「こんな状況であんたに触るなんて出来るわけないだろ! 何を考えてるんだ!」

 アデルの言うことも一理ある、だがその隣で平然として立っている男が居る。それが何よりの疑問に感じるアデルは戸惑っていた。

「先ほどもお話した通りインストールを扱うにはエーテルの制御が必要不可欠です。何故レイ君が平然としていられるか、何で君がこんなに苦しいのか。その違いは制御力の違いです。私は君たちに重圧を掛け、真空波で吹き飛ばそうとしました。だがレイ君はそれを押し退けた、これは周りのエレメントを制御することで無意識の内に対法術障壁(アンチマジックシールド)を展開させています。それに対してアデル、君はそれを操る術を知らない。だから無防備に私の精神寒波を受けているんですよ」
「それでおやっさんに触ってみろか……難しい宿題が出たもんだ」
「先ずはそれを習得しなさい、そうすればレイヴンの攻撃も緩和できるでしょう」

 ゆっくりと地面についていた膝を起こそうと上体を上げる、そこにまた一発衝撃波が飛んでくる。先ほどとは違いダメージを負った体でそれをまともに貰い後方へと吹き飛ばされる、背中から地面に叩きつけられてピクリとも動かない。

「いってぇ!」

 体は動かなくても口は動くようだった、一瞬気絶したかのように思えたが間一髪意識は繋いでいた。両手を使って体を起こし立ち上がろうとする。

「なるほどな、これを克服しなければ進むものも進まないって事がよく分った。あのレイヴンって野郎もあんたの弟子だ、もちろんこれが使える、これを克服できなければ動かない的を簡単に攻撃するだけで相手は倒れるって事か」

 グルブエレスを地面に突き立てて杖の代わりにした、中腰の状態まで何とか持ち直すことが出来たアデルだったがそこに衝撃波が再びアデルの体を襲う、今度はグルブエレスを握り締めていたおかげもありバランスを崩す程度で済んだ、それを見たカルナックは一つ笑みをこぼす。

「今の感じですアデル、わずかながら障壁を展開しましたね。もちろん無意識だとは思いますが感覚は体に残っているはずです、それを強くイメージしなさい。そして展開しなさい。次の一発……」