前世の記憶で異世界を発展させます!~のんびり開発で世界最強~

 いろいろバタバタしていた休日も終わり、また一週間が始まった。
 グランはアーサーから男爵位を授かったが特に日常に変わりが出ることはなく、普段通り朝にカノンも含めみんなで鍛錬し、昼は学園で授業を受け、放課後は遊んだり鍛錬したりという日々が続いた。
 今日もそんな一日が過ぎようとしているころに変化があった。

「そこの君!もしかして新歓大会優勝のグラン君だよね!?君の剣筋は素晴らしかったよ。そんな君だからこそ剣術研究会に入らないかい?」

「なに!?グラン君がいるのか!?グラン君は魔法の天才だ!こっちの魔術研究会はどうだ?」

「グラン君?あなたの流れるような魔術に感動しました!……私と付き合って下さい!」

 そう新勧――新入生勧誘期間である。
 この前の新入生歓迎大会はここで先輩方が新入生にある程度目星をつけるためだ。
 結局は全員はいらないといけないのだが。
 さらにグラン、ティナ、ナミア、エリザベート、シャミア、サリーネ、フレッドリック、アレグサンダーは決勝トーナメント進出者たちである。
 普段から一緒にいたグランたちに加え、新人歓迎大会で仲良くなったアレグサンダーが一緒にいたら目立つこと間違い無いだろう。
 先輩たちが群がってくるのも当然といえた。
 しかしなぜこんなに先輩たちが一生懸命になるかというと、それは一年の終わりの表彰の時にある。
 学園ではまあまあの頻度で研究会や部活同士で争うイベントがある。
 それを制し、成績が良かった研究会や部活から順に次年度の部費が決まる。
 一番悪くても普通に活動する分はもらえるのだが、成績が良いと部費が上がり活動の幅が広がる。
 また部門ごとに賞金が出たり、卒業後の就職などで有利になったりといろいろ得点があるのだ。

「やっぱりグランは人気だね!どこに行っても活躍できるから引っ張りだこだ」

「グランはどこにするか決めた?私は剣術研究会かな?」

「私は召喚とかテイム専門の研究会があったからそこにしようかと思ってるわ」

「私たちは魔法研究会です!」

「魔法だけでもグランに追いつかなきゃね」

「俺も剣術にするかな」

「私は魔法だな。グラン君に負けた原因は剣術もだろうがもっと魔法が使えていたら勝っていたかもしれないからな」

「僕は……」
 グランはまだ決めていなかったためどうするか悩んでいたがある程度見て回った今やっと決まった様子だった。

「僕はどの研究会にも惹かれなかったんだけど結局はどれかに入らないといけないみたいだから自分で作ることにしたんだ」

「「「「「「「つ……作る~!?」」」」」」」





「えっ……研究会って作れるの?」

「もちろん!ただ4人集めないと作れないらしいんだけど今のところ僕一人だけだからみんなを誘おうと思ってたけどみんなもう決まってるのならどうしようかな」
 グランは納得のいく研究会が無く悩んでいたところ担任のステインがアドバイスしてくれたのだ。
 そこでグランはいろいろな人に声をかけてみた。
 しかしみんな自分が入りたいところが決まっていたためまだグラン一人の状態だったのだ。

「……やっぱり私グランが作る研究会にしようかな?」
 
「本当!?ちなみに活動内容はいつもの朝練みたいに鍛錬したり、自分の技能と向き合ってもっと自分の能力を高めたりしようと思ってたんだ」
 グランが活動内容を言うと他の六人もティナと同じように一緒にやりたいと言い出した。

「でも本当にいいの?みんなやりたいことがあったみたいなのに」

「いいんだよ!友達が困っているのを助けないわけないだろ?」

「そうそうそれにグランのところだったらやりたかったことも全部できそうだし」

「それにこっちのほうが実力がつきそうだからな。グラン殿に勝つには近くにいたほうが良いに決まってるだろう」

「みんな……」

「そうと決まれば早速名前を考えなきゃね!」
 グランはみんなで研究会の名前を考え用紙を無事提出するのであった。

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~シャミア&サリーネside~
「まさかグランが研究会を立ち上げることになるとは……」

「でも一緒にいられるようになったんだからよかったんじゃないかしら」
 用紙を提出グランたちはその場で解散となった。
 みんなと別れた二人は寮に帰る途中に王城に呼ばれそのまま向かっていた。

「それにしても急に呼び出すなんて何かあったのかしら?」

「お父様のことですから何か用事があることは間違いないのですが……いつも急ですからね」
 王城に着き執務室へ向かうとアーサーとヒメナがすでにいた。

「お待たせしてしまいすみませんお父様、お母様」

「ごめんなさいね~急に呼び出して」

「実はわしもまだ何のことか聞いてないんじゃ」

「「?」」

「私から話があったのよ~。というか聞きたいこと?」

「それでどんな内容なのお母様」

「もしかしてあなたたち二人ともグラン君のことが好きなんじゃない?」

「「「!?」」」
 誰もが予想していなかった質問に全員がフリーズした。

「なんじゃとっ!?」

「え、えっ!?なななななななんで!?」

「どうしてわかったのですか!?」

「母はなんでもわかるものなのよ~。で認めるのね?」

「「あっ……」」
 その後二人が認めたことで再びフリーズしたアーサーを放置したヒメナに根ほり葉ほり事情を聴かれていくのであった。
~アーサーside~ 

 わしはアーサー。

 この国の国王じゃ。

 国王といってもよく想像されるようなただ椅子に座って命令を出している人ではない。

 我が国、というかこの世界のだいたいの国が王も普通に事務作業をしたり、会議に出席したりしているのじゃ。

 それをしないのは帝国と魔族国ぐらいかの。

 そんなわけで今日も今日とて働いているとわしの妻であるヒメナが訪ねてきた。



「珍しいのわざわざここに来るなんて」



「いきなりごめんなさいね~ちょっと家族みんなで話したいことがあって~」



「会議も用事も今日は特にないから全然大丈夫じゃ。ところで家族で話したいこととはどんなことなのか?」

 するとヒメナは珍しく歯切れの悪い態度を取ったんじゃ。



「あ~これに関しては二人のプライバシーのこともあるの~。違ってたら大変だし二人が来てから話すわね~」



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「私から話があったのよ~。というか聞きたいこと?」



「それでどんな内容なのお母様」



「もしかしてあなたたち二人ともグラン君のことが好きなんじゃない?」



「「「!?」」」

 二人が部屋についてヒメナが口に出した言葉はだれも予想できないものじゃった。

 二人がグランのことを好き?

 それはちょっとさすがのヒメナでも違うんじゃないかの……



「え、えっ!?なななななななんで!?」



「どうしてわかったのですか!?」

 本当のことだったわい。

 ヒメナはすごいの。

 ってこんな悠長なこと言ってる場合じゃないわい!

 二人がグランのことを好き!?

 グランがいいやつなことも知っておるしヒメナが何も反論をしていないところを見ると大丈夫ではあるんじゃろう。

 しかしいくら人柄がわかっているとはいえ結婚するのはまださすがに早いじゃろう!?



「しかし二人とも同じ人を好きになるとはね~しかもグラン君は婚約者がいるでしょう?」



「なので婚約者のティナさんに話をしたら私は別に構わないと言ってくれました」



「ただ王家となによりグランの許可がないとだめなのよね」



「ですって~あなた」

 えっ?ここでわしにふるの?



「そうじゃの……。わしとしては反対じゃ」



「「!?」」



「そ、それって……」



「うむ。結婚はまだ早いしの。それにわしが寂しい!」



「そんな……」



「しかし王としては賛成せざるをえまい。あれほどの強者を放っておくことはできぬからの」



「……お父様。もしグランと結婚させてくれないのだったら私は今この場でこの命を絶ちます。それぐらいに私たちは本気なのです!」



「……二人ともそれぐらいに本気という事か?」



「「はい!」」

 はぁ……誰に似たんじゃかのこの頑固さは。



「そこまで言うのならしょうがない。グランは悪い奴じゃないことはこの前の宴会の時に確認はしてるしの」



「ということは……」



「うむ許可しよう。二人とグランの結婚を」



「「やった!」」



「ただしグランがYESと言ったらじゃぞ?」



「「もちろんです!」」

 本当は寂しくなるから意地でも反対したかったんだけどの、あんなふうに思いを見せつけられたらだれも反対できまいて。

 これも娘を持つ者の宿命なのかもしれないの。

 

「あとはグランの爵位が上がるようにお手伝いして仲を深めていくだけですね!お姉様」



「ええ改めて頑張りましょう!」

 二人とも燃えておるの~

 まあグランとは婚約が決まったらちょっと話をする必要がありそうじゃがの。



 シャミアとサリーネが王城に向かっていた頃、グランは新たに立ち上げた研究会である「実戦力育成研究会」の用紙を無事提出し寮へと戻っていた。

「そういえば掛け持ちもOKにしたからもう一つぐらいは入るか作るかしてもいいんだよな」
 グランが立ち上げた研究会は今まででみんなでやってきた朝練、放課後練などを研究会の活動としてするためのものである。
 グランは言うなれば魔法剣士だ。
 そのため魔法も剣も両方極めたいと考えていた。
 普通の人なら両方は無理だと考えるだろうがグランには全属性魔法が使える技能と全ての武具を扱える技能を持っていた。
 これだけ聞くと訓練や鍛練の類いは必要ないかのように感じるがあくまでも基本的なことができると言うだけであって、魔法の発動のタイミングだったり剣の振り方やフェイントの効果的なやり方など学ぶことはたくさんある。
 そのため普通の人より時間が短縮はされているのだ。
 しかし大体の研究会が掛け持ちNGであったため広く深く鍛練できるように新しく作ることにしたのだ。

「でもいきなり二つの研究会大変だから取り敢えず慣れてきたらにしよう!いつでも作ることはできるからね」

 そんなことを考えながらグランは放課後の鍛練をするために寮の自室を出た。

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 グランがいつもの場所に行くとそこにはティナとナミア、エリザベートの姿があった。

「三人とも!今から始めるの?」

「あっ!グラン!いいところに来てくれたね!」

「今鍛練が終わったところなの」

「ちょっと魔法理論でわからない部分があって……」

「じゃあ後で僕の部屋で教えるよ」

「ありがとう!また後で連絡するね~」
 グランはその後来たフレッドリックとアレグサンダーと一緒に鍛練をし、一緒に寮へと戻った。

「お待たせ~。じゃあ始めようか」

「今日授業でやった魔法陣展開時の工夫についてのところがわからないんだけど」

「あ~あそこな!工夫っても具体的にどうすればいいかわからないよな」

「そうなんだよ!ナミアとエリーにも聞いたんだけど二人もわからないって言うから」

「じゃあまずは魔法について確認しようか。魔法はまずどうやって発動するんだっけ?」

「えーっと確か魔力を対価に精霊の力を引き出す精霊魔法、技能として使える特殊魔法、そして呪文やイメージ、魔方陣で魔力を事象そのものに変換する変換魔法の三種類だよね」

「そうそうそれで今回は変換魔法についての話なんだ。精霊魔法も方法はあるんだけどそれは今日の授業では扱ってないからまた今度ね」

「でも変換魔法を使う機会ってあまりないぜ?」

「だからこそ難しく感じたんだと思うよ。普段は特殊魔法しか使わないからね。それで変換魔法についてだ」
 変換魔法はティナも行ったとおり呪文を唱えたり、魔法の様子をイメージしたり魔方陣を展開したりして発動する。 
 発動のコツとしては魔力をその事象のものに変質させること。
 例にあげるとグランが初めて魔法書を読んだときに唱えた灯火(ファイヤ)は呪文を使った変換魔法だ。
 つまり呪文やイメージの内容によっては魔法の内容も変わってくる。

「工夫はその時にどういうイメージをしたかとか、呪文の内容を変えたとか魔方陣を書き換えたとかのことを言っているのだと思うよ」
 グランは課題の意図は変換魔法を身近に感じてもらうためと、変換魔法を覚えているかの確認だと感じるよと付け加えた。

「あれ?でも確か変換魔法って適正じゃないと使えないんじゃなかったかしら?」

「適正がない人は魔力はあっても全部の魔法が使えないからその人たちは魔法学をとってないと思うよ」 
 なるほどねと皆が納得したところで話の続きを始める。
 そのあとも夜遅くまで魔法談義が続けられた。
 
 
~???side~

「今年度の新歓の様子はどう?」



「今のところは順調です。やはりみんなグラン・レア・ベルセリアを筆頭とした決勝進出組がとても人気ですね」



「私たちが動き出せるのは新歓がある程度落ち着いてからになるからそれまでに選定を進めなければいけませんね。何か考えでも?会長」



「ええ。そろそろグラン君勧誘に乗り出しましょうか!」



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「おはよ~!」



「おはようティナ今日も元気だね」



「私は毎日明るく楽しくがモットーだからね!それに好きな人に毎日会えるんだから♪」



「っ!そ、そっか……」

 グランは今日も今日とて学園に登校するとティナたち女性陣が既に登校していた。

 フレッドリックたちがまだ来ていなかったのでグランはティナたちと過ごすことにした。



「グランの照れた顔激レアね」



「しっかり目に焼き付けとかないとですね!お姉様」



「バッチリカメラに収めたよ!」



「「「「ナミアナイス!」」」」

 そんなこんなで今日も一日が過ぎようとしていた。

 昼休みグランたち男性陣が昼食を食べに食堂へと向かった。

 女性陣はどうやら今日は別の場所で食べるらしい。



「君がグラン君かい?」



「ええっとそうですけどあなたは?」



「すまない自己紹介が遅れたな。私はこの学園の生徒会会長のクリスタベルベッカ・レア・ガーシルダーだ。」



「私は副会長のアントネット・レア・ブルトンですわ」



「拙者会計のジョセフ・レア・ムズロである」



「グラン君。生徒会の役員にならないか?」



「生徒会の役員?」

 どうやらクリスタベルベッカによると生徒会の役員は会長の独断で決めることができるらしい。

 会長自体は生徒全員参加の投票で決めるが役員は投票がいらないみたいだ。

 皆が困惑してるなかクリスタベルベッカはそう説明した。



「それで入ってくれるか?」



「少し考える時間をもらえますか?」



「もちろんだ!こちらが突然押し掛けたんだからな。良い返事を期待してるよ!」



 グランたちは生徒会のメンバーが去り気を取り直して食堂へと向かった。



「それでグランはどうするつもりなんだ?」



「生徒会のこと?アレグサンダーはどう思う?」



「難しいところだな。私としては入った方がいいとは思うが」



「確か卒業後色々有利になるんだったか?」



「就職にしても騎士や冒険者になるにしても有利になること間違いないみたいだ」



「でもその分負担がね~」



「「ああ……」」

 その後昼食を食べながらどうしたものかと悩む三人だった。
「まさかグランが生徒会に勧誘されるなんてね」
 生徒会長直々に勧誘を受けたことを放課後グランの部屋で話すとみんな驚いた様子で話を聞いていた。

「生徒会長がお兄様の実力を認めたってことですよね!?さすがですお兄様!」

「ありがとうカノン。受験勉強はどう?順調?」

「はい!お兄様にはまだまだかないませんが主席で合格できるように頑張ってます!」

「カノンはすごいね!頑張って入学してね」

「はい!ティナお姉様」
 
「生徒会には入ってもいいんじゃない?聞くところではメリットしかないじゃない」

「そうなんだけど僕の場合はあまりメリットの効果がないんだ」
 グランはすでに冒険者登録を済ませてあり、騎士や就職をするつもりは今のところない。
 さらに生徒会のメリットとして登録時にある程度高いランクから始めることができるというものがある。
 それは実力を学校側から認められている生徒会だからできることでありそんな生徒会の長である生徒会長に勧誘されたものの特権である。
 そして他の職業も待遇が良くなったりさまざまであるためみんなが生徒会を目指すのは当然だろう。
 しかしグランはすでに冒険者ランクSSであり伝説ともいわれるSSSに最も近いといわれているほどだ。
 そんなグランは生徒会の推薦はあまり魅力的には見えなかった。

「そういえばグランはSSランクだったね」

「冷静に考えるとすごいことよね。もう学園に通う必要もないんじゃないかしら」

「カノンなんて心ここにあらずって感じだしね」
 ナミアが言ったようにカノンはグランがSSランクの冒険者だと知ったことで「お兄様がSSランク冒険者様だったなんて……」とつぶやいていた。

「でも一応はいっていたらどうですか?デメリットはそんなにないですし」

「それもそうね。もしグランが入らないのなら私が変わりたいくらいだわ!」

「じゃあ入ることにするかな」
 グランは明日生徒会にはいる旨をクリスタベルベッカに伝えようと決心するのであった。

~ナミアside~
 グランが生徒会に推薦されるなんて思ってもみなかったよ。
 でもグランの実力を考えたら当然のことのような気もするし……やっぱりグランはすごいね!
 でもグランが生徒会に入っちゃったら私たちといる時間も減っちゃうよね……どうしよう。
 いっそのこと私も生徒会に入れたらななんて。
 ナミアはそんなことを考えているうちに自分が入るのも案外悪くないんじゃないかと思いだした。

~エリザベートside~
「まさかグランが生徒会に勧誘されるなんてね」
 私はこう言ったもののある程度は予想していた。
 だってグランの実力は底知れないものがあるんだもの。
 でもなぜグランだけ誘ったのかしらね?
 隣には大会二位のアレグサンダーやベスト8のフレッドリックもいたのに……
 まあ何かしら事情があるんでしょう
 とりあえず明日の朝早くに私も入れるか聞いてみようかしら?
 ほかの人は多分生徒会に入ろうなんて思ってないでしょうしここで一歩リードしておけばとりあえずグランを独占する時間ができるわ!



~ナミアside~

「「「「「「「あっ……」」」」」」」

 朝普段やっている練習を休み早めに登校した私は生徒会室の前に来ていた。

 でも私だけじゃなかったんだ……。

 生徒会室の前にはティナをはじめ女性陣全員になんと男性陣までいたんだよね!

 これってもしかしてもしかしなくても……

 そんなことを考えている鉢合わせたことにより生まれたこの気まずい空気を破るかのようにフレッドリックが話し始めた。



「もしかしてみんなもグランと一緒に生徒会に入りたかったってことか?」



「みんな考えることは一緒だったね……」



「これどうします?さすがにこんなに多くの人数を受け入れてくれるはずもないですし」



「じゃんけんとかでどうかしら?」



「「「「「じゃんけん?」」」」」



「あれ?みんなじゃんけんって知らない?」

 私が意外に思ってそう尋ねるとみんながうなずいた。

 あの文化はこっちの世界にはなかったんだね。



「そんなものを聞いたことはないんだけどナミアとエリーは知ってるの?」



「私の家では割とポピュラーな決め方だったわ」



「私も!グランもそうだと思うよ?」

 わたしがグランって単語を出すとみんな分かりやすく驚いた顔になったなぁ……。

 やっぱりグランはすごいや!

 女子のハートをキャッチし、男子に慕われるなんて……

 そんなグラン、陽翔だから好きになったんだけどね///



「じゃんけんっていうのはね……」

 私がじゃんけんについて説明すると他の人も納得してくれたみたい。

 それで勝った人が生徒会長に直談判できるみたい。

 絶対に勝たなきゃね!



「「「「「「「最初はグー!じゃんけん……」」」」」」」



「あれみんな?こんなところで何してるの?」



「「「「「「「!?」」」」」」」



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

~グランside~

 グランは朝練を終え、昨日出した答えを伝えるために生徒会室へと向かった。



「昨日時間をもらったとはいえ早めに答えに行かないと迷惑がかかるからね」

 生徒会室に近づいたところで何やら騒がしいことに気が付いた。



「なんだろう?なにかあったのかな?」

 そこにいたのはティナたちだった。



「あれみんな?こんなところで何してるの?」



「「「「「「「!?」」」」」」」

 

「ええっとね……」

 ティナが何かを答えようとしていたところ生徒会長がやってきた。



「グラン君!どうだい?生徒会に入ってくれるか?」



「そのことなのですが今回はお断りさせていただこうと思います」



「「「「「「「「えっ?」」」」」」」」

「今回のお話はお断りさせていただきます」

「「「「「「「「えっ?」」」」」」」」
 グランは断ると会長だけでなく、ティナたちも驚いた様子だった。

「なんでなんで!?メリットしかないんだよ?」

「絶対に考え直したほうがいいわ!本当にチャンスなのよ!?」
 ティナとエリザベートがそう言うと他の人達もそうだとうなずいていた。

「一応理由を聞いてもいいかい?」

「昨日の夜考えたんですけど僕の場合メリットになるはずのものもあまり意味ないかなって」

「?どういうことだ?」
 グランが懐からギルドカード取り出すと全員が驚いた顔をした。

「この通りS()S()S()()()()なので」

「「「「「「「「!?」」」」」」」」
 グランが取り出したカードはこの世界で最も硬いといわれるアダマンタイトでできた黒色に輝くものだった。
 ちなみにアダマンタイトは超希少金属であり武具にするには向いていないためこのような使われ方が多い。

「き、君はSSSランク冒険者だったのか……」

「ど、どうしてSSSランクになってるの……!?昨日まではSSランクだったのに」

「今朝ギルドから連絡が入ってここに来る前に行ったらSSSに昇格したんだ」

「今までどんなことをしてたのよ……でもさすがグランね」

「やっぱりグランと一緒にいると飽きないです」

「まさかグランがもうSSSランクになるなんて……これからも頑張らなきゃ」

「私大丈夫かしら……?がんばって特訓しなきゃ」

「グランすげーな!」

「グラン君がまた離れていく……」
 グランは自分がSSSランク冒険者であることやその資格で将来は大丈夫なことなどを説明した。

「それに僕が生徒会に入っちゃうとみんなとの時間が減っちゃうので」

「「「「「「「グラン……」」」」」」」

「なるほどな。思ったより手ごわいようだ。しかし私もSSSランクと聞いてだまっていられるわけがない!」

「というと?」

「私と勝負しろグラン!」

「勝負?」

「ああ。私が勝ったらグラン君は生徒会に入れ。グラン君が勝ったら好きにするといい」

「……わかりました。やりましょうか!」
~アントネットside~
「それでは試合を始めますわ!」
 私はアントネット・レア・ブルトン。
 誇り高きブルトン家の長女にしてこの学園の生徒会副会長ですわ。
 もともと会長になる予定でしたがクリスとの選挙に敗れ副会長になりましたの。
 私よりも強い彼女は実にいいライバルですわ。
 今となっては彼女の人柄もわかり実力も対等だったため仲良くいい関係を築けてますの。
 そんな私ですが驚いたことにグランさんが生徒会に入るのを拒否し、入会をかけて会長と勝負をすることになりましたの。
 何せ私が審判に選ばれたのですから!
 まったく羨ま……ではなく不愉快ですわね。
 この私でも勝てるかどうか五分五分ですのにいくら首席だからって会長に楯突こうなんて……。
 でもクリスが勝つに決まってますわ。

~グランside~
 闘技場にやってきた一行は早速試合の準備をし始めた。
 試合が始まり戦闘態勢に入った二人はお互いに間合いを詰められないでいた。
 
 やっぱりクリスタベルベッカ会長は強いか……。
 さすがは生徒会長だね。
 今まで戦った中で間違いなく一、二を争うレベルだ。
  
 グランが冒険者の依頼で戦ってきた盗賊や犯罪者たちは練度の低いものが多く、グランに匹敵するものは一人もいなかった。
 強いて言うなら騎士団の訓練に参加する依頼で模擬戦をした団長が一番強かったぐらいだ。
 ちなみに騎士団団長に勝って以来騎士団に気に入られよく指名依頼が入っている。
 その騎士団長に匹敵するとなるとさすがは生徒会長といったところだろうか。
 ある程度たったところで二人は同時に駆け出した。

「海割流一ノ型水割!」

「魔法剣:雷撃っ!」

「はぁっ!」

「やぁっ!」

 なんて腕力だっ!?
 しかもシンプルに技がうまい……。
 これはちょっと本気でやらないとまずいかもな。

 結局均衡状態に陥りグランが引いたところでクリスタベルベッカが追撃を決めようと追ってきた。

「転移!」

「なっ!?」
 グランは転移をしてそれをかわすといったん距離を取った。

「強いですね会長」

「これでもこの学園のトップだからな。そういうグランこそさっきのには驚かされたよ。まさか伝説といわれた転移が使えるとはなな

「この魔法は僕の固有技能なので」
 
「なるほどな。それじゃあ私も固有技能を見せるとしようか。今までみたいに防げるとは思わないことだ」

 そういうとクリスタベルベッカは固有技能を発動した。

「海割流一ノ型水割っ!」

「何の!魔法け…………っ!?」
 突如グランをおぞましいほどの悪寒が襲い、それに従ってグランは回避を選んだ。
 刹那グランのいた場所に大きな地割れが走っていた。
 
 なんだったんだ今のは!?
 地面が切れている?
 確か学園の闘技場はかなり頑丈な素材で作られているうえ防御魔法に状態維持魔法までかかっているから簡単には傷つかないはずだ。
 もし傷がついたとしてもすぐに魔法の効果で修復されるはずだからこんなに長く残らないはず……!
 つまりここからいえることは

「会長の固有技能は鋭利化の上位互換とかですか?」

「私の固有技能は……」