レイが受け止めたのは小さな女の子だった。幼い顔立ちから察するにきっと自分と同じぐらいの年齢だろう。ピンク色の髪の毛をしている。気を失っているのか意識はなかった。

「こっちは餓鬼だ」

 アデルが受け止めたのは黒髪の少年だった、赤いジャンパーを着ていて同じく気を失っている。そしてガズルが受け止めたのも同じく少年だった、こちらは緑色のジャンパーを着ている。
 黒い球体がしだい収縮して小さくなり、最後には完全に姿を消した。落ちてきたのは三人の少年少女、いずれも意識を失っていてぐったりとしているが、外傷は特になかった。レイ達はそれぞれ顔を見合わせてこの状況を分析する。突如現れた黒い物体、そこから出てきた三人の少年少女。突然の事で四人は軽いパニックになる。

「どうなってんだこれ」

 少女を抱きかかえたままどうしていいのか分からずにレイが呟く、アデルとガズルもまた訳が分からずに少年達を抱きかかえている。この三人が一体何者なのか、どうしてあの球体から出てきたのか。何も分からないまま彼等はメルが眠る山頂に立ち尽くしていた。それが結果として彼らに不幸が降りかかる。

「え?」「あ?」「は?」

 崖のほぼ先端に位置していたレイの足元が急に崩れる、正しく言えばメルの墓石から少し先が一斉に崩れだした。一度に複数人の体重がのしかかり、さらに落下時の衝撃を緩和出来ていたが三人の子供の体重が掛かり重量の許容を超えてしまっていた。
 レイ達三人はそのまま崩れた勢いで崖下へと落ちていく、それぞれが大声を出しながら崖下の森へと落下していった。それを後ろで見ていたギズーは恐る恐る覗き込み、

「あー……面倒臭ぇな」

 懐から煙草を取り出して火をつけ、三人が落ちていくのを静かに見守った。