亜里香は、ほっと肩をなでおろした。

「そう、ですよね。わかりました!彼女になりたいって、言ってみます!」

「ええ、そうなさってください。

・・・雄輝様、お呼びしましょうか?」

「え⁉いま?」

彩海は笑った。

「はい。今でございます。善は急げ、ですよ。」

「え~、じゃあ、お願いします!」

彩海は一度出て行った。

亜里香は周りが静かになって、急に心細くなった。

ちゃんと受け止めてくれるだろうか。

「わっ!」

瑠海が亜里香の頭の上に飛び乗った。

前足で髪の毛をわしゃわしゃしている。

亜里香の頭をなでているつもりなのだろうか。

だいじょぶ(大丈夫)しんぱいにゃい(心配ない)あいかはしゅごいにゃ(亜里香はすごい)。」

亜里香はふわりと笑った。

「そっか。なら、安心だね。」

「にゃ!」

瑠海はそのまま頭の上でうずくまって寝てしまった。

そのままでは少し重いので、亜里香はそーっとおろして、

ソファーに寝かせた。

ちょうどそのタイミングで、彩海が雄輝を連れて戻ってきた。

「お連れしました。」

亜里香は振り返った。

「なんだ?話とは?」

雄輝は亜里香の目の前に座った。

「ねえ、雄輝。」

「ん?」

「あたしたちってさ、あくまでもあやかしと花嫁だよね?

恋人じゃ、ないよね?」

「な、なんだ急に。

もしかして好きなやつができたのか?」

珍しく、雄輝が動揺した。

「そうといえばそうだよ?」

「え、は?」

「あの、ね。あたし、こんなことになるとは思いもしなかった。

夢に見たことがないわけじゃない。

誰かがあたしを拾ってくれて、

あたしはあそこを出れるんじゃないかって。

それが急に叶って、

しかもあやかし。

その出会い自体が、相思相愛になることの予言みたいなものだった。

でも、どこか夢みたいで、それは噂、ただの噂だって、自分に言い聞かせてた。

でも、数日で、ダメになった。

噂がほとんど事実になっちゃったから。」

「亜里香、それって…」

「あたしはね、あたしは、雄輝が好きなの!

ただの花嫁じゃなくて、ちゃんと雄輝の彼女になりたい!

わぁっ!」

雄輝は亜里香をきつく抱きしめた。

「俺も好きだよ。花嫁だからじゃなくて、ちゃんと。

相良 亜里香として、亜里香が好きだ。

俺の、彼女に、なって。」

「うん!」

二人はきつく抱きしめあった。

亜里香は今、世界で一番幸せだった。