刀の扱いの話になったついでに訊いてみる。

二尺三寸というのは刀身の長さのこと。鍔元から切っ先まで七十センチと少しある。ほかに二尺二寸五分や二尺三寸五分など、短め、長めの居合刀もあり、重さもさまざま。身長や性別で決めている流派もあるようだけれど、うちでは好みで選んで構わない。入門者にはうちの古い居合刀を貸し出している。

「ええと、……そうです」

かすかに身を縮めるように答える桜さん。警戒されてしまっただろうか。苛立っていると思われた? 誤解されるのは嬉しくない。ここはソフトに伝えなければ。

「少し短めもありますよ? 桜さんは小柄ですし、初めは短い方でも――」
「いえ、これがいいです」

俺の言葉を遮るように首を横に振った。まるで守るように両手で柄を握って。

「練習すればできるようになるって水萌(みなも)さんに言われました。だから頑張りたいです」

――……へえ。

こういうところもあるんだ。決意に満ちた表情で。

「そういうの、いいですね。大歓迎です」

思わず笑顔になった俺を桜さんが大きな目で見返した。こんなに簡単にOKされると思っていなかったのかも。でも、べつに御愛想を言っているわけじゃない。

「練習すればちゃんとできるようになります。それは間違いありません。じゃあ、一緒に頑張りましょう」
「はい。ありがとうございます」

今度は頭を下げる前に鍔を押さえている。ちゃんと進歩している。

「それではもう一度、抜刀からやってみましょう」

桜さんが力強く「はい」とうなずいた。先ほどよりも瞳に力があるように感じる。

並んで鏡に向かい。

「姿勢を正して、呼吸を整えて。――抜刀」

桜さんは真面目でどんどん吸収しようとする。その姿が清々しい。

こういう人となら、いくらでも一緒に稽古したい。