シェリーが通された部屋は、貴賓室ほど(ごう)(しゃ)(けん)(らん)はでないものの、洗面所や浴室、そしてトイレもある、それなりに豪華な部屋であった。

 ところで――()()()()を勘違いしていたシェリーなのだが、部屋へ行く道すがら、(ダー)(ク・)(ブロ)(ンド)で青い瞳の、眼鏡(メガネ)がとってもよく似合う可愛らしい修道女(シスター)のお姉さんに丁寧に説明されて、ようやく正しい意味を理解した。
 説明の途中で()()の意味を理解した途端に真っ赤になった彼女を、ニヤ笑いで見ていたのはどうでも良いだろう。

 その(ダー)(ク・)(ブロ)(ンド)で青い瞳の、眼鏡(メガネ)がとってもよく似合う可愛らしい修道女(シスター)のお姉さんの名前はコーデリア・ハーネスというらしい。
 現在二一歳で、成人してからすぐにグレンカダムの教会に小間使いとして引き取られたそうだ。そして生来の真面目な性格と直向(ひたむ)きな作業態度が評価され、今年からこのベン・リアック神殿で見習い修道女として生活しているらしい。

 ――余談だが、そのベン・リアック神殿には当り前に修道院も併設されており、其処では慈善事業としてクッキーを焼いて訪れる子供達に配っていたそうなのだが、実は味付けが一緒で変化かがないため飽きられてしまっていた。
 だが今年から、元商家の娘で見習い修道女(シスター)の発案で、販売用になってしまうがそれ以外にもマドレーヌやスコーン、ビスコッティなども取り扱うことになり、更にそれなりに保存も効くガレットやバター飴をも生産し、そして消費期限が当日になってしまうがパウンドケーキも数量限定で販売しているそうだ。

 この焼き菓子は存外好評で、お菓子大好き子供たちは元より、

修道女(シスター)のお姉さんが手ずから作ったお菓子……(ハァハァ)」
白魚(しらうお)のような手で生地を()ねて一つひとつ作っているんだって(ハフハフぅ)」
「きっと汗水流して一生懸命心を込めて、オレ達のために作っているんだろうな……は! もしかしてその汗が零れているかも……」
「きっとそうだ、そうに違いない! そう考えると……くぅ、鼻から赤い汗が止まらねぇ!」

 ――修道女(シスター)萌えの豚野郎どもに爆発的人気があった。

 ちなみに生産者は確かに修道女(シスター)なのだが、彼女達だけで全てを(まかな)えるわけはなく、修道士(ブラザー)もそれに混じっている。
 更に言うなら力作業である生地作りは修道士(ブラザー)の仕事で、しかも彼らは結構なガチムチ連中だった。
 そして修道士(ブラザー)修道女(シスター)達は意外に水仕事が多いために手荒れが結構酷く、少なくとも白魚(しらうお)のような手の者は誰一人いない。いたとすれば、それは働きが悪い怠け者である。

 それらは教会から聖ヴィレーム橋を渡った先にある、提携しているオープンカフェ「ハーネス」で、もちろんお手頃価格で取り扱っており、カフェというだけあって其処で美味しく頂くことも可能である。
 店主は三〇代後半の元商家の夫婦で、旦那はほぼ表に出ないが、奥さんは(ダー)(ク・)(ブロ)(ンド)で青い瞳の、若い頃は大層可愛らしかったであろう容姿の美人さんだった。

 話しが逸れたが、コーデリアの実家は元々商家で、某リンゴ酒を取り扱っていた商会の若奥様が事故で急逝して商業ギルドが混乱していた時期に、これは偶然なのだが、資金繰りが苦しくなりギルドに援助を申請したのだがなかなか通らず、間に合わせのつもりで即金で借りられるモグリの業者に借りてしまい、だがそれで巧く行く筈もなくあえなく倒産してしまったそうだ。
 一人娘であった彼女はその借金の(かた)に身売りさせられそうになり、彼女自身もそれで家族が助かるならと覚悟を決めていたのだが、そんなことはさせられないと考えた両親が教会へと預けたそうである。

 名を(たず)ねるところから始まって何故か身の上話になり、そしてそれを力ない笑顔で語る彼女を無言で見詰めるシェリーがドバッと泣き始めてしまい、その予想外の反応にはわはわ慌てるコーデリアさん。
 その反応すら可愛らしく、絶対にこの人は幸せにしてみせると、ちょっと意味が判らない決意を新たにするシェリーであった。
 まぁ自分の商会が混乱してその余波でそうなっちゃったようなもんだから、完全に責任がないというワケでもないし。

 自分の身の上話ばかり語るのが気恥ずかしくなったのか、深い考えもなくシェリーに訊き返すコーデリア。そう、深い考えなど一切なかったのである。

 結果から言えば、コーデリアの両親の商家がそうなったのは自分達の責任であり、それでどうこう言うつもりはないと完全に割り切っており、だがそれより娘を残して夜逃げする父親が有り得ないと、コーデリアはぷんすこ怒り始めた。

 初対面なのに、こんなに私のために怒ってくれるなんて。なんて良い人なんだろう。あれ? 聖女ってこの人だっけ?

 なにやらコーデリアの背後に後光が差す幻視がする。属性はないけれど、この人が聖女だったら萌える自信がある。そんな益体(やくたい)のない思考にド()まりするシェリーであった。

 そしてそんな茶飲み話に花を咲かせて年相応にきゃいきゃいしている二人の元に、その(かしま)しい雰囲気をぶち壊しながら、壮年の司祭が鼻息を荒く()きながら訪れた。
 彼は〝(よわい)の儀〟の最初に色々説明という(てい)の催眠攻撃を行っていた例の司祭である。ちなみに、ノックはしていない。

 慌てて立ち上がって黙礼をするコーデリアを他所に、仮にも異性が在室中であるにもかかわらずそんな礼を完全に逸した行為をされたシェリーは、

「そなたが聖女か! (わし)は司祭のズビシェク・アベスカである! 枢機卿猊下(すうきけいげいか)がお待ちで――」
「〝風鎚(ヴァン・マルトー)〟!」
「――ある! 直ちに出頭を命じぶふぇどばげ!?」

 ノックもせずに「ドバーン」と扉を開ける、作法なるものをまるで解していないロクデナシ(イヴォン)を思い出してしまって瞬間的に頭に血が(のぼ)り、そのやたらと尊大で無駄に偉そうにしているヒヒジジイな司祭の全身に丸ごと衝撃を与える特大の風の(つち)を叩き付け、豪快に室外へ吹き飛ばした。

「司祭様、そんな……!」

 それを見て、コーデリアが口元を押さえながらそう零す。

 あ、やっちゃった。身の上話をしてクズを思い出した所為なのか、自分のあまりに軽率な行動にそう独白して反省するシェリー。

 だが――後悔はしていない!

 それでも、こんなことをしてコーデリアさんに嫌われたらイヤだなぁ、とかその程度には後悔していた。
 司祭様(ヒヒジジイ)を思わず迷わず小気味良くぶっ飛ばしたことに関しては、欠片(かけら)微塵(みじん)(いっ)(さい)(がっ)(さい)一片(いっぺん)の悔いもなく、ナノ単位で後悔はしていないしする筈がない。

 そして、口元を抑えたまま立ち尽くすコーデリアへと目を向ける。目の前で展開された光景があまりに衝撃的だったのか、呆然としているようだ。

 だがそれも長く続く筈もなく、廊下の壁に叩き付けられたヒヒジジイ――もとい、司祭(ヒヒジジイ)からシェリーへと視線を移す。

 そして――

「無詠唱であれほどの魔法を展開するなんて……やはりシェリー様は聖女……」

 ――(すご)ーくキラキラした目でそんなことを言い始めた。

 うん、私この人とっても好きかも。

 惚れ直すシェリーであった。

 ブッ飛ばされて広い廊下の向こうの壁に思い切り叩き付けられ、当り前に意識を失っている司祭を見て呆然とするお付きの修道士や、騒動を聞きつけて集まって来る神殿兵(タンプル・ソルダ)を苦々しく()()り、そしてそうするのが当然とばかりに室内に闖入(ちんにゅう)しようとするそれらへと、

「だーかーらー! レディの部屋に許可なくむさ苦しい野郎どもが入って来るんじゃないわよ!」

 フンスと鼻から息を吐き、その小柄な体躯に存在している有り得ないほど膨大な魔力を練り上げる。

「〝三重詠唱(トゥロワ・ソール)〟」

 その魔力が全身から吹き出し、白金色の髪(プラチナ・ブロンド)の長い髪が波打ち、そしてその光の加減で色が変わる翠瞳(エメラルド・アイズ)が、様々な色に染まる。
 ついでにその余波でスカートがちょっと(まく)れたが、コーデリアが慌てて抑えたために惨事には至らなかった。その場にいる男衆の賛辞にも至らなかったが。

「〝遅延発動術式(ルタ・アクティヴィ・マジー)〟」

 そんなちょっと()()なことを考えていた、だが職務に忠実で愚直に突撃してくる神殿兵(タンプル・ソルダ)の背後――丁度廊下の中心付近に霜が張ったが、それには誰も気付かなかった。

「〝(デュオ)(・ヴァ)(ン・マ)(ルトー)〟!」

 シェリーの宣言と共に、風の塊が次々と展開されて射出される。そしてそれが的確に闖入しようとする野郎どもへと直撃し、その全てが(クリ)(ティ)(カル)(・ヒ)(ット)となる。

 だがそれは弾き飛ばすだけに特化した魔法であるため、ヒヒジジイと違ってしっかり鍛えて十全な装備も整えている神殿兵(タンプル・ソルダ)には効果が薄い。
 よってその装備の重量もあり広い廊下に転がるだけの神殿兵(タンプル・ソルダ)は、即座に立ち上がりシェリーを取り押さえようとするが、

発動(アクティヴィ)

 神殿兵(タンプル・ソルダ)が転がっている廊下の床に魔法陣が出現し、其処から凍て付く(つる)が生えて来る。

「〝氷蔓縛(グラス・セルマン・アターシ)〟!」

 床から生えるその蔓は、瞬く間に神殿兵(タンプル・ソルダ)に絡み付き、その動きを拘束した後完全に凍り付いた。

「〝三重詠唱(トゥロワ・ソール)〟だけではなく〝遅延発動術式(ルタ・アクティヴィ・マジー)〟まで……流石は聖女様です」

 シェリーの鮮やかな魔法に心を奪われ、思わず恍惚とするコーデリア。自身の上司や同僚ともいうべき司祭や神殿兵(タンプル・ソルダ)が酷い目に遭っているのに。

 そんなコーデリアを尻目に、もしかしてあまり神殿が好きじゃないのかな? とか考えつつ凍り付いて動けない神殿兵(タンプル・ソルダ)の鎧をケシケシ蹴飛ばすシェリー。
 まだ成人したてであり、それに力を込めているわけでもないため決してダメージにはならないほどの衝撃なのだが、

「おぶ、ちょ、やめ――」
「うげ、ぶ、ごへ――」
「あぼぉ、ぐげ、ごぶ――」
「あ、う、い、おふぅ♡」
「はう、おふぇ、うん、おぅいぇ♡」

 地味な嫌がらせにはもってこいであった。

 だが、整った容姿の少女がそんな風に足蹴にしている所為か、ちょっとおかしなのが混じっているのには全力で知らん顔をする。
 そういうヤツらには反応してはならないし、仮にしてしまったら喜ぶだけなのだから――シェリーは商会に(たずさわ)っていた六年間で、そう学んだ。

 学習の方向と質に、(いささ)かどことか相当問題があるが。

 だがそんなことをしていれば更に事態が悪化するのは当然であり、廊下の向こうからどんどん集まって来る神殿兵(タンプル・ソルダ)や野次馬神殿関係者達に、思い切り辟易するシェリーだった。火に油を注いだのは自分なのに。

 もう面倒だから、ぜーんぶ凍らせて逃げちゃおうかな。あー、でもコーデリアさんはお持ち帰りしたい。

 などと、この期に及んで不穏なことや不謹慎なことを考えていた。

 集まった神殿兵(タンプル・ソルダ)は、廊下でケシケシ蹴飛ばされてちょっと嬉しそうな同僚を見てなんとも微妙な表情になり、だが続けてそれらを拘束している氷の蔓を目の当たりにしてその動きを止めた。
 拘束されて動けないということは、その命を握られているということであり、つまり――その気になればいつでも殺せるという意味なのだから。

「なんだって揃いも揃って乙女の在室中にノックもせずに闖入しようとするの! そんな不作法者は殺されても文句は言えないわよ!」

 腕を組み、氷の蔓に絡め取られて身動きが取れない神殿兵(タンプル・ソルダ)の兜を踏ん付けてグリグリしながら、そんな至極真っ当なことを言うシェリー。殺されても~の(くだり)はちょっと違うが。

「確かにアベスカ司祭はいつも通りにブサイク――じゃなくていつも通りに不作法であったのであろうが、明らかにやり過ぎであろう!」

 そんな同僚を目の当たりにして、先頭に立っている神殿兵(タンプル・ソルダ)が歯噛みをしながら強い口調で抗議する。それは当然であるのだが――

「現に君が踏ん付けている者は苦しんで――」
『――あふぅ……これ堪らん……もっとグリグリして下さい女王さ――』
「――く、苦しんで、いる、だろぉ?」

 ――明らかにそうじゃない様子な同僚を目の当たりに、だが引っ込みがつかなくなって抗議を引っ込められずにちょっと口調がおかしくなる。

「……いつも通りなんだ……司祭のクセに粗忽者(そこつもの)なのね、あのヒヒジジイ。まぁいいわ。もういい加減に面倒だから今は大目に見てあげるわ。というかディリィに案内されるまま来ちゃったけど、私に一体何の用よ」

 聖女聖女っていちいち(うるさ)いし。そう独白して兜グリグリを止め、どういうわけか絶望の吐息を漏らすそれら一切を無視して、抗議してくる神殿兵(タンプル・ソルダ)に訊く。
 だがそうしているシェリーの視線は、何故かコーデリアに向いていた。ちなみにディリィはコーデリアの愛称である。

 そんなシェリーの問いに、流石に戸惑う一同。てっきり説明されて同意の上だとばかり思っていたからだ。

「そういえば、此処に通すように仰せつかりましたが、理由は聞いておりませんでした」

 そして更に、コーデリアが今更なことを呟いてそれに追い討ちを掛ける。

「いやダメでしょディリィ、どうしてそうするのか訊かないと。ただ唯々諾々(いいだくだく)と言うことだけ聞いていたら、そのうちとんでもないことになるわよ」

 そんなコーデリアにダメ出しするが、

「ぷんすこ怒ってて人の話しを聞いてくれませんでしたし、隙あらばお触り(セクハラ)して来ましたけど」
「……負の感情は判断を鈍らせるのよ。これも覚えておいた方が良いわ」

 逆襲に遭い、特大のブーメランを投じる羽目になるシェリー。その場にいる一同は口を挟むことなど出来る筈もなく、ただただ微妙な表情を浮かべるだけだった。

「うぬぅ! 聖女と呼ばれて図に乗りおったか小娘が!」

 そんななか、お付きの修道士(ブラザー)に介抱されて復活したヒヒジジ――司祭のズビシェク・アベスカが、怒り心頭で勢い良く立ち上がり、だがダメージが残っているのかよろめいて支えられながら、そんなことを喚き散らす。

「本来であれば貴賓室には貴人(あてびと)でなくば通されぬ場なのだぞ! それを――」
「〝静寂(シランス)〟」

 地団駄(じだんだ)を踏みながら喚き続ける司祭(ヒヒジジイ)(うるさ)鬱陶(うっとう)しかったのか、サラっと魔法で黙らせる。

「なんなの一体。アンタらなにがしたいワケ? ことと次第によっては、いくら()()()()()私だって黙っちゃいないわよ」

 いい加減に我慢の限界なのか、苛立たしげに皆を()めながら、シェリーは低音でそう言う。
 その言葉自体には大して迫力はなかったが、全身から(ほとばし)っている魔力が筆舌(ひつぜつ)(がた)い圧力となり、その場にいる鍛え上げられた神殿兵(タンプル・ソルダ)以外の修道士(ブラザー)が、そのあまりの圧迫感に固唾(かたず)を呑むことすら出来ずに(うずくま)る。

「……誰も何も言わない、と。ああそう」

 そしてシェリーの背後に、無数の氷の槍が浮かび上がる。

「〝氷槍連弾(デュオ・グラス・ピック)〟」

 それは先程の風の鎚とはまるで違う、一つでも真面に当たれば確実に命を奪う魔法――とまぁ基本はそうなのだが、シェリーも本気でそんな凶悪な魔法を使っているわけではなく、実は表面をごく薄ーい氷で覆っただけの水の塊であり、暑い時期の納涼にはもってこいな魔法である。水温は摂氏零度だが。

 そんな見た目が凶悪な魔法を向けられた方は堪ったものではなく、恐怖に(おのの)き腰を抜かす者や、神に祈りを捧げて許しを乞う者、身に纏っている鎧で防御を試みる者、そして気付いたら一目散に逃げ出している司祭(ヒヒジジイ)など反応は様々であった。

「え?〝氷槍(グラス・ピック)〟? 形が違うけど〝水球(ロ・スフェール)〟なのでは……」

 そしてシェリーの後ろで、そんな的確に展開された魔法を読み取っているコーデリア。実は彼女は、結構優秀であった。評価されていないだけで。

 そんな見た目は一触即発な現場に、

「〝 強制詠唱破棄(フォッセ・ソール・ジュティ)〟」

 涼やかな声が響き、シェリーが展開している魔法が強制的に破棄され――

「〝対抗術式(コントル・マジー)〟」

 だが思わず〝 強制詠唱破棄(フォッセ・ソール・ジュティ)〟を強制破棄し返し、

「〝射出(アンジェクション)〟ついでに〝静電撃(シャテーニュ)〟」

 更に思わず声がした方へと〝氷槍(グラス・ピック)〟という(てい)の〝水球(ロ・スフェール)〟を、問答無用で放つ。
 あまり知られていないのだが、全ての魔法を強制破棄する〝 強制詠唱破棄(フォッセ・ソール・ジュティ)〟も実は魔法であり、術式を読み取れれば上位互換である対抗魔法で打つ消すことが可能なのだ。

 その〝 強制詠唱破棄(フォッセ・ソール・ジュティ)〟を展開した人物は、まさかそれが破棄され返されると思っていなかったのであろう、そのまま見事に冷水を思いっ切り喰らって引っ繰り返り、更に電撃も喰らってビクンビクンする。

「あ、つい」

 そう呟いて片目を(つむ)り、はにかみながらペロリと舌を出して、これには目を(つぶ)ってと言わんばかりにテヘペロするシェリー。

 既に手遅れであるし、明らかにやり過ぎであるのだが、やられたら自身に被害が及ぶ前にやり返すのが信条であり、それが習慣として身に染みている彼女に後悔はない。
 例えそれが、その相手が、()()()()()()()()()()()()()()()()()()であったとしても、自分の行動に後悔は一切ない。

 ただ、過去にないくらい反省したが。

 三秒間くらい。