『忍葉君、今、何かを思い出だしたと思うけど、話せるかな?』
と神蛇先生が、落ち着いた声で聞いた。
忍葉は、体を起こし、しっかり座り直すと、
自分から、紫紺の手を取った。
忍葉の近くにいながら、不安定な忍葉の刺激にならないように、口や手を出さずに成り行きをジッと見守っていた紫紺は驚きつつも、
しっかり握り返すと、安心したのか、皆が見守る中、忍葉は、ポツポツと話し始めた。
『今、色々な映像が頭の中を流れていったの…。
私、ずっとこのぬいぐるみを一緒に買ったのは、お母さんとお父さんだと思ってた。
あの時、みたいな優しいお母さんとお父さんに、戻って欲しいって…、
違った……あの時、ぬいぐるみを一緒に買ったのは、紗代ちゃんと、和くんで…
お父さんとお母さんとおじいちゃん、おばあちゃんとTVを観ながら、飲み物を飲んだ記憶があって…凄く暖かくして楽しかった。
あの時の優しかった家族に早く戻って欲しいって思ってたけど、
それも紗代ちゃんと、和くんと神社の近くのじーじとばーばだった。
そして…
小さい頃、お風呂の中を覗き込んで落ちたの…ドボンって、ブクブクして…お母さんが、鬼みたいな顔で、私の首を押さえて……それから…どうなったかな?わからないけど…
そのお母さんと、紗代ちゃんが、同じお母さんだとずっと思ってた…なんでそう思ったのかな…
だから、自分は、一人だって…
あの優しかった家族にいつか戻って欲しいと思いながら…
あの鬼みたいな顔のお母さんの姿、あの時に感じた、私が邪魔なんだって思いが…暗くて重い固まりのようになって、ずっと心にあった。
そこを思うと、幸せだったもの全てが色を失って、自分の世界が真っ暗闇になって…
だから、自分は、誰にも愛されない。誰かに愛されちゃいけない。そういうものを求めちゃいけない、甘えちゃいけないってずっと、ずっと思ってた。』
『記憶が色々、蘇ったみたいだね。
狛犬の話を聞いてから、
忍葉君が、どうして三枝夫妻を思って、家に帰りたいと思ったのか?
そう思っているのに、三枝夫妻を覚えていないのか?疑問だったけど、
忍葉君は、幼い頃の思い出の中の三枝夫妻と父方の祖父母が、
ご両親と母方の祖父母だと思っていたんだね。
『はい。』
『そのせいで辛い思いをしてたみたいだね。
思い込んだ思いから解放されたみたいだけど、気分はどうだい?』
『なんだか凄く疲れたけど、心は軽くなった気がする。胸の詰まりが抜けたみたな…。』
『そうかい。なら良かった。きっと思い出した記憶は、時間とともに心の中に綺麗に整理し直されて収まっていくと思うよ。
だけど、今日は、念の為に入院した方がいいね。』
『そうですか…。わかりました。』
『それから、忍葉君の話だと夕飯は、まだだよね。何か食べるものを用意させるよ。
美月君は、食事した?』
『あっ、ご飯のこと、すっかり忘れていた。』
『あっ、私は、食事の途中で、出てきたんだった。言われたら、お腹空いてきた。』
『紗枝ちゃんたちは?』
『私たちは、済ませているわ。ポチが、忍葉ちゃんを連れて来たときは、食事を済ませた後だったから。』
『僕は、そろそろ検査結果が出てると思うから、見てくるよ。
皆さん、今日は、忍葉君をゆっくり休ませてあげて。』
『うん。わかった。先生。』
『神蛇先生、忍葉様の食事は、何を食べても構いませんか?』
『ああ、いいよ。』
『なら私がご用意しても宜しいでしょうか?』
『ああ、そうだね。道忠君に任せるよ。』
『検査結果に問題が無かったら、結果は、明日にするよ。多分、問題は、無いだろからね。忍葉君、今日は、安静にしてゆっくり休んでね。』
『はい。先生、今日は、ありがとうございました。』
『ああ。仕事だからね。』
『櫻葉、少し話しがあるから一緒に来て。』
『はい。わかりました。』
『私も、忍葉様の食事を用意してきます。紫紺様も、何かお持ちしますね。』
先生たちが病室を出て行った。
『ひと段落したみたいだし、ここは、紫紺君に任せて僕達も、食事をし直さないかい?美月ちゃん、僕も急に、お腹が空いてきたよ。』
チラッと忍葉の方を見た美月が、
『うん。そうだね。私も、お腹ペコペコ』
と藍蓮に同調した。
『それじゃ、私たちも帰ろうかしら。ねっ、貴方。』
『そうだね。食事の邪魔をしては悪いね。
今日は、ゆっくり休んで。忍葉ちゃん。』
『ホント。大変だったみたいだから、2人とも、今日は、ゆっくり休んで。』
『今日は、本当にありがとう。紗代ちゃんと和君。』
『お姉ちゃんを助けてくれてありがとうございました。』
『いいんだよ、そんなこと。忍葉ちゃんが無事で良かったよ。』
そう言うと2人は連れ立って帰って行った。
美月たちも、
『食事が済んだら来るからね。』
『紫紺様、お姉ちゃんを宜しくお願いします。』
と言って出て行った。
と神蛇先生が、落ち着いた声で聞いた。
忍葉は、体を起こし、しっかり座り直すと、
自分から、紫紺の手を取った。
忍葉の近くにいながら、不安定な忍葉の刺激にならないように、口や手を出さずに成り行きをジッと見守っていた紫紺は驚きつつも、
しっかり握り返すと、安心したのか、皆が見守る中、忍葉は、ポツポツと話し始めた。
『今、色々な映像が頭の中を流れていったの…。
私、ずっとこのぬいぐるみを一緒に買ったのは、お母さんとお父さんだと思ってた。
あの時、みたいな優しいお母さんとお父さんに、戻って欲しいって…、
違った……あの時、ぬいぐるみを一緒に買ったのは、紗代ちゃんと、和くんで…
お父さんとお母さんとおじいちゃん、おばあちゃんとTVを観ながら、飲み物を飲んだ記憶があって…凄く暖かくして楽しかった。
あの時の優しかった家族に早く戻って欲しいって思ってたけど、
それも紗代ちゃんと、和くんと神社の近くのじーじとばーばだった。
そして…
小さい頃、お風呂の中を覗き込んで落ちたの…ドボンって、ブクブクして…お母さんが、鬼みたいな顔で、私の首を押さえて……それから…どうなったかな?わからないけど…
そのお母さんと、紗代ちゃんが、同じお母さんだとずっと思ってた…なんでそう思ったのかな…
だから、自分は、一人だって…
あの優しかった家族にいつか戻って欲しいと思いながら…
あの鬼みたいな顔のお母さんの姿、あの時に感じた、私が邪魔なんだって思いが…暗くて重い固まりのようになって、ずっと心にあった。
そこを思うと、幸せだったもの全てが色を失って、自分の世界が真っ暗闇になって…
だから、自分は、誰にも愛されない。誰かに愛されちゃいけない。そういうものを求めちゃいけない、甘えちゃいけないってずっと、ずっと思ってた。』
『記憶が色々、蘇ったみたいだね。
狛犬の話を聞いてから、
忍葉君が、どうして三枝夫妻を思って、家に帰りたいと思ったのか?
そう思っているのに、三枝夫妻を覚えていないのか?疑問だったけど、
忍葉君は、幼い頃の思い出の中の三枝夫妻と父方の祖父母が、
ご両親と母方の祖父母だと思っていたんだね。
『はい。』
『そのせいで辛い思いをしてたみたいだね。
思い込んだ思いから解放されたみたいだけど、気分はどうだい?』
『なんだか凄く疲れたけど、心は軽くなった気がする。胸の詰まりが抜けたみたな…。』
『そうかい。なら良かった。きっと思い出した記憶は、時間とともに心の中に綺麗に整理し直されて収まっていくと思うよ。
だけど、今日は、念の為に入院した方がいいね。』
『そうですか…。わかりました。』
『それから、忍葉君の話だと夕飯は、まだだよね。何か食べるものを用意させるよ。
美月君は、食事した?』
『あっ、ご飯のこと、すっかり忘れていた。』
『あっ、私は、食事の途中で、出てきたんだった。言われたら、お腹空いてきた。』
『紗枝ちゃんたちは?』
『私たちは、済ませているわ。ポチが、忍葉ちゃんを連れて来たときは、食事を済ませた後だったから。』
『僕は、そろそろ検査結果が出てると思うから、見てくるよ。
皆さん、今日は、忍葉君をゆっくり休ませてあげて。』
『うん。わかった。先生。』
『神蛇先生、忍葉様の食事は、何を食べても構いませんか?』
『ああ、いいよ。』
『なら私がご用意しても宜しいでしょうか?』
『ああ、そうだね。道忠君に任せるよ。』
『検査結果に問題が無かったら、結果は、明日にするよ。多分、問題は、無いだろからね。忍葉君、今日は、安静にしてゆっくり休んでね。』
『はい。先生、今日は、ありがとうございました。』
『ああ。仕事だからね。』
『櫻葉、少し話しがあるから一緒に来て。』
『はい。わかりました。』
『私も、忍葉様の食事を用意してきます。紫紺様も、何かお持ちしますね。』
先生たちが病室を出て行った。
『ひと段落したみたいだし、ここは、紫紺君に任せて僕達も、食事をし直さないかい?美月ちゃん、僕も急に、お腹が空いてきたよ。』
チラッと忍葉の方を見た美月が、
『うん。そうだね。私も、お腹ペコペコ』
と藍蓮に同調した。
『それじゃ、私たちも帰ろうかしら。ねっ、貴方。』
『そうだね。食事の邪魔をしては悪いね。
今日は、ゆっくり休んで。忍葉ちゃん。』
『ホント。大変だったみたいだから、2人とも、今日は、ゆっくり休んで。』
『今日は、本当にありがとう。紗代ちゃんと和君。』
『お姉ちゃんを助けてくれてありがとうございました。』
『いいんだよ、そんなこと。忍葉ちゃんが無事で良かったよ。』
そう言うと2人は連れ立って帰って行った。
美月たちも、
『食事が済んだら来るからね。』
『紫紺様、お姉ちゃんを宜しくお願いします。』
と言って出て行った。