるまい?他の魔族も強くできるだろうし、当然...俺たちも強化できるはずだ)
(ヤマタ殿、まさか...!?)
ガビルの問いかけに倭は頷いて告げた。
(こいつで俺たちも大幅に強化する。これ以外で甲斐田に対抗できる術はもうないだろう。 “限定強化”を持たないこの世界の人間ならなおさらな)
(ですが!半年前に遭遇した魔人族の族長だった男が言うには、魔石の摂取には大きなリスクがつくとされていて、過去に魔人族はそのせいで何人も副作用に耐え切れず死んだと聞きました。これはあまりに危険過ぎるのでは...!?)
ミーシャが過去の事例を引き出して倭に意見し、それを聞いた縁佳たちは戦慄した。
(案ずるな。そんな危ない賭けなど今回はしない。こいつを砕いて粉末状にして摂取する。それだけでも強化できるってのは確認済だ。あとは時間を限定させることだな。長時間魔石の強化を持続させると体に悪い。切りのいいところで強化を解く必要がある。そのやり方は追々話すとして――)
(ま、待って下さい!ワタルさん、試したのですか、その石での強化を!?そんな危険を、誰にも相談しないで冒していたのですか!?)
倭の言葉を遮ったクィンが、焦った様子で倭に詰め寄った。だが当の本人はあっけらかんとした態度のまま答えた。
(誰かが試さねば、こんなドーピング法は見つからなかった。それに魔石の副作用に耐えうる強い奴が必要とくる。俺以外に相応しい奴はいるまい?というか、これくらいのリスクを踏まなければ、次の戦争で...負けるぞ?)
倭の有無を言わさない発言に、誰も反論できずにいた。全部彼の言う通りだと認めているからだ。
(致死量の副作用が発症しない程度の量で摂取しろ。そしてこれは限定的な強化に過ぎない。使いどころは各自で判断して、くれぐれも長時間の使用は控えろ。人によっては能力値を数十倍、数百倍にも跳ね上げられることができ、魔法も強化できる。これを有効に使って、勝つぞ...!)
*
そして現在――
「...!ドーピングした仲間は大勢いる!お前がこの戦争に勝てる可能性なんて万に一つも『――ドガァン!!』――っがぁ!?」
堂丸が吠えながら再度大槌を振るってくるが、それより速く俺が奴の顔面を掴んで勢いよく地面に叩きつけた。堂丸は無様にも喀血して体を麻痺させていた。
「魔石強化?それでこの程度か?つーかテメーの自慢話はどうでもいい。
俺は...テメーも殺しにきたんだからよぉ。今からもの凄く痛くて苦しい思いをさせるから覚悟しろよぉ?ふふ、ははははははは!!」
堂丸勇也......まずはテメーの汚い血をまき散らせることで、俺の復讐を再開するとしよう!!
(甲斐田君のところに堂丸君が...!!)
とある場所から固有技能「遠見」で戦況を見てしばらくのことだった。
世界の厄災と化した男、甲斐田皇雅が現れたことを確認した縁佳は、無意識に胸を高鳴らせて、同時に締め付けられる思いもした。これから彼と戦わなくてはならない。殺されるかもしれない。
そういった気持ちを抱きながら彼女はここにいる。
すぐに同じく後衛として控えている米田小夜と曽根美紀に、縁佳は合図を送る。皇雅が現れた場所の近くには彼女のクラスメイト堂丸と中西晴美、そして先生の美羽がいる。
彼らで皇雅をどうにか抑え込んで、さらに米田の魔術で拘束状態にさせて、その隙に縁佳が狙撃して止めて、無力化させる...という作戦だ。
――しかし、そう簡単に事は進んでくれなかった。皇雅の人智を容易く凌駕した異次元の力を前に、早くも一万近くもの手練れの兵士たちが殺されてしまい、さらにはクラスメイトの堂丸も、窮地に陥ろうとしていた。
堂丸と一緒にいた兵士たちや美羽が阻止しようとしたのだが。あろうことか、皇雅は堂丸を掴んだままどこか遠くへ離れて行った。
最悪の事態となった。恐らく皇雅は復讐の為にあえて戦場から離れたのだ。
「小夜ちゃん!甲斐田君のところに!!」
「ごめんなさい!もう、追いつかない...!」
「そ、んな...!」
縁佳はその場で絶望した。彼女の狙撃で皇雅を狙うことはできる。だが今はまだ彼女の手札を明かしてはいけない。今動けば作戦は破綻する。だがこのまま見過ごせば、堂丸は助からない。
「私は、助けられないの...!?堂丸、君...」
己の無力さを感じた縁佳は、嘆くことしかできないでいた...。
*
(俺たちサッカー部は今年は地区予選に進めたんだ!ここで勝ち残れば全国だぜ!いやー俺らの代は歴代でもかなり強いって監督が褒めてくれてさ~)
(凄いねサッカー部は...。こないだの県大会決勝だって、堂丸君が得点源だったよね?小林君と里中君との連携凄かったよ。私サッカーはよく分からないけど、あの時は凄かったって思ったなー。)
(ほ、本当!?あの決勝戦で勝てたのはもちろん小林と里中の力もあるけど、た、高園が応援に来てくれたお陰だってあるんだぜ!?そうだ!高園の試合っていつだよ?今度は俺が応援しに行くからさ、教えてくれよ!)
(本当?ありがとう。えっとね、次の試合は夏休みの――)
こないだの試合に高園が見に来て応援してくれたのが、何より嬉しくて励みになった。サッカー今まで頑張ってきてて良かったって思った瞬間だった。
俺に対する好感度も悪くないようだし、これは告白するチャンスかもしれない!
けどいつやろうか?今は高園も全国大会に向けて弓道にとても真剣でいるから邪魔したくないし...。
(お前まだ高園に告白してねーのかよ?いい加減動かねーとマジでとられるぞー?須藤あたりとか怪しいぞ、あいつ最近は高園路線に入ってるって聞いたし)
(この際結果とか恐れずに告っちゃいな!そうやって引きずってるとプレーに影響出るかもしれないだろ?俺たちの最強連携が崩れたらヤバいぜ?俺たちがお膳立てしてやっからいけよ!!)
(お前ら...そうだな。ウジウジしててもしょうがねぇ。いっそ全部吐き出してスッキリしよう!そんで部活も恋も充実してやるぞー!!)
(なに告白成功したことにしてんだよ馬鹿!でもその意気だ頑張れ!!)
バシンと背を叩いて激励する里中と小林。こいつらの存在がこれほどありがたいと思ったことはない。生涯のダチだよこいつらは。
......この世界に来てもその気持ちは変わらず――
「――いつまで下らない回想に耽ってんだよ!?しかも無駄に長いし。
無駄に尺を取るな、ここからはずっと俺のターンなんだよっ!」
ドシュゥ!!「ぐぎゃあ!!」
勝手に浸り出した(そんな気がした)こいつのクソキモい回想を強制終了させるべく、貫手で堂丸の肩を刺し貫いた。反対も同じように貫いて両方とも肩が上がらないようにしてやった。これで大槌は振り回せない。
カミラの指示に従い、俺は堂丸を掴んだまま一旦戦場を離脱した。その方が一人一人集中して復讐できるというありがたい助言をもらった。途中藤原らしきの魔法で妨害されたが「魔力防障壁」をとばして妨害を妨害してやった。
さらに超広範囲に水・大地の複合魔法でつくった巨大沼に「王毒」を混ぜて毒沼化させておいたので、誰も近付けない。飛ぼうにしても毒沼の真上に行くと毒が含んだ気体に触れてご臨終だ。大回りするか毒沼を消すかしないとすぐに俺のところへは行けない。
これで、この糞ゴミ野郎を集中して復讐できる...!
「じゃあ存分にやろうか堂丸くーん?俺を殺すとか何とか、運んでる途中で喚いてたなぁ?やってみろよ、魔石とかで強化してもあの程度のしか強くなれなかった雑魚が」
「だ、まれええええええええ!!テメーだけはぶっ殺す!!高園に近づけさせるかよおおおおおおおお!!」
俺の挑発にまたもあっさり乗った堂丸は、武器をガンスタイルに戻して乱射する。この武器は対象から距離が近い程威力が上がるらしい。よって今の攻撃もさっき以上の威力となってる。
近距離で放ってきた砲弾を避けることなく武装硬化した右手で弾こうとしたが、砲弾に触れた瞬間もの凄い炎熱が俺を襲った。これは焼夷弾か!
「テメーみたいな外道にもなぁ!高園はみんなの輪に入れようと考えていた!テメーと俺たちを和解させようと動いていた!俺はテメーのことが嫌いで、大西や須藤らと同じハブることに賛成していたけど、高園は俺にテメーと仲良くしてやってほしいと持ちかけてきた!!
何でテメーなんかが、高園に気にかけてもらってんだよ!?当のテメーはそんな高園の厚意を無視して輪に入るどころかクラスの雰囲気を悪くしやがって!!
テメーが全部悪いんだろうが!!あの時の実戦訓練で見捨てられるのも当然だ!!
テメーが大西や須藤に安藤、そして里中と小林を殺した行為は、復讐でも何でもない、ただの逆恨みだああああああ!!」
砲撃しながら好き勝手に俺を詰ってくる堂丸。炸裂弾にレーザー光線、炎熱魔法が付与された砲撃を撃ち続けながら俺に対する恨み言をずっと吐き続ける。その目には狂気すら感じられた。この半年間、俺はこいつらを殺したいと憎み続けてきたが、どうやらそれはこいつも同じだったらしい。
全く、愉しませてくれるじゃないかぁ!?これこそ復讐のし甲斐があるってわけだぁ!!
止まない砲撃の嵐を、拳と蹴りで悉く吹き飛ばし、障壁を身につけてダメージを軽減させて防ぎ、魔力光線で相殺しながら悠然と歩む。半年前の俺だったらこの砲弾の雨はちときつかったかもな。けど残念。格が違い過ぎたな...!
あと数歩分の距離まで近づくと、堂丸が突然喀血して膝を着いた。その隙を見逃さず瞬時に奴の両肩を掴んで、両腕を引き千切って(その際堂丸は激痛のあまり大絶叫した)、さらに奴の武器である砲筒を全力で殴りつけて破壊し、這いつくばらせた。
肩の付け根から先が喪失して傷口から夥しい血を流してうつ伏せに倒れる堂丸を、冷ややかに見降ろす。ダメ押しとばかりに奴の全身に重力をかけて、完全に動けなくもした。せめてもの情けにというか娯楽の為にと、口くらいは動かせるようにしておく。
「一瞬隙を見せたな?魔石を少し摂取したって聞いたが、やはりアレはハイリスクを伴うアイテムらしいな。長時間それに頼ると身を滅ぼす、ってところか?」
「...!...!!」
「あ?これでも加減してやってんのにまともに喋れないのか、魔防弱過ぎだろテメー」
そう言って重力を少し弱める。代わりに背中を踏みつける力を強めた。背骨にヒビ入ったのか、変な音がした。
「ぎゃあ”っ!!か、いだあ”ッ!!」
「汚い声出すな耳障りだ。それより無様だなぁ?俺に復讐するべく戦争に参加して、前衛として俺に進撃した結果がコレだ。ま、テメーの復讐心なんて所詮その程度だ。その気持ちが弱いから力もクソ弱いんだよ。
そういえば高園が何とか言ってたな?俺を輪に入れる?和解させようとした?余計なお世話だ!あいつは最初から何も見えちゃいねー。心の底から独りを好いていた俺自身の輪を乱したあいつが悪いというのに、それを拒絶したらテメーらが醜く煩く糾弾してハブりやがったんだ。そうだろ?結局テメーらが勝手に騒いで勝手に非難して除け者にしたんだよゴミが」
辛うじて俺の方に顔を向けた堂丸は、尚も激昂しながら反論する。
「お前なんかに、構ってくれた高園の気持ちを理解しようともしないクソ野郎が、偉そうに語るな!!さっきも言ったろうが、テメーのやってることは逆恨みだって!あの時お前が見捨てられたのは、全部甲斐田、お前自身が招いたことだっ......(グリィ...!)――ぐ、あ”あ”あ”ああああ!!」
「......かもな。テメーの言う通り、俺のやってることはもしかしたらただの逆恨み、八つ当たりの類なんだろうってな......。
それの 何が 悪い?」
「な......!?」
唖然とした顔で絶句する堂丸を見下しながら話しを続ける。
「いいか?俺は自分が不快に思った、害されたと思ったら、そうさせた奴らを制裁、殺すと決めている。全ては自分の為。 “復讐”などと言葉を飾っているが、その実ただの私怨を晴らす為の行為かもしれない。
だがそれの何が悪い!?俺はただ、自分が“敵”だと認識したゴミ野郎をこうやって駆除しているだけさ!!」
ゴキボキィ!!
「がはぁ...!!おえぇ...!」
踏みつける力をさらに強めて堂丸のくだらない言い分を遮り、俺も好き勝手に喋る。
そう、こいつの言う通り...結局は自分の私怨を晴らす為に今まであいつらを殺してきたに過ぎない。といっても過去のツケが回って見捨てられたのは事実だが、それが原因で死んだわけだし、やっぱり復讐心の一つ抱いたって変じゃないと思うが。まぁこの低脳ゴミクズに何を言ったって無駄だろうから言わないで良いや。
「というか、テメーはさっきから高園のことをやけに引き合いに出してるが...もしかしてあいつにご執心中?好意抱いてたりする?もしそうならテメーが高園のことでムキになるのも納得いくな。そんな奴を殺すだなんて言う俺を、殺したいと思うのも当然か...。
よし、なおさら高園を殺すとしよう!テメーが嫌がること、絶望することを徹底的にやろうじゃねーか!テメーはそんな俺を憎み、テメーの非力さに憤慨し、屈辱を味わいながら、無様に甚振られて死ね!!くくく、あはははははははははははぁ!!!」
堂丸が高園に恋慕を抱いていることは、不本意だが学校にいた頃から薄々感ずいていたが、今のやり取りで確信した。だから俺はあいつをも殺すと、この醜いボロクズの心に傷をたくさんつけてやった。あまりにも可笑しくて思わず哄笑してしまった。
「甲斐田ぁ...!てめえ”え”え”え”え”え”え”え”え”え”え”え”え”え”え”!!!」
「うるせええええええええ!!もっと苦しめよ生ゴミ野郎がッ!!」
さらに激昂したボロカス堂丸の怒声に逆ギレで返す。そこからもっと過激な残虐行為に及んだ...!
ゴッ!バキィ!ゴリィ!ジュウゥ...!ブチイイィ!グシュウウウ!!
その後、頭や背の骨を殴りつけてへし折り、熱で炙ったり、両脚も千切ってダルマ状態にして、黒い日本刀で何度もぶっ刺した。
「ほら俺を憎め、俺を恨め!俺を殺したいって叫んでみろ!俺を睨んでみろよ!?
このままだと、テメーが好いている女を殺しにいくぞ?止めるなら今だぞ?四肢が欠損したその体で、俺を殺してみろよぉ!?片手剣士の俺なんかよりよっぽど優れた職業を授けられた救世団の戦士さんよおぉ!?あっははははははははははッ!!」
「ぐ...がっ、はがあぁ...あ”...」
俺の煽りに対する返事は、途切れ途切れの苦悶の声だった。言い返す体力・気力さえもう残っていないみたいだ。あーあ、ベロニカとかいう魔人族の魔術だったら何度も殺せたんだろうなぁ...こいつを潰すゲームはもう終わりかよ...。
こいつは...学校では俺をひたすら避けて真正面からは強く言わねーくせに裏では悪評広めていた弱虫のクズで、この世界では力を持ったことを良いことに俺をリンチして最後はあのゴミカスどもと笑って俺を見捨てたという大罪がある。よって、残酷な死刑を執行する!
「テメーも死んだ後は永遠の地獄をさまよえ。高園は絶対にテメーと同じところに送ってやらねー。一人で永遠に苦しみ続けろ!
『輪廻・獄界』!!」
「!!あ...あ、あ」
ボロカスで風前の灯火となった堂丸に、大西にも使った死後も地獄が続く闇の魔法をかけた後、その場で飛び上がって左脚を巨大な斧に変形させる。踵落としのフォームのまま急降下。奴の体を割く寸前――
「絶望を抱いて墜ちろ」
ザンッ......!
冷たく言い放って......堂丸の胴体を真っ二つに切断した。最期に奴は何か呟いて、絶命した。
「た...かぞ、の......い”、ぎ......の............」
“高園、生き残れ”か?この期に及んであいつのこと考えるとか、本当に好きなのな?どうでもいいが。目障りなので重力を操ってこのゴミ死体を丸めて圧縮して、消し去ってやった。
死体が消えたと同時に、胸がすいて良い気分になれた。
「一人目」
そう呟いて、毒沼を消し去って、再び戦場へ戻って行く。
大体あいつは、自分と俺との戦力差をまだ理解出来ていなかったのか?魔石なんかで俺を倒せると思ってのあの最初の一撃を放ってきたのか?とんだ無駄死にだったな。あるいはそれを踏まえた上での特攻だったのか。仲間を殺した俺を前にして頭に血が上り突っ込んできた...と?まぁそうなるもの無理はないが......そういうことをするのはせめて俺クラスまで強くなるべきだったな。
固有技能やドーピングに依存するだけで肝心の鍛錬をおろそかにしていた。そのせいで俺に一方的に嬲られて無様にその下らない命を散らしたんだ。
努力が足りなかった堂丸勇也、お前は.........怠惰・でしたね!!
まぁせいぜい永遠の悪夢で苦しんでいろ。俺を害したテメーには当然の報いだ。
じゃあ、戦場に戻ったところで、次は...ここからいちばん近くにいる、あのプリースト糞女を処刑しよう...!
「堂、丸君...!う、うぅうう......!!」
『.........』
美羽はミーシャからの報告を聞いて、悲しみのあまりにくず折れてしまった。そんな美羽に、ミーシャは何も言えないでいる。
(堂丸勇也が死んだ...殺された。甲斐田皇雅によって……。彼の宣言通りにさせてしまった。出陣前は誰も殺させない、生徒全員も守るって口に出して誓ったのに。守れなかった。止められなかった。間に合わなかった...)
「ごめん、ごめんね堂丸君...!君を死なせてしまって...」
『ミワさん。自分を責めないで下さい。出陣前ドウマルさんは覚悟を決めていました。最も危険な前衛を自ら買って出て務めた彼を止められなかった...その役目を任命した私に責任があります...!連合国軍の目的を果たせなかったこと、本当にごめんなさい!ですが、ミワさん。言い辛いのですが...コウガさんを止めるには、あなたの力が必要です。どうか、ここで折れないで...!』
ミーシャの、水晶玉越しからでも伝わる頼み事を聞いた美羽は、しばらく涙を流して黙っていたがやがて立ち上がり、前方をキッと見据えた。
「ありがとうございますミーシャさん。心配しないでください、私はもう諦めないと決めてますから。絶対に折れたりしません!絶対に止めてみせます...!お見苦しいところを見せてしまってすみませんでした!」
『ありがとうございます。そしてご武運を、私もついていますから...!』
水晶玉越しにいるミーシャ様に頷いてから、美羽は駆けた。
*
(授業中に携帯鳴らしたのって甲斐田君でしょ?あいりが後ろの方から聞こえたって証言は聞いてるのよ?)
(は?そんな理由で決めつけてんじゃねーよ。大体俺は授業中はマナーモードにしてるか電源切ってるから、あんな音鳴るわけねーんだよ。つーか俺はあんな通知音登録してねーし)
(そういう嘘はいいから!私の後ろの席って甲斐田しかいないんだし、どう考えたってあんたしかあり得ないでしょ!?早く認めてよ、自分が鳴らしたんだって!)
(はっ、本当はテメーが鳴らしたくせに罪を俺にかぶせるつもりかよ?というかあの時俺はテメーの席から聞こえたぞ?あの通知音がよ。鳴らしたのはテメーだろうが!下らない罪かぶせてんじゃねー!)
(う、嘘よ...デタラメ言わないで―)
(いつまで否認するつもり!?甲斐田君のせいで、今日のホームルームの時に携帯鳴らした人が挙手するまで解放してくれなくて、それが1時間も続いてもあなたが挙手しなかったせいで皆が迷惑してたのよ!?何とも思わないわけ!?)
(だったらなおさら柴田が悪いんじゃねーか。こいつが挙手さえすればすぐに解放されて下らない無駄時間使わないで済んだ話だろ!?俺だって部活の練習時間を割かれて迷惑してんだよ!というかさっきから俺が犯人前提で話進めやがって、どういう悪質な冤罪行為なわけ?いい加減にしろよテメー?これ以上俺を糾弾するってんなら名誉棄損として扱うぞ、なぁ?)
(は、はぁ?分けわからないことを言って…!これ以上私たちに迷惑かけないでよ!クラスの和を乱すことしかしない、最低男が!!)
(んだと……!?)
(ち、ちょっと3人ともどうしたの!?)
(あ、縁佳!実は携帯鳴らしたことで――)
今年の5月だったかな?授業中に携帯のメールかアプリの通知音が鳴った。私の高校は携帯電話の持ち込みは自由だけど、休み時間以外で使ったり音を鳴らしてはいけないという校則がある。
ある日授業中にアプリとかの通知音が鳴り響いてしまい、そのことを教科担当の先生はもちろんそのままにせず浜田先生に報告した。それを聞いた先生は終業時のホームルームで、授業中で携帯を鳴らした人の挙手を求めた。名乗り出るまで誰も帰らせてはもらえず、犯人が名乗らないまま1時間以上も教室に縛られる羽目に遭わされてしまった。
誰もが限界に達しようとした時、キリがないと判断した先生の温情で私たちは解放してくれた。しかしその後すぐに、あいりから犯人に心当たりがあると話を持ちかけられた。その人は、クラス一の問題となっている男、甲斐田皇雅とのこと。
その名前を聞いた時、私は“――ああ、やっぱり”っておも――「だからどうでもいいウゼー回想するなって!しかも、無駄に長いっつってんだろ!何糞胸悪い内容を掘り返してんだ、冤罪ふっかけゴミ糞女が!!」
ベキボキィッ!「ガヒィ!?」
また回想に入って...しかも俺のことくっそディスってる気配がしたから、奴の腹に力をややセーブした回し蹴りを叩き込んだ。
骨がほぼ全部折れて内臓もいくつか潰された中西は、喀血しながら勢いよく地面に落下していった...。
時間を少し遡って...。再び戦場へ戻るとすぐにまた兵の大軍に囲まれる。360度隙間無く矢と弾丸・砲弾の雨が降り注がれる。全ての獲物には聖水があるようで、素手で対処すれば腕や脚は無事じゃ済まないだろう。ぐるぐる回りながらありったけの魔力光線を放って一掃、ついでに雑魚どもも消し炭にしてやった。
だが唯一、光線を防いだ戦士が、レベル9相当の魔力光線を放ってきた。障壁で防いでその正体を見れば、次に殺すと決めていた中西晴美が自分から現れてくれたではないか!
こちらに敵意や侮蔑を込めた視線を寄越してきたのでウザいと思い、「瞬神速」で接近して思い切り(殺さないよう)蹴り飛ばした!
――っていう流れだ。
地面で無様に倒れる中西を、堂丸の時と同じように掴んでまた戦場から一時離脱しようと急降下したその時――
“水槍”
どこからか音速で放たれた水の槍が、俺の胸を貫き俺は吹き飛んだ。つーかこの水、聖水100%じゃねーか。槍で空いた穴が全然塞がらない。回復が機能できていない...!
こんなえげつない魔法使える人間は限られるよな...。
「“回復《ヒール》”」
さっきの水魔法を放った奴がそう呟いた直後、中西の腹のダメージが全快して体力も回復していた。その場で立ち上がる中西は再び魔法杖を構えて睨んできたが、俺は乱入してきて回復魔法を使った彼女の方を見ていた。
「あんたか......藤原美羽」
「甲斐田君、君は...!!なんて、ことを...」
俺の前に、人族最強《やまたわたる》と肩を並べるだろう戦士に成長を遂げた、連合国軍の切り札...藤原美羽が、現れた...!
「こうして対面するのは半年ぶり?あんたも、今は魔石を摂取してるようだな?今の魔法は明らかに人間レベルを超えていた。あそこまで強くなるものなんだ?」
「知ってるのね、魔石で私たちが強化してるってこと。そう...私たちは命を懸けて、魔石を使ってでも君を止めるって決めたから...!」
一瞬悲痛な表情を浮かべたがすぐ引っ込めて、戦う気満々の面構えで俺と対面する藤原。中西も彼女と並んでこっちを睨む。
「私たちは俺を止める、か...。さっき血気盛んに突っ込んできて俺に無様に殺された堂...某君は、俺を殺すつもりでいたが?俺を止めるって思ってるのは、もはやあんただけじゃないのか?」
「っ......!」
言い返そうにも言葉が見つからないのか、悔し気に歯噛みするだけに終わる。だが隣にいる糞女は何か言ってきた。
「堂丸君をよくも...!美羽先生、やっぱりこの男は止めるだけじゃダメです!完全に消した方がみんなの為です!!クラスメイトを平気で殺すこんな外道、もう生きてはいけない!!」
「中西さん...それでも私は...!」
どうやら中西もあのクソ野郎と同じく俺を完全に消す気でいる。ここからは殺す気で魔法を放つだろうな。こいつらは物理攻撃より魔法・魔術が得意そうだし。まずは藤原から離れなければなぁ。雑魚兵士はともかく彼女がいる中では、復讐に集中するのは困難だ。
「つーわけで、あんたとは一旦お別れだ、藤原――」
“炎の嵐渦”
俺が動く仕草を見た瞬間、藤原がすかさず炎と嵐の複合魔法で、俺を炎嵐の檻に閉じ込めた。分断させようとしたのがバレたらしい。その隙を突いて、中西が魔力光線をいくつも放ってきた。どれも殺意が込められた一撃だ。が、無駄だ。
「確かに威力は高い。けど通用するのは魔人族止まりだ。それすら凌駕する俺の前じゃあ無意味!!“魔力防障壁・最大硬度”」
全身にピッタリと障壁を張り付けて、ザイートの鎧みたいにつくりあげたバリアーで全ての光線を防ぐ。そしてクラウチングスタートからの猛ダッシュで、炎嵐の檻を強引に突破した。
「そ、んな...魔石で強化した私の魔力光線が全く通用しない...」
「く...!」
二人とも愕然と、悔し気に顔を歪める。特に中西にいたってはショックのあまりか、動けないでいる。中西...魔石でこいつも堂丸に劣らず人間離れしたステータスをしてやがる。
ナカニシハルミ 18才 人族 レベル75
職業 プリースト
体力 110000
攻撃 50000
防御 100000
魔力 600000
魔防 100000
速さ 100000
固有技能 全言語翻訳可能 光魔法レベル9 水魔法レベル9 雷電魔法レベル9
魔力光線(光 水 雷電) 回復(状態異常完治 回復付帯付与) 魔力防障壁 限定強化
能力値高いな...まぁそれは人族の範囲内では、だ。レベル9程度の魔法では俺のバリアーは壊せない!
動けないでいる中西の髪を掴んで高く跳びあがる。意図を察した藤原が、さっきの水魔法を飛ばしてきたが、“分裂”で発生したもう一人の俺が、それを止めた。
「!?甲斐田君が、なんで二人...!?」
分裂体の俺を見た藤原が予想外だと言いたげに狼狽えている。ああそうか。これを発動したのは今日が初めてだから、連合国軍側は知らないのか?残念だったな、情報戦はこっちが上手ってこと!
藤原は分裂体で足止めさせる。その間はオリジナル体の俺が、この糞女に復讐する...!雑魚のこいつなら力を削った状態でも十分甚振って苦しめてやれる!!
雑魚兵士どもを殺し散らして今度こそ戦場を離脱して、数秒間移動したところで中西を堂丸と同じように地面に叩き落とした。さって~~二人目の復讐と行こうか!
意気揚々と追撃をかまそうとした.........が、体にふと違和感を覚える。
「...?体が、あれ...動かない?」
やがて全身の自由が奪われて俺は頭から墜落して、倒れ伏した。
“死霊操術《ネクロマンシー》”
どこか遠くあるいは近くからそんな詠唱が聞こえた気がした。この声、確か...
(これで体の自由は利かなくなったはずだよ...甲斐田君)
そうか...ここで《《テメー》》が出てくるか。中西の窮地を見て、ついに動き出したってことか.........藤原・八俣に続いて、俺にとって要注意すべき奴が...!!
「呪術師 米田小夜...!」
~回想~
(呪術師......この職業には多くの呪術や特殊魔術を扱えるという特徴があります。呪い・召喚・幻術など、本当に様々あります。
中でも...“死霊系”の魔術。これはコウガにとって要注意すべき能力です...!)
(ネクロマンシー...って、元の世界では何度も聞いたフレーズだな。意味としては死体や幽霊を意のままに操るっていう......っ!まさか、この世界の場合はモンストールをも...!?)
(恐らく...。そしてコウガの場合はゾンビという新種に分類されますが、コウガすらも死霊術にかかる対象に入ると予想できます。この予測が正しければ、死霊術を使える呪術師はかなり厄介な戦士になってきます。
けれどコウガはその...常識外れな力を持ったイレギュラーな男なので、相手はせいぜい体の自由を奪うことしかできないかと思いますが...)
(……この場合だと、俺が警戒すべき対象は...まさかのこいつかぁ...)
(...コウガ、このヨネダサヤとはどういう人物なのですか?)
(米田か...。こいつは高園とよく一緒にいてたっけ?でもあいつとの接点は無いかったからどんな性格なのかも知らないし、個別的な恨みも特に無いし...)
つまりは...
――彼女のことは 全く何も分からない 特徴が無い女......それが彼女に対する俺の評価だ...
*
どこから魔術をかけたのか、辛うじて首を回して周りを見るが、米田の姿は認識できない。どうやら向こうは「気配遮断」系の固有技能で姿を隠して攻撃しにきてるようだ。
『ごめんなさいコウガ。私がいながら敵の動きを予測できませんでした。どこにいるか分からない状態だと予測すらできないのができないので...』
「問題無い。敵は巧妙に俺やカミラの目から隠れてやがる。それより藤原美羽の動きを見ていてくれ。彼女を常に警戒していてくれ」
分かりましたと返事するカミラとの通信を終えて、再度気配を感知してみるが米田の反応は依然無い。体もまだロクに動かせないでいる...ええい煩わしいっ!
脳のリミッターを一気に解除(30000%くらい)して、全身の筋肉や関節を無理やり動かすことを敢行する。ブチブチとした断裂音やバキィと折れる音がするがお構いなしに立ち上がろうとする。
(う!?なんて力...!制御が、出来ない...!)
またも脳内で声が響く。せっかくだ、声くらいかけてやろう。
(死霊術を使えるとは流石は召喚の恩恵を受けているだけあるな、米田さん?確かにこの魔術は俺を脅かす切り札と言えるが、テメー程度のスペックで支配できる程、俺は雑魚じゃねーんだよおぉ!!)
(ッ!!これ以上は止められ...!!)
ブチィ!!と音がなった気がしたのと同時に、体の支配が解けた。今の拘束時間は大体10~20秒ってところか。といっても、リミッターを解除しないとこの時間だからなぁ。米田もおそらく魔石を摂取して死霊術を使ったのだろう、かなり手こずった。
すぐにまたくるか、と身構えたが魔術にかかることはなかった。魔力をかなり消費するのか、連続は使えないと見た。
『コウガ、フジワラミワはまだ分裂体に苦戦しています。そこに来るにはもう少しかかると思います』
カミラの報告に了解と返事した直後、中西が放ってきた光・雷電・水の魔力光線が一斉に向かってきた。さっきよりも威力が増している。こっちも闇属性の魔力光線を3発放って相殺させる。分裂で弱体化したとはいえ、俺の魔力に匹敵しているな...と感心しながら放ってきた奴の姿を確認する。
「う”う”う”...!!」
様子がおかしい中西のステータスをもう一度確認すると、能力値がさらに上昇している。魔力が7桁台になってる。魔石をさらに摂取したようだな。奴に理性が失いつつある感じがする。
「甲斐田なんかに...殺されたくない。悪人で、みんなの敵のあんたなんかに...たくさん人を殺したあんたなんかに!私たちを恨む資格は無い!!」
残った理性で何を言うかと思ったら、そんな下らないことをほざいた。そして直後に吐血した。命を削って強化をしたな...。
「資格だぁ?知るか糞女!携帯鳴らしたのは本当は柴田だってこと気付いていたくせに、友達のそいつを庇って俺に罪を被せた...偽善者のゴミカスが!気に入らない奴だという理由だけで理不尽に冤罪をかけやがる...テメーみたいな性格最低女は、絶対に社会に出してはいけねーなぁ。テメーみたいなクズが、国を腐らせるんだよっ!
というか、テメーみたいな奴を殺す俺が、悪人っつったか?テメーら側のクズ共にとってはそう捉えられるのかもしれないが、俺は違うね!
というか悪や正義なんてそれこそ人それぞれだ。だから俺は自分が正しいと思うがままに行動するってこの世界で強く決意したんだ。
さしあたって今俺がすべきことは...“悪”のテメーを残酷に殺すことだっ!!」
「瞬神速」で駆ける。中西が奇声あげながら魔力光線や聖水が付与した魔法を放つが、俺の速さを捉えられるはずもなく全発外す。
まずは奴の唯一の武器である魔法杖を粉々に破壊して(この時点で中西は戦意を失いかけていた。魔法杖は自身の魔法火力を強化する武器だからな)、顔面を火のついた拳で殴りつける。打撃と火傷によってその顔は見るに堪えないものと化した。女に対する苦痛法は、まず顔を醜いものに変えるのが当たり前だ!安藤の時みたいにキモく改悪してやるぜ!!
しかしそれでもまだ抵抗する意志までは萎えてないらしく、ゼロ距離から聖水付与の水魔法を放ってきた。それを俺は「危機感知」と「見切り」コンボで容易く躱していく。
しかしその直後、また体の自由が利かなくなった。米田が再び“死霊操術”を発動した。
(させ、ない...!晴美ちゃんを死なせない!!)
(うるさい...ウザいっ!邪魔を、するなぁ!!)
50000%解除。今度は5秒程で呪縛を解いてみせた。中西の次は米田を捜してさっさと殺しに行こうか?とりあえず続きだ。
魔石の副作用でさらに血を吐き、流して苦しんでいる糞中西の顎を蹴り砕く。これで詠唱もできない。ロクな魔法しか使えまい。無力化したも同然だ。
「あのゴミカスどもが吹聴していたた下らない嘘に流されて、一人でいる俺に対して意味分からない罪を被せて勝手に悪だと騒いでるだけの糞ゴミ女が!!存分に苦しんで
――って............え、あれ...?」
「―――――」
さらに肉と骨を潰していこうと思った矢先、糸が切れたようにして中西が倒れた。ステータスを確認すると、体力・魔力ともに0と表示されていた......死んでる。
魔石の副作用と俺の軽い攻撃で、あっさり死にやがったのだ...!!
「――っておいおいおいおいおい!?そりゃないだろ!?ロクに苦しまないで、簡単に死にやがって!テメーにもかなりヘイト溜まってたのによぉ、まだ全て晴らせていねーのによぉ。半年前ドラグニアで柴田をすぐに殺したのは、あいつの分までテメーに苦しんでもらう為だったんだぞ!プリーストなんだろ?もう少し粘れよ、“回復”とかしてさぁ!ちきしょおおおおおおおおおおお!!」
あまりの結末に、俺は怒声を上げる。地団太踏んだら地面が陥没した。その場で拳を振り下ろしたらさらに地面が以下略。感情のままに、俺は死んだ中西を思い切り殴りつけた。暴言・恨み言を吐きまくりながら魔法も使って死体蹴りを続けた。
原型がとどまらなくなりただの肉塊になったその物体を、冷めた顔で焼却して終えた。
「二人目。......あーあつまんね」
不本意な終わらせ方をしてしまい納得いかないが、もう吹っ切れよう。こうしてる間にも状況が変わりそうだし。
「藤原は...うん、こっちに来てるね。分裂は解除させて、次行くか」
深呼吸して気持ちを切り替えて、俺はまた戦場へ戻った。藤原をそろそろ殺そうかと思うが、先に相性が悪くて面倒な米田から殺すことにしよう。あいつは今のうちにどこかへ移動している頃だろう。元いた後衛の方まで下がってる可能性がある。
ここからは連合国軍の核へ入るとするか。そこには総大将の首もあるだろうしな、ついでで殺しておこう。
八俣の方も...まぁ大丈夫だろう。俺のゾンビ兵どもがいるしな。
厄介な呪術師を殺すべく、超音速で再び戦場を駆ける。
復讐対象 残り3人...!
「中西さん...!ごめんなさい、私が近くにいながら...!!」
また守ることが出来なかったと、美羽は慟哭しながら嘆く。堂丸に続いて中西まで甲斐田に殺されてしまった。彼の復讐を全く止められない。あの圧倒的で予測できない力の前には、誰も敵わないと思わされてしまう。
しかし美羽にはまだ、皇雅とカミラが予測している通り彼を完全に無力化できる究極のオリジナル魔術がある。それを自分の手で皇雅に撃つべく前衛に出たのだが、その結果は生徒二人、兵士数万の犠牲を生み出すことに終わった...。
「私一人ではもうダメ...このままいけば曽根さんや米田さん、縁佳ちゃんも...いたずらに死なせてしまう!」
『もう“あの手段”しかありません...。クィンさんやワタルさんが未だ足止めされている以上、難易度は凄く高くなり命の危険もありますが......もうこれしか...!』
「分かってます...全滅必至のこのままよりはマシです。何よりあの二人と兵士の方が全員団結すれば、可能性はあります!」
「......頼り切りで、すみません。必ず生き残って下さい...!!」
ミーシャと最後の作戦確認をして、美羽は自分が行くべきところへ急いで移動した。途中“彼女”に通信をつなぎながら…。
「――というわけで.........ソネさん、頼みます」
「うん。というより、ミーシャ様に頼まれる前にもう出ようって決めてたから...!行ってきます!!」
「どうか、死なないで...!」
ミーシャの激励を背に受けて、曽根美紀は戦場の中心地へと出て行った。元々彼女は副将のミーシャと総大将のガビルを護衛する役目を担っていた。彼女の職業柄、それが最も相応しいというわけで今までミーシャたちの傍にいた。
しかし、現状かなり悪い流れに変わってしまい、二人の護衛に回している場合ではない、とミーシャは判断して、すぐに曽根をこの戦いの要となる“彼女”のもとへ合流させることにした。
「では、私も出るとする」
「ガビル様...どうしても、出られるのですね?」
武装して出陣する気でいるガビルに、確認するように問いかける。先の戦争でガビルはかなり無理をした。皇雅との戦争に出るのは危険過ぎると診断され、特にクィンから出陣することを止められていた。
だが守るべき救世団の戦士が二人も殺されてしまい、もう安全地で控えている場合じゃないと言わんばかりに、体に鞭打って出ることを決意した。この戦いで命を落とすことを覚悟して...。
「クィンには、内緒にしておいてくれ。耳がとれるくらいにどやされるかもしれないしな。それにあの娘の家族は私の他にもういない、私は絶対に死んだりはしない。あの異世界の若造に頭が潰れるらいの拳骨を入れてやる!!」
「ご武運を...そして生き残って帰ってきてください」
ミーシャに軽くお辞儀をしてからガビルも出陣した。
「これが失敗すれば、私たちは全員コウガさんに殺されてしまうでしょう。ここで負けるわけにはいかない...!」
誰もいなくなった部屋でミーシャは自分に言い聞かせて、水晶玉を注視した。
*
彼...甲斐田と同じクラスになってすぐのことだった。私は「この人、イイかも」...って彼に興味と好感を抱いた。
顔もけっこう良いし、勉強できるみたいだし、何よりその運動神経の良さにときめいた。
1年生ながら陸上部エースとして活躍していた甲斐田の評判は、学年ですぐ有名になった。私は授業中も、ソフトボール部の練習の合間も、彼の姿を見ていた。
ある時は甲斐田が出るレースに観に行ったりもした。あの時は縁佳と一緒に行ったんだっけ。二人で彼が凄く速く(同学年では彼がダントツだった)走ってるの観て興奮してたっけ。
時が経つにつれて甲斐田に対する好感度はさらに上がり、教室ではけっこう一人でいる彼に積極的に会話しにも行った。ソフトボール部の私も速く走ることは重要だとかいう理由で、走ることの助言をもらったり、成績優秀でもあった彼から勉強も教えてもらったりと距離を縮めていった。
そして秋が終わる頃、私は思い切って甲斐田に告白した。
(好きです...!前から“イイなぁ” と思ってて、それで甲斐田に近づいていっぱい話して、レースも観に行ったりして。それでもっと好きになって...。だから、今度からは一緒に遊びに行ったりとかで二人の時間もっとつくりたいなぁって思って!私の恋人になってくれない、かな...!?)
噛むのを堪えて言いたいこと、想っていたことを本人に全て伝えた。
(んー?俺実はさぁ――)
私の告白に対して甲斐田は、自分の趣味を話してくれた。だがそれはよりにもよって私があまり好かない...美少女がたくさん登場する深夜のアニメや小説モノだった。彼は、私が苦手としているタイプの人間......二次作品にドハマりのオタクの男だったのだ。しかもかなりディープ(素人目線)なオタクだ...。
(そんな俺だけど、それでも恋人になってほしいってまだ言える?曽根が俺のことまだ「イイかも」てまだ思ってくれてるなら、その告白喜んで受諾するぞ)
(え......と、ぉ.........)
甲斐田のその言葉に、私はすぐに返せないでいた。それだけで察した彼は、ごめんと言って去って行った...。
私はああいうアニメやライトノベル?に深くハマっている系の男は、無理だと考えている。
あの時まさかよりにもよって、甲斐田がそっち系の男であるだなんて思ってもなかった。当然彼の確認に、すぐにうんとは言えなかった。
こうして私の告白は失敗に終わった...だがこれで終わりじゃなかった。
特別な学科で入った私は、2年生からは卒業まで固定クラスになることに。縁佳とまたクラスになれたことに喜んでいたが、同時に鬱屈とした気持ちにもなった。
甲斐田もまた、私と同じ学科だったため、また同じ...しかも卒業までずっと同じクラスになってしまった。
フラれた男と同じクラスになって平気でいられる程、私は強くなかった。告白する前の時みたいに、また会話なんてする気にはなれなかった。
だから、私は今度は積極的に甲斐田を避けることにした。そして大西や安藤、須藤たちによって、甲斐田はクラスから孤立した。さらに彼に陰湿な嫌がらせ...イジメと言っていい行為も受けるようになった。
だけど、それもすぐ終わった。甲斐田自身による制裁で大西たちに危害を加えた。それを晴美が中心に咎めて、甲斐田はさらに孤立して、クラスに居場所を失うことになった。縁佳はみんなと和解させようと甲斐田に説得したが、あろうことか彼は、その縁佳の手を振り払ったのだ。優しい彼女の救済を、彼は無碍にしたのだ。
ほら、やっぱりだ。ああいうモノに傾倒している男なんかロクな性格していない。彼に対する想いは完全に醒めて、何とも思わなくなった。完全に孤立して味方を失う彼を、私はただ見ているだけだった。だけど良心が働いたのか、大西たちと違って積極的に彼をハブる行為はしなかった。
異世界に来た時、甲斐田程のスペックならさぞ凄いステータスなんだろうなぁと思ってたら、その予想は外れ、クラス最下位のレベルのハズレ者とまで言われる雑魚だった。その後大西たちにリンチされてる様を見ても、実戦訓練で彼が一人地下に取り残されて消えて行く様を見ても、私は嗤うことも助けようとも思わず、ただ見てるだけだった。ただの傍観者としてしか振舞わなかった。
でも...良心が少しも痛まないというわけでもなかった...。
それに、今にしてみれば......オタク趣味だからといって甲斐田を軽蔑したことは間違いだった、とも思うようになった。私にも、非はあったんだなって...。
少し過去のことを思い返しながら、私......曽根美紀は、目的の場所に着くとすぐに盾を展開して、攻撃にすぐ対応できるようにしておいた。
半年前に甲斐田が実戦訓練で消えてから、私はこの攻撃向けじゃない職業でも、頭を悩ませながら何とか手練れの兵士以上までは強くなるくらいまで強くなれた。だがそうしている間、遠く離れた地では死んだと思っていた甲斐田が、クラスの皆を殺していたのだ。
最初の頃は甲斐田に恐怖し逃げたいと思っていたが、美羽先生や縁佳の強い姿に心を動かされてどうにか立ち向かう気力を持つことができて、今となっては怖くても彼を止めること・皆を守るという気持ちを保ち続け折れずにいられている。
先生がいる、縁佳がいる、小夜がいる、倭さんがいる、強いひとがたくさんいる!攻撃は彼らに任せて、私はそんな彼らのサポート...守護に徹する。皆をこの盾で守ってみせる。
ここで絶対に、甲斐田をくい止めてみせる――!
そう決心してから数秒後、久しぶりに彼の声を聞いた...。
「殺すと決めてた奴の方からノコノコ来てくれたか...感謝するぜぇ?」
*
ソネミキ 18才 人族 レベル80
職業 盾戦士
体力 5000
攻撃 1000
防御 10000
魔力 1000
魔防 10000
速さ 2000
固有技能 全言語翻訳可能 魔力防障壁 全属性耐性 神速 絶牢壁 絶牢結界 大地魔法レベルⅩ 限定強化
戦場の中心地に来ると、兵士共の中に紛れて盾戦士である茶色セミショート髪の元クラスメイト女...曽根美紀の姿があった。
「鑑定」してみると、その職業通り、防御の数値が人族にしてはかなり高い。おそらく魔石はまだ使ってないみたいだし、「限定強化」も未発動だ。ここから100倍近く増加すると思えば、耐久力はかなりのものになりそうだ。
......ここに来る途中、また回想に耽っていた奴(というか曽根が)の気配がしたのだが、この際もうどうでもいいや。
「ここから先は、絶対通さない!!私に攻撃全て防がれてる隙に、仲間たちに無力化されて終わりよ、甲斐田!!」
万はいる大軍を指して勝気にそう叫ぶ曽根を見て、俺は鼻で笑ってみせる。
「数がたくさんあるから有利だ、勝てるって、まだそう思ってんのか?久々にテメーと口をきいたかと思えば、アホなことをほざきやがって...。あの死んだゴミ2体と同じように、テメーもぶち殺してやんよ」
「ゴミ...!?あんたは...みんなを殺したこと、本当に何とも思っていないの!?クラスメイトの皆をたくさん、たくさん殺して...本当に殺す必要あったの!?私たちはあんたに殺されないといけないの!!?」
憤慨した曽根が感情的に喚きながらそう訊いてくる。向かってくる聖水付与の矢・剣・斧・槍を躱して消しながら風を使って曽根に聞こえるように返事してやる。
その間雑魚兵どもを殺そうとするも、奴のシールドで邪魔される。見たことない盾だ。奴のオリジナル魔法らしい。
「もちろん。俺がテメーらに復讐して殺す理由は簡単だ。ムカついた、気に入らない、不快感を与えられた、害された、だから殺テメーらに殺意を抱いた。
...ほら、 “動機”がこんなにもある。あっちの世界とこの世界両方で、テメーらは俺にヘイトを溜め過ぎた。俺に殺人欲求を芽生えさせるくらいに。俺をハブり、陰湿な嫌がらせに直接的な暴力、嘲り蔑んで嗤いながら見捨ててきた。
な?必要だろ?俺はテメーらの存在が赦せない、だから殺す」
「あんたは...!!」
「もういいだろ?どうせテメーも何も思ってねーんだろ?俺がああいう目に遭ってもその後俺に対して何も思わない、考えない、感じない。そんなもんだろ?当たり前だよなぁ、俺とテメーとは最初から接点も何も無いただの他人同然の関係だ。どうでもいい人間がどこで死のうがどうでもいいことだ。それが人間だ」
「――っ...甲斐田、あんたそれ、それ本気で言って……っ」
何か言い返した気に見えるが何も言わない。構わず雑魚兵どもを殺そうとするが曽根に防がれる。うぜー。やっぱリミッター解除しないとダメかー。つーかアイツいつの間にか“限定強化”してるし。
とりあえず10000%解除。思い切り殴る。はい、盾破壊。隙だらけになった雑魚どもを蹴って、ビーム発射。はい、いっぱい死んだ。
「う...ぁ...!!」
曽根が呆然とした様子で兵が殺されていく光景を見ている。経験が浅くて未熟な雑魚が、この程度で怯むとか弱過ぎ。このまま残りも処理して――
『――コウガっ!!』
――ドスッ
カミラの警告と俺の左腕から矢が生えたのは同時だった。咄嗟に横に動いて心臓部分にあたるのを避けた結果だ。だが攻撃はこれで終わりじゃなかった。
――スパパパパパァ...!!
刺さった矢は突然爆ぜて、斬撃となって襲いかかってきた。そのせいで左腕がズタズタになった。
今の矢は...一般兵のものじゃないな......というか物質ですらない。
これは、魔法でできた矢だ...!斬撃からして嵐魔法だな。というか、「危機感知」ですら拾えなかったな今の矢。少なくともここにいる雑魚どもの仕業じゃない。
ここから離れた、どこか遠く......これは“狙撃”だ!!
「カミラ、これをやったのは...」
『はい、間違いありません。狙撃手である彼女の狙撃です...!それと、フジワラミワも間もなくそこに来るようです。あと、盾戦士がそこにいるということは、誰かを守る為にいる。ということはそこにヨネダサヤがいる可能性が高いです。ここが正念場かと。気を付けて下さい!彼女の狙撃は全く予測できません。今もどこから狙撃したのか分からなかったので』
「ああ、情報ありがとう。気を付けて動くよ。まずは、呪術師からだ...!」
カミラに礼を言った直後、後ろを振り返って先程矢が飛んできた方角を睨む。あいつの職業は狙撃手。あっちの世界では、弓道で全国大会に勝ち進む腕前を持つ。これ程相性ピッタリの天職は中々あるまい。そうだろ?
「ここからはテメーも参戦か。上等だ......高園縁佳!!」
見えもしない敵に向かって俺は獰猛に笑ってみせた。
遮蔽物が無いコースの建物の屋上から「遠見」で戦場の様子を見る。すると皇雅がこっちを見て笑いながら何かを言ってることに気付く。向こうからは自分のこと見えていないのだろうが方角は分かっているらしい。だけどコレは軌道を自在に操れるから、弾道を覚えようとしても無駄だ。
皇雅が何を言っているのか分からないでいるが、とりえず返事することにした。
「うん、甲斐田君...ここからは私も戦うから。美紀も小夜も、そして美羽先生も...これ以上大切な人は誰も殺させないから!!」
できれば戦場にいる仲間兵全員も死なせたくはない。だけど皇雅を相手にしては、そんな甘いことは言ってられない。せめて大切なクラスメイトと先生、そしてミーシャ様と総大将くらいは失わないようにする!
弓道衣に似た衣装を着て中にさらしを巻いて、弓の弦を引きながら、高園縁佳は決意とともに弓を引いた――
俺の索敵範囲はせいぜい10㎞までだ。それ以上の距離になってくると感知力は曖昧になっていき、その場所で気配を遮断されたら全く感知できない。
とりあえず高園は「気配遮断」で気配を消していると考えて良いだろう。さらに姿が見えないのは、「隠密」系の固有技能の仕業だろうな。カミラが未だ奴を発見できないでいるのはそのせいだ。
なのでカミラには高園の捜索は諦めてもらい、そろそろ八俣倭の動向を見てもらえるよう頼んだ。彼女もそれが賢明だと判断してすぐに動いた。
高園の狙撃タイミングは全く読めない。精度も威力も普通のとは桁違いだ。「危機感知」を常に発動させてギリギリのタイミングで躱す以外対処の仕様がないな。あと誤射も期待しない方が良いだろう。一流の狙撃手の固有技能には「千発千中」という必中スキルがあるらしい。高園の場合それ以上の技能を持ってる可能性がありそうだ。
狙撃手の弱点はとにかく接近戦に持ち込まれることだ。それをさせない為に敵から遠く離れて姿と気配を消して戦うというやり方を採用しているわけだが。しかも隠れたところから攻撃仕掛けてくる奴はもう一人いる...。
「...!また、体が動かん...」
米田はまだ感知できてない。考えられることは、俺が知らないうちに幻術をかけられて奴を感知できないようにされていること。呪術師の奴なら幻術も使えると考えて良い。ここに来た時点で術中に陥ってしまってた、なんてことになってるのか今は。カミラがさっき言った通り、米田はここにいると考えて良いはずだ。この周囲のどこかに巧妙に隠れてやがるに違いない...!
どうやって引きずり出そうかと考えていると――
「ぬおおおおあああ!!」
動けない俺に猛然と斬りかかってくる老兵が現れた。火力と斬れ味が足りないせいか、その刃は俺を切断することなくポキッと折れた。
「くそっ...!」
奇襲に失敗して悔しそうにする老兵を「鑑定」したところ...ほう?こいつがサント王国の王様だったのか。そしてこの連合国軍の総大将でもある。カミラから聞いた話では人族唯一の“戦う国王”と言われている男。
国王にしてはバリバリの現役戦士レベルだな。昔かなりの凄腕戦士だったのだろう。が、残念だが俺には届かない。米田の呪縛を振り解いて国王と対面する。
「こうして直接対面するのは初めてだな、カイダコウガ。半年前にクィンを魔獣やモンストール、そして魔人族から守ってくれたことには感謝している。だから残念に思う、こうして貴様を討伐しなければならないことを...!」
「初めましてだな国王さん。でもさぁ今のあんた、残念だーって顔じゃねーよな?殺す気満々だ。んで?今ので殺せるとおもってるわけ?わざわざ死にに来たのか総大将さんよ?」
「私如きでは貴様を殺すなど不可能。だが止めることなら可能だ!この老兵の命燃やしてでも、貴様の足止めをする役割を全うする!!」
などと大層なことを吼えて魔法杖を構える。自分はあくまで周りの雑魚兵と同じ俺の動きを縛る役割だというわけか。その雑魚どもだが、総大将が現れたことで士気が上がっている。で、さっきからこっちに近づいてくる気配は察していたが...
「甲斐田君、ここで終わらせるから...!」
藤原も到着した。今ここには奴と総大将、曽根と隠れた米田、そして遠いどこかから狙撃する高園。こうして連合国軍の主戦力が集まったってわけだが...
「......あーもう、邪魔する奴らがたくさんいやがるなぁ...ハァ」
不機嫌気味の俺は、まず士気を上げた元凶の総大将の首をとりに行った。直後、俺の眼前に曽根の盾が出現。あーもうこれもウザいなー。物理破壊できないわけじゃないけどさぁ。よし、ここは盾をも溶かせる「王毒」で!
そう思って発動して、盾に当てるが、直前に光の帯が現れ、毒を防いだ。
「私がいる以上、毒は効かないよ!」
藤原の毒耐性付与!そうだこれがあったんだった、毒で一掃もできない!
「あ~~~っ!!鬱・陶・しい・なぁどいつもこいつも!!俺の邪魔ばっかりしやがってよぉ!!策略だと分かっててもムカつくんだよぉ!!」
有象無象どもの度重なる妨害についにキレた俺は、本気出すことに。もうじっくり苦痛を与えて殺す路線は諦めよう。残りの復讐対象どもはそんなにヘイト溜まってねーし、もうサクッと殺そう!
「結局物理が最強攻撃ってことだぁ!!おらぁ!!」
勢いよく殴りつけて盾を一瞬で破壊する。が、その盾がすぐに元通りになった。
「 “回復”」
マジか!?あいつの回復は盾を修復することもできるのか!だったら修復不可能...完全に消すまでだ!
「.........もうちまちま甚振って遊ぶのは終いだ!本気のザイートと戦った時とほぼ同じ力でいくぞ!?テメーらがそうさせたんだから仕方ねーよなぁ!?
脳のリミッター100000%解除ぉ!!」
完全異に悪役のセリフを吐いてやった。もう全員、即殺路線確定だ。曽根も米田も高園も、邪魔する藤原も総大将も、全員すぐに殺してやる。
殺す、殺す...
殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す全員ぶっ殺す...!!
「魔石摂取! “絶牢壁”散布!! “絶牢結界”展開!!」
危機を察した曽根がオリジナル魔法で盾を複数展開、さっきよりも頑丈な盾を出現させた。同時にドーム状の防御結界も展開させていた。これで全員奴の盾に守られ...
「――なんて出来ると思ってんのか!?そんなヘボシールドでぇ!!!」
バガアアアアアアアアアアン!!
一瞬で今現れた盾と結界の全てを破壊。敵全員が瞬きする間に破壊、破壊破壊。そして同時に宙を舞う雑魚どもの首。
使うぜ“連繋稼働《リレーアクセル》” !もう出し惜しみは無しだ!手抜きはしない!こいつらに“格”と“絶望”ってやつをしっかり教えてあげよう!!
「――うあああ”ゴブッ!!」
“絶拳”で 数百人の腹を消し飛ばし、
「――ひぃっ!?―あ”っ......」
恐怖で動けないでいる兵士どもの首をすっ飛ばし、あとは何やかんや...1秒で数百人殺した。
そして...
――ドスッ...!「う”っ...!ゴフ、ゥ...!」
超音速の左貫手で、曽根の心臓を鎧ごと貫いてやった。その際に、曽根の奴は喀血して俺にもたれかかった。起き上がる力はもう無いようで、今にも死にそうな顔をしている。
「すまねーなぁ...もう少し苦しめてからテメーを殺すつもりだったんだけど、もう余裕ねーからこれで終いだ」
冷たく言い放ってズルっと手を引き抜く。が、俺にもたれたまま曽根は俺の袖を未練がましく掴んで離さない。まだそんな力が残ってるとは...生命力が強いのかコイツ。
「何だ?何か言いたいことあるわけ?」
周囲に重力魔法を放って雑魚どもの動きを制限させながら死にかけの女に問いかける。せっかくだし最期の恨みごとくらい聞いてやろう。
曽根はどうにかこちらの目線まで顔を上げて、血と何に対してのか分からない涙を流しながら弱々しく話しかけてくる。
「お、ぼえて、る?私が、甲斐田に...告白した時...のことを...」
「ん?.........ああ、あったなそんなこと。テメー男見る目無かったなぁ?くくく...。割とディープなオタク趣味の俺に、勝手に幻滅したんだっけ?テメーは所詮その程度の器だったってことだが」
俺の返事を聞いた曽根は、何故か微笑む。その目には後悔の念を感じさせた。今さら何に後悔してるのかは、考えない、興味も無い。
曽根美紀はやがて力尽きて、俺にしがみついたままその生命活動を終えた。
ただ...死ぬ間際に、常人なら聞こえないくらい小さな声で紡いだ言葉を、俺は確かに聞き取った......聞き取ってしまった――
「ば...か、だよ......あんた、は............“――――” 」
「―――――」
死してなお、俺を離すまいとする曽根をしばらく見つめる。
最期の言葉は聞かなかったことにして......俺は未だしがみついたままの曽根を適当に放り捨てて、態勢を立て直した。
はいはい馬鹿で結構ですってね。とりまこれで壁役はいなくなった。お次は......いい加減にあいつを表に引きずり出すか。
“スーパーノヴァ”
地面に手を突っ込んで、半年前に戦った巨大モグラモンストールを掘り起こした時と同じやり方を実行。
これだけ戦場のどこかしこを見て捜しても見つからないっていうのなら、あとはもう下にしか隠れるところはないだろう。大爆発とともにえげつない土砂が降り注ぎ、爆心地に大穴が空く。そして案の定、お目当ての呪術師女がやっと姿を現した。
「ひっ、ひぃ......」
小動物みたいにガタガタと震えながら魔法杖を突き出して魔術を発動するが俺は全て跳ね除ける。リミッターが外れた脳に幻術も精神汚染も何も効かない。
「な、何で...全く通用しないの!?魔石も摂取して強くなってるのに...!!」
「テメー程度のスペックで今の俺を操れると思うな?散々操ろうとしやがって、厄介な女め。甚振れないことが惜しいが、今すぐに殺す。し――」
――グサグサグサ!!
米田に手刀を振るう動作をしかけた時、脊髄3か所を正確に射抜かれた感触がした。体を即座に回転させながら矢を無理やり引き抜いた。俺の隙をやっと捉えた高園が、このタイミングで狙撃してきた。
「甘いなぁ。どうせなら首と頭を射抜けよなぁ。この期に及んで殺すことに抵抗あるのかぁ?」
呆れ混じりに呟きながら飛んでくる矢を弾く。今の俺の速さの数値は5千万以上だ。誰も俺の動きを捉えられることは不可能だ。
「 “炎柱《えんちゅう》” !!」「 “絶対零度”!」「 “閃光槍《ライトニングピアス》” !!」
高園の狙撃が止んだ直後、今度は藤原の人間離れした魔法がとんでくる。水の鞭で火柱を消し、溶岩を発生させて氷を全て消して、光の槍を闇色の巨大な口腔で噛み砕いた。
「米田さんそこから早く離れて!!」
藤原の指示に従い俺から離れようとするが許さない。すぐに追跡しようとしたら、また狙撃される。しかも今度のは矢じゃなくて弾丸だ。高園の武器は弓矢だけじゃない......狙撃武器全般が奴の武器なんだ。
今のはライフル銃といったところか。肉が抉れてやがる。その隙に米田が兵士どもに紛れて姿を消した。そんなことしても無駄だというのに。まぁこの二人のせいで追うこともできないみたいだが。
「言ったでしょ?ここで終わらせるって...!」
藤原がこちらを睨んで魔法杖に魔力を溜める。いつでも放てる状態だ。
『コウガ、ヤマタワタルは未だゾンビ兵に足止めされています。とはいえゾンビ兵の数は、残り3割といったところです。彼がコウガのところに着くのは...5分後だと予測してます』
「5分...ここを全滅させるには十分だな。カミラ、藤原美羽だが...」
『はい、動くなら今この時でしょう。確実に...』
カミラの報告を受けて俺は藤原を警戒する。だが肝心の本人にまだ確認していないことに気付き、彼女に問いかける。
「藤原、あんたの“回復”だが...治すことの他に、巻き戻し...回帰の能力もあったよな?」
「...そうよ。欠損した箇所を再生させたり、武器も新品に復元させることもできる...時間を戻すって言った方が分かりやすいかな」
こんな状況でも問いかけに答えてくれるところ、さすがは先生。それより...今ので確信した。こいつにはマジでくらってはいけない究極の回復魔法を習得している...!
「予想通りだ、連合国軍の切り札はやっぱりあんただな?回復魔法を極めたであろうあんたならできるんだろうな...」
それは、魔人族をも容易く無力化できる魔術......
「対象を過去の状態に巻き戻し、ステータスを初期近くまで回帰させる。つまり......対象を弱体化させるという超チート魔術!
それがあんたが持つ最強の切り札...俺をも殺せ得る世界最強の究極魔術だ...!!」