カーテンの隙間から見える、小さな日の光に導かれるように、梢子は床に足を着けた。閉め切っていない部屋のドアを体で押し開けると、洗面所へと続く廊下を歩く。夜が明けたばかりの部屋の中は薄暗い。鳥の鳴き声一つしない朝に、異様な世界観を感じる。
 一つ一つの作業に時間がかかる梢子にとって、早起きは鉄則だ。梢子が起きてまずするのは、トイレをする事でも、歯を磨くことでもない。義手を装着することだ。これをしなければ、梢子は一日を始められない。
 義手はいつも洗面台の隣にある洗濯機の上に置いてある。両腕のない梢子にとって、命の次に大切だと言える義手を洗濯機などの上に置くのは、装着するのに洗濯機の高さが、家にある物の中で、一番合っているからだ。
 腕が無くとも、足と口はある。かぶれないように着けている布を口で噛むと、右肩に、左肩にと着けた。そしてお待ちかねの義手の装着。少し背中を丸め、肩にはめやすい大勢をとる。初めは上手く出来なかったこの動作も、今じゃ慣れたもの。だがそれなりに体力を使う。ただ日常を過ごすだけでも、梢子にとっては苦労が付き物となる。
 義手を装着し終わるとトイレを済ませ、口に歯ブラシが刺さらないように、ゆっくりと歯を磨き、そしてようやくカーテン開け、日の光を浴びる。この瞬間、梢子は生を実感出来る。
 水を干している体に、コップ一杯分の水を与えると、枯れた体が潤った。朝一の空気を吸うため、ベランダに出た。寒い冬の時期でも、静まり返ったこの時間の中、気持ちを整えるのは、梢子にとって大切な時間だった。ごろ寝をする為に買って敷いた芝生の上に寝そべり、空を眺める。
 今日の空は雲の流れが速い。今は快晴の空が広がっているが、これから天気が悪くなるのだろうか。
 風の赴くままに、心と体を解放させる。ひんやりとした風が梢子の身体にあたる。ふと電信柱の方を見ると、カラスが二匹離れた位置でとまっていた。まだ鳴く気配はない。その時を待っているかのように、カラスはその場にじっとして動かないでいた。
 カラスは、夜明けの少し前から山から下りてくるらしい。生き物全体で見たら、一番、早起きな生き物は、何なのだろうと、梢子はそんな事を考え始めていた。そしてこの世界をどれだけ生きても、必ず分からないものがある中で、人は死んでいくのだろうと思う。それでもなるべく多くの事を知ろうと、梢子は今日も朝の情報番組に耳を傾ける。
 今日は動物虐待に対するニュースが大きく取り上げられていた。水を飲み、太陽を浴び、風を感じ、栄養の取れた食事をする。こういう事をしていると、人間も植物も動物も変わらないと思う。命の価値はみな同じ。それなのに、なぜ世界はこうも、虐げる事を好むのか。
 ニュースは朝であろうが昼であろうが関係なしに刺激が多い。時に今以上に残酷な内容が映し出される。誰かが、何かが死んだ。誰が、何かが殺した。そんなワードを耳にしない日はない。別に自分を善人などとは思わないが、心が痛まないこともない。だがそれも一時のことで、すぐに何もなかったかのような扱いにする。理由は簡単だ。自分が関わっている事ではないから。
 お湯が沸く音がして、我に返った。
 キッチンに行き、火を消すと、耐熱性プラスチックのマグカップを取り出し、集中してやかんのお湯を注ぐ。少しの気の緩みで、火傷をしかねない。
 梢子はやかんを持つ手に入れられるだけの力を込めた。
 両手で包み込むようにしてマグカップを持ち白湯を体に流し込む。
「ふうー……」
 しばらくして、朝食を作り始めた。
 義手で手の込んだ料理をするのは難しいということもあるが、同居人が出来た今は少し頑張ってみる。
 テーブルには、二人分の朝食をセット。そこでタイミングよく寝室の扉が開いた。上下チェックのパジャマに、寝ぐせがついた髪。年相応で可愛い姿で登場だ。
「おはよう。よく寝られたか?」
 そう声を掛けると、大きくあくびをして、匂いにつられるようにテーブルに近づいて来た。
「こらこら、先に歯を磨いてこい。朝食はそれからだ」
 寝起きのせいか、青星は気怠そうだった。
「今日、図書館行くんだろ」
「ああ」
 資料集めをするために、今日は図書館に行く事になっていた。今は何でもネットで調べられる時代だが、より正確な情報と幅広い知識を求め、紙の本に頼る。
「分かった」
 そう言うと青星は洗面所に消えて行った。
 ――一浪が、青星を探している。
 阿久津からそう言われた時、梢子は戦慄した。
 昨日、牧野と打ち合わせをするため、外出をしていた際、阿久津に出くわした。阿久津は梢子の顔を見るなり、複雑な顔をした。「話がある」そう言われ、梢子は開店前の阿久津の店を訪れた。
 店に行く事は、もう二度とないと思っていたし、阿久津の顔を拝むのも、最後にしたかったが事態が事態。
 阿久津は、バーカウンターの席に座り、煙草に火をつけると、大きく煙を吐いた。
 梢子はその煙をよけるように、阿久津から離れた位置に立っていた。
 あの時、梢子が壊したドアは既に修理されていた。店の中は少しグレードを上げたのか、以前よりも、高級度が増したような気がした。でもあの汚らわしい空気は変わらなかった。
「一浪が出所した」
「……出所?」
 一浪は、窃盗の容疑で最近まで刑務所に収監されていたのだ。
「金も権力もない一浪は、真っ先にここを訪れた。青星が借金を払い終わり、ここを辞めたことを話したら、一浪は不気味なまでの笑みを浮かべていた。おそらく、まだ青星に使い道があると判断したのだろう。あいつは間違いなく、お前らの居場所を突き止めるだろう。そうなる前にこの町から去る事だ」
 阿久津は未成年である青星に対し、男娼の真似事をやらせていた。これは完全に性犯罪の問われる問題。そんな奴がどうして青星の身を案じるような事を言ってくるのか。
「お前、一浪に私の事は話したか」
「まさか、話すわけがないだろ」
「そうか。出所の事も、青星は知らないんだろうな?」
「知らない。俺はあの日から、青星には接触していない」
「それなら、あいつには言うな。……知らない方があいつのためだ」
 あいつを壊すことにもなりかねない。
 阿久津がどういうつもりで、梢子にこの話をしているのか。青星に執着しているとも思ったが 阿久津はそういうタイプの人間ではない。ストカー気質の人間には、いくつかの特徴があるが、阿久津はそのどれにも当てはまっていない。第一、本当に執着心があるのならば、力づくでも、自分から青星を奪い返そうとするはず。
「お前の目的はなんだ」
 裏の社会で生きている阿久津が、自分にメリットがあること以外、するはずがない。裏社会とはそういうものだ。
「言え」
 梢子は阿久津を問い詰めた。
「……罪の償い。とでも言っとこうか」
 阿久津はそう答えた。
 阿久津は後悔しているのか。青星にあんな真似をさせた事を。子供を道具にしている事を。
「そうか。でも、その償い、一生かかっても償いきれんぞ」
 梢子は冷たくそう言い放つと、足早に店を後にした。
 青星、お前は自由なんだ。もう、何かを奪われることはない。私が、そうさせない。絶対に――。
 私は青星の父親には会ったことはないが、阿久津から、元軍人の体格のいい背の高い男だと聞いている。仮にどこかで出くわしてしまった場合、こいつの怯えを見れば、一発で分かるだろう。……見たくないのが、本音だが……。
 戻って来た青星を共に、テーブルを囲む。お茶を飲もうとコップを掴もうとしたが、中々上手く握れない。やはりガラスだと重さも関わってきて、余計に持ちづらいか。
 ……クソッ。阿久津の事もあって、余計にイラつくな。
――ガッシャーン……!!
 しまった……。
 コップが床に落ち、ガラスが飛び散った。
「大丈夫か」
 青星はそう言い、キッチンの棚から塵取りを持ち出し、割れた食器を片し始めた。
 梢子は苦笑いをして「すまないな」と言った。
 飲み物を好きなコップで飲むことなんて、誰でもするだろう? でも、そんな小さな幸せさえも私は噛みしめられない。何とも憎たらしい。
「これ、お気に入りだったんだろ?」
「え?……あ、まあーな」
 一緒に過ごしていて分かったが、青星は観察力に長けている。それは長い間、大人との関わりを余儀なくされ養われたものだろうが、それは生きていく上でも大きな武器となる。
「綺麗だよな。薩摩切子」
 梢子のお気に入りのコップ。それは、鹿児島で製造されている、薩摩切子だった。
「ああ、とても。シンプルだが、磨き上げられた美しさの中には、ダイナミックさも眠っている。これは素人には絶対に出来ないことだ。……それに、こういう、何代にもわたって受け継がれている物には、何だが好感を持てるんだ」
 祖父・祖母から父・母へ。そして子へ。それは未来に繋げる襷(たすき)。それに私は憧れている。
「いいな……そういう物の見方」
「お前だってしているさ、気づかないだけで」
「だと、いいな……」
 青星は手際よくガラスを片付けると、棚から新しコップを取り出し、お茶を注ぐとテーブルの上に置いた。
「それ、この家にある中で、俺のお気に入りのコップ。貸してやるよ」
 それは、梢子が割ってしまった、薩摩切子のペアグラスだった。
 今、この場だったら普通は、プラスチック製のコップを出してくるところだ。でもこいつはガラス製のを選んで出してきた。まるで私を障害者などではないかのように。
 梢子は失笑した。
「これは私のだ」
 ありがとう。青星。お前のその気遣いのない振る舞いが、私を救う。
 梢子はコップを持ち、お茶を飲んだ。
 うん。美味しい……。 



 午後になり、梢子と青星は図書館へ。今日は今季一番の寒さ。いつもより着込んだ体は膨れていた。後ろを歩く青星の鼻は、トナカイのように赤くなっていた。梢子は自分の首元に巻いていたマフラーを取り、青星の首元に。
「ありがとう」
 青星は少し照れくさそうにそう言った。年相応なその顔は、梢子が見たかったものだ。
「雪だ……」
 空から、静かに雪が舞い降りていた。スローモーションに見える雪。冬は神秘的な静寂を創り出す。その静寂の中、梢子は雪に触れようと、手の平を上に向けた。腕に体温がない梢子。少しはこの結晶が消える時間を稼げているだろうかと思う。だが思っていたよりも早く、雪は梢子の手の平から消え去ってしまった。
 青星は空を見上げ、舞い降りる雪を儚げな瞳で見ていた。
 図書館に着き館内に入ると、会員証を見せ入室する。館内の人はまばらだったが、中には勉強中の学生もいた。
 ここに来るのも久々だな。
 机と椅子の数が減っただろうか。近年は電子書籍が主流となってきた時代。誰もが手軽に本を読めるようになったが、紙の本を読む人が減っているのは事実。それは小説家として、少し悲しい気もする。
「じゃあ、参考になりそうな本、探してくる」
「ああ、頼んだ」
 一旦、青星と行動を別にし、梢子は一番端にある、窓側の椅子に腰かけパソコンを開いた。起動を待つ間、スマホのメールをチェックをする。メールボックス内は、通販サイトからのセール情報や、携帯会社からの今月の請求額メールなどが届いていた。どのメールにも目を通すことなく、一括でメールを消去。と、ボックス内を空にしたと同時に、メールが一件届いた。相手は、牧野だった。仕事の話かと思ったが、要件は青星の事についてだった。
 あれから、牧野に幾度となく青星の話をされた。両親は今どこいるのか。借金はどうしたのか。クラブとの縁は切れたのか。その質問に梢子は、青星の自尊心を傷つけないように、牧野に理解してもらえるように、丁寧に答えた。
 愛情深さに比例して、過保護過ぎる牧野は、青星が心配で心配で仕方ないのだろう。それは梢子も同じだが、守るばかりが、青星にとって良い事ではないのは分かっている。だから、いつまでも、あいつを家だけにいさせる気はない。
 梢子は牧野に「考えとく」とメッセージを送ると、携帯をコートのポケットにしまった。
 今日は雪がよく降るなー。
 ボケっと窓の外を眺めていると、女の子たちの話し声が聞こえてきた。
「ねぇ、見た? すごい綺麗じゃなかった?」
「でも、まだ子供だよ」
「いいじゃん。年下、可愛いって~」
 二人の視線の先には、先ほど青星が足を踏み入れた、歴史書物が置いてある棚の欄だった。
 梢子は開けたばかりのパソコンを閉じると、鞄に入れ、席を立った。
 数メートル先のその場所に進むと、そこには、本棚と本棚の間にある通路に、一人、静かに座って本を読む青星の姿があった。その姿はまるで、群れを離れた、迷子の子供のオオカミのようだった。
 青星がこちらに気が付き、本から顔を上げた。
「参考になりそうな本は見つかったか」
 梢子はそう言い、青星に近づいた。
 青星は怪訝そうな顔をして、
「まだ10分くらいしか経ってないぞ」
「ははっ。そうだったな」
 梢子は青星の横に座り、本を覗き込んだ。
「何を読んでいたんだ?」
 青星は本を閉じ、タイトルを見せてきた。
「日本のステンドガラスの歴史についてだよ。あんたが調べろって言ったんだろ」
 梢子が今、書いている作品には、主人公が教会に迷い込むシーンがある。そこで主人子は、美しいステンドガラスに心奪われる。
「何か収穫はあったか?」
「まあ、基本的な内容はな。でも、文字だけじゃ分からない事もある。これは感性的な問題でだ」
「その通りだ。より鮮明に物語を作るには、自分の目で見ることが一番だ」
 青星は、先ほどよりもさらに怪訝な顔した。
「……お前、初めからその気だっただろ」
 梢子はにんまりと笑った。
 今度は二人で椅子に腰掛けると、梢子は青星に必要な個所をメモさせた。
「よし、行くか」
 来て四十分足らず。二人は図書館を出て、ある所へ向かった。
 


 向かったのは、町の小さな教会だった。今日の梢子の本当の狙いは、この教会に来る事。もちろん、図書館での事も必要だった。
 いつでも、誰でも、足を運べるようにと建てられ、無料で見ることが出来るこの施設は、飲食、大声での私語禁止以外は、自由だ写真も撮っていい。
 中はステンドグラスの美術品が、数多く壁に並べられていた。来門者にステンドグラスの美しさが伝わるよう、建物の中はいつも薄暗くしてある。ステンドグラスの光が、タイル製の白い床に反射し、床でさえも、神秘的に光り輝いていた。青色のステンドグラスが映っていると、そこに海が広がっているようで、黄色ステンドガラスが映っていると、あたり一面、花畑。緑色のステンドガラスが映っていると、芝生の絨毯が敷かれているようだった。
「どうだ、幻想的だろ?」
 返事が返ってこないあたり、青星は既にその世界観に引き込まれているようだった。
「この作品を作ったのは、ルイス・C(カムフォート)・ティファニーと言う、アメリカ出身の芸術家だ。ルイスは、あのティファニー社の跡取りとして生まれたが、宝飾に興味はなく、ガラスの製造や工芸に惹かれていったんだ」
「ずいぶんと詳しいんだな」
「私は、彼の作品のファンだからな」
 太陽の光に、負けじと光輝く、ガラス細工たち。何枚ものガラスを重ね合わせ、世界に一つだけしかない、彼にしか出来ない手法で作りあげられたその作品は、梢子の心を奪った。
 二人は、女性の天使が描かれている作品の前、足を止めた。
「少年、知っているか。愛する人を救うために、自分の身を滅ぼした天使の話を」
 その天使は、好きになった男の命を救うために、自ら死を選んだ。生前天使は言った。『愛する人のために死ねた私は、他のどんな者よりも幸せだ』と。結果的に悪魔に生まれ変わった天使は、愛した男の事も忘れ、一人孤独に生きた。
「天使は恐れなかったのだ。死を。変わりゆく事を」
「……お前には、誰か想う奴がいるのか……」
 遠慮気味に口を開いた青星に梢子は、
「いないさ……」
 と、まるで水たまりに広がる波紋のように、静かにぽつりと呟いた。
 教会の奥に進むと、そこには一台のグランドピアノがあった。天井にある窓から光が差し込んで、ピアノを照らしていた。それは〈天使(てんし)の梯子(はしご)〉のようにも思えた。
 美しいな……一度でいいから、本物を見てみたいものだ。
 教会とは、なんとも不思議なもの。無駄な音楽もなく、建物内の温度も一定に保たれている。他を何も感じさせない。その世界感だけを与えてくれる。
 いくら義手を使いこなす私でも、今はこれを弾く力はない。
 梢子はピアノに寄りかかり、天井を見上げた。
 すると、すぐ横からピアノの音色が響いた。驚いて横を見ると、そこには椅子に腰を下ろし、鍵盤に手を乗せている青星の姿があった。
「お前、もしかして、ピアノが弾けるのか?」
 青星は無言で頷くと目を閉じ、軽く息を吐き手を動かし始めた。
 ――優しい、音がした。それは、もう二度と感じる事はないと思っていた、ぬくもりの音――。
 そのぬくもりの音に身をゆだねるように、梢子は静かに目を閉じた。
 少しして、一度、目を開け青星を見たが、すぐに目を閉じ、また静かにピアノの音色に耳を傾けていた。
 今だけは、何も考えない。お互い。たまには私も、ピュアという心を持ち、これは、天使がくれた時間だと思う事にしよう。
 美しい、穏やかな時間が流れた――。



「お前、なかなかの腕前だったな」
 帰り道、二人並んで歩きながら、梢子は青星のピアノの腕を褒めた。
「客にせがまれて、引いていた事があるんだ」
「なるほど……」
 美しい少年に、芸術的なピアノ。絵になるそれをただ見たかったのだろう。クソ単純な発想過ぎて、思わず冷笑しそうになるが、青星のピアノは、糸の縫い目のように繊細で、押し寄せる波のように穏やかだった。
 こいつは自分のその容姿で、これでもかというくらい、嫌な目に遭ったはずだ。外見の美。それは、傲慢な生き物である、人間が形成しているこの社会では、時に呪いを呼ぶものとなる。
「お前は、ピアノが好きか」
 青星が梢子に訊いてきた。
「ああ、鍵盤に触る感覚と、耳に入る音が心地よくて好きだ。でも今日ので、弾くより、聞く方が好きになったなかもな」
 こいつのピアノは、泣きたくなるほどに優しいものだった。あんなに優しい音を奏でられるのだ。こいつの心は美しい。
 梢子は立ち止まり、青星の背中を見つめた。
 こいつの未来を、少しでも明るいものにするのが、今の私の役目だ。さっきのように、避けさせてばかりはいられない。
 立ち止まる梢子に、青星は首を傾げて「何をしているんだ」と言ってきた。
 お前を想うのなら――。
「青星。学校へ、行かないか――?」
 お前を想うのなら、この選択を与えるべきだ。